育成馬ブログ 日高①

○  育成馬の入厩とサマーセール(日高)

8月中旬を過ぎた北海道では空模様や鳴いている虫の音色などが少しずつ変化し、夏の終わりを感じさせられます。秋の気配が漂い始めたら長い冬はもう目の前、そんな日高育成牧場から育成馬の近況を報告します。

 

売却馬の活躍

本年売却したJRA育成馬達は6月からはじまったメイクデビューに続々と出走しています。8月20日現在、日高で育成した育成馬は4頭が5勝をあげています(宮崎は2頭が2勝)。この中にはオープン競走で勝利した馬やメイクデビュー競走で勝ち上がった馬、ブリーズアップセール時点で調教進度が遅れていた馬などが含まれています。関係者の皆様のご努力に感謝するとともに、今後のさらなる活躍に期待しています。

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写真1.クローバー賞(2歳オープン、芝1500m)に優勝した

トーセンラーク号(菅原泰夫厩舎、牝、父:アルデバランⅡ)

 

育成馬の近況

日高育成牧場 育成厩舎には7月にJRAホームブレッド7頭と市場購買馬8頭(セレクトセール:1頭、セレクションセール:7頭)の合計15頭が入厩しました。入厩日の昼放牧では初めて出会った仲間とお互いのことを探り合いながら疾走していた若駒たち。夜間放牧(夕方15時に放牧して朝8時に収牧)を開始して1カ月が経った現在は、3~5頭のグループそれぞれにボスが君臨して落ち着いて青草を頬張っています。

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写真2.放牧地で青草を頬張る牡馬たち。                                     

左からサイキョウロマン13(父:クロフネ)、アドバンスクラーレ13(父:アドマイヤムーン)、バクシンスクリーン13(父:ヨハネスブルグ)、ドリームニキハート13(父:ケイムホーム)。この群れのボスは圧倒的なしつこさを見せたサイキョウロマン13です。

 

夜間放牧と併行して行うのが引き馬や手入れなどを行う「初期馴致」です。初期馴致は本格的な騎乗馴致がはじまる9月までにヒトと馬との良好な関係を構築するために実施します。以前は多くの時間を要した初期馴致ですが、近年は市場購買馬の多くが“コンサイナー”などの手によりきちんとしつけられているため、初期馴致の所要時間は年々短くなっています。10年前には入厩直後の馬をシャワーで全身洗浄するなんて考えられませんでしたが、最近では当たり前のようにできる馬が殆どです。日本の育成技術は年々確実に進歩しています。

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写真3.入厩翌日に全身をシャワーで洗われる牝馬たち。以前ならば想像もできないような光景です。

 

サマーセールと事前準備

8月25日から28日の4日間、国内最大の馬市場「2014サマーセール」が開催されます。現在、JRAでは育成馬を購入するための事前準備を行っているところです。 事前準備の内容はというと、セリ当日の下見時間だけではすべての馬を見終われないため、上場馬を預託しているコンサイナーの方々にお願いして事前に実馬検査をさせてもらうというものです。検査日程の大半が雨となった今年の検査ですが、日程調整が可能であった50以上のコンサイナーの皆様にご協力いただき、700頭超の検査を行うことができました。ご協力いただきましたコンサイナーの皆様、本当にありがとうございました。

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写真4.サマーセールに先立ち実施した事前検査。経験豊富な獣医・装蹄職員が購買候補馬の選定を行いました。

 

以上が日高育成牧場の近況です。9月に入るとサマーセールで購買した馬たちも揃い、本格的な騎乗馴致が開始されます。次回の同ブログではサマーセール購買馬の様子やブレーキングについてご報告したいと思います。

 

育成馬ブログ 日高

 

○  本年度最初の育成馬が入厩しました(日高)

去る7月23日、当ブログ(宮崎)で紹介したセレクトセール購買馬 アドバンスクラーレ13(牡、父:アドマイヤムーン、購買価格:1,620万円)が日高育成牧場に入厩しました。馬体重測定や特徴照合、アナボリックステロイド(AS)検査用の採血などを行ってから放牧地に出すと、新しい放牧パートナーであるバクシンスクリーン13(牡、父:ヨハネスブルグ、JRAホームブレッド)とともに元気いっぱい駆け回り、青草を頬張っていました。騎乗馴致がはじまる9月まで、夜間放牧を行いながら管理していきます。

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写真.広い放牧地を全力で疾走するアドバンスクラーレ13とバクシンスクリーン13

 

