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“離乳(子馬と母馬の別れ)”について(生産)

軽種馬生産の現場で晩夏から早秋の風物詩となっている子馬の離乳が当場でも行われました。離乳と聞くと悲しい儀式のように思われている人が多いのではないでしょうか?離乳直後の子馬が母馬を呼ぶ“いななき”を聞くと、ほとんどの人が胸を締め付けられる思いになるでしょう。実際、離乳後には明らかにストレスを受けているように見えることも少なくなく、食欲が落ち、体重が減る場合もあります。そのため、無事に離乳が行われることを願い、縁起を担いで「大安」の日を選んで行う牧場もあるようです。

一方、海外では日本ほど離乳を特別なものとは考えていないようです。広大な敷地面積を有する海外の牧場では、子馬と母馬を完全に隔離することが可能であり、24時間放牧などを実施しているため、母馬を想うストレスを最小限に止められることがその一因なのかもしれません。それ以外にも文化の違い、すなわち人に目を向けても1歳未満の乳児も母親と別々の寝室で寝ることも珍しくない海外と、5歳頃までは添い寝を続ける日本との差であるようにも思われます。

母馬と別れることは、子馬にとって非常に不安であるに違いありません。しかし、群れで行動する馬という動物の性質を考えた場合、離乳後すぐに安心して生活できる安定した群れの中で過ごせることが最も重要なポイントになると考えています。

この考え方に基づき、本年度は群れの安定化を目的として、45組の親子の放牧群から同時に全ての母馬を引き離すことはせずに、半数ずつの母馬を2度に分けて引き離す“間引き方法”を実施しました。これに併せて、安定した群れを維持するために“離乳直後から行う24時間の放牧”を試みました。その際、気温が高くアブが多い日は、子馬へのストレスが増すように感じられたので、昼間は馬房に収容することとしました。また、当場の繁殖馬房は大き目に作ってあることから、厩舎への収容時に群れから離れ1頭になるストレスを軽減する目的で、離乳後の子馬を2頭ずつ同じ馬房に収容しました。この方法が功を奏したのか、食欲が落ちることなく、体重も著しく減ることはありませんでした。今後も、どのような離乳方法がストレスを最小限に止めることができるかについて、考えていきたいと思います。

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写真①:離乳後、落ち着きがない子馬たち。

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写真②:諦めて残っている母馬の方へと向かう子馬の群れ。

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写真③:他の母馬をリーダーとして新たに安定した群れを形成しました。

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写真④:離乳後は2頭で1つの馬房をシェアすることでストレスを軽減させました。

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写真⑤:馬房収容2日後。早くもリラックスしています。