2019年6月27日 (木)

国際学会への参加

微生物研究室の木下です。

 6月19日から22日まで、タイのチェンマイで行われた国際学会 (International symposium of the World Association of Veterinary Laboratory Diagnosticians) に参加してきました。

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 今回参加した学会は、獣医療における検査法に特化した学会ということで、鼻疽や腺疫といったウマの感染症に関する発表の他にもウシやブタに関する内容も多く、中にはタイということもあってゾウについての発表も行われていました。私からは近年、北海道を中心とした軽種馬の生産地で問題となることが増加しているローソニア感染症について口頭発表を行い、参加していた研究者の方と意見交換を行いました。

 このような学会への参加を通じ、海外の研究者と交流を持ちつつ情報を常にアップデートし、新たな検査法や診断法を取り入れていくことで、日本で飼育される馬を感染症から守ることがJRAの研究所に所属する我々にとって重要な業務です。

なお、畜産関係者にはお馴染みの消毒槽が会場入り口に設置されており、獣医療関係者によって「感染症を持ち込ませない、さらに自国に持って帰らせない」という学会からの強いメッセージであると感じました。

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2019年6月26日 (水)

蚊のお話

微生物研究室の越智です。

夜,蚊の飛ぶ音が悩ましい季節になってきました。

蚊は日本脳炎ウイルスやフィラリアなどの病原体を媒介することで知られていますが,

馬にも様々な病気をもたらします。

近年では,JRA美浦トレーニング・センター(トレセン)でゲタウイルス感染症が発生しました。

総研では,美浦トレセンと共同で蚊の疫学調査を行っています。

写真は,蚊の捕獲器と採れた蚊です。

これまでの調査から,

美浦トレセンではコガタアカイエカやキンイロヤブカなど,田園地帯でよく見られる種類が多いことが明らかになっています。

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2019年6月20日 (木)

新人研修が行われました

分子生物研究室の辻村です。

梅雨入りで天候が落ち着かない6月、JRAでは例年この時期に新人獣医職職員を対象とした専門研修を実施しています。獣医職職員が勤務するJRAの各事業所を訪れる本研修ですが、競走馬総合研究所でも本年6月4日から20日にかけて講義・実習が行われました。その内容は、運動生理学、臨床医学、病理学、細菌学と多岐にわたり、私が所属する分子生物研究室はウイルス学を担当しました。普段は臨床現場で奮闘している新人獣医職職員の皆さんに、ウイルス学の研修では学生時代のように座学や実験に取り組んでいただきました。馬のウイルス感染症は日常的に遭遇するものではありませんが、発生した場合には大きな被害を及ぼす可能性があります。そのような際に今回の研修が役立つことを願っています。

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2019年6月13日 (木)

「夏休み♪こども馬学講座」を開催します!

総務課の髙橋です。

昨年に引き続き、小学校高学年生向けのイベントを開催いたします!

 「夏休み♪こども馬学講座」

   詳細はこちら → http://jra.jp/news/201906/061301.html

前回が初めての開催でしたが、大変多くの方にご応募いただきました。

また参加された方からも、ありがたいことにご好評のお声をいただいております。

お子様との思い出作りにいかがでしょうか?

たくさんのご応募お待ちしております!

2019年5月28日 (火)

麦秋の季節

臨床医学研究室 高橋です。

北関東の一角を占める栃木県は、米と麦の二毛作地帯です。作られている麦は、小麦や二条大麦、六条大麦で、二条大麦はビール麦とも呼ばれビールの原料になります。競走馬総合研究所のある下野市周辺では、田植えを終わった水田の中に黄色く色づいた麦畑が広がっています。冬に植えられた麦は、春に成長して5月から6月にかけて実がなり、黄色に色づき、収穫の時を迎えます。米が秋に収穫を迎えるように、この時期は、麦が収穫されるので、麦にとっての“秋”であるため麦秋と呼ばれます。今週は、東京競馬場で安田記念が行われますが、麦秋ステークスもあります。麦秋の風景は北海道が有名ですが、北関東の風景も思い出してください。

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2019年5月21日 (火)

競走馬の生まれ月と勝ち上がり率

臨床医学研究室の三田です。

最近、息子が保育園に入園しました。

同じクラスの子供達の間でも成長に差がみられてとても興味深いですね。

スタスタ歩いている子もいれば、まだおぼつかない子もいたり。上手におしゃべりできる子もいればそうでない子もいたり。

生まれた月が違うのでこのような成長の差は当たり前だと思いますが、競走馬の世界ではこのような傾向はあるのでしょうか。

このような考察は以前からされており、本会のホームページでも紹介されています(https://umabi.jp/news/126)。

この記事では2歳の重賞成績が生まれ月とどのような関係があるのかを調査していますが、今回のブログでは勝ち上がり率との関係を調べましたのでご紹介します。

本会の競馬番組上、3歳の秋には未勝利競走が終わってしまいますので勝ち星を1つ以上あげられるかは競走馬にとってとても重要です。

JRAに登録された2016年生まれ(現3歳)限定のデータですが、生まれ月と勝ち上がり率の関係はグラフの通りでした(7月以降に産まれた馬は頭数が少ないので省略しています)。

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1~5月は概ね20%以上の勝ち上がり率があり、1月から5月にかけて少しずつ勝ち上がり率が低下していました。単年度の結果であることに加えて、他にも様々な要因があるのでこのデータだけで結論づけることは難しいですが、競走馬にも人と同じような傾向があるのかもしれません。

ちなみに、今週は日本ダービー!

