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育成馬ブログ 宮崎⑥

この2週、平昌オリンピックの話題で盛り上がっていますが、

こちら南国宮崎では、初春の風物詩となっているプロ野球各球団のキャンプが

2月1日よりスタートし、盛り上がりを見せています。

なお、読売ジャイアンツが宮崎県営球場でキャンプを開始するようになってから

今年で60年目のメモリアルイヤーとなっております。

60年間もの長期間にわたって

一つの自治体でキャンプを継続した球団は他には例がなく、

さらに今年は昨年日本一に輝いたソフトバンクホークス、

セントラル・リーグを制した広島東洋カープ、

そしてオリックス・バッファローズ、埼玉西武ライオンスの合計5球団の他、

昨シーズン2冠に輝いたセレッソ大阪を筆頭に

サッカーJ1リーグの6チームが宮崎県内でキャンプを実施しています。

 

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ジャイアンツの宮崎キャンプ60周年を記念した特別企画の記念写真館

 

例年、キャンプが始まる頃から日中は春の陽気となることが多いのですが、

今年は寒さが厳しく、例年であればほとんど凍結しないダートコースが

2月に入ってからも凍結する日が続きました。

凍結した日は無理せずに軽調教で調整せざるを得ませんが、

馬にとっては良い休息になったと考えるようにしています。

2月中旬になってようやく暖かい日が続くようになってきました。

 

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凍結したダートコースをハロー掛けした後の凍結した砂の塊

 

○育成馬の近況

 

さて、宮崎育成牧場のJRA育成馬22頭の近況をお伝えいたします。

500mトラック馬場でのウォーミングアップを終えた後は、

3月からの本格的なスピード調教に向けて

1,600m馬場での調教強度を徐々に上げています。

通常は1列縦隊で20~18秒/ハロンのペースでの

1,600mのステディキャンターを実施していますが、

週に1回は普段とは異なるパターン、つまり、2頭あるいは3頭併走で

ラスト2ハロンを15秒/ハロンのペースでの強調教を開始しています。

休養していた馬の状態も上向いてきており、

ブリーズアップセールに向けて慎重に調整を続けたいと思っております。

 

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(写真左)通常調教となる1列縦隊でのキャンター

(写真右)週1回実施している強調教時の2頭併走

 


YouTube: 【動画】17-18宮崎育成馬日誌⑥

2月中旬の1,600mダートコースでの牡の調教動画

 

○日本獣医師会獣医学術学会年次大会

 

ここからは、2月12日(月)に開催されました

「日本獣医師会獣医学術学会年次大会」についてご紹介いたします。

この学術学会では「ウマを育てる-心技体-」というテーマで

日本産業動物獣医学会および日本ウマ科学会の

合同シンポジウムが開催されました。

座長に田浦先生(山口大学)および畠添先生(鹿児島大学)を迎え、

①「馬の身体を創る(松井朗:JRA日高育成牧場)」、

②「馬を躾ける(楠瀬良氏:日本装削蹄協会)」、

③「馬を鍛える(頃末憲治:JRA宮崎育成牧場)」、

④「馬の技を磨く(宮田朋典氏:カウボーイアップランチ)」

の4名の講演が行われました。

 

これらのなかでも、ホースクリニシャンとして知られている宮田氏の講演は、

なぜ馬が注射を打たれることを嫌うのか、

さらに注射を打つ際に体を押し付けて攻撃してくるようになるのは

どうしてなのかという理由について、

馬は本能的に逃避する方法を第一に選択するが、

逃げられないと判断したときには抵抗する方法を選択するという本能について

動画を織り交ぜながら、分かりやすく説明しており、

聴講していた獣医師の方々が何度も深くうなずく姿が印象的でした。

 

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ホースクリニシャンの宮田朋典氏の講演の様子

 

