厳冬期の子馬の管理(生産)

 2月に入り、相変わらず寒さと降雪は続いています。以前のブログでも触れたとおり、昨年産まれた7頭の1歳馬は22時間の昼夜放牧を継続実施しています。

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 今のところ、全頭大きな病気や怪我がなく順調に育っていますが、やはり増体重の停滞している馬が数頭います。青草がない環境ではやむを得ないところですが、秋にしっかり栄養摂取していたおかげで、BCSが落ち込んでいる馬は今のところいません。また、懸念していた移動距離の低下についても、「飼い桶の移動」や「放牧草の複数個所の設置」などにより、徐々にではありますが増加してきました。

 

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現在の管理状況は以下のとおりです。

放牧時間:午前10:30~翌朝8:30(合計22時間)

放牧地面積: 1頭あたり0.9~1.4ha

WM:30分間(時速6.0km、WM実施群のみ) 

1日あたりの増体重:0~0.6kg

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昼夜放牧中のホームブレッド ビューテコマンダの13(11ヶ月齢 父ヨハネスブルグ)

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ハフリンガー種のあて馬の活用(生産)

 日高育成牧場ではハフリンガー種のあて馬「スワロー君」を繋養しており、春季発情移行期における繁殖牝馬に対する発情誘起を行っています。

 

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 スワロー君はそれだけではなく、多くのハフリンガー種の特徴である「ユニバーサル・ドナー」すなわち輸血用馬としても活躍しています。ユニバーサル・ドナーの血液は、輸血をされる馬に対して、溶血の副作用を引き起こさないため、外傷による大量出血や出産後に発症する「新生児溶血性貧血」に対する緊急輸血にも利用可能です。また、あらかじめユニバーサル・ドナーの血漿を採取・保存しておくことにより、移行免疫不全症や低タンパク血漿の治療にも使用することができます。当場では定期的にスワロー君から血液を採取して、緊急時のために血漿を保存しています。

 

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子馬の感染症予防(生産)

 以前のブログでも触れたとおり、生後30日以内の子馬の8%、すなわち12頭に1頭が何らかの感染症にかかるといわれています。子馬が感染症にかかりやすい理由は、体内に侵入してきた病原体に対する防御機能が未発達であるためです。

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 子馬は母馬からの抗体を受け取ることにより、病原体から身を守ります。馬の場合、人間のように胎盤を通した抗体の受け渡しができないため、初乳の中に抗体を含ませることによって、子馬に与えています。つまり、出産直後の子馬に対して確実に初乳を飲ませることが、子馬の感染症予防の第一歩といえます。

 

2 移行免疫不全症とは、母馬からの抗体の受取り不足、すなわち、子馬の体内における抗体の量が不十分な状態を表しており、子馬の感染リスクが高まることが知られています。

3 移行免疫不全症は、子馬の血液に含まれる抗体の1つであるIgGの濃度により診断します。初乳を正常に飲んだ子馬の血中IgG濃度は、通常は800mg/dl以上ですが、移行免疫不全症の場合、400mg/dl以下となります。IgG濃度が400mg/dl以下の場合には、保存初乳の経口投与、もしくは血漿輸液による治療を実施します。 

 出産シーズンはすでに始まっていますが、感染症を可能な限り予防し、元気で健康な子馬を育てましょう!

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ベストターンドアウト賞(日高)

●アイスバーン

 前号では、小寒から大寒にかけての寒波での気温の低下について触れましたが、節分までの期間は、一転して寒さが和らぎ、1月下旬にしては珍しく雨が降りました。しかし、立春を過ぎてからは、最低気温がマイナス10℃を下回る日も少なくありませんでした。

 寒さが和らいだ翌日に真冬日を迎えると、日中に雪が解けた道路が夜中に凍り、路面がアイスバーン状態となってしまいます。北海道では、このアイスバーンとの戦いが3月まで続きます。車の運転時には、ブレーキを少し掛けるだけでスリップします。自分の車が滑らなくても、対向車がスリップして事故となるケースも少なくないため、常に最新の注意が不可欠となります。春が待ち遠しい今日この頃です。

 

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日高育成牧場構内のスケートリンクと化したアイスバーン状態の道路。

