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2026年9月

2026年9月24日 (木)

BEVA Congress(英国馬獣医学会)に参加してきました

臨床医学研究室の野村です。

 2026年9月9日から12日にかけて、英国バーミンガムで開催された「BEVA Congress 2026(英国馬獣医学会)」に参加し、研究成果を発表してきました。

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バーミンガムニューストリート駅にそびえる“OZZY THE BULL”

 この学会は毎年1回開催され、馬医療に関連する幅広い教育講演や演題発表が行われています。英国をはじめ周辺国から馬の獣医師が一堂に会し、夜にはカジュアルからフォーマルまで多様なパーティも企画され、さながら“同窓会”のような雰囲気も印象的でした。また、獣医学生や診療経験の浅い獣医師向けに、模型を用いた実践的な教育セッションも用意されていました。

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学会会場内に用意されたフォトスポット

 こういった場に参加して実感するのは、馬の診療が盛んな欧米においては、大学卒業後の獣医師に学習の機会を提供する卒後教育プログラムが体系的に整備されている点です。

 英国であればRCVS(Royal College of Veterinary Surgeons;英国王立獣医外科学会)やBEVA、米国であればAAEP(American Association of Equine Practitioners;全米馬臨床獣医師会)といった団体が中心となり、大学を卒業して獣医資格を得てから実務スキルの習得へシームレスに移行できるようサポートしています。さらに、専門医の取得へ進むためのキャリア形成の機会も提供しています。 このように、若手獣医師を育てる標準化プログラムと、生涯学び続けられる専門的キャリアパスが融合することで、馬医療全体の質向上と獣医師のモチベーション維持が両立していると言えます。

 一方米国では、競馬開催に携わる「規制(主催者)獣医師(Regulatory Vet)」向けの卒後教育セミナーも存在します。規制(主催者)獣医師とは、競馬の安全かつ公正な開催に向け、馬の事故防止や薬物規制に関するルール作り、競馬開催当日の競馬場での運営業務などを担っています。世界的に競馬開催に携わる者は獣医師全体のひと握りになりますが、特に州ごとに異なる主催者が競馬運営を行っているような米国では、知識や基準を共有し、意見を交換する非常に有用な機会となっているように感じました。かく言う私も、日本で競馬主催者獣医師として働く身として今年2月にこれに参加し、大いに刺激を受けた次第です。

 日本においても、各地で馬獣医師向け講習会が実施されているほか、日本ウマ科学会(下記参考)主催の学術集会も年1回行われています。こうした機会を通じて、競馬や馬術に携わる獣医師に継続的な学びの機会を提供することは、新たに馬の獣医師を目指そうとする学生にキャリアパスを示す観点からも重要と考えています。微力ながら、研究所で働く一研究者として私も後進の育成に貢献したいと思います。

<外部リンク>ウマ科学会 https://jses.jp/

2026年9月11日 (金)

ビクトリア大学での研究留学

 こんにちは、運動科学研究室の胡田です。

 

 現在、私はオーストラリア・メルボルンにあるビクトリア大学へ1年間の研究留学に来ています。

 総研運動科学研究室では、長年にわたり競走馬のトレーニングに関する研究に取り組んでいます。安全かつ効率的なトレーニング方法を模索していくためには、最新の知見をアップデートしていくことが大切ですが、サラブレッド競走馬を対象としたトレーニング研究を行っている機関は世界的にあまり多くなく、得られる情報には限りがあります。

 一方で、ヒトを対象としたトレーニング研究は世界中で活発に行われており、運動生理学やトレーニング適応に関する新たな知見が次々と報告されています。 

 ヒトとウマでは動物種の違いはあるものの、トレーニングによる適応メカニズムには多くの共通点があることから、ヒトで得られた知見は競走馬のトレーニングにも十分応用可能だと考えられます。そのため、私たちの研究でもヒトの最新の研究成果を参考にすることは珍しくありません。

 こうした背景から、今回私はヒトのトレーニング研究、特に骨格筋の適応メカニズムに関する研究で世界的に高い評価を受けているビクトリア大学のInstitute for Health & Sportにおいて、1年間の研究留学を行うことになりました。

 留学期間中は、最先端の研究手法や考え方を学び、それらを今後の競走馬研究に還元できるよう努めたいと考えています。

Uniビクトリア大学の外観

 ちなみに、メルボルンといえば世界有数のカフェ文化で知られています。現在は冬ということもあり、街を歩くとホットコーヒーを片手に行き交う人々をあちこちで目にします。メルボルンには数多くの個人経営のカフェがあり、その数は約2万店舗とも言われています。犬も歩けば棒に当たる、メルボルンを歩けばカフェに当たる。それくらいカフェが多く、日本でのコンビニエンスストアなみに身近な存在であることを実感します。私もオーストラリアに倣い、コーヒーを片手にカフェインの力を借りながら研究業務に励み、この留学を実りあるものにしたいと思います。

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2026年9月 3日 (木)

インフルエンザ研究者交流の会シンポジウムで発表しました

分子生物研究室の川西です。

 先日、私の博士課程時代を過ごした東京大学農学部で「第39回インフルエンザ研究者交流の会」が開催されました。これに参加し、研究発表を行いましたのでちょっと紹介します。

 本シンポジウムは、人および動物のインフルエンザ研究者が集い、疫学調査、基礎・臨床研究、そして行政上の課題について発表や情報交換を行う歴史ある会です。インフルエンザの制圧に貢献することを目的に1986年から続いており、基礎研究者だけでなく、臨床現場の先生方も多数参加されています。

1                               発表する筆者

 私の発表では、近年、哺乳類への感染が新たな脅威として注目されている「高病原性鳥インフルエンザ」をテーマに取り上げました。2020年以降、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)が陸棲・海棲の哺乳動物に感染した事例が確認されています。中でも2024年の北米にて、乳牛から人へ伝搬した事例は、公衆衛生上大きな問題となりました。

 馬産業においても、このH5N1ウイルスの馬への感染リスクが懸念されていますが、今のところ自然感染例は非常に限られており、馬への感染リスクは明らかにされていません。私は、国内の馬400頭を対象にH5N1ウイルスの抗体保有状況のスクリーニング検査を行い、その結果、全頭が陰性であったことを発表しました。 現在の日本では、H5N1ウイルスの馬への波及リスクは低いと言えます。ですが、哺乳動物への感染拡大を受け、今後も馬において継続的なサーベイランスが重要になります。

 なお、今回の発表に関連する研究内容が、この度学術論文として正式に公開されました(下記URL)。

<外部リンク>https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42648659/




 また、本シンポジウムでは、同じく分子生物研究室に所属する根本主任研究役による馬インフルエンザに関する特別講演も行われました。国内の馬インフルエンザの歴史・発生事例、馬での採材方法や診断法、ワクチン株選定のプロセスなど、専門外の先生方にも大変分かりやすい内容でした。特別講演は、インフルエンザウイルス以外にも、トゴトウイルスやオズウイルスなどダニ媒介性の人獣共通感染症に関する最新のトピックス、今年海外のクルーズ船での集団感染がニュースとなったハンタウイルスなど興味深い内容が多く、勉強になりました。

2            特別講演を行った根本主任研究役

 本シンポジウムに参加して、インフルエンザ研究の第一線で活躍される専門家の先生方とディスカッションすることができ、大変実りある場となりました。会場には鳥や人のインフルエンザ研究者が多くいらっしゃいましたが、日本でも数少ない「馬のウイルス研究者」として、自分の役割を再確認できたように感じます。大切な馬たちを感染症から守るため、これからも日々の研究を頑張っていきたいと思います。