育成馬ブログ 生産編①続編

タテガミのトリミング

 

トリミングとは、自然の状態に伸びている馬の毛を抜いたり、カットしたりすることによって、身だしなみを整えることです。

 

セリや展示会などにおいては、きれいにトリミングされた馬は、見る人にスマートな印象をあたえます。

 

ポイントとなる部位は、タテガミ、耳毛、距毛(球節の後部の毛)および尾です。

 

特にタテガミは、競走馬の資質を見定めるうえで極めて重要な「首付き」(馬体に対する首の付き方)や「トップライン」(横から見たときの、うなじから背腰までの線)の印象に大きな影響を与えます。

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タテガミは「首付き」や「トップライン」の印象に大きな影響を与えます。

 

タテガミのトリミングの重要ポイントは

 

・長い毛を抜いて、適切な長さにそろえる

・ハサミでは切らない

・右側に寝かせる

・ブライダルパース(頭絡の通り道)をつくる

 

毛を抜くときには、最初にクシを通して、長い毛をつかみ、根元から抜きます。

ハサミで切りそろえると、不自然な状態に見えるので、推奨できません。

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長い毛をつかみ、根元から抜きます

 

タテガミのトリミング 
                     

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トリミング前(左)とトリミング後(右)

 

通常、馬体検査を実施する際には、最初に左側から観察して、馬体全体の印象を把握します。その際、前述した「首付き」や「トップライン」は重要な判断材料になるため、タテガミは、かならず右側に寝かせます。

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最初に左側から観察することにより、馬体全体の印象を把握する。

このため、かならずタテガミは右側に寝かせる。

 

タテガミが左側に寝る癖がついている場合、事前に三つ編みをすることで、右側に寝る癖をつけます。

1週間程編んでおくと、3~4日は癖をつけることができますので、セリや展示会前に逆算して実施すると良いでしょう。

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右側にタテガミを寝せるための三つ編み

最初にタテガミを水で濡らし、後方をヘアピンで留めると編みやすくなります。

 

最後に「ブライダルパース」とよばれる、頭絡の項革(うなじがわ)が通る部分を切りましょう。これにより、うなじ周囲のタテガミの手入れが容易になるとともに、頭部がスッキリ見えるようになります。

ハサミを前から入れて、前後の長さ5cm程度まで切ります。前髪が多い場合には、やや前から切り始めるとよいでしょう。

 

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ブライダルパース

頭絡の項革(うなじがわ)が通る部分を切ることにより、頭部がスッキリ見える

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ハサミを前から入れて5cm程度切ります。前髪が多い場合、やや前までカット。

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

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活躍馬情報(事務局)

先週日曜日の福島2R(2歳未勝利)において、JRA育成馬エリーティアラ号が優勝しました。同馬は日高育成牧場で育成され、2014年JRAブリーズアップセールで取引されました。 

今後のますますの活躍を期待しております。

 

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7月13日 2回福島競馬4日目 第2R 2歳未勝利 芝 1,200m 

エリーティアラ号(ペイルローズの12) めす

【 厩舎:武市 康男 厩舎(美浦) 父:ケイムホーム サマーセール購買 】

育成馬ブログ 生産編①

騎乗馴致をする人に馬をあずける前の心がけ

 

いよいよ1歳セリのシーズンが始まり、生産牧場やコンサイナーのみなさまはセリ馴致に忙しい時期、試行錯誤を繰り返しながら、子馬を育てている方も多いのではないでしょうか。

 

JRA日高育成牧場でも、個性的な性格をもつ若馬たちの育成に関する悩みはつきませんが、彼ら、彼女らを育てるうえで理想としているのは、「精神的、肉体的に健康な馬」です。

 

「精神的、肉体的に健康な馬」であれば、

人の指示に従うことができるため、

騎乗馴致や騎乗調教を円滑に実施することができ、

また、不必要な怪我や事故を可能な限り少なくすることができます。

 

さらに、多くの馬が自身の能力を100%発揮できずにいるなかで、

レース中もしくは調教中に人の指示に従うことができれば、

自身のパフォーマンスを発揮しやすいのではないかと考えています。

 

では、具体的にどのような方法を用いて育成していけばよいのでしょうか?