●育成馬の近況

 JRA育成馬の調教は、2月に入り徐々に本格化してきました。12月までは騎乗馴致を開始した順番に1~3群という3つのグループに分け、それぞれのグループに分かれて調教を実施していましたが、1月からは基本的にすべての馬に対して同様の調教を実施しています。また、1週間の調教の流れを下表のようにパターン化することによって、馬への“オン”と“オフ”の区別の理解を促し、肉体的な疲労の回復のみならず、メンタル面のケアも心掛けています。

1週間の調教の流れ→1314.xlsxをダウンロード

 

13 14育成馬日誌⑤動画
YouTube: 13 14育成馬日誌⑤動画

2月1週目の調教動画。角馬場における速歩での準備運動、800m屋内トラックで1列縦隊での2周の駆歩、そして屋内1,000m坂路コースでの調教を実施しています。

●育成馬検査

 1月下旬には、育成馬検査が実施されました。育成馬検査とは、JRA生産育成対策室の職員が日高育成牧場で繋養している育成馬を第三者の視点から、市場での購買時からの馬体の成長具合、現在の調教進度、馬の取り扱いなどをチェックし、ブリーズアップセール上場に向けての中間確認を行う検査のことです。日高育成牧場では、この検査に備えて、日頃にも増して馬の手入れに時間をかけ、タテガミや尾などの長毛のトリミングにも取り組んできました。

 検査は2日間かけて行われました。初日こそ晴天に恵まれましたが、2日目は雪が舞う中の検査となりました。「馬を見ていただく」という緊張感のなか、育成馬の調教供覧、展示および馬体検査は終了しました。今回の検査を終え、日常的に接する中では見落としていた指摘を受け、個々の馬の発育および調教進度状況を再認識することができました。

 

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2日間かけて実施された育成馬検査の様子。検査時には展示の仕方が優れた者に贈られる“ベストハンドラ―賞”の審査も同時に行われました。

●ベストターンドアウト賞

昨年の日本ダービーでは、パドックで最も美しく手入れされた馬を担当する厩務員に贈られる「ベストターンドアウト賞」の審査が日本で初めて実施されました。この「ベストターンドアウト賞」は「馬がよく躾けられ、美しく手入れされ、かつ人馬の一体感を感じさせる引き馬(リード)が行われている」人馬に贈られる賞です。

例年、育成馬検査と同時に「ベストターンドアウト賞」の審査も行われています。今回も馬体検査および騎乗時に、最も美しく管理・手入れされていると同時に躾が行き届いている馬および担当者に贈られる“ベストターンドアウト賞”と査時の展示の仕方が優れた者に贈られる“ベストハンドラー賞”が選ばれました。

 

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“ベストターンドアウト賞(展示部門)”の審査で最優秀馬に選ばれたメジロボンベイの12(写真左 牡 父:キャプテンスティーヴ)とゴールドデイの12(写真右 牝 父:マンハッタンカフェ)。

 

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“ベストターンドアウト賞(騎乗部門)”の審査で最優秀馬に選ばれたクロノグラフの12(写真左 牡 父:ブライアンズタイム)とバヒラーの12(写真右 牝 父:ディープスカイ)。

育成馬検査を通して、4月29日(火)に開催されるブリーズアップセールおよび4月14日(月)に開催される育成馬展示会のためのみならず、馬主、調教師、牧場関係者などのお客様の来場に備えて、馬を展示し、見て頂くという姿勢を再確認する機会にもなりました。浦河にお越しの際は、お気軽にご来場いただき、JRA育成馬をご覧いただきたいと思っております

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厳冬期の子馬の管理(日高)

 昨年産まれた7頭の子馬は、年が明けて1歳馬となりました。

 年末の降雪と急激な気温の低下により、放牧環境がこれまでとは一変し、放牧中の移動距離や日増体重が減少していますが、今のところ、全頭大きな病気や怪我がなく順調に育っています。

 昨年までは、この時期の子馬を「昼夜放牧群」と「昼放牧群(ウォーキングマシンによる運動を実施)」の2つのグループに分けて、昼夜放牧による様々な影響を調査しました。 調査の詳細はこちら 