また、本来野生の馬は捕食者から逃げるために、

反射的に反応できる右脳を優位に働かせていると考えられており、

特にサラブレッドはその傾向が強く、

興奮しやすいともいわれているため、新規刺激を「危険なこと」と認識して、

逃げるという行動を取るのは自然なことあるということ。

一方、「危険でないこと」と認識させるためには、

主に思考を司る左脳を優位に働かせ、

馬に考えさせることが重要とのことでした。

つまり、野生の本能である右脳の優位性を排除して、

左脳の優位性を高めることこそが馬の調教であり、

そのための法則などはなく、

唯一重要なことは馬からのサインを読み取ることであると力説させており、

育成期の調教にも応用すべきであると感じることができました。

2018 JRAブリーズアップセール関連情報(事務局)

ツアー『育成馬を知ろう会in宮崎』開催のご案内

 

JRA馬事部 生産育成対策室では、

今年で7回目となります『育成馬を知ろう会in宮崎』を、

来る4月2日(月)に開催いたします。

 

この企画は、馬主の皆様に

"セリ市場に参加して馬を選択・購買する楽しさ”

お伝えするためのものです。

 

当日は、馬の見方の解説、

ブリーズアップセール上場予定馬の紹介、

全国セリ市場の紹介のほか、

JRA調教師との交流を目的として

「馬主・調教師懇談会」を開催する予定です。

ご参加いただくには事前のご応募が必要ですが、

詳細については下記(5.お問い合わせ)までお問い合わせください。

 

また、翌4月3日(火)には

実際に宮崎育成牧場での調教をご覧いただける

育成馬展示会も開催しますので、

参加をご希望の方は

「育成馬を知ろう会in宮崎」に引き続きご参加いただけます。

本ツアーはJRA馬主の方皆様にご応募いただけますが、

平成27年以降に馬主登録された方(新規馬主の方)を優先させて頂きます。

新規馬主の方には既に本年1月中にご案内を郵送しております。

 

【開催概要】

1. 開催日時 : 平成30年4月2日(月)13時30分頃~19時30分頃

⦁ 翌日の展示会は10時頃~13時頃までを予定しています。

2. 募集人数 :最大 50名程度(事前にご応募いただいた方のみ)

⦁ ご応募多数の際には抽選で決定いたします。

⦁ 平成27年以降に馬主登録された方を優先させていただきます。

3. 場所 : JRA宮崎育成牧場(宮崎空港から車で約25分)

〒880-0036 宮崎市 花ヶ島町 大原 2347

4. 費用 : 現地までの交通費および宿泊費は自己負担となります。

5. お問い合わせ: JRA馬事部 生産育成対策室

Tel 03-5785-7540 (担当:秋山・守山)

 

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馬の見方について講義と実地で解説 <育成場展示会のご案内>

 

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ブリーズアップセール上場予定馬の紹介 

 

      

JRAブリーズアップセールに先立ち、

宮崎および日高育成牧場において、

上場予定育成馬の展示会を以下のとおり開催します。

関係者の皆様のご来場をお待ちしております。

 

★育成馬展示会(事前のお申し込みは不要です)

・宮崎育成牧場 平成30年4月3日(火)10時より開催

 電話:0985-25-3448

・日高育成牧場 平成30年4月9日(月)10時より開催

 電話:0146-28-1211

育成馬ブログ 生産編⑦

今回は、米国ケンタッキー州での

特に当歳から1歳にかけての冬期の飼養管理方法についてご紹介します。

 

●米国と日本の地理の比較

 

米国のサラブレッド生産の中心地であるケンタッキー州レキシントン地区は、

日本でいうと新潟市と同じ緯度に位置しています(図1)。

最も寒い1月で平均気温が最高5℃、

最低マイナス4℃と北海道日高地方と比べて温暖です。

 

Photo_13図1 生産の中心地レキシントンは新潟市と同じ緯度

  

●離乳後から明け1歳の管理

 

