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2022年7月

2022年7月22日 (金)

競走馬の角膜炎発症リスクを解析中

臨床医学研究室の黒田です。

本日は競走馬にみられる出走後の角膜炎を紹介します。
角膜炎は砂や土などの異物が目に入り、角膜に傷ができることで発症する疾患です。
JRAでは発症予防のため出走後に全てのウマに対し目洗いと抗菌薬眼軟膏の塗布を行っていますが、出走馬の約0.3%が発症する疾患です。

我々は過去5年間にJRAのレースに出走した23万頭のデータを解析し、その発症メカニズムを探っています。
レース中のポジションと発症の関係を調査すると、逃げ馬ではほとんど発症はなく、先行馬は差し追い込み馬よりも発症は少なかったことから
前にいる馬の蹴り上げた砂や土が後方のウマの目に入ることが、原因となっていることが推測されました。
また、馬場状態に関しても悪化すると発症率は増加しており、馬場が悪化により蹴り上げる土や砂が増加していることが考えられます。
これらの結果は、ある程度予想していた結果でしたが、以下の競馬場別の結果は予想外の結果となりました。
以下の図が競馬場別の発症率で、芝レースは緑バー、ダートレースはオレンジバーです。

0606

オレンジのダートレースでは全国で発症率の差があまりありません。
一方、緑の芝レースでは北海道でほとんど発症がないですが、西日本に行くほど発症率が高くなっています。
ここに、角膜炎の発症メカニズムが隠されていると推測し、現在、気候や土壌の違いなど様々な検討を行っているところです。

こちらは、今月初めに出張しました過去5年間発症が無い函館競馬場の芝コースです。

Img_2150

この芝コースにどのような違いがあるのか解明していきたいです。

2022年7月 1日 (金)

サーベイランス器材の発送

分子生物研究室の坂内です。
6月に入り、梅雨どころか真夏に近い気温が続く栃木県ですが、
この時期に当研究室で行われる行事の一つが、伝貧サーベイランスの器材発送です。

このサーベイランスは、以前にもブログ記事(2021年1月)でご紹介したことがありますが、
馬伝染性貧血ウイルスが国内に無いことを確認するために毎年行っているものです。
これから秋にかけ地方競馬場やJRA内部の施設でランダムに血清を採取してもらい、
年末に約1000検体を試験することになります。

今回総研から各施設へ送る器材のセットは、
血清用クライオチューブ、検体番号ラベル、二次容器の耐圧パウチ袋、吸収剤、衝撃緩衝材、
検体送付マニュアル、依頼文書で、これらを三次容器の段ボール箱に入れます(写真1)。

1(写真1)送付する器材一式


臨床検体は健康な動物の物であっても適切に梱包して輸送する必要がありますが、
現在では写真のような検体輸送専用の梱包キットが市販されており、重宝しています(写真2)。

2(写真2)輸送専用の梱包キット


検査の手技やデータが大事なのはもちろんですが、
その前段階の検体のやり取りから適切な方法を採ることで、信頼性のある報告ができることになります。
猛暑の中、検査を行う遠い冬に想いを馳せ、無事に検体が集まることを願っています。