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2024年1月12日 (金)

幹細胞を凝集体にすると浅屈腱炎への治療効果が向上する

臨床医学研究室の田村です。

陸上選手やスポーツ選手は、日々のトレーニングや競技によって、アキレス腱や膝・肘の靭帯を痛めてしまうことがあります。 競走馬も馬場を速い速度で走り抜けるため、腱炎や靱帯炎を発症してしまうことがあります。競走馬総合研究所では、そうしたケガの治療方法についても研究を進めています。中でも間葉系幹細胞を利用した再生医療には20年近く取り組んでおり、数多くの競走馬に適用してきました(写真1)。

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写真1. 浅屈腱炎を発症した競走馬の病変部に間葉系幹細胞を投与しているところ。

 その幹細胞治療も進化しています。従来は幹細胞を培養したら、そのままの状態で投与していました(写真2)。ですが、最近では、さらに治療効果を向上させるため、もうひと手間かけています。その工夫とは、培養したのち数百個の幹細胞をおにぎりのように凝集体(写真3)にして投与するものです。

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写真2(左図)従来の培養された間葉系幹細胞; 紡錘形から星形の単細胞が増殖しているところ

写真3(右図)新しい手法で培養された凝集体型の幹細胞;増殖した幹細胞が球状に凝集している



 JRA総研では、従来の幹細胞と、凝集体にした幹細胞の治療効果を比較する研究を実施しました。その結果、凝集体にした幹細胞のほうが、腱炎の損傷部を早く治すことがわかりました。すなわち、凝集体にすることによって、一つ一つの幹細胞が本来持っている能力をさらに引き出せると考えられました。

 既に、浅屈腱炎や繋靱帯などを発症してしまった競走馬に対して、この新しい治療法を利用しています。今後も、より良い治療法を開発することを目標として、研究を積み重ねていきたいと思います。また、こうした治療技術が人間のスポーツ選手にも応用できるようになれば、ウマとヒトの関係性を深める素晴らしい機会になると考えています。

これからも応援を頂けますよう、どうぞよろしくお願いします。