過去40年の勝馬の誕生月はグラフの通りになっています。

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2019年5月 9日 (木)

バーリ大学と共同研究始めます。

運動科学研究室の大村です。

今年からイタリアのバーリ大学とより良い馬の輸送方法について共同で研究することになりました。総研での輸送に関する研究は25年前にも行われています。この25年間で研究手法もかなり向上しており、新たなアプローチで取り組んでいけるのではないかと考えています。今回、この研究打ち合せのためバーリ大学に行ってきました。

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バーリ大学はイタリア南部、地中海に突き出た位置にあります。このため、その動物病院には馬や犬、猫だけでなく、ウミガメがやってきていました。ここに持ち込まれるほとんどのウミガメは、トロール網や釣り針によって傷を負った状態でした。胃から巨大なプラスチックを摘出することもあるそうで、海洋汚染を身近に感じるとのことでした。過去4年間で、900匹以上のウミガメが入院し、92%が海に返されているそうです。お土地柄、動物診療の特色を感じることができました。

2019年4月22日 (月)

馬インフルエンザワクチンに関する国際会議

 分子生物研究室の根本です。4月4日にフランスのパリにある国際獣疫事務局(OIE)において開催されました、馬インフルエンザワクチンに関する国際会議に出席してきました。この会議は毎年2月から4月頃に開催されています。日本では馬インフルエンザが2007年に流行し、その影響で競馬開催が1週間中止となりました。以降幸いなことに日本では流行していませんが、海外では流行が続いており、本年2月には馬インフルエンザウイルスの流行によってイギリスで競馬開催が中止となったことが大きな話題となりました。

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 馬インフルエンザの最も重要な対策はワクチン接種です。しかし馬インフルエンザウイルスもヒトインフルエンザウイルス同様に変異が激しいことから、必要に応じて定期的にワクチンに含めるウイルス(ワクチン株)を変更する必要があります。この会議の目的は、世界各国における馬インフルエンザの流行状況や流行ウイルスに関する情報を持ち寄り、解析の上、推奨ワクチン株を決定することです。これまで我々は、得られた研究内容をこの会議に提供し、推奨ワクチン株の決定に貢献してきました。よりよいワクチンが提供できるように、今後も取り組んでいきたいと考えています。

2019年4月10日 (水)

花の雨、ならぬ・・・

総務課の高橋です。

関東地方に寒波が襲来していますが、栃木県にある当研究所でも、こんな不思議な光景が・・・

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ちょっとわかりにくいかもしれませんが、ほぼ満開の桜と、雪のコラボレーション。

今は雪も止んでしまったのですが、もし夜に照明が当たっていたら、それはもう綺麗なのだろうと思います。

が、これだけ気温が上がり下がりしていると、体調の維持も難しいです。

本当の春、待ち遠しいですね・・・

2019年3月26日 (火)

花粉症と抗ヒスタミン剤と馬

臨床医学研究室の黒田です。

花粉症真っ只中の季節ですが、皆さんは花粉症いかがでしょうか?

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私は発症しておりますので、マスクもしくは薬で乗り切っております。この花粉症の薬は、抗アレルギー薬の中でも、アレルギー反応の中心である物質「ヒスタミン」の体中の受容体をブロックする抗ヒスタミン薬が一般的で、私もフェキソフェナジンという物質の薬剤を飲んでいます。

この抗ヒスタミン薬の主な副作用には眠気があります。これはヒスタミンが脳内の活動にも関与していて、薬が脳内のヒスタミン受容体もブロックしてしまうために起こります。ヒトの論文では、第1世代と呼ばれる古い薬品ほど、脳内の活動を抑えてしまいますので眠気が強く、現在これらの第1世代の抗ヒスタミン薬は逆に睡眠導入薬として販売されています。第2世代の抗ヒスタミン薬は比較的眠気が出にくいのですが、眠気が出やすい人もいます。この抗ヒスタミン薬は個人差も大きくて、薬と人との相性があるようですので、色々試して自分に合った薬品を見つける必要があるそうです。

ちなみに、馬の蕁麻疹(写真)などのアレルギー疾患でもこれらは使われております。私が使っているフェキソフェナジンは馬では腸管から体の中に吸収されないので、錠剤での投与に効果がないことがわかっております。既報において効果が期待されるのはオロパタジンやセチリジンという抗ヒスタミン薬になります。

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馬がこの薬で眠気を感じるかどうかはわかっていませんが、私が行った実験で、眠気の強い第1世代の抗ヒスタミン薬を馬に投与しても、眠気は見られませんでした。実際に治療で使ってもそのような症状は見られていないので、馬の脳内にはあまりヒスタミン受容体がないのかもしれません。

もう少し花粉の季節は続きますが、頑張って乗り切りましょう。