早春における交配(生産)

 早春の2月から4月にかけて、

「なかなか良い発情がこない」「卵胞はあるけど、排卵しない」。

このようなことでお悩みの生産者の方は多いと思います。

 当場においても同様の悩みを抱えていますし、これはわが国だけではなく、世界中の生産者の悩みでもあるのです。

なぜなら、2月から4月のこの時期は馬にとっての「繁殖期」ではないからです。

本来、馬の「繁殖期」は4~9月です。

 馬は、11ヶ月間の妊娠期間を持ちますので、4~9月に交配することにより、

翌年の3~8月、すなわち、子馬を育てやすい、草が豊富に生い茂った時期に出産することを繁殖戦略としています。

 

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この戦略上、2~4月は本来の馬の「繁殖期」ではなく、「春季繁殖移行期」とよばれる、「繁殖期」に向けた準備期間と位置付けられます(図1)。

この期間、繁殖牝馬は、冬の間に停止していた卵巣の機能を徐々に回復させ、繁殖期に交配をするための準備を整えます。

 このため、この時期に交配を試みることは、きわめて困難と言えます。

例えるなら、開店前で準備中のラーメン屋さんに行って、ラーメンを食べようとすることと同じかもしれません。

では、この時期に交配することは不可能かというと、決してそうではありません。

1_4図1 馬の年間繁殖リズム

2_4春季繁殖移行期は、繁殖期に向けた「準備期間」です。

(次回につづく)

セリと育成馬を知ろう会 in ひだか(日高)

 日高育成牧場のある浦河では、10月に入ってから一雨ごとに寒くなり、10月17日には日高山脈に初冠雪を、浦河でもほぼ平年並みの11月11日に初雪を認めました。しかし、例年は11月下旬から最低気温が氷点下に達する日も珍しくなくなってきますが、今年はそれほど寒さを感じる朝は少ない気がします。一方、日高育成牧場内のエゾシカ達に目を向けると、いつの間にか袋角(フクロヅノ)から枯角(カレヅノ)へと角を完成させて繁殖期を終え、さらに夏毛から冬毛へと衣替えも終えており、気温以上に日照時間で季節を感じているためなのか、我々よりも早く冬支度を終えているように感じています。

 

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 写真1.エゾ鹿達も袋角(左)から枯角(右)へと角を完成させて繁殖期を終え、さらに夏毛(左)から冬毛(右)へと衣替えも終えて越冬の準備を始めています。

育成馬の近況

さて、3群に分けて騎乗馴致を進めているJRA育成馬の近況をお伝えいたします。9月上旬から騎乗馴致を開始している1群(牡馬21頭)は、800m屋内トラック馬場での調教実施時には、一列縦隊で1周した後、手前を変えて二列縦隊でキャンターを2周、合計2,400mのキャンターを行っています。また、1群の牡馬は11月中旬からBTCの1600mトラック馬場においても1周のキャンター調教を行っています。4月上旬に行われる育成馬展示会の調教供覧場所となるこの屋外コースは12月から3月までクローズされるため、展示会の馴致も兼ねて、F23~20程度のスピードで真直ぐ走行させることを目的として調教を実施しています。1600mトラック馬場のクローズ後は、週2回の坂路調教を開始しています。

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写真2.1600mトラック馬場ではある程度のスピード(F23-20)で前馬に頼らず真直ぐ走行することを目的としているため、前馬とは一定の距離を維持します。

また、10月初旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬22頭)は、800m屋内トラック馬場において二列縦隊でのキャンターが可能な段階にまで進んでおり、合計2,400mのキャンターを行っています。

一方、10月下旬から騎乗馴致を開始している牡と牝が混在する3群も800m屋内トラック馬場でのキャンター調教を実施できるまでになりました。特に3群はキャンターを初めて間もないため、競走馬の礎となる①前に(Go forward)、②真っ直ぐ(Go straight)、③落ち着いて(Go calmly)走行させることを主眼に置いて調教を進めています。

 

動画.11月最終週の1群の牡(前半の角馬場での速歩からトラックでの併走調教まで)および2群の牝(後半の角馬場での速歩から縦列調教まで)の調教動画。

※なお、ゼッケン番号とブリーズアップセール番号は異なりますので、ご注意ください。

 