離乳後の放牧管理は、離乳前から引き続き24時間放牧が基本です(図2)。

ただし、11月に開催される当歳セリ(Keeneland November Saleなど)や

1~2月に開催される1歳セリ(Fasig-Tipton February Saleなど)に

上場される馬は昼放牧に切り替えられ、馬房内で馬服を装着し、

冬毛が伸びて見栄えが悪くならないように管理されていました。

放牧地内には

我が国では繁殖牝馬に用いられている草架(hay feeder)が置かれ、

中にはルーサン乾草が入れられていました。

JRA日高育成牧場では

危険防止および運動量の減少を防ぐため草架は使用していませんが、

米国の牧場ではこの時期の放牧地内での運動量は考えていない様子でした。

また、屋根付きの三面が壁に囲まれたシェルターのある放牧地もありました。

ケンタッキーの冬は北海道日高地方より温暖で、

気温は一時的にはマイナス10℃くらいまで下がることはありますが、

内陸に位置するため日中に気温が上昇し、

雪が降っても1週間程度で融けてなくなります。

感覚的には北海道より冬が2ヶ月短いイメージでした。

 

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図2 ケンタッキーの牧場での冬期の管理

 

●繁殖とイヤリングの草地の違い

 

細かい話ですが、同じ生産牧場でも

繁殖牝馬用の放牧地と離乳後の当歳馬や1歳馬用の放牧地に

蒔いている牧草の種類が異なっていました。

具体的には、トールフェスクという牧草を妊娠馬が食べると、

胎盤に異常(シストの形成)が起こることが報告されており、

繁殖牝馬用の放牧地には

フェスク類は蒔かないこととされていました(図3)。

一方、フェスク類は寒さに強く冬でも放牧地を緑に保てるという理由で

当歳馬や1歳馬用の放牧地には積極的に蒔かれていました。

 

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図3 繁殖の放牧地には胎盤の異常を引き起こすフェスクを蒔かない

育成馬ブログ 日高⑥

●育成馬の蹄鉄について

 

日高育成牧場では9月に騎乗馴致を実施し、

おおむね1ヵ月後には坂路調教を開始します。

その後、徐々に速度を上げていき、

12月からはハロン18秒程度の負荷をかけるトレーニングを実施しており、

2月からはさらに負荷をかけていく予定です。

 

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屋内坂路馬場での3頭併走によるスピード調教

(左)アンムートの16(父 キンシャサノキセキ)、

(中央)セイウンクノイチの16(父 キングズベスト)、

(右)ユリオプスデイジーの16(父 ケイムホーム)

 

育成馬のような若馬に対して調教強度を増していく過程で生じる問題として、

蹄の著しい摩滅や挫跖などの疾病発症が上げられます。

これらを防ぐ目的で育成馬全頭に対し12月下旬から装蹄を行っています。

そこで、今回は育成馬の「蹄鉄」に関するお話をしようと思います。

 

一言に蹄鉄といってもさまざまな種類がありますが、

乗用馬などに装着する「鉄製の調教蹄鉄」(写真1)と、

育成馬や競走馬などに装着する「アルミニウム製の兼用蹄鉄」(写真2)の

おおむね2種類に分けられます。

 

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写真1(調教蹄鉄)

 

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写真2(兼用蹄鉄)

 

一昔前までは、競走馬がレース出走時にだけ装着する

「競走ニウム(勝負鉄)」というものもありましたが、

現在では調教でもレースでも使用できる兼用蹄鉄が普及し、

レースに出走する競走馬のほぼ全頭が装着しています。

なぜ育成馬や競走馬に装着する蹄鉄は、

乗用馬のそれと種類が異なるのでしょうか。

それは馬たちの運動の違いに大きく関係しています。

乗用馬と違い、育成馬や競走馬は速いスピードで走ることを求められます。

このため、軽量の蹄鉄を装着することにより、

馬の肢や蹄にかかる負担を軽減させ、安全に走行させることができるのです。

 

また、育成馬の調教を進めていく中で蹄のトラブルは付き物です。

特に多いのは「挫跖(ざせき)」と言い、

蹄底や蹄叉などといった直接的に地面と触れる部分に

小石や不整地などで異物を踏みつけ起こる炎症です。

また、走行中に後肢の蹄が前肢の蹄底にぶつかることで起こる

「追突」を発症することも少なくありません。

このような場合、鉄板を用いた鉄橋蹄鉄(写真3)を装着することで、

踏着時の蹄の痛みを緩和します。

 

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写真3(鉄橋蹄鉄)

 

