低酸素トレーニングと乳酸トランスポーター
運動科学研究室の向井です。
我々の研究室では、2005年頃から乳酸研究の第一人者である東京大学の八田先生のグループと共同研究を行ってきました。そして、2017年からは八田先生のもとで研究をしていた神奈川大学の北岡先生と共に低酸素トレーニングと乳酸トランスポーターに関する研究をしています。
今回の研究では、酸素濃度18%で低酸素トレーニングを2週間すると、乳酸トランスポーターの一種であるMCT4が増え、さらに解糖系と呼ばれる代謝経路の酵素(PFK)も増加することが分かりました(常酸素トレーニングではこの2つは増えていません)。サラブレッドは脚元が弱いため、運動強度や運動量をセーブしながらトレーニングする必要があり、MCT4もPFKもかなり高強度のトレーニングを長期間行わないと増加しない指標(我々の先行研究では12週間もしくは18週間必要)のため、これらがたった2週間の低酸素トレーニングで増加したことはトレーニング戦略を考える上で重要な知見です。
低酸素トレーニングと聞くと、すごく未来的で現場で応用できないトレーニングのように聞こえるかもしれませんが、走る速度を上げることなく、心臓血管系や骨格筋により強い刺激を与えることができるため、運動器疾患に悩まされることが多いサラブレッドにとっては救世主となる可能性があると考えています。
研究の詳細については2020年6月にPhysiological Reportsで公表されたこちらの論文をご覧ください(外部リンク)。
https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.14814/phy2.14473