セリと育成馬を知ろう会

ここからは、少しさかのぼって10月9日~10日にJRAの馬主の方を対象に開催させていただきました「セリと育成馬を知ろう会inひだか」についてご紹介いたします。この企画は比較的馬主歴の浅い方々に対して、「馬の見方の理解」「馬のライフサイクルの理解」「調教師との交流」あるいは「セリ市場での購買に向けた体験」をしていただくことを趣旨に、昨年に引き続き、HBA日高軽種馬農協主催のもと、JRA馬事部生産育成対策室および当場が協力する形で実施されました。

初日はHBAオータムセールにおいて、市場施設や上場馬の比較展示およびセリ風景を見学し、購買までの流れやレポジトリーに関する説明が行われました。そして、夜には馬主の方々と調教師との交流の場が用意されました。2日目は、広大な日高育成総合施設(BTC軽種馬育成調教センターが管理・運営)の見学、JRA育成馬(1歳馬)の調教の見学、「騎乗馴致」に関する講義、さらにはJRA育成馬を使用して、実際にセリでの「馬の見方」に関する説明が行われました。

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写真3.「セリと育成馬を知ろう会in ひだか」では、JRA育成馬を使用して「馬の見方」に関する説明が行われました

このような企画が、馬主の方々に「セリ市場に参加したい」あるいは「競走馬を所有したい」という意欲を持っていただくきっかけになるよう、今後も協力させていただきたいと考えています。なお、来年3月には「育成馬を知ろう会in宮崎」をJRA宮崎育成牧場にて開催予定です。お問合せは、JRA馬事部生産育成対策室までご連絡願います。

育成技術講習会 (生産)

10月30日および11月6日にそれぞれ美浦および栗東トレーニング・センターにおいて、育成技術講習会が開催されました。

今回の講習会は「海外で競馬を学ぶ-海外経験者が「世界の馬づくり」を語る」と題して、海外の厩舎や牧場で経験を積んだホースマンのみなさんによるパネルディスカッションを実施しました。

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パネリストのみなさんは、これまでの様々な経験をもとに、本当に多くの興味深い話をしてくださいました。

以下に、ディスカッションの中で印象に残った話を一部ご紹介します。

「アメリカの追いきりは、5ハロンを実戦なみのスピード(馬によっては58秒など)で走行させるタイム重視であり、指示タイムと1秒以上異なった場合には調教師から注意を受ける」

「短距離競馬が中心の香港においては、ゲートから多頭数で発進するなどスタート重視の追い切りが実施されている」

「イギリス・アイルランドにおいては、調教タイムは測定しない。走行時の馬の表情や蹄音などで状態を把握する調教師もいる」

「ヨーロッパのホースマンは、馬を褒めることが上手い。じっと立っているだけでも「よくできた!」と褒めている」

「アイルランドでは、調教で馬を乗ることを楽しむライダーが多く、大雨が降って冠水した際には、喜んで馬を水の中に入れたり、強風による倒木があった場合には、それを飛越したりもする」

「欧米各国の厩舎では、日本と比較すると乾草を多目に与えているところが多い。それでいて、馬が太くなるわけではない」

 

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トレセンや育成牧場のみなさんも大勢ご参加されて、積極的にご質問いただきました。

 

講習会の中でもお知らせしましたが、競走馬育成協会では「海外派遣研修制度」による海外研修の補助金助成を行っていますので、ご興味のある方はこちらのホームページをご覧ください。

http://www.ttda.or.jp/business/pdf/20131104.pdf

 

今後も多くの若い方が海外で馬づくりを学び、日本の競馬が益々発展することを願っています。

 

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アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

 

小学生の牧場見学 (生産)

 

日高育成牧場では、人材養成事業の一環として、多くの学生の方の受け入れを行っています。

 

すこし前の話になりますが、近隣の小学校の生徒のみなさんの見学研修がありました。

 

本年生まれた子馬2頭を見せたところ、子供たちは、小学生らしく元気いっぱいに喜んで子馬と触れ合い、また、子馬たちもバスツアーなどで大勢の人に触れられることに慣れているため、落ち着いて立っていることができました。

