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BTC生徒実践研修(日高)

15日よりBTC生徒の騎乗研修が始まりました。BTCでは事業の一つとして、将来、生産地で技術的中核となるべき育成調教技術者の人材養成事業を行っています。日高育成牧場では、実際に競走馬となる若馬を経験させることを目的として、JRA育成馬や当場で生産した研究馬を用いて、秋にはブレーキング実習、年明けからは騎乗研修を実施し、バックアップしています。

彼らは訓練用馬と違い、軟らかく反応の早い若馬に戸惑い、最初はなかなか上手に騎乗することはできません。時には落馬もすることもありますが、日々経験を積むことで馬とともに成長し、卒業間近の4月上旬には当場で開催されるJRA育成馬の展示会で、訓練の成果を披露してくれるはずです。

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 覆馬場で速歩を行うBTC生徒:騎乗姿勢はまだ何となくぎこちない。

 

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 屋内800mトラックにて単走で駈歩を行うBTC生徒

JRA育成馬は現在、馴致による群分けから、牡牝による群分けに変り、牡馬は2400mの駈歩を牝馬は1600mの駈歩を実施しています。例年この時期はアクセス路が凍結して屋内坂路にいけないのですが、今年は雪がなく、週に2回ほど1000mに延長された屋内坂路でF20-18程度のスピード調教を行っています。また、馬の闘争心を養うために併走調教を行っています。

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屋内坂路馬場に向かうJRA育成馬:右手に見えるのが屋内坂路馬場。1月だというのに全く雪がない。

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併走でスピード調教を行う左はミスクラブアップルの05(牡・父シンボリクリスエス)、右はプライヴェイトアイの05(牡・父アラムシャー):徐々に力強い走りができるようになってきました。

BTC:財団法人軽種馬育成調教センターの略で、浦河町にある日高育成総合施設軽種馬育成調教場の運営・管理を行うほか、育成調教技術者の養成等の事業を行っています。

COLTISH?(宮崎)

年が明けて、若馬たちも2歳になりました。今はちょうど人間の「中学生」くらいに相当するのかなと考えています。そういえば最近、特に牡馬(COLT)は、顎が張ってきて男らしい顔つきになり、しぐさや態度も入厩した当時と比べて随分偉そうに振舞うようになってきました。中には、運動中に後肢のみで立ち上って群れでの優位性を誇示しようとするなど、行き過ぎた行動をとる馬も出てきます。これらは「第二次性徴期」に伴う馬の「反抗期」みたいなものなので、人間が馬に対して「マナー」を理解させる必要があります。一方、調教においては、体力がついたのか、徐々に力強く走るようになってきています。うれしいことですが、喜んでばかりもいられません。まだ、発育途中の完成していない身体であることを考慮すると、馬が走りたいスピードで走らせるのではなく、騎乗者が馬のスピードや姿勢をコントロールすることが重要となります。つまり、今の時期には速く走ることよりも、力をためて走ることのほうが必要だと思います。また、速く走ることを要求し過ぎることによるオーバーワークは、運動器疾患を引き起こすのみでなく、メンタル面での「反抗期」にもつながるので、馬の走り方を見ながら徐々に調教の量を増やしていくつもりです。

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牡馬の調教です。この日はキャンターを2本実施し、1本目は34頭単位で一列の隊列を組んで5Fを平均23秒程度で走行しました。先頭はサンドコロネットの05(牡・父アドマイヤコジーン)(18日)。

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2本目は、併走で5Fを平均20秒程度で走行するキャンター調教を実施しました。手前(向かって左側)はユーワソフィアの05(牡・父キャプテンステーヴ)、外はトップライナーの05(牡・父イシノサンデー)(18日)。

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調教終了後、1600m馬場内でクーリングダウンを行っている牡馬たちです(18日)。

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11月末に飛節OCD摘出手術を実施した2頭馬場入りを開始しました。手前(向かって左側)はケイウンクィーンの05(牡・父タヤスツヨシ)、外はダイモンジの05(牝・父キャプテンスティーヴ)(18日)。

育成馬にライトコントロール(日高)

明けましておめでとうございます。本年もJRA育成馬日誌よろしくお願いします。

昨年に引き続いて、今年のJRA育成馬に1220日からライトコントロールを始めました。ライトコントロール法とは、繁殖牝馬には一般的に用いられている方法で、季節繁殖性の動物※1である馬に対して、電球や蛍光灯の照明で人工的に日照時間を長くし、性腺機能の発達を促すことで、初回排卵を早め、種付や出産時期を早めることができます。