 本年については、厳冬期の昼夜放牧におけるウォーキングマシン(以下WM)の効果を調べるために、WM実施群と未実施群とに分けています。この調査により、「放牧中の移動距離の低下」や「体重減少、体温低下、副交感神経の優位性など基礎代謝の低下」に対するWMによる運動の効果について検討していきます。

  1月末現在の管理状況は以下のとおりであり、12月以降、増体重と移動時間の減少が認められます。 

放牧時間:午前10:30~翌朝8:30(合計22時間)

WM:30分間(時速6.0km、WM実施群のみ)

飼料:オールインワン飼料(ワンダーオリジナル)4kg

朝8:30 2kg(馬房内)、夕16:00 2kg(放牧地)

放牧地面積: 1頭あたり0.9~1.4ha

1日あたりの増体重:0.2~0.6kg(10~11月:0.8~1.2kg) 

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放牧地での1日あたりの移動距離

 

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昼夜放牧中のホームブレッド ビューテコマンダの13(10ヶ月齢 父ヨハネスブルグ)

繁殖牝馬にワクチン接種しましたか?(生産)

 繁殖牝馬を繋養されている皆様、ワクチン接種はお済みでしょうか? 

 妊娠後期におけるワクチン接種は、胎子そして産まれてくる子馬にとって極めて重要です。

 流産予防を目的とした馬鼻肺炎ワクチンの接種はもちろんのこと、産まれてくる子馬に対して様々な病原体に対する抗体を与えるために、馬ロタウィルス、馬インフルエンザ、破傷風などのワクチンを接種することにより、子馬の感染症を防ぐことができます。また、ワクチン接種以外にも、初乳を介して子馬に多様な抗体を与えるために、分娩馬房や子馬が利用する放牧地などに、妊娠馬を早めに導入することも効果的な子馬の感染症予防策となります。

 
 生後30日以内の子馬の12頭に1頭は、何らかの感染症にかかるといわれています。

 感染症を予防して元気で健康な子馬を育てましょう!

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日高育成牧場スプリングキャンプ2014(生産)

 この春、日高育成牧場は新たな試みとして、獣医・畜産系大学の学生を対象とした体験学習プログラムを企画しました。

 馬に興味がある方で、出産・育成、そして獣医学に関することを実技と講義を通して学ぶことができます。

 

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馬の出産立会い

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直腸検査の実技

 

詳細は下記をご覧ください。

【日程・期間】 3月24日(月)~3月29日(土)

※23日(日)、30日(日)が移動日です

          

【参加人数】  5名程度

※応募者多数の場合は書類等の選考により決めさせていただきます

 

【参加条件】  獣医・畜産学系の学部に在学中の大学生で2~5年生の方

※大動物、特に馬に興味のある方

※男性・女性どちらでもご参加いただけます

※受講料は無料ですが、期間内の食事・宿泊代は実費精算になります

(朝食300円、昼食500円、夕食700円、宿泊費500円、

洗濯代620円)

※宿泊は日高育成牧場の寮になります

※馬を相手にする研修ですので保険に加入することをお勧めします

【学習内容】

〇「ここでしか聞けない分娩のノウハウとは!繁殖のお話」

国内のサラブレッド生産の現状について丁寧に説明しながら、繁殖に関する講義や実習を行います。

〇「愛馬が快適な毎日を過ごすために!厩舎作業を体験してみよう」

馬に快適に過ごしてもらうために必要なこととは何か?!厩舎作業を通じて体で馬について学ぼう!当牧場で生まれた子馬達の世話を実体験してもらいます。

〇「よく遊び、よく食べ、よく寝る子は育つ!栄養のお話」

出生前から分娩、離乳期までの栄養管理と放牧管理の重要性をわかりやすく解説します。

〇「子馬に重篤な病気に陥りやすい!馬の病気について」

子馬は、成馬に比べると下痢や肺炎、出生後の状況などによる致死的な病気に罹患しやすく、病気の予防、診断、治療に重点が置かれます。生産地特有の馬の病気について十分に勉強し、獣医学の知識を深めます。

〇「強い馬を育てよう、若駒に夢を託して!日高育成牧場の仕事とは」

広大な軽種馬育成調教施設を所有し、競走馬の育成・研究業務を行っている日高育成牧場。その歴史や実際に育成馬を調教している施設の紹介、仕事内容や研究成果について分かりやすく説明します。