 

また、馬の引き方もレクチャーし、「人が馬のリーダーとなること」「人の指示に従って歩かせること」を学んでもらいました。

 

今後も多くの方に当場を訪れていただき、馬と触れ合うことの楽しさを感じていただければと思っています。

 


 

 

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元気いっぱいの小学生に囲まれたホームブレッドの当歳2頭


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子馬の引き方も勉強しました

離乳後の子馬の管理 (生産)

本年生まれた7頭のホームブレッドは、これまで大きな病気や怪我もなく順調に育っており、現在は当場で最も土壌が良く、面積が大きい放牧地で管理されています。

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   現在の管理状況は以下のとおりです。

 

放牧時間:午前10:30~翌朝8:30(合計22時間)

 

飼料:オールインワン飼料(JRAオリジナル)3kg(朝2kg、午後1kg)

 

放牧地面積:8ha(1頭あたり1.1ha)

 

1日の移動時間:9~17km(平均11km、10~11月)※GPSで測定

 

1日あたりの増体重:0.8~1.2kg(10~11月平均)

 

また、当場では、毎日の馬体観察および馬体重、定期的な体高、胸囲、管囲、BCSの測定をしています(図1)。

 

このように全頭に対してほぼ同様に管理し、継続的な観察を行ったとしても、成長度合いや骨端炎の発症程度などは馬によって異なるなど、子馬たちに多くのことを教わりながら、あらためて馬づくりの難しさを実感しているところです。

 

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ビューティコマンダの13(牡:父ヨハネスブルグ)の体重推移と馬体写真

 

今後は、12月以降も22時間の昼夜放牧を継続し、

厳冬期における成長停滞および基礎代謝の低下を改善する目的で、馬服を着用し、

うち4頭については、ウォーキングマシンでの運動を試験的に実施する予定です。

 

 

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<スワロウテイルさん>

以前、離乳前に母馬を失った際に乳母による飼育は可能かどうかの質問をさせていただきました。
馬関係のコミックでは乳母をあてがうも乳母の実子との折り合いが悪く、結局は人工飼育に切り替えざるを得ないストーリーになっていました。
実際は母馬喪失の際はすぐに人工飼育を開始しますか?その場合、仔馬の免疫に有益な初乳に含まれる成分はどのように補うんでしょう?

<事務局より>

スワロウテイル様 ご質問ありがとうございます。
ご質問いただいたようなケースでは、乳母を導入するか人工哺乳を開始する必要があります。どちらも一長一短がありますが、一般的には乳母を選択することが多いようです。また、通常の初乳から得られる免疫タンパクの代替として血漿輸液を用いて子馬に免疫タンパクを付与する方法がとられることもありますが、必ずしも初乳を飲めない子馬の免疫がゼロという訳ではありませんので、個々のケースに応じた処置が選択されます。

「騎乗馴致」が始まりました(日高)

 今夏の北海道は、特に7月上旬から8月中旬までが暑く、平均気温が過去10年間で2番目に高かったようですが、お盆を過ぎたあたりから暑さが和らぎ、9月中旬に全国的に記録的な大雨をもたらした台風18号が通過後は、急激に秋を感じる涼しい朝が続くようになりました。9月27日には旭川市で初霜が観測されるなど、道内18の地点で氷点下を記録する寒さとなりました。日高育成牧場のある浦河西舎でも5℃を記録しました。このような冬を感じる寒さの中、騎乗馴致を進めています。

 騎乗馴致は3つの群に分けて実施しています。21頭の牡馬を1群として9月初旬から、そして、23頭の牝馬を2群として9月下旬から騎乗馴致を開始しています(写真1)。このように、来年のブリーズアップセールに向け、日高育成牧場は活気づいてきました。

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写真1.騎乗前にはドライビングを実施し、安全に騎乗するために扶助を理解させます。写真はプルームリジェールの12(牡、父:ハーツクライ)。

