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2021年1月12日

2021年1月12日 (火)

寒天ゲル内沈降反応

分子生物研究室の太田です。

 「馬伝染性貧血」(通称:デンピン)は,古くから知られている馬属に特有のウイルス性疾病です。ワクチンも治療薬もないため,摘発された場合は家畜伝染病予防法に基づき殺処分されます。1978年に「寒天ゲル内沈降反応」という精度の高い検査法が導入され,感染馬の確実な摘発が可能となったことで,その後の摘発頭数は着実に減少しました。そして2017年,ついに国内の清浄化宣言が出されたのを受け,法律に基づく大規模な検査体制は廃止されました。

 とはいえ現在でも世界各国で発生が報告されており,再び日本国内に侵入してくる可能性はゼロではありません。そのため分子生物研究室では,毎年一定数の馬を抽出し,国内の清浄度の維持確認のための自衛検査を継続しています。今回はこの「寒天ゲル内沈降反応」についてご紹介します。

 ① まず,一晩冷蔵庫で冷やして固まったゲルにパンチで穴を開け,穴の中のゲルを吸い出します。

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 ② 上下4箇所の穴に検査する馬の血清を入れます。

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 ③ 中央の穴に抗原を,両サイドの2箇所の穴に標準陽性血清を入れ,24時間反応させます(1枚のゲルで4×9=36頭分の検査ができます)。

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 ④ ゲルに染み込んだ抗原と標準陽性血清(抗体)が反応し,標準沈降線が出現します。これと同じ線が抗原と馬の血清との間に見られた場合,その馬は陽性と判定されます。幸い今回検査した983検体は全て陰性でした。

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 極めて単純かつ古典的な検査法ですが,開発から50年以上たった今も,国際的な標準法として世界各国で広く用いられています。以前は穴の開いたゲルが国内メーカーから市販されていたのですが,清浄化に伴い検査件数が激減したことで販売中止となってしまいました。ちなみに今年の仕事始めは①の自作ゲルに穴を開ける作業でしたが,実はこの作業が最も大変で,研究室のスタッフ総出で行いました(もちろんソーシャルディスタンスを保ちつつ)。

 病気が無くなるのは嬉しいことですが,思わぬところに影響が出ています。まぁ,嬉しい悲鳴といったところですね。

倒馬用スイングドア

 臨床医学研究室の三田です。

 倒馬用スイングドアが更新されたので馬の倒馬方法について紹介します。
人の手術を行う時に患者さんが手術台に寝そべっているシーンをドラマなどで見ることがありますね。人の場合は患者さんが自ら手術台に寝そべってくれるのでよいのですが、馬の場合は自ら手術台に乗ってくれないのでとても大変です。手術台に乗せるためには、まずは安全に倒す処置が必要になります。この処置を倒馬(トウバ)といいます。倒馬には様々な方法がありますが、総研やトレーニング・センターでよく用いられる方法がスイングドアを用いるものです。
 スイングドアを用いた倒馬の手順を簡単に説明すると、まずは写真のようにスイングドアと呼ばれる可動式の扉(写真手前、銀色)と壁の間に馬に入ってもらいます。ここで、適切な鎮静や筋弛緩処置がなされた後に馬に催眠薬を投与します。催眠薬を投与されてしばらくすると馬はたっていられない状態になるためバタンとたおれてしまいます。この時に馬や人がケガをしないための仕組みがスイングドアに備わっています。スイングドアは壁の間に馬を挟んでいるため馬が横にバタンと倒れてケガをすることが防げると同時に、頭に装着した無口とロープによって頭を高い位置で固定することができるので、馬が意識を失っても頭を地面にぶつけたりすることを防止できます。

 何かと危険がつきものの大動物の手術ではいろいろなところで人馬の安全が図られていますね。

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