育成馬 活躍情報
3月25日(水)の第32回京浜盃(地方重賞S2:大井競馬場、ダート1,700m)において、ナイキハイグレード号(育成馬名:ダイアモンドコアの06、父:アグネスタキオン、牡馬)が優勝し、重賞2勝目をあげました。
同馬はブリーズアップセールにおいて主取となり、千葉サラブレッドセールにおいて売却されたJRA育成馬です。 (写真提供:東京シティ競馬)
3月25日(水)の第32回京浜盃(地方重賞S2:大井競馬場、ダート1,700m)において、ナイキハイグレード号(育成馬名:ダイアモンドコアの06、父:アグネスタキオン、牡馬)が優勝し、重賞2勝目をあげました。
同馬はブリーズアップセールにおいて主取となり、千葉サラブレッドセールにおいて売却されたJRA育成馬です。 (写真提供:東京シティ競馬)
卒業・入学の季節です。JRA育成馬にとっても来る3月30日のJRA育成馬展示会(宮崎)が「卒業式」、そして4月27日のJRAブリーズアップセール(中山)が競走馬となるための「入学試験」といえます。このブログでも何度か紹介してきたビッグキャンドルの07(通称キャンドル、牝、父は新種牡馬:バゴ)はブリーズアップセールの上場番号が58番に決まりました。これが競走馬訓練学校(トレセン)入学への受験番号といったところでしょうか。
「受験番号ゼッケン」を背に整列する牝馬たち。左から2頭目の「58番」がキャンドルです。この日は3/30(月)に迫った育成馬展示会の調教予行演習を19日に実施しました。素直で扱いやすいキャンドルは単走でしっかり抑えたまま、ほぼ指示通りのタイム(ラスト2ハロンを16.1-14.9秒)を記録しました。
この受験生(育成馬)たちは、活躍を楽しみにされている購買予定の皆様からみれば、かわいいわが子のような存在でしょうし、大変高額な商品でもあります。その商品の内容・価値をきちんと説明するために、JRAでは病歴や調教状況など様々な個体情報を開示しています。中でも「育成馬写真カタログ」は最も基本的な個体情報のひとつであり、ブリーズアップセールの事前購買者登録をお済ませの馬主の皆様に冊子を郵送します。また、最新の個体情報と写真はホームページ上でどなたでもご覧いただけます(4月上旬頃、セール情報ページ内に掲載する予定です)。
写真撮影準備中のプレミアムショールの07(牝・父:アグネスフライト)。たてがみをしっかりと右側に寝かせます。
宮崎では3月18日より写真カタログの撮影を開始しました。お客様が80頭のJRA育成馬を比較・検討するための貴重な資料となるのですから、どの馬もきちんと揃った姿勢での撮影が求められます。納得のいく写真が撮れるまで、天気とも相談しながら根気強く取り組みます。3分で終わる馬もいれば30分以上要する場合もあります。しかしその30分は馬とのコミュニケーションやしつけのための時間であり、決して無駄になるものではありません。
写真の失敗例その1。前のめりになってしまい耳も後ろを向いています。馬はホットマイハートの07(牡・父は新種牡馬:スパイキュール)
写真の失敗例その2。風でしっぽを巻き込んでしまっています。天気もなるべく薄曇りの条件がよく、この日は光線がやや強すぎます。馬はニシノファンシーの07(牝・父:マヤノトップガン)
何度かポーズを直し、所要時間7分で受験番号58・キャンドルのカタログ写真ができあがりました。現在の体高155cm、馬体重452kg。BUセールまであと1か月、大切に育てあげます。
4月27日(月)中山競馬場で開催します2009JRAブリーズアップセールの売却馬名簿が完成しました。中央競馬の全馬主・全調教師の皆様に配付いたしましたので参考にして下さい。
※記載内容の訂正について
P.47ブルーブロッサムの07号の生産牧場は北海道浦河町絵笛 川越ファーム、購買価格は8,400,000円の間違えでした。お詫びして訂正いたします。
4月27日のBUセールまで残すところ1ヵ月半。セールに向けた準備が忙しくなってきました。個体情報で購買者の方に開示するための四肢のレントゲン検査、喉の内視鏡検査、屈腱部のエコー検査、喉の手術を実施した馬に対するトレッドミルでの運動負荷試験など、スケージュールがビッシリです。
そういった中、3月9日からBUセールの名簿に掲載する上場馬の写真撮影を開始しました。既報でもお伝えしていますが、今年の日高は雪が多く残り、現時点では撮影場所はまだ雪に覆われています。本年のセール日程から逆算して、1ヶ月前には撮影を終了しなければなりませんが、気候が味方してくれなければお手上げです。
背景に雪が残る中、始まった写真撮影。撮影場所は除雪後、凍結防止剤を撒き何とか使えるようにしました。馬はチーサキーの07(牡 父:プリサイズエンド)。馬が綺麗に四肢を配し、立ち位置が決まったらICレコーダーから発せられる馬のいななき音がキリッとした馬の表情作りに役立ちます。
育成馬達の調教は、週2回の1,000m屋内坂路で行うスピード調教を着実にこなし順調に進んでいます。スピードの指示は、2月末時点で「3ハロンをハロン16秒刻みで48秒」にまでになっています。坂路馬場は平坦な馬場に比べて心肺機能に対する運動負荷が強く、心拍数による調査によればその差は3%の坂路で1~2秒とされています。つまり現時点でハロン15秒以上の負荷の調教が出来ていることになります。このスピード指示は、3月下旬にはさらに15秒にまでアップします。
1,000m屋内坂路での併走によるスピード調教。向かって右が昨年の最優秀2歳牡馬セイウンワンダーの全妹、セイウンクノイチの07(牝 父グラスワンダー)、左はランビーの07(牝 父ストラヴィンスキー)。この日(3月5日)は2本目のスピード調教の中間3ハロンを持ったまま18.1-16.4-16.5秒で上ってきました。両馬とも期待の牝馬です。
さて、今回の表題「化粧するのは自分の顔」。何のことでしょうか?
