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2024年11月15日 (金)

全国牛削蹄競技大会が開催!

企画の桑野です。

 先月のブログで、馬の靴屋さん;装蹄師(そうていし)がその技量を競う全国装蹄競技大会について紹介しましたhttps://blog.jra.jp/kenkyudayori/2024/10/post-112d.html。今回は、牛の爪切り屋さん;牛削蹄師(うしさくていし)がその技量を競う全国牛削蹄競技大会(図1)が開催されたのでご紹介します。

Photo図1.大会は日本装削蹄協会(公社)(中央は同協会の井上会長)が主催し、農林水産祭の一つとして開催されます。優勝者には農林水産大臣賞が贈られる名誉ある大会です。

 「JRA総研のブログで牛?」と訝られる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本の牛削蹄の技術は、馬の装蹄技術を流用しており、JRAとも繋がりが深い日本装削蹄協会(公益社団法人)がその認定資格を授与しています。

 馬は蹄が一つ、牛や羊は二つですhttps://blog.jra.jp/kenkyudayori/2024/05/post-fd0f.html。この一つか二つかの違いは、蹄の切り方に大きな影響を与えます。馬も牛も一般的には鎌形蹄刀(かまがたていとう、図2)と呼ばれる刃が一面の削蹄道具を使って硬い角質を切るのですが、その操作の仕方が1つ蹄か2つ蹄かで変わってきます。

Photo_2図2.牛削蹄で用いられる鎌型蹄刀

 例えば、蹄を切ろうとする時、蹄を削るための道具(削蹄道具)を持っている手とは反対の手で蹄を保定しないといけません。一つしか蹄がない馬より二つある牛の方が、片手での保定操作が難しいです(図3)。内外2つの蹄は別々に可動性があるので、例えば内蹄だけ押さえていたのではもう片方の外蹄を保定できず、それぞれの下面が互い違いにズレることでしょう。そうなると、削る道具が削っていない方の蹄に当たってしまって動作を完成させられないのです。

3図3.左後の蹄を削蹄しています。わかりにくいのですが、削蹄師は左手の親指と人差し指で内蹄を挟み、中指、薬指、小指の3指で外蹄がずれないように下支えしています。やってみると分かるのですが、これが結構難しい技です。

 また、牛蹄の角質の方が馬のそれよりも硬いです。保定と削る動作には、技術と握力が必要です。ただし、馬と違って牛では蹄鉄をつけることがありません。牛削蹄師には造鉄技術は求められておらず、装蹄師のように冶金の知識と技術を使わずに仕事が可能です。

 実は、牛削蹄の歴史はまだ100年ほどしかないため、「どうしたら、より牛に快適な削蹄になるのか」の問いに完全な答えが出ていません。その意味で、発展途上にある牛削蹄技術には、創意工夫で改良と発展の余地があり、面白い仕事とも言えるでしょう。