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ライトコントロールは馬房内に100ワット電球一つを点灯し、冬至の1220日頃から4月まで、タイマーで人工的に昼14.5時間、夜9.5時間の環境を作るだけで、安価で手軽に行えます。

話は宮崎育成牧場に勤務していた10年近く前に遡りますが、冬季の育成は北の日高より南の宮崎で馬が仕上げやすいこと、アメリカの2歳トレーニングセール上場馬の調教はカリフォルニアやフロリダで行われていたことから、暖地育成に着目していました。その結果、冬の宮崎は日高と比べて日照時間は長く、気温は暖かく、性ホルモンの分泌時期が早く濃度が高いことがわかりました。性ホルモンは骨や筋肉の発育に関与しており、馬の成長が早くなっているのではないかと考えました。

そこで、昨年度日高の育成馬に光の刺激であるライトコントロールを実施したところ、牝馬の性ホルモンの分泌時期が早く、濃度が高くなること、牡馬の筋肉量の増加が多い可能性があること、冬毛の脱毛が促進されることがわかりました。冬季に気候条件の悪い日高で、早い時期に強いトレーニングが必要な育成馬には、ライトコントロールという飼養管理方法が有用ではないかと思います。今年も引き続き研究を実施しております。これまでの詳しい成績はこちらをご覧下さい

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雌の血中プロジェステロン(黄体ホルモン)はライトコントロール群が明らかに濃度が高く、早期に排卵していることがわかります。

12日には今年で97回目を迎えた新年恒例の「騎馬参拝」が行われました。人馬の無病息災を祈願し、日高育成牧場から浦河神社まで往復20kmの道のりを馬に騎乗して参拝します。浦河神社の101段の石段を駆け登る「騎馬参拝」は大勢の観客が詰めかける浦河の正月の風物詩となっています。3kiba1

浦河神社の参拝を終え、石段を降りる乗馬:テレビや新聞の報道では石段を駆け登るシーンが使われますが、実は降りるほうが数段恐いのです。4kiba2

公道を隊列を組んで進む乗馬を車が追い越しているところ:日高育成牧場から浦河神社の往復は公道を通るので細心の注意が必要。今年は雪がなくて大助かり。

季節繁殖性の動物※1:年間を通して排卵して1年中出産が可能なヒトと違い、馬は冬季は卵巣が活動を休止し、春になり日照時間が長くなると排卵が始まり交配が可能となります。通常馬の初回排卵は4月頃始まりますが、ライトコントロール法により、2-3月に初回排卵を誘発することが可能となります。

南国の特権(宮崎)

冬の北海道になくて宮崎にあるもの・・・それは青草です。宮崎育成牧場では秋から冬にかけて放牧地にイタリアンライグラスの種をまくことで、エバーグリーンの放牧地を保っています。草食動物である馬の生理面を健康に保つためには、草を食べることは重要です。そのため、我々は調教後に短時間、草のある放牧地に馬を放しています。もちろん、放牧地で走れば怪我をするという心配もあるのですが、それ以上に草を食べさせることで馬をナチュラルな状態に保ちたいと考えています。まだまだ、育ち盛りの若い子たちなので「よく食べ、よく遊び」ながら、精神的・肉体的に健やかに成長してくれればと期待しています。

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手前はサチノヒロインの05(牝・父スペシャルウィーク)。(1215日)

12月末現在、牡は500馬場で準備運動(キャンター1000m)後に1600馬場で1100mのキャンターを2本(合計3200m:2本目F22秒程度平均)行うインターバル調教を週2回行っています。また、牝は精神的にリラックスして走れることを目標に併走調教で1500mのキャンターを1本(合計2500m:F26-25秒程度平均)実施しています

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1600馬場での併走調教です(1217日)。手前(向かって右側)はユーワソフィアの05(牡・父キャプテンスティーヴ)、外はベルキスの05(牡・父マーベラスサンデー)。

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これも、1600馬場での併走調教です(1223日)。手前(向かって左側)がラヴォイラの05(牝・父アラムシャー)、外はサチノヒロインの05(牝・父スペシャルウィーク)。

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Merry Christmas A Happy New Year!   午前中は育成馬に騎乗する職員も、午後からはサンタさんに変身して来場者に対するファンサービスを実施しました。馬もトナカイに変装したようです!?1224日)