【応募方法】  

 受講希望者は大学の担当教官の承認を得た上(後日、所属校からの依頼書提出が必要なため)、以下の連絡先まで履歴書および受講希望の理由を同封の上、郵送にてご応募下さい。受講の可否はEメールにてご連絡いたします(履歴書に連絡先Eメールアドレスを記入して下さい)。※ご提供いただいた個人情報は、研修者本人及び当社研修担当者以外のいかなる第三者にも開示いたしません。

【あて先】

〒057-0171

北海道浦河郡浦河町字西舎535-13

JRA日高育成牧場 スプリングキャンプ申込係

TEL 0146-28-2084 (土・日・祝除く10:00~17:00)

【応募期間】 2月14日(金)必着

BTC利用者との意見交換会(日高)

●騎馬参拝

 日高育成牧場では、新年恒例の西舎神社での騎馬参拝で2014年の幕が上がりました。105年目となる本年は、午(うま)年ということもあり、例年よりも多い200人の参拝客でにぎわいました。浦河町乗馬クラブの会員やポニー少年団の子供たち、さらには参拝客全員で本年の人馬の安全を祈念しました。

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新年恒例の騎馬参拝で人馬の安全を祈念しました。

 ●厳冬期に突入

 前号では、昨年11月下旬から12月上旬にかけては、例年より寒さを感じさせる朝は少ないとお伝えしました。そして、それ以降も降雪は少なく、近年では珍しく積雪のないクリスマスを迎えました。しかし、冬は必ずやってくるもので、正月三が日で一面銀世界に景色が変わり、厳冬期に突入しました。さらに、小寒から大寒にかけての寒波では、通勤途中の車の外気温計がマイナス20℃を記録することもありました。

 日高育成牧場をはじめとする北海道の育成場の多くは、厳冬期の積雪や寒さに対応するため、屋内調教施設を所有しています。それによって、厳冬期においても馬の調教が可能となっています。それにもかかわらず、年に数回は、屋内馬場での調教後に行っている屋外でのクーリングダウンを終えた育成馬の“口ひげが凍る”という状況に見舞われることもあります。

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車の外気温計がマイナス20℃を記録した日には、屋外でのクーリングダウンを終えた後に “口ひげ”が凍っていました。

●BTC育成調教技術者養成研修生

 本年も小寒の頃の恒例行事となっているBTC育成調教技術者養成研修生の騎乗実習が1月8日から始まりました。本年の研修生は21名で、4月14日(月)に予定されている育成馬展示会までの約3ヶ月間、7名ずつの3班に分かれ、1週間交代でJRA育成馬を活用した騎乗実習を行います。

 騎乗実習開始時には初めて騎乗する若馬の動きに対応しきれないことも少なくありませんが、実習が進むにつれて著しい成長を成し遂げる姿を見守ることは、育成馬の成長と同様に我々の楽しみになっています。将来、研修生たちが育成牧場の最前線で仕事をする際に、この騎乗実習で得た経験が役立ったと思えるようにサポートしたいと思っております。

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BTC研修生(2および4番目の騎乗者がBTC研修生)の騎乗実習が始まりました。先頭からニシノボナリーの12(牡 父:バゴ)、ビービーシグナスの12(牡 父:ヴァーミリアン)、サニーハシレの12(牡 父:チーフベアハート)、メジロボンベイの12(牡 父:キャプテンスティーヴ)、アガーテの12(牡 父:エンパイアメーカー)。

 ●育成馬の近況

 JRA育成馬の調教は徐々に本格化してきました。1群の牡馬および2群の牝馬は、800m屋内トラックでの2400m(1周+2周、ハロン22秒まで)のキャンターをベースに、週2回は800m屋内トラックで2周キャンター(ハロン22秒)を実施した後に坂路調教(1本、ハロン20秒)を実施しています。また、週1回は800m屋内トラックでの3200m(2周+2周、ハロン22秒まで)のキャンターを実施しています。

 

13-14JRA育成馬 ブログ用調教動画
YouTube: 13-14JRA育成馬 ブログ用調教動画

 この時期の調教は800屋内トラックでの一列縦隊、および2列あるいは3列の隊列でのキャンターがベースとなります。①前に(Go forward)、②真っ直ぐ(Go straight)、③落ち着いて(Go calmly)走行させることを主眼としています。つまり、隊列の中で馬が落ち着き、騎乗者の扶助に応じるように調教を進めています。