 JRA育成馬の騎乗馴致は、「育成牧場管理指針」にも記載しているとおり、「タオルパッティング」、「馬房内での回転」および「ストラップによる圧迫馴致」などの「プレ馴致」から始めます。「タオルパッティング」は、触られることを嫌う部位などを重点的にタオルで触れることによって慣らして、人の様々なアクションが無害であるということを理解させるために実施します。「馬房内での回転」は、ラウンドペンでのランジングや騎乗時に人の指示や音声コマンドに従って、回転できるように慣らします。また、「ストラップによる圧迫馴致」(写真2)は、段階的に腹部の圧迫に慣らすために実施します。これらに共通するのは「慣らす」ということです。「プレ馴致」から「騎乗馴致」に至るまでで、最も大切なことは、馬を「慣らす」ということであり、そのためには、馬に対する「寛容」な気持ちが不可欠です。

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写真2.「プレ馴致」で実施する「ストラップ馴致」は腹帯馴致の有効な手段となります。

このように、細心の注意を払って馴致を進めていても、「ローラー」と呼ばれる「腹帯」の装着時の「カブリ(Bucking)」と呼ばれる、四肢で跳ね上がる反応を見せる馬は必ず認められます(動画)。この「カブリ」は、大きな呼吸によって胸郭が膨らみ、ローラーによる経験したことのない腹部の圧迫を強く感じて驚き、それを振り解こうとする本能的な反応です。馬が「カブリ」を見せた場合には、ムチなどの扶助を使って馬を前進させ、馴致者の安全を確保します。また、扶助に従って、前進することにより、問題が解決されるということを理解させます。この際にも、馴致者は「寛容」な気持ちで、冷静に明確な指示を出すことが要求されます。

動画.ローラー装着時の「カブリ」の様子。ケイアイリードの12(牡、父:カネヒキリ)。

例年と同様に、騎乗馴致の開始に伴い、BTC育成調教技術者養成研修生の騎乗馴致実習も始まっています。研修生達は、3週間かけてランジング、ローラーの装着、ドライビング、そして騎乗に至るまでの過程を学びます。実際に競走馬になるJRA育成馬を用いて、騎乗馴致の過程を体験することは、優秀なホースマンになる上で必ずや研修生達の大きな財産になることと思います。

研修初日には、馬装の方法のみならず、作業の流れも分からず、緊張しているのが手に取るように分かります。これと同じことが、騎乗馴致初日にラウンドペンの中に入る1歳馬にも当てはまります。騎乗馴致初日の馬は、ラウンドペンの中で何をしたらよいかということを全く理解していません。研修生たちは、一つのことが終われば、次のことを率先して実施しようと努力します。これは、研修生たちは自らの目標に向かって取り組んでいるため、様々な難題も自ら克服しようとします。一方、馬は自ら騎乗されたい、あるいは競走馬になりたいという目標など持っているはずもありません。そのため、ラウンドペンの中に入った瞬間に鞭で追ってキャンターを実施して嫌な思いをさせてはならず、「プレ馴致」で馴らしてきたことをラウンドペンの中でも繰り返し実施し、ラウンドペンの中は安全であるということを理解させることが最も重要です。研修生達には、研修初日の自らの精神状態を、騎乗馴致初日の馬の精神状態に置き換えて、馬の立場に立って馴致を進めていくことの大切さを学んでほしいと願っています。

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写真3.JRA職員の指導の下、ドライビング実習を実施するBTC生徒。モントレゾールの12(牡、父:ステイゴールド)。

生産現場における駆虫 その4「駆虫剤投与以外に実施すること」(生産)

生産現場においては、駆虫剤を投与する以外にも有効な寄生虫対策があります。

 

・放牧地のローテーション

・放牧地の糞塊除去

・放牧地のハローがけ(ハローがけ後は一定期間休牧)

・大量寄生馬の隔離

・過密放牧の回避

・牛・羊などとの混合放牧

 

 

 

 

 

 

 

 

前回までお話ししたターゲット・ワーミングと、これらを併用することで耐性寄生虫の発生を可能な限り抑制できると思われます。

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「放牧地のローテーション」や「糞塊除去」は寄生虫駆除に有効な方法

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アイルランドで実施されている牛との混合放牧

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生産現場における駆虫 その3「寄生虫をゼロにする必要はない」(生産)

前回触れた「ターゲット・ワーミング」のつづきです。

 

「ターゲット・ワーミング」は、薬剤感受性が高い寄生虫(薬が効く虫)を一定割合生存させておくことによって、耐性寄生虫の割合を減らすことができる方法です。

 

これにより、本当に駆虫が必要な時に駆虫剤が効果を示すようになるのです。

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この方法の根底には「寄生虫をゼロにする必要がない」との考え方が存在します。

「寄生虫=害虫=全滅させる必要がある」という概念は間違いだと考えられるようになったのです。

 

すべての寄生虫が馬に健康被害をもたらすのでしょうか?

