欧州獣医薬理毒性学会学術大会(EAVPT)の参加について
臨床医学研究室の黒田です。
7月2~6日にベルギーのブルージュで開催された第 15 回欧州獣医薬理毒性学会学術大会(EAVPT)に参加しましたので紹介します。
EAVPTは、欧州に拠点を置いていますが、獣医の薬理毒性を考える上では世界的規模の学会で、専門誌(Journal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics)を発刊しています。今回も世界中から350名あまりの獣医・研究者が参加していました。私がフランス・トゥールーズ獣医学校の薬理学研究室にて師事し、昨年来日して頂きましたPierre-Louis Toutain教授が本学会の前会長であったため、今回、教授が主催する抗菌薬の薬物動態に関するワークショップの講師依頼を受け参加しました。
写真1;Toutain教授と
本ワークショップは、ヨーロッパにおけるヒトの感染症専門組織であるEUCASTの獣医部門(VetCAST)が主催となり、臨床的ブレイクポイントを検討するための解析を学ぶ会です。臨床的ブレイクポイントとは、感染している菌が抗菌薬に対して有効か無効かを判断する基準のことであり、以下の3つの項目によって決定されます。1つはその抗菌薬に対して菌が耐性遺伝子を持つかどうか、次いで臨床的効果の有無、そして3つ目に薬物動態的な有効性(PK/PD カットオフ値の決定)です。本ワークショップでは、特に3つめのPK/PD カットオフ値の解析法を、解析ソフトを用いて習得していただきました。データは、ウマのペニシリンの薬物動態を用い、日本を含む世界各国で行われた実験データを用い、解析します。複数の国で様々な投与法で決定されたカットオフ値を、一つのモデルで解析かつ判断することは難しく、かなり専門的な内容となりました。言語の問題もあるので役目を果たせるかどうか不安はありましたが、何とかお役に立つことが出来たと思っております。
写真2;ワークショップ風景
学会では、美味しいベルギービールを交えて日本の獣医大学の先生方、私の留学先のフランスの先生方、競走馬のドーピングを専門とされている先生方とも交流が出来ました。薬物動態に関する専門学会はあまり多くないため、貴重な経験が出来たと思います。ウマの演題も多く、麻酔薬、鎮痛薬、抗菌薬など多くの発表が行われました。次回はヘルシンキ開催と聞いておりますので、興味がある獣医師もしくは分析研究者は是非参加してみてください。
写真3;学会主催のビール工場見学
写真4;ベルギービールとタルタルステーキ