JRAは30年ほど前から海外競馬先進国に「実践研修」と称してその優れた技術やノウハウ、考え方などを学び、帰国後は自らJRAの育成牧場でその成果を実践してきました。派遣された国はアメリカ、カナダ、イギリス、アイルランド、フランス、オーストラリア、ニュージーランドの7カ国に及びます。
世界各国、いかに強い競走馬を作るかに試行錯誤をしている点では一致していますが、それぞれの国にはそれぞれ異なった気候、地勢をはじめとした違いがあります。当然、馬に携わってきた歴史や文化的な違いも存在します。そういったことを承知しつつ、まず先進国から学ぶ姿勢で、それぞれの国で行われている手法をまず試しました。これは他人(海外のホースマン)が自分の顔(環境や施設)に行っている化粧の方法(馬の管理方法)をそのまま自分の顔に用いたといえるものでした。このプロセスの中で多くの新しい技術や考え方が導入されましたが、一方で育成牧場の担当者からは、「研修生が帰ってくる度にコロコロ育成馬の管理の仕方が変る」「なぜこれまでの方法ではいけないのか」などと不評な部分があったのも事実です。しかし、こうした経緯の中から、育成業務を継続する中でそれぞれの手法の背景にある考え方が整理され、現在のJRA育成牧場の管理手法に収束してきたわけです。たとえるならば、自分の顔に自分で化粧をしてきたわけです。
小さな例を挙げれば、育成馬を引く際の道具です。アメリカではチェーンシャンク、チフニー(ハートバミ)が主として使われています。一方ヨーロッパでは棒バミ(ストレートバービット)が多用されます。その当時の日高の育成牧場では無口頭絡で引くことが主流でした。JRAでは両方を試し紆余曲折はありましたが、効果や取り扱いの特徴などを検討した結果、現在は必ず無口頭絡の上にチフニーを用いるようになりました。今では、普段から馬をしつける上ではなくてはならないものになっています。
チフニー(ハートバミ)。引き手のナスカンは、下の環に付けます。
無口の上からチフニーを装着した状態。馬はフォーントの07(牡 父:キングカメハメハ)。素直な馬ですが、そろそろ牡らしさが出てきて人に挑戦してくる場面も見られます。そういったときにしっかりと御すためにもチフニーは不可欠です。
私は、研修で滞在していたアイルランドの厩舎で、調教師に「あなたの今の調教スタイルや考え方を形作る上で、アシスタントとして働いた厩舎のどんな経験が役に立っているか」と尋ねたことがあります。彼は「極言すれば、私はアシスタントとして朝早くから夜遅くまで働いただけ。色々な経験はさせてもらったが、一番役に立っているのはその経験を元に自分が実際に調教師として試行錯誤したことであり、特に犯してしまった失敗を忘れないことだ。」と答えてくれました。まさに、他の人の化粧の仕方を学び、その上に自分のアイデアも加え、自らの顔に化粧をすることによってさらに良い方法を見出してきたのではないでしょうか。
育成牧場には多くの生産育成に携わる皆さんが見学、視察に来られます。今回の話はちょっと重くなってしまいましたが、私達の取り組んでいる管理方法の中から少しでも参考にしていただく部分があれば幸いですし、そういったアイデアに富んだ育成牧場でありたいと思っています。
馬体やボディコンディションのチェックを含めた測尺の手順を視察する獣医や育成牧場の皆さん。
雨上がりの旧競馬場スタンドを背に、育成馬たちは「虹の彼方」の大きな夢に向けてトレーニングに励んでいます。
JRAブリーズアップセールまで1か月余りとなり、毎年のことながら育成牧場は慌しくなってきました。馬たちは逞しく成長していますが、牡馬の中には噛み付いてきたり、運動中に立ち上がるなどの反抗的な態度を示す馬も出てきます。このような馬には人間が毅然とした態度で臨み、必要に応じて懲戒を与えることで、人がリーダーであることを再認識させなければなりません。
また、調教では走りたい気持ちを抑えきれないといった前向きさや、併走時の負けん気の強さが目立ってきており、騎乗者も手を焼いています。ただし、馬が走りたいと思うスピードで速く走らせるのではなく、騎乗者がスピードをコントロールして馬の力をためて、ある程度の我慢を教えつつ走らせることが重要です。これは、競馬において馬込みの中で折り合いをつけるための調教であり、オーバーワークを防ぐためでもあります。オーバーワークになると故障につながることはもちろん、かえって馬の走りたい気持ちが萎えてしまいます。