特に精神面について、そのヒントとなる興味深い記述を紹介します。

 

今から2300年以上前に、古代ギリシャの哲学者クセノフォンが書いた馬術書からの引用で、「騎乗馴致をする人に馬をあずける前のこころがけ」について触れています。

 

馬が人に対して穏やかで、人に慣れていて、人を好きになるように育てること

 

十分な飼料と水を与えて、虐待せずに手をかけてあげること

 

馬が好む場所を撫でてあげて、痛いところがあったなら、手当てをしてあげること

 

馬を群集に連れていき、様々な環境や雑音に慣れさせること

 

群集や雑音などを怖がるようであれば、人が落ち着かせてあげて、それらが怖くないことを教えること

 

 

この言葉は、古代ギリシャの騎馬隊に使用する馬の騎乗馴致に関するものですが、極めてシンプルで、現在の競走馬の育成にも通じる基本理念だと思います。

このように、2300年の長きにわたって風雪に耐えてきた言葉は、若馬を育てる際の1つの指針になるのではないでしょうか。

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バスツアー始まりました!

 

JRA日高育成牧場では、今月から、一般のお客様を対象とした場内の見学バスツアーが始まりました。

今年生まれた可愛い子馬たちをお見せするコーナーや、体験乗馬やポニーショーなどの特別企画もご用意しています。

皆様のご来場を心からお待ちしております。

(時期によって企画が異なりますので詳細は上記HPでご確認ください)

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                     子馬とのふれあいコーナー

 

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育成馬ブログ 生産編⑪

講習会「セリ上場に向けた飼養管理と手入れ」

 

5月30日に開催された平取地区講習会において、「セリ上場に向けた飼養管理と手入れ」と題して、講義およびトリミング実習を行いました。

 

繁殖シーズンの午前の開催にもかかわらず、平取地区のみならず、三石、静内や新冠などの他地区から参加された方もいらっしゃいました。

 

前半の講義では、生後から「精神的、肉体的に健康な馬」に育てることが、セリのみならず競走期においても重要であるとの考えを中心に、騎乗馴致前に必要なこととして、「生後からの引き馬」「駐立」「馬房での張り馬」「肢上げ」および「体力養成」の5つの項目について、具体的な方法を紹介しました。

 

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後半の実習では、1歳馬3頭を使用してトリミングの実習を行いました。

ここでは、トリミングをする際の保定方法や、タテガミの整え方、耳毛の切り方などの方法を解説しながら、講師と参加者が一緒になって実技を行いました。

多くの参加者が積極的にトリミングをして、具体的な方法についての質問をしたり、実施風景のビデオや写真撮影をしたりするなど、中身の濃い実習になったのではないかと思います。

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育成馬ブログ 生産編⑩

出産直後の引き馬

 

以前のブログでも触れたとおりhttps://blog.jra.jp/ikusei/2014/03/2-7408.html、出産直後から開始される子馬の取扱い、とくに引き馬は、人馬の信頼関係を構築し、人がリーダーとなるための躾の第一歩といえます。

 

今回のブログでは、実際の子馬の引き方を動画でご紹介します。

 

【出産直後の子馬の引き方】

出産翌日から、1名が母馬を引きながら、子馬の頸に手をかけます。そして、補助者が子馬の臀部を持ち上げるようにして前進させます。

 

特に出産翌日は、馬によっては肢が弱々しく、歩かせることが困難な場合もあるため、補助者は子馬の腰を持ち上げるようにして、サポートします。

 

 

子馬の引き方①「出産翌日」 
YouTube: 子馬の引き方①「出産翌日」

 

【出産数日後】

子馬が徐々に歩けるようになっても、前進しない場合には補助者が後方からプレッシャーを与えます。

 

子馬の引き方②「出産から数日後」 
YouTube: 子馬の引き方②「出産から数日後」

 

【出産1週間後】

その後、子馬がある程度歩けるようになったら、補助者は子馬には触れず、立ち止まった時のサポートに徹します。

 

子馬の引き方③「出産1週間後」 
YouTube: 子馬の引き方③「出産1週間後」

 

 

【出産2週間後】

2週齢を目安に、徐々に1人で親子の引き馬を行うようにします。

子馬が人の指示に従って、自分のバランスで歩けるようになったら、プレッシャーをオフにしましょう!

 

子馬の引き方④「出産2週間後」 
YouTube: 子馬の引き方④「出産2週間後」

 

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頚もしくは肩の外側に手をかける

子馬が自分のバランスで歩けたら、プレッシャーをオフに!!

 

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育成馬ブログ 生産編⑨ 「その2」

本年のJRAホームブレッド第一子が誕生!!

