« 2026年5月 | メイン

2026年6月

2026年6月19日 (金)

ウマの心エコー検査と2D Speckle Trackingへの挑戦

 みなさま、初めまして。

 3月より運動科学研究室に配属になりました、石原と申します。

 これまでは栗東トレーニング・センターで競走馬に対する診療業務に携わってきました。業務内容は大きく変わりますが、心機一転頑張っていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、皆さんは心臓のエコー像を見たことがありますか?

 私は自分の心臓のエコー像こそ見たことはありませんが、診療の中でウマの心臓は何度か撮影したことがあります。臨床現場では、腱や腹部などさまざまな部位のエコー検査を行いますが、その中でも心臓のエコー検査(心エコー検査)はやや難しい手技の一つです。

 ウマは身体にあわせて心臓も大きいため、評価したい心臓の場所に応じてエコーの当て方や測定法を変えなければなりません。また、血流などを検出する測定法では測定角度が少しずれるだけでうまく検出出来なくなり、測定値も大きく変動してしまうという難しさがあり、訓練された技術が必要です

 それでも、心エコー検査は心内膜炎の診断や心機能の評価において、臨床上非常に重要です。そのため、困難さを克服した診断技術や評価方法のさらなる発展が求められています。

 心エコー検査のような特殊な分野では、ヒト医療のほうが先行しているものです。現在、栗東トレーニング・センターの獣医師からの立案で、ヒトの心エコー検査で用いられている2D Speckle Tracking(2DST)という測定手法がウマでも応用できないか、その確立が目指されています。

 2DSTは、心筋内に微小な点を設定し、それらを画像上で追跡することで、心筋のひずみなどを評価する手法です。画像上の動きをトラッキングして測定値を算出でき、画像さえきれいに取れていれば、超音波を当てる角度の違いによる測定値のブレが少ないメリットがあります。また、心筋の運動を直接とらえて評価できるため微小または早期の心機能異常を検出しやすいと言われています。

 ウマの場合、“四腔断面”(下図)と呼ばれる比較的平易に描出できる像を計測の対象にすれば、それほど熟練していない者でも色々な測定が可能になることを確認しています。もちろん、まだまだ課題は多く残されていますので、まずは競走馬総合研究所で2DSTの測定を進めてみることになり、私が担当します。今後の診断技術の発展につながるようなデータが得られればよいと考えています。

2dst 左図はウマの心臓で、いわゆる”四腔断面”を捉えた2DSTエコー画像。青色のバンド(矢印)が左心房壁をトレースしたものに相当。右図は、左図で決めた点の動きを捉えたもので、上方向への振れは心臓の拡張を、下方向への振れは収縮に相当する。