馬の薬の飲ませ方;「経鼻カテーテル」と「シリンジを用いた経口」の相違
臨床医学の黒田です。
馬が病気になったときや健康維持のために、飲み薬を飲ませる機会があります。しかし、大きな馬に薬を飲ませるのは一苦労です。馬に薬を与えるときには経鼻カテーテルを鼻から入れて食道に水とともに薬を流し込む方法と、注射用のシリンジを使って口から飲ませる2つのルートがあり、状況に合わせて使い分けています。今回はその特徴を比較してご紹介します。
1:確実だけど「プロの技」が必要な経鼻カテーテル
鼻の穴から細いチューブ(カテーテル)を優しく差し込み、喉を通って胃まで直接お薬を届ける、獣医師が行う専門的な方法です。この方法の一番のメリットは、「どれだけ苦い薬でも、数L(リッター)の水でも、確実に胃まで届けられる」という点です。例えば、便秘のときには、数Lの水分やオイルを投与する必要があります。経鼻カテーテルであれば、どれだけ苦いお薬でも舌(味覚)を通らないため、美味しくない薬も投与できます。しかし、鼻にチューブが入る瞬間は馬も嫌がるため、獣医師による技術が必要ですし、何回も投薬すると馬が嫌がって拒否するようになることもあります。
2:手軽だけど「味」が勝負のシリンジ
もう一つは、注射器のような筒(シリンジ)を使って、口の脇から薬を流し込む方法です。簡単ではありますが、用量に限界があり1度に飲ませることが出来る液体は多くても40mL程度です。また、経鼻カテーテルと違い、吐き出したりもするので経鼻カテーテルより確実性は下がります。この方法の最大のハードルは「薬の味」です。馬は結構味に敏感で、研究でも「バナナ」「リンゴ」といった甘いフレーバーが大好きで、逆に苦いものは大嫌いなことが分かっています。苦い薬をそのまま飲ませようとすると、首を振って嫌がったり、せっかくの薬をペッと吐き出したりしてしまいます。
そのため、我々も少しでも苦味を隠そうと、いろいろなものを試しています。コーヒーに入れるシロップを混ぜてみたり、ケーキ用のシロップを試してみたり、糖蜜を練り込んでみたりと、馬の好みに合わせてあの手この手で工夫を凝らして奮闘しております。作った薬を自分で試しに舐めたりしますが、人には意外と苦いと感じた薬でも馬には大丈夫な時もあります。一方、その逆もあり苦労しているところです。どうも、味覚より嗅覚が重要かなと感じてはいます。
このことは、本年の研究成果でも詳しくご紹介しますので、ぜひ楽しみにしていてください。
|


コメント