~出産直後における移行免疫不全症の検査 その2~

 

本年初のJRAホームブレッド、クリスコンフリクトの14(父バゴ)の血中IgG濃度を測定したところ、

出産8時間後のグルタルアルデヒド凝固試験では、1時間以上の時間を要したためFPT(移行免疫不全症)と診断、

一方、IgG濃度の測定可能な米国製の機器「DVMstat」で測定した場合、血清中のIgG濃度は約1,000mg/dlであり、正常値を示していました。

 

両者で異なる診断結果が示されたため、安全策として保存初乳の投与も検討しましたが、当場もそれほど多くの保存初乳があるわけではなく、

また、子馬も徐々に積極的に哺乳するようになってきたため、翌日まで様子を見ることにしました。

 

翌日、出産32時間後の血液を用いて両方の検査を実施したところ、

グルタルアルデヒド凝固試験では、2分程度で凝固を認めたことから正常と診断、

DVMstatでのIgG濃度も約2,000mg/dlまで上昇していました。

2日目以降は、子馬も元気になり、まずは一安心といったところです。

 

生後間もない子馬の移行免疫不全症、そして感染症の予防策として、

初乳Brix値の測定と子馬の哺乳確認に加え、血中IgG濃度の測定は極めて重要です。

獣医師によるフォールチェックに併せて、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか?

 

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生後2週間のクリスコンフリクトの14(父バゴ) 健康にすくすくと成長しています。

 

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育成馬ブログ 生産編⑨ 「その1」

育成馬ブログ 生産編⑨ 

 

本年のJRAホームブレッド第一子が誕生!!

~出産直後における移行免疫不全症の検査 その1~

 

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                クリスコンフリクトの14(牡 父バゴ)出産翌日

 

3月31日に本年初のホームブレッド、クリスコンフリクトの14(父バゴ)が誕生しました。

初産のため、出産時体重が48kgと小さく、繋(つなぎ)もやわらかく、やや弱い印象を受けました。

 

肢が弱々しく、なかなか起立しなかったため、起立および哺乳のサポート(それぞれ90分後および2時間後)を実施したところ、とりあえず哺乳できるようになり、

母馬の初乳BRIX値も23%と問題ないため、翌朝まで様子を見ることにしました。

 

以前のブログでもふれたとおり(https://blog.jra.jp/ikusei/2014/02/post-ef69.html)、子馬の感染症予防策の1つとして、出産後の血液中の抗体IgGの濃度を調べて、移行免疫不全症の検査をすることは極めて重要です。

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血液のIgG濃度を測定する方法は、いくつかありますが、安価で簡易的に利用できる方法は、グルタルアルデヒド凝固試験ですhttps://blog.jra.jp/ikusei/2012/03/post-27e9.html

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グルタルアルデヒド凝固試験:血清IgG濃度が正常値であれば、数分で凝固する。 

1.グルタルアルデヒドを純水で10%に希釈した溶液を用意する

 

2.血清500μℓに10%グルタルアルデヒドを50μℓ加える

 

3.血清が固まる時間を測る

 

4.10分以内で固まればIgGは800mg/mℓ以上(正常)

 

5.10~60分で固まればIgGは400~800mg/mℓ(部分的移行免疫不全症)

 

6.60分を越えても固まらない場合は400mg/mℓ以下(移行免疫不全症)

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また、短時間で具体的な数値が出る検査として、米国製の測定キット「DVMstat」が有用です。

測定方法は簡単で、子馬から採取した血清をキットの溶液(抗ウマIgGヤギ血清)に加えて、専用の機械(吸光光度計)で濃度を測定します。

いずれの検査も、子馬が初乳を吸収できる時間帯である生後12時間以内における診断が可能であるため、治療として初乳の投与を選択することができます。

DvmstatDVMstat:短時間での血清IgG濃度の測定が可能

 

つづく

From 日高育成牧場 ⑧

 育成馬展示会を開催しました(日高)

 

4月に入り、日高地方にも春が訪れています。育成馬の冬毛は抜け、騎乗者の服装も防寒服から薄手のジャンパーにかわり、繁殖厩舎では産まれたばかりの当歳馬が元気に跳ねまわっています。1600mダートコースを覆っていた雪が解けるのも早かったため、今年の馬場開きは例年よりも少し早い3月31日となりました。北海道には最高のシーズンが訪れています。

育成馬展示会の概要について

日高育成牧場では4月14日(月)に育成馬展示会を開催しました。10時過ぎから57頭の比較展示を行い、その後1600m馬場にて43頭の騎乗供覧をご覧いただきました。当日は天候に恵まれたこともあり、馬主・調教師・生産者をはじめ210名のお客様が来場されました。

