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2021年8月

2021年8月25日 (水)

唾液の抗体測定

分子生物研究室の坂内です。

今日は最近当研究室で取り組んでいる唾液の研究についてのお話です。

 

唾液は口の中を適度に湿らせ、清潔に保つのに役立ちます。

また、アミラーゼなどの消化酵素が含まれていて、食べ物の消化を助ける役割があります。

このように様々な役割を担う唾液ですが、実は病原体と闘う抗体も含まれています。

 

下痢などの消化管の病気を起こす病原体は口から侵入しますので、唾液中に抗体があれば感染を防ぐのに役立つと考えられています。

ですので、私たちは馬から唾液を採って、下痢や発熱を起こすウイルスに対する抗体を測定する研究に取り組んでいます。

 

馬の唾液を採るための専用の道具は無いので、人間の唾液採取用に作られたこちらの製品を使います。

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人間だとこのスポンジを1分間ほど口に入れておけば良いのですが、馬は放っておくと飲み込んだり吐き出したりしますので、写真のように口を開けさせて口の中を拭います。

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このように舌を口の外に引っ張り出すと、馬は口を閉じることが出来ません。

ただ、それでも噛もうとしてくる馬もいますので、この採材はなかなかスリリングです。

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噛まれて怪我をすることが無いよう、そして抗体が無事に検出されて、研究が実を結ぶことを願っています。

 

2021年8月23日 (月)

馬疫

分子生物研究室の太田です。

 

第24回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作「馬疫(BA-EKI)」を読んでみました。

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あらすじは『2024年、コロナ禍が収まらず2021年に続いて東京で五輪が開催されることに。山梨県小淵沢で近代五種競技の提供馬の審査会に参加していた獣医師の一ノ瀬駿美は、複数の馬にインフルエンザ様症状が出ていることに気づく。しかもインフルエンザの型は従来とは異なり、馬が暴れ狂う狂騒型。調べていくと新たなウイルスも出現し…』といった感じ。

 

実はなんと、この小説中に、競走馬総合研究所の分子生物研究室が登場します! もちろんフィクションですが、我々にとっては、随所に「あるあるネタ」が満載で、非常に楽しく読めました。

 

研究者が私利私欲にまみれて次々と犯罪に手を染める後半部分の展開は、現実にはあり得ないでしょうが、前半部分のパンデミックに関しては、いつ小説の世界が現実になってもおかしくないでしょう。いかなる状況にでも対応できる検査体制を常に整備しておくことが我々の使命だと改めて感じた次第です。

 

作者の茜灯里(あかねあかり)さんは、獣医師でもあり、エンデュランス馬術競技の選手でもあるそうで、専門的な内容も非常にわかりやすく書かれています。皆さんもステイホーム期間中に、ぜひご一読ください。

2021年8月21日 (土)

競走馬の熱中症予防

運動科学研究室の胡田です。
お盆が過ぎ、暑さのピークは過ぎたかと思いますが、まだまだ暑い日が続いております。
夏に注意しなければならないことといえば熱中症ですね。
さて、この熱中症ですが、人だけでなく、馬ももちろんかかります。
近年、35℃以上の猛暑日といわれる日数は年々増加傾向にあり、夏季に屋外で行われるスポーツでは、この熱中症への対策は不可欠となっています。もちろん、競馬も例外ではありません。
熱中症の予防には、上昇した体温を速やかに下げることが重要です。そのため、競走馬ではレース後にシャワーによる水冷を行うことを推奨しています。

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これは、暑い環境で運動を行った直後からの体温の変化のグラフです。
運動が終わった直後は41℃を超えていた馬でも、冷たいシャワーをかけ続けることで10分後には38℃(馬の平熱)まで低下していることが分かります。
一方、冷却を行わなかった馬では、30分後も依然として体温が40℃近いままであることから、シャワーによる水冷がいかに効果的であるかが分かるかと思います。
現在では、競馬場の様々な場所にシャワーが設置されており、競走後に速やかな水冷を行えるようにすることで、熱中症対策を行っています。
この後も厳しい残暑が続くことが予想されますが、皆様も体調には十分お気をつけてお過ごしください。