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2022年11月10日 (木)

長―く効く薬の話

臨床医学研究室の三田です。

 

寒くなってきて風邪が流行る時期になってきました。

我が家でも子供が咳込んでいたので漢方薬を処方してもらったのですが毎食後に飲ませる必要があり、たまに忘れてしまいます・・・。飲み忘れるのが漢方薬ならまだいいのですが、もしこれがホルモン剤や抗菌薬であれば飲み忘れによって体調を崩したり、病気をぶり返してしまうなど大きな問題になってしまいます。そこで、今回のブログでは現在私の研究で取り組んでいる、少ない服用回数で長く効く薬の話をしたいと思います。

 

上記のような「患者が医師の処方通りに服薬できるか(服薬コンプライアンス)」という問題は数十年前から話題にされており、特にホルモン剤注射を頻回にわたって服用しなければならない患者さんにとっては毎日の負担が非常に大きいそうです。そこで製薬会社では薬剤を人工合成したポリマーを用いて加工することで少数回の服用でとても長く効く薬を開発してきました。つまり、一般的に薬を単独で体に投与すると数時間で代謝されてしまい効果が無くなっていきますが、体の中で徐々に分解されるポリマーを使って薬剤をコーティングすることで薬剤が長期間にわたって徐々に分解されるようにする仕組みです。この技術によって現在商品化されているホルモン剤の中には1回の投与で数か月も体の中で有効濃度を保てる薬もあります。薬の加工技術は年々進化しており、薬を必要な量・必要な部位へ・必要な期間にわたって作用させるための研究が様々な薬で行われています。

馬の診療でも頻回の投与が大変だったり、目的の部位だけに薬を届けたい場面があり、私の研究では馬で使用している抗菌薬でこのようなことができないか検討を重ねています。下の写真は先ほど説明した、①薬剤を加工する前と②ポリマーで加工した後の電子顕微鏡写真です。結晶構造だった薬がポリマーで包まれて丸くなっている様子がわかると思います。

①加工前の結晶状の抗菌薬

Photo

②ポリマーで加工した抗菌薬Photo_2

 

この形を見て先日の皆既月食を思い出してしまいました。

いつしかこの薬剤がウマの体のなかで満月のように輝いた効果を発揮できるよう研究をすすめているところです。