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分子生物研究室の川西です。
先日、私の博士課程時代を過ごした東京大学農学部で「第39回インフルエンザ研究者交流の会」が開催されました。これに参加し、研究発表を行いましたのでちょっと紹介します。
本シンポジウムは、人および動物のインフルエンザ研究者が集い、疫学調査、基礎・臨床研究、そして行政上の課題について発表や情報交換を行う歴史ある会です。インフルエンザの制圧に貢献することを目的に1986年から続いており、基礎研究者だけでなく、臨床現場の先生方も多数参加されています。
発表する筆者
私の発表では、近年、哺乳類への感染が新たな脅威として注目されている「高病原性鳥インフルエンザ」をテーマに取り上げました。2020年以降、高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1)が陸棲・海棲の哺乳動物に感染した事例が確認されています。中でも2024年の北米にて、乳牛から人へ伝搬した事例は、公衆衛生上大きな問題となりました。
馬産業においても、このH5N1ウイルスの馬への感染リスクが懸念されていますが、今のところ自然感染例は非常に限られており、馬への感染リスクは明らかにされていません。私は、国内の馬400頭を対象にH5N1ウイルスの抗体保有状況のスクリーニング検査を行い、その結果、全頭が陰性であったことを発表しました。 現在の日本では、H5N1ウイルスの馬への波及リスクは低いと言えます。ですが、哺乳動物への感染拡大を受け、今後も馬において継続的なサーベイランスが重要になります。
なお、今回の発表に関連する研究内容が、この度学術論文として正式に公開されました(下記URL)。
<外部リンク>https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42648659/
また、本シンポジウムでは、同じく分子生物研究室に所属する根本主任研究役による馬インフルエンザに関する特別講演も行われました。国内の馬インフルエンザの歴史・発生事例、馬での採材方法や診断法、ワクチン株選定のプロセスなど、専門外の先生方にも大変分かりやすい内容でした。特別講演は、インフルエンザウイルス以外にも、トゴトウイルスやオズウイルスなどダニ媒介性の人獣共通感染症に関する最新のトピックス、今年海外のクルーズ船での集団感染がニュースとなったハンタウイルスなど興味深い内容が多く、勉強になりました。
特別講演を行った根本主任研究役
本シンポジウムに参加して、インフルエンザ研究の第一線で活躍される専門家の先生方とディスカッションすることができ、大変実りある場となりました。会場には鳥や人のインフルエンザ研究者が多くいらっしゃいましたが、日本でも数少ない「馬のウイルス研究者」として、自分の役割を再確認できたように感じます。大切な馬たちを感染症から守るため、これからも日々の研究を頑張っていきたいと思います。