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2025年2月 3日 (月)

ウマコロナウイルスとは?

こんにちは、分子生物研究室の根本です。

先日ばんえい帯広競馬場でウマコロナウイルスの流行がありました。そこで今回はウマコロナウイルスについて、一般的な解説をしたいと思います。

ウマコロナウイルスはウマに感染し、主に消化器症状を引き起こす病原体で、ヒトには感染しません。人間の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とは異なる種になります。

ウマコロナウイルスに感染した馬は、主に発熱、食欲不振、元気消失といった症状を示します。流行時は特に、「食欲不振」を示す馬が非常に多くなります。そして発症から数日後に、一部の馬で下痢または軟便(写真)、腹痛(疝痛)といった消化器症状を示すことがあります。ヒトの新型コロナウイルスとは異なり、呼吸器には感染しないことから呼吸器症状は示しません。

一般的に症状は軽度で、数日で快復する馬がほとんどです。症状を示している馬では、白血球数の減少や炎症マーカーである血清アミロイドAの上昇が観察されることがあります。

感染馬は症状に関係なく糞便中に大量のウイルスを排出することから、知らぬ間に感染が広がり、馬群のほとんどの馬が感染してしまいます。主に糞口感染で感染が広がります。厩舎内での集団感染が起こりやすく、冬季に流行することが多いとされています。

ウマコロナウイルス感染症を疑った場合は、正常に見える場合でも糞便を用いて診断することが重要です。RT-PCR法などの遺伝子検査で診断します。

ウマコロナウイルスに対する特異的な治療薬やワクチンはありませんが、脱水を防ぐ輸液や、高熱が続く場合は解熱剤の投与などの対症療法によってほとんどの馬が快復します。

ウマコロナウイルスはエンベロープを有することから、消毒薬に対して感受性が高く、逆性石鹸やアルコール等、多くの消毒剤が有効です。

Fig1

写真. ウマコロナウイルス流行時に観察された消化器症状【出典:馬の感染症(第5版 増補版)、中央畜産会】