この疑問は解決されていません。

 

デンマークで行われたトロッター競走馬を対照とした調査によると、

円虫卵が多く認められた馬のほうが、入着(1~3着)する可能性が高いとの結果が得られました。

円虫寄生が競走パフォーマンスを高めるとは想像できませんが、少なくとも競走馬の場合には負の影響はないと考えられます。

 

もちろん、成馬であっても大量寄生による疝痛・栄養障害などの健康状態に与える影響は否定されていません。

 

しかし、子馬のアスカリド・インパクションなど、本当に必要な時のために、現在有効な駆虫薬を残しておくことは極めて重要です。

 

なぜなら、新たな駆虫薬の開発には長い年月を必要とするからです。

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現在使用可能な駆虫剤は、必要な時のために温存!!

つづく

 

生産現場における駆虫 その2「ターゲット・ワーミング」(生産)

耐性寄生虫の出現を可能な限り抑制する方法として、

欧米では「ターゲット・ワーミングTarget worming」と呼ばれる駆虫方法が提唱されています。

 

ポイントは3つです。

 

    ①虫卵検査の実施

    ②必要な馬に限定した駆虫

    ③薬剤のローテーション

 

 

 

 

すなわち、虫卵検査を実施して、必要な馬に対してのみ駆虫を実施する方法です。

また、異なる薬剤を交互に使用することで、1つの薬剤に対する耐性寄生虫の出現を抑制します。

 

具体的には、

2ヶ月間隔で繋養全馬に対する虫卵検査を実施

・各寄生虫につき糞1g250個以上の卵が認められた場合のみ駆虫

・イベルメクチン、ピランテル、フェンベンダゾールを2ヶ月ごとに交代で投与

・条虫駆除を目的としたプラジクアンテルは秋に1回(もしくは春との2回)のみ投与

・駆虫2週間後に再検査をして、駆虫剤の効果を確認

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただし、2歳未満の子馬に対しては、虫卵数に関わらず、2ヶ月毎に駆虫を実施します。

理由は、子馬にとっての脅威「アスカリド・インパクション(回虫便秘)」の防止です。

アスカリド・インパクションは、子馬の腸管の中に回虫が充満し、最悪の場合には腸管破裂による死亡を引き起こします。

 

成馬になると、回虫に対して抗体ができると言われています。

このため、抗体ができる前の若馬に対してのみ、徹底的に駆虫するのです。

この場合の駆虫は上記3つの薬剤を交代で使用することにより、耐性寄生虫の発生を抑えます。

 

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虫卵検査により、大量寄生が認められた馬のみ駆虫する

 

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薬剤のローテーション投与

 

つづく

生産現場における駆虫 その1「耐性寄生虫の発生原因」(生産)

生産現場で問題となる耐性寄生虫、すなわち駆虫剤に効果を示さない寄生虫、

その発生原因となるポイントは3つ。

 

  ①すべての馬に対する駆虫 

  ②定期的な駆虫

  ③同じ駆虫剤の継続投与

 

 

 

 

 

では、耐性寄生虫は、どのようなメカニズムで発生するのでしょうか?

以下のようなモデルが紹介されています。

 

耐性寄生虫は突然出現するものではなく、もともと、寄生虫群のなかに存在しています。

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この寄生虫群に同じ駆虫剤を投与し続けると、耐性寄生虫だけ生き残ります。

 

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すると、耐性寄生虫同士の交配が増加し、耐性寄生虫が多数を占めるようになります。

このように一度でも耐性寄生虫が多数を占めてしまった場合、耐性寄生虫は消失しません。

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それでは、どのような駆虫をすれば良いのでしょうか?

 

つづく