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BTC利用者との意見交換会(日高)

今年5回目を迎えたBTC利用者との意見交換会は、「坂路調教の効果と馬場の特性」というテーマで1212日(水)に行いました。昨年700mから1000mに延長したことで調教強度が増して、トレーニング効果が上がった坂路馬場、今注目されているニューポリトラックを含めた馬場の特性等、安全かつ効果的なトレーニングをコンセプトに意見交換を行いました。このように利用者同士がお互いに刺激を与えあえる環境にあることがBTCの強みであり、利用馬の活躍にも繋がっているのではないかと思います。

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意見交換会風景:気楽に参加できるのがこの会の特徴です。

また、1129日(木)には総研から笠嶋研究役を招いて、獣医師を対象として不治の病といわれる屈腱炎について技術講習会を開催しました。胸骨の骨髄液を採取して、培養した幹細胞を移植する屈腱の再生療法への関心は高く、特に再生療法は万能な特効薬ではなく、正しい知識を理解したうえで治療を行う必要があるという言葉が印象的でした。

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胸骨の骨髄液を採取する場所をエコーで確認しているところ。第3あるいは第4胸骨腔から採取します。

JRA育成馬の紹介はこれまで馴致開始の早い第1・2群を中心にお伝えしてきましたが、いよいよ第3群の牝馬も1212日から坂路調教を開始しました。また、馴致最後の第4群も800m屋内トラックで駈歩調教まで進み、全馬の足並みが揃う日は遠くないようです。

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3群の坂路調教(一部第1群の牝馬を含む):初日にしては真直ぐ走ってくれました。集団調教の左からナイスジュノーの06(牝:父シルバーチャーム)、チケットトゥフライの06(牝:父ブライアンズタイム)、シルクマーメイドの06(牝:父コロナドズクエスト)、ディアンの06(牝:父マリエンバード)、メローホリデーの06(牝:父バブルガムフェロー)、ハッタロッチの06(牝:父アグネスデジタル)

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4群の800m屋内走路での調教:1列縦隊で前の馬について走ります。徐々に真直ぐ走れるようになってきています。先頭右からフジノバンナの06(牝:父ステイゴールド)、ナナコフレスコの06(牝:父コマンダーインチーフ)、エルカーサリバーの06(牝:父サニングデール)

まっすぐに走ること(宮崎)

9月中旬に騎乗馴致を開始した第1(9)10月中旬に開始した第2群(13頭)は1130日から合流し、ようやく調教が軌道に乗り始めました。現在、牡および牝のロットに分けて、一列での隊列を組んでハッキングといわれるゆっくりとしたスピードのキャンターを実施しています。この時期には①前に進むこと②まっすぐ走ること③落ち着いて走ることの3つを馬に求めるようにしており、このことについては、1年前の日誌「集団での調教」で書かせていただきました。

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リードホースを先頭にキャンター調教を実施している第2群の牡馬です。リードホースの後はビショップリングの06(牡・父ナリタトップロード)。(1122日)

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1群と第2群合流しての調教です。このような縦列調教の中でまっすぐに走ることを教えていきます。先頭はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(121日)

まっすぐに走ることを要求するときに騎乗者が勘違いしやすいのが、馬の「口向き」を気にするあまりハミに対して左右別々に拳を強く使用することです。拳の操作が強すぎると馬の口を鈍感にするのみならず、馬が前に出ることができずに立ち上がる、後退する等の悪い癖を覚えやすいと思います。この時期の騎乗技術で重要なことは、騎乗バランスと脚の指示による前進気勢および柔らかい拳と考えています。手綱の持ち方はネックストラップに指をかけて、ダブルブリッジで保持することを私は好みます。若馬の筋肉は左右不均等に発達していて当たり前です。したがって、騎乗者が「口向き」を直すためには、長いスパンで馬の不均等な筋肉を左右均等に発育させることを意識することが重要です。例えば、調教時には両方の手前でトラック調教を行うことで左右均等な筋肉の発達を促し、また、縦列調教においてはリードホースの後ろをくっついて走ることで、まっすぐに走るための筋肉発達を促していくことができるものと考えています。競馬において正しく手前を換えることができる馬を教育することは、能力を発揮するために重要な要素のひとつと信じています。

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冬毛の伸びた馬についてはクリッピングを開始しました。クリッピングにはいろいろな毛の刈り方がありますが、体の上半分と四肢の毛を残すトレースクリップという方法を採用しています。馬はローズレディの06(牝・父クロフネ)。(1130日)

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1600mトラック内に高くそびえるパームツリーの下で朝日を浴びながらクーリングダウンを行っています。(1121日)

ゲート練習について(日高)

競走馬は能力があってもゲート試験に合格しなければ、競馬のスタートラインにさえ立つことはできません。日高育成牧場ではトレセン入厩後の速やかなゲート試験合格を目指して、ブレーキングの時にドライビングからゲート練習を開始し、騎乗してからも毎日の調教時にゲートを通過しています。そして、“前扉を閉めた状態で入れて、後ろ扉を閉めて駐立し、常歩で出ること”を育成時のゲート練習の目標としています。

これまで、ゲート目標確認試験は年明けに行っていましたが、昨年より年内に変更しました。スピード調教を開始して、馬のテンションが上がるようになってから行うよりも、馬が落ち着いて、ゲートへの恐怖心が少なく、時期としてよいのではとの感触を持っています。今後もトレセンでのゲート合格状況結果を勘案しつつ、育成期の最適なゲート練習というテーマに取り組んで行きたいと考えています。

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ゲート通過風景:毎日の調教時にゲートを通過してから馬場に向かいます。ゲート通過は広い4番ゲートから始め、最後は競馬と同じ広さの1番ゲートを通過します。先頭はハートフルソングの06(牡:父クロフネ)。

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ゲート練習風景:ゲート目標確認試験に向け、前扉の開閉に慣らしているところ。練習している馬はビッキーロイヤルの06(牡:父スペシャルウイーク)

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トレセンでのゲート試験合格状況:2006年売却JRA育成馬のうち、BUセール後、トレセンに直接入厩した37頭を対象に調査しました。合格時期は92%の34頭が2ヶ月以内に、合格までの回数は70%の26頭が1回で合格していました。

今年は、路盤改修等のおかげで、1600mダートトラックはまだ使用可能です。そこで、馴致開始の早い第12群の馬は、来春の馬場オープン後の円滑な利用を目指して、スクーリングを行っています。

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1600mダートトラックを速歩でスクーリングしているところ:先頭からダイアモンドコアの06(牡:父アグネスタキオン)、セイウンクノイチの06(牡:父グラスワンダー)、プリンセスバローズの06(牡:父ボストンハーバー)以下。

毎年12月にBTC利用者との「育成に関する意見交換会」を開催しています。今年は「坂路調教の効果と馬場の特性」をテーマとして、平地と坂路調教での馬の動きの違い、昨年延長した坂路馬場の効果や注意すべき疾患および今話題のニューポリトラックを含めた各種馬場の性状について、意見交換会を開催します。12日(水)の18時から日高育成牧場において実施しますので、ぜひお気軽にお越しいただきたいと思います。