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グラス坂路で調教を行っています(日高)

日高育成牧場の「日高育成総合施設軽種馬育成調教場」には様々な調教施設がありますが、その中でも全長約2400mのグラス坂路馬場は当場自慢の馬場の一つで、景観が素晴しく施設見学のコースにも組み込まれています。JRA育成馬の第1※111月からこのコースで調教を行っています。最大勾配約4%の自然の丘陵を利用した坂路は若馬には結構タフで、調教中に鹿、狐、雉等の野生動物に遭遇することもあり、常に神経を集中させておく必要があります。また、アクセス路は砂利敷きの坂道で、最初のうちは砂利が蹄を刺激して馬は歩きづらそうでしたが、何日か経つとスムーズに歩けるようになってきました。霜が降りて馬場状態が悪化する前までの短い期間の利用ですが、屋内の恵まれた施設だけでなく、様々な環境を経験することは人馬にプラスになると期待しています。

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スタートから約600m地点で4%の勾配を上ってきた馬群が見えてきたところ。遠くには太平洋が望めます。

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スタート地点から1000mを過ぎたところ。柏の木はすでに葉を落としています。

生産地は10月を過ぎると年明けから続く、出産・種付け・離乳2・せりという多忙なシーズンが1段落し、次の出産が始まるまで、生産者や育成者等を対象とした講習会が盛んになる充電期間となります。

1030日には美浦の勢司調教師と栗東の角居調教師を迎えて、人材養成の考え方や馬のメンタルトレーニング等、強い馬をつくるために両調教師が日頃考えて実践していることについての講演が開催され、約400名の来場者と熱気あふれる意見交換が行われました。競走馬になるためにはたくさんの人の手が入ります。馬の取扱い意識が統一されることは大切なことで、今回の意見交換会は意義のある催しであったと思います。

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講演会風景:直後にオーストラリアのメルボルンカップでデルタブルースとポップロックがワンツーフィニッシュしたことで、よりインパクトの強い講演会となりました。

111日には当場主催で日高・胆振地区の獣医師を対象として「馬の上気道疾患と内視鏡検査」の講習会を開催しました。上気道疾患はせりにおける情報開示等で、生産者や購買者の関心が高まっているところでもあり、少しでも参考になれば幸いです。なお、育成期の上気道所見と競走期パフォーマンスの関連について興味のある方はJRA育成研究のデータがありますのでご覧下さい。

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馬がトレッドミル3運動中に内視鏡検査を行っているところ。上気道疾患を診断する際に馬が運動中の状態を観察することが必要な場合があります。

1※1、:日高育成牧場では馬の入厩日、性別、馬格、疾病、生年月日等を参考にして、4群に分けてブレーキングを開始しています。第1群は95日から開始しました。

離乳2:生後約6ヶ月で子馬が親離れすること。

トレッドミル3:馬用のルームランナー、人が騎乗せず馬を運動することができます。

韓国から研修生が来ています(宮崎)

プサン(釜山)競馬場所属の調教厩務員2名が、宮崎育成牧場で研修を開始しました。期間は10月から来年の3月までおよそ6ヶ月間の予定です。韓国のサラブレッド競馬はソウルとプサンの2ヶ所で行われています。その中でもプサン競馬場は20059月に開場したばかりの新しい競馬場で、これからの発展が大いに期待されています。そんな中、彼らもやる気満々でブレーキングをはじめとした実践研修に取り組んでいます。我々も、いい意味での刺激として受けとめ、育成に対するさらなる意識向上をはかっていきたいと考えています。

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研修生の李知勲さんとオロールの05(牡・父アラムシャー)。

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研修生の孫丙直さんとガラダンサントの05(牡・父アラムシャー)

さて、第111頭(牡6・牝5)112日から1600m馬場でキャンター調教を開始しました。現在は、500m馬場で3周キャンター実施後、1600m馬場で約34ハロン(1ハロン200)程度の距離をゆっくりしたスピードで、隊列を組んで前後左右の馬に慣らしながら、基礎体力および走行フォーム養成に主眼をおいています。なお、9月に入厩したサマーセール購買馬13頭(牡6・牝7)も順調にブレーキングが進んでおり、117日から500馬場での速歩調教を開始しました。

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1600m馬場での初めての速歩です(1028日)。

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馬場から出る前に整列している牡馬6頭です(写真右は誘導馬)。

浦河で当歳馬の品評会が開催されました(日高)

1027日(金)に浦河町軽種馬生産振興会青年部の主催による当歳馬の品評会が開催されました。品評会は準備が大変なことや地区の意識が変わったこと等で、近年開催数が減っていましたが、浦河地区では青年部の努力で復活しました。当日は10頭の当歳馬が出陳され、大勢の人の前で立ち姿や歩きが披露されました。当歳馬の馴致等、事前の準備は大変だったと思いますが、青年部が活性化しお互いに刺激しあうことは必ず地区の振興につながっていくことと思います。

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品評会で見事に最優秀賞を獲得した(有)酒井牧場から出陳されたペリウィンクルの18(父:マヤノトップガン)。馬の手入れ、チフニーを付けての展示や馬体の作り。さらに馬の引きかたや馬自身の歩き等いずれも高評価でした。

日高育成牧場では馬の成長を把握するために、月に1度、測尺(そくしゃく)を行っています。一般的には、き甲の頂点から地面までの垂直距離を測る体高、き甲の頂点に近い部位を通って、胸郭のまわりを測る胸囲、左前肢の管中央の周囲を測る管囲の3部位からなります。測尺は簡単にできるため、昔から馬の大きさを知る指標として用いられています。

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測尺部位:赤線は体高でき甲から地面までの距離、白線は胸囲で胸郭の周囲長、青線は管囲で管部の周囲長

さらに月に2度、体重とボディコンディションスコア(BCS※1を測っています。体重の推移を知り、馬の脂肪のつき方をみることで、成長や調教強度に応じた飼料給与量が適切であるか判断し、馬の適正な発育に努めています。

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ボディコンディションスコア(BCS※1:外貌からみた馬体の脂肪のつき方を1から9までで数値化したもの。育成馬の標準は概ねスコア5で、太るほど数値が高くなり、痩せるほど数値は低くなります。日高育成牧場では肋骨部、背中央部、尾部の3部位を測定しています。

また、一昨年からエコー機器を用いて馬の臀部の脂肪厚を測定しています。この値から馬の体脂肪率や除脂肪体重を推測することができます。冬季間の牝馬は体重が増えても脂肪として蓄積されるだけで、なかなか筋肉量が増加しにくい傾向にあり、図らずしも「冬場の牝馬は仕上がりにくい」という厩舎格言を裏付けた結果となりました。

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エコー機器を用いて臀部の脂肪厚を測定しているところ。馬の臀部にプローブを当てるだけで、簡単に測定することができます。