●BTC利用者との意見交換会

 最後に、昨年12月に行われました「BTC利用者との意見交換会」について触れさせていただきます。今回は「初期教育の重要性 ~競走馬として能力を発揮するには~」というテーマに基づき、当場から「JRA日高育成牧場の騎乗馴致」および「馬の本能・心理を理解した取扱いとその調教」と題した話題を提供した後、BTC利用者の中から代表とし参加していただきました3名のパネリストの方々を中心に意見交換が行われました。

 経験豊富なパネリストの皆様は、それぞれの経験および方針を基に意見を述べられていました。それらは、今後の育成調教への参考になる意見が多く、非常に多くのことを学ぶことができました。毎年のことながら、このような意見交換の場がなければ、なかなか率直な意見を聞くことのできないため、このような機会は、技術向上を図る上で非常に有益であると感じられました。3名のパネリストの方々、および参加していただいた方々にはこの場をお借りして御礼申し上げます。

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「初期調教の重要性」というテーマに基づき開催された「BTC利用者との意見交換会」

ライトコントロール法(生産)

 「早期発情誘起」を実施するうえで、もっとも重要な役割を果たすのは、ライトコントロール法、すなわち、冬から春にかけての日長時間の延長を人為的に行う方法です。

 (実施時期)

 ライトコントロール開始から約60日で効果が認められることから、交配予定の2ヶ月前、つまり、2月からの交配を予定している場合は12月に開始します。

 妊娠馬も同様で、分娩1ヶ月後に交配を予定している場合には、分娩予定日の1ヶ月前から開始することが推奨されます。ライトコントロールによる妊娠期間短縮の報告もありますが、弊害についての報告はありません。

なお、たとえ受胎した場合であっても、ライトコントロールを終了してはいけません。妊娠を安定させるために、4月までは継続実施することが推奨されます。

 

(時間設定)

 冬至には、昼時間が1年で最も短い10時間になります。ライトコントロール実施時は、早朝は5 時30 分から7 時30 分まで点灯し、夕方は15 時30 分から20時まで馬房内の照明を点灯することで、昼14.5 時間、夜9.5 時間の環境を設定します(図1)。 

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図1.冬至におけるライトコントロールの実施例

 

(照明方法)

 照明は、60から100 ワットの白色電球、LED電球、蛍光灯でもかまいません。これを馬房天井の中央付近に設置します。明るさの目安は、新聞を読むことができる明るさと言われています。また、夜間は可能な限り暗くします。24 時間の照明は逆効果であり、一定時間の「夜」が必要で、明るい時間と暗い時間の明確な区分が重要です。 

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明暗のメリハリが重要!!

春季繁殖移行期に交配を行うために(生産)

  準備中のラーメン屋さんで、ラーメンを食べることができなくても、繁殖牝馬に対しては、「早期発情誘起」とよばれる方法で、春季繁殖移行期に交配を行わせることが可能です。

 早期発情誘起とは、早春の繁殖牝馬に対していくつかの刺激を与えて、繁殖期になったと錯覚させる方法です。

 その刺激は主に以下の4つが知られています。

 ①  光による刺激

 ②  温度による刺激

 ③  栄養による刺激

 ④  異性の刺激

これらを活用することにより、繁殖牝馬に対して春が来たと錯覚させることができるのです(図1)。

3_2     図1 4つの刺激

①は多くの方が実践されているライトコントロール法を用います。②は夜間放牧から昼放牧への移行や馬服着用、③はフラッシングとよばれる栄養供給量の増加、④は試情すなわち「あて馬」の継続実施などを用います。

「あて馬」による効果は科学的には証明されていませんが、馬産国アイルランドにおいては、経験的にこの方法が用いられており、空胎馬に対しては1月から毎日実施する方法が普及されています。

 北海道という寒冷地において早期発情誘起を行うためには、ライトコントロール以外の要素も軽視できない可能性があります。日高育成牧場では、これらの効果的な方法について、今後も調査研究を継続していく予定です。

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図2 アイルランドでは、継続的な「あて馬」

による早期発情誘起が実施されている。