言い尽くされた言葉かもしれませんが、馬を常にフレッシュかつハッピーな状態に維持することが重要なわけですが、これは本当に難しい課題です。ちょっとした馬の変化も見逃さないように馬を毎日見続けることは、この仕事を与えられた我々の義務であり、若馬たちが競馬場にいってからの「活躍する可能性の芽」を摘むことのないよう、日々取り組んでいます。
さて今回は、最近の調教~クーリングダウンの様子を写真で紹介します。
最初に500mトラックコースでのウォーミングアップを実施します。写真は速歩中の牡馬群です。このコースではゆっくりとした速度でリラックスした調教を心がけており、3列併走の馬たちもゆったりと速度をそろえて運動できるようになりました。
続いて1,600mトラックコースに移ります。このコースでは速い速度で走行できることを覚えていて、育成馬たちの雰囲気も「競走モード」に変わります。ここでは1,000~2,000mの駈歩を実施しますが、ベースとなる内容は1ハロン21~20秒の速度で4ハロンを平均的に(4F84~80秒)走行することです。また、週1~2回実施する強め調教では1ハロンを17~16秒で3ハロン(3F51~48秒)の走行を行います。写真は前からプレゼントの07(牡・父は新種牡馬バゴ)とタヒチアンブリーズの07(牡・父:ボストンハーバー)。
体力があり、脚元の頑丈な馬は週2回の強め調教を実施しますが、無理をするべきではないと判断した馬は強度を落とす、というように個体ごとに調教量の差をつけています。幸いなことに、ここまで跛行等の運動器疾患で長期の戦線離脱を余儀なくされる馬は出ていません。
調教後のクーリングダウンでは、日替わりで様々な場所を通過して、馬の気分転換をはかっています。写真は「ミニ坂路」を1列で進んでいく育成馬群。
クーリングダウンを終え、騎乗調教から開放された馬たちは、グラスピッキングで無心に青草をほお張ります。リラックスした雰囲気でさらなる気分転換がはかられています。手前はスラムインの07(牡・父は新種牡馬ゼンノロブロイ)
最後に腕節までの深さの脚浴場を通過してクーリングダウンは終了です。四肢を冷却するための脚浴場の水には、肢の汚れを落とし清潔に保つ(皮膚炎の予防)目的で硫黄成分などが混ぜてあります。写真中央はスーパードレスの07(牝・父:キングカメハメハ)
3月15日(日)の中山競馬第7レース(3歳500万下、ダート1,200m)において、ロジロマンス号(育成馬名:ロマンスビコーの06、父:コロナドズクエスト、牡馬、粕谷昌央厩舎、馬主:久米田正明氏)が2勝目を挙げました。これで同馬は3戦2勝です。
昨年売却したJRA育成馬は、現在までに15頭が20勝(JRA所属馬のみの成績)をあげています。
3月15日(日)の中京競馬第1レース(3歳未勝利戦、ダート1,700m)において、クリノマックス号(育成馬名:アンファテュエの06、父:マヤノトップガン、牝馬、武田博厩舎、馬主:栗本博晴氏)が優勝しました。
昨年売却したJRA育成馬は、現在までに15頭が19勝(JRA所属馬のみの成績)をあげています。
3月14日(土)の中山競馬第10レース(アネモネステークス:3歳OP、芝1,600m)において、ツーデイズノーチス号(育成馬名:ユニバースの06、父:ヘクタープロテクター、牝馬、斎藤誠厩舎、馬主:諸江幸祐氏)が2勝目を挙げました。これで同馬は4戦2勝です。
昨年売却したJRA育成馬は、現在までに14頭が18勝(JRA所属馬のみの成績)をあげています。
3月11日(水)の笠松競馬第9競走(つくし賞 ダート1,400m)において、テーオーカンブリア号(育成馬名:シフォンケーキの06、父:タイキシャトル、牡馬、梅田智之厩舎、馬主:小笹公也氏)が優勝しました。
昨年売却したJRA育成馬は、現在までに14頭が17勝(JRA所属馬のみの成績)をあげています。
(写真提供:笠松競馬場)
3月8日(日)の中山競馬第4日第2レース(3歳未勝利戦 ダート1,800m)において、ロジゴールド号(育成馬名:ワールドウッドの06、父:ゴールドアリュール、牝馬、粕谷昌央厩舎、馬主:久米田正明氏)が優勝しました。
昨年売却したJRA育成馬は、現在までに13頭が16勝(中央競馬のみの成績)をあげています。