馬伝染性子宮炎について
微生物研究室の木下です。
馬伝染性子宮炎 (CEM : Contagious Equine Metritis) という、不受胎の原因となるウマ特有の性感染症をご存じでしょうか?
CEMは、1970年代後半から80年代にかけて世界各国に広まった病気で、日本国内においても1980年代から2000年代にかけて発生が確認されていました。国内の軽種馬群では2005年の発生を最後にまもなく20年が経過しようとしていますが、国外に目を向けると、ヨーロッパ (特にドイツ) を中心に毎年のように発生が報告されています。さらに、今年に入り、2013年以来となるアメリカでのCEM発生が、フロリダ州で繋養されているポニーにおいて確認されました。本ブログの執筆時点で、97頭の馬を飼育する当該牧場において、11頭のポニーがCEM陽性と確認されています (検査中の馬もいるため、最終的な陽性数は増える可能性あり)。また、ポニー間で広まった原因として、ルーティンで行っていた生殖器の清掃作業が疑われているようです。CEMに限ったことではありませんが、このような人為的な行為によって病気が広まる可能性があることを認識し、注意を払う必要があると改めて感じました。
アメリカにおけるCEM発生についての詳細は、下記の米国農務省のホームページ(外部リンク)をご確認ください。
(外部リンク)
https://www.aphis.usda.gov/livestock-poultry-disease/equine/contagious-equine-metritis
国内での発生は長年認められていないとはいえ、ウマの国際間移動が頻繁になっている昨今、CEMが再び国内で発生する可能性は否定できません。CEM発生時の影響が非常に大きいことに鑑み、日本軽種馬協会(公益社団法人)を中心として、生産地、検査機関、そしてJRAの関係者が集まり、CEMの検査状況の共有や、今後どのような対策が必要なのかについての協議を行うために定期的に会議を行っています (写真1)。良からぬ伝染病が広まらないことを強く望みはしますが、万が一事象が起きた際に迅速な対応が取れるよう、関係者と普段から連携しておき、有事に備えた取り組みを平時から行っておくことが重要であろうと思います。