このように、

個々の馬の肢や蹄の状態に応じた蹄鉄を装着することが重要ですので、

目の前にいる馬に一番合った蹄鉄を選び、

イメージ通りに装蹄を行う柔軟な考え方と、

それに伴った技術が必要になります。

特に育成馬の場合、

騎乗馴致初期は跣蹄馬(蹄鉄を装着していない、いわゆる「はだし」の状態)

で調教を進めていきます。

また、成長期でもあり、

馬体に伴って蹄も大きく成長する重要な時期なので、

慎重かつ的確な装削蹄を行う必要があります。

 

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装蹄風景

育成馬ブログ 宮崎⑤

●育成馬検査の実施について

 

1月下旬には、強い寒気が日本付近に流れ込み、

日本海側のみならず関東も大雪による被害に見舞われました。

首都圏での大雪による交通機関の混乱の様子を見ると、

改めて自然の猛威の怖さというものを感じずにはいられませんでした。

 

九州では大雪の被害こそ少ないものの、

台風による被害には警戒が高まります。

昨年9月の台風18号では大分県を中心に被害が著しく、

土砂災害の影響で日豊本線の一部区間が不通となりました。

復旧には約3ヵ月もの期間を要し、

昨年12月18日にようやく全線開通となりました。

これに伴い、北九州から宮崎方面への特急の運転も再開され、

代替ルートを運行していた豪華観光寝台列車「ななつ星」を

毎週水曜日の調教中に再び見ることができるようになりました。

宮崎神宮駅に近づくと鳴らされる大きな警笛を耳にすると、

被災地の復興への願いが込められているように感じずにはいられません。

 

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毎週水曜日の調教中に見ることができる「ななつ星」と育成馬

 

○育成馬の近況

 

宮崎育成牧場所属のJRA育成馬の近況をお伝えいたします。

最初にウォーミングアップとして500mトラック馬場で直線をキャンター、

コーナーを速歩という調教を左右3周ずつ実施しています。

 

その後は1,600mトラック馬場に場所を変えて、

一列縦隊で1,600mのステディキャンターを実施しています。

ハロン20秒程度のイーブンペースで走行し、基礎体力を付けるとともに、

馬群の中で落ち着いて走れることを目標に調教しています。

 

12月には深管骨瘤(第3中手骨の繋靭帯付着部における炎症)に起因する

跛行馬が散見されたとお伝えしましたが、

それらの馬も徐々に調教を再開しております。

 

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1,600m馬場において一列でのキャンターを実施する2群牝馬

 


YouTube: 【動画】育成馬日誌宮崎17-18⑤

1月下旬の1,600mダートコースでの調教動画

 

 

○育成馬検査

 

1月中旬には育成馬検査が実施されました。

育成馬検査とはJRA生産育成対策室の獣医職員が

日高および宮崎育成牧場で繋養している育成馬の

市場での購買時からの馬体の成長程度

および調教進度状況などをチェックする検査のことです。

今回の検査を基にして、

4月に開催されるブリーズアップセールの上場番号が決定されます。

 

検査は2日間かけて実施され、

初日は育成馬の展示を中心に馬体の確認が行われました。

この時期にしては天候に恵まれ、

緊張感漂う中、育成馬の展示が行われました。

検査と同時に、手入れやトリミングのみならず、

展示のハンドリングを含めた「ベストターンドアウト賞」の審査も行われ、

牡牝それぞれの最優秀馬が選ばれました。

 

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育成馬検査の展示の様子

 

翌日は小雨の降る中、各馬の調教進度状況の確認が行われました。

前述したとおり順調ではない馬もおりましたが、

今後の調教に関するアドバイス等をいただき、無事に検査が終了しました。

 

今回の検査を通して、

個々の馬の発育および調教進度状況を再認識することができました。

また、4月24日(火)に開催されるブリーズアップセール

およびこれに先立つ4月初旬の育成馬展示会のためのみならず、

馬主、調教師、牧場関係者などのお客様の来場に備えて、

馬を展示し、見ていただくという姿勢を再確認する機会にもなりました。

 

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育成馬検査における「ベストターンドアウト賞」の審査で最優秀馬に選ばれた

シーアクトレスの16(写真左 牡 父:アドマイヤムーン)と

マイネカプリースの16(写真右 牝 父:クロフネ)