この展示会、以前は生産者の皆様にその成長ぶりを見ていただくという趣旨が強かったのですが、近年はBUセールでのご購買を検討していただいている馬主・調教師の皆様が多く来場されます。各馬の担当者は普段から展示や併走調教のしつけを行い、1人でも多くのお客様に足を止めてみていただけるよう、頑張ってきました。

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比較展示では57頭の育成馬を5班に分けてじっくりご覧いただきました。

また、この展示会には軽種馬育成調教センター(BTC)が行っている育成調教技術者養成コース31期生21名も参加しました。彼らは育成馬を用いた初期馴致や実践騎乗研修を行い、育成馬とともに立派に成長してきた今後を担う若者たちです。21名全員が比較展示や騎乗供覧を通して立派に成長した姿を披露してくれました。今後、立派なホースマンとして飛躍することを期待しています。

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BTC 31期研修生が行う比較展示の様子を見学する32期研修生たち。1年後の自分の姿を思い描く、良い機会になったのではないかと思います。

育成馬の紹介

さて、ブリーズアップセール(BUセール)が近付いてきましたので、注目の育成馬6頭の紹介をさせていただきます。

育成馬展示会の騎乗供覧1組目からはメモリーズオブユーの12(牡、父:アドマイヤジャパン、BUセール上場番号:20番)とニシノボナリーの12(牡、父:バゴ、BUセール上場番号:22番)をご紹介します。メモリーズオブユーの12は入厩した頃はやや華奢で幼いところをみせていましたが、乗り込むにつれて動きの良さが目立つようになり、春になって垢抜けてきた印象がある馬です。性格も前向きで、今回の騎乗供覧でも負けん気の強さを前面に出した走りを披露してくれました。ニシノボナリーの12は、普段は大変穏やかで扱いやすい馬で、BTC研修生を最も多く乗せた育成馬の 1頭です。しかし、併走で調教を行うと相手の馬に対して気の強さをみせ、スピード感溢れる走りをみせてくれます。今回の騎乗供覧では、持ったままでラスト2ハロンを13.3-12.3(2ハロン合計25.6秒)で馬体をしっかり併せて駈け抜けました。

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迫力のある併走調教を披露することができたメモリーズオブユーの12(外)とニシノボナリーの12(内)。

 

騎乗供覧2組目からはピサノアリュメールの12(牝、父:ハービンジャー、BUセール上場番号:31番)とゴールドデイの12(牝、父:マンハッタンカフェ、BUセール上場番号:35番)をご紹介します。ピサノアリュメールの12の2代母はマーメイドステークスなどを制したシャイニンレーサーです。入厩時にはやや小ぶりな印象だった同馬は、母系の良さからか春になって馬体の充実が目立つようになりました。今回の騎乗供覧では、しなやかで素軽い走りを披露してくれました。ゴールドデイの12は父 マンハッタンカフェから譲り受けた皮膚の薄さと伸びのある背中が目をひきます。今回の併走調教では一瞬で加速する瞬発力とストライドの大きい走法を見せてくれました。騎乗供覧では、抑えきれない手応えのなかラスト2ハロンを14.1-12.2(2ハロン合計26.3秒)の走破タイムで競うように駈け抜けていきました。

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ピサノアリュメールの12(内)とゴールドデイの12(外)の併走調教。

 

騎乗供覧3組目からはアドマイヤアイドルの12(牝、父:バゴ、BUセール上場番号:33番)とアラデヤの12(牝、父:タイキシャトル、BUセール上場番号:53番)をご紹介します。アドマイヤアイドルの12は父 バゴに似た皮膚の薄い好馬体の持ち主です。騎乗者の指示に従順で前向きな扱いやすい馬で、騎乗供覧では柔らかさとスピードを兼ね備えた軽快な走りを見せてくれました。アラデヤの12はニュージーランドトロフィーなど重賞2勝の活躍をしたマイネルスケルツィを兄に持ちます。本展示会でも前向きな気性と鋭く切れる走りを披露し、威風堂々と存在感を示していました。騎乗供覧では、ラスト2ハロンを13.1-12.4(2ハロン合計25.5秒)で駈け抜けました。

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アドマイヤアイドルの12(内)とアラデヤの12(外)の併走調教。

なお、当日の調教映像はこちらのアドレスでご覧いただけます。

 

今年のブリーズアップセールは4月29日(祝)に中山競馬場で開催されます。多くのご来場者の皆様に楽しんでいただけるよう、育成馬の調整に全力で取り組んでまいります。