韓国からの研修生が来日しました(宮崎)

南国宮崎も11月に入り、そろそろ「涼しい」日だけでなく、「寒い」と感じる日もでてきました。

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宮崎育成牧場ではミニチュアポニーとの撮影会を定期的に実施しています。今回はクリスマスバージョンで、完成した写真をカレンダー形式でお客様にお渡しします。

今回は韓国・釜山からBig Dream Stables宮崎育成牧場に来ている2名の研修生を紹介します。彼らはJRA育成馬を用いた育成・調教の実践研修を受講するため、概ね6カ月間の予定で、釜山の慶南競馬場からやってきました。

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研修生の2人。先日はJBBA九州種馬場を見学しました。

彼らは釜山で競走馬の調教を4年間経験している調教厩務員で、将来的には調教師を目指す優れた人材です。騎乗に向けた競走馬の馴致方法は初めて経験する内容がほとんどで、常に真摯な姿勢で一から取り組んでいます。

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騎乗馴致の動作を指導される研修生。馬はホットマイハートの07(牡・父スパイキュール)

また、騎乗フォームなどはこれまで韓国の競走馬での経験から、自信を持っているはずです。しかしながら若い育成期の馬に要求される騎乗方法は、完成された大人の競走馬とは異なる部分もあります。特に、まっすぐに走らせるとともに、若馬特有の不意な動きにも対応できるよう、手綱をブリッジで保持し、ネックストラップとともにキ甲の上で拳の位置を安定させることや、アブミの長さを必要に応じて長くしたり短くしたりすることなどには注意を払う必要があります。慣れた習慣を変えるのは簡単なことではありませんが、彼らにはそれを受け入れようとする前向きな姿勢・柔軟性もあり、約1ヶ月間の研修を経た現在では、育成牧場スタッフにもよくなじんでいます。研修生ではありますが、今後はともにJRA育成馬を調教していく貴重な育成スタッフになってくれそうです。

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誘導馬に騎乗し、JRA育成馬の調教を先導する研修生(先頭)。2頭目以下は牡牝混合の10頭の育成馬で、速歩1000m、駈歩1500m程度のメニューを消化しています。

韓国からの研修生受け入れは今回で第4期目となります。このような取り組みを通して、今後さらに韓国など海外競馬関係者との相互理解が深まり、人馬の交流が進むことが期待されます。

☆キャンドル 競走馬への道 その②

前々回の宮崎からの日誌(1016日)でご案内しました、「ビッグキャンドルの07(通称キャンドル・牝馬)」成長の過程を伝えるコーナーです。8月の購買からの流れをキャンドル自身の日記風に紹介します。

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ビッグキャンドルの07。父は新種牡馬で凱旋門賞勝ちのバゴ。

9 3     8月のセリでJRAに購買されて「JRA育成馬」の仲間入りです。広大な調教施設を持つ浦河の日高育成牧場に「入学」かと思ったら、宮崎育成牧場入学に決まってました。JRA育成馬の3割は宮崎、7割は日高に行くそうです。今日は16頭の仲間と一緒に北海道から旅立ちます。まる2日かけて95日に宮崎到着。4月までの8か月間、ここでがんばって勉強です。

97    宮崎の日中はとっても暑いんです。だからお昼は厩舎で休憩、扇風機で涼しくしてもらってます。外の放牧は夕方~朝までの涼しい時間(夜間放牧)です。北海道からの輸送で一緒に来た「プレミアさん」、「トレヴィさん」との友達3頭で、青草がおいしくて、広い放牧地にいます。本格的な勉強(騎乗調教)が始まるまで1か月くらいは、外での自由時間が多くて楽しい毎日です。牧場の人には「青草をしっかり食べて大きくなるように」っていわれました。実は今の私、387kgで同級生24頭の中で一番小さいんだって。※24頭の平均馬体重は436kgです(9月初旬)。

 

宮崎に到着し、まずは順調なスタートを切ったキャンドルです。引き続き、次号以降でも紹介していきます。

育成馬を手術しました(宮崎)

秋の宮崎はスポーツの話題でいっぱいです。プロ野球の教育リーグ「フェニックスリーグ」には先日、巨人の主力選手が出場しました。クライマックスシリーズに向けた調整のためでしたが、間近で、しかも無料でみられる機会はそうあることではありません。11月には男子ゴルフのフェニックストーナメント、女子では国内ツアー最終戦のリコーカップもあり、秋の宮崎も魅力満載です。また、馬肥ゆる秋という言葉どおり、育成馬たちも順調に成長しています。県知事ではありませんが、この機会に魅力満載の宮崎に足を運んでいただけたら幸いです。

さて今回は手術の話題です。

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今回手術を受けたのはチアズフリートの07(父:キンググローリアス)、通称チアズ君です。こちらは手術2週間後の休養中の写真です。手術後1か月間は運動・食餌を制限するので、あばらが浮いてやせ気味です。馬は運動を制限されると消化器の働きが弱まり、疝痛(馬の腹痛)を起こしやすくなります。これを予防するため、餌の量もある程度制限しています。

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手術部分の拡大写真です。しっぽ側の出っ張り部分が人間でいう「かかと」で、この部位を含む関節のことを飛節(ひせつ)と呼びます。よく見ると飛節周囲には今回の手術時に毛を刈った跡がみられます。

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以前の日誌で紹介した、群れのボスとして大威張りのチアズ君(写真右)。噛み付かれているのはプレゼントの07(父は新種牡馬バゴ)。

○飛節のOCD摘出手術

724日の日誌でも紹介したようにボスに君臨していたチアズ君ですが、全頭の一斉レントゲン検査(1頭につき約20枚の撮影を行います)の結果、両後肢の飛節部分に「OCD」が確認されました。OCDは獣医学用語でOsteo Chondritis Dissecans(離断性骨軟骨症)、簡単に言うと関節内に残った遊離軟骨です。本来、骨は成長する過程で先端に軟骨をつくり、これが成熟して硬くなって(骨化と呼びます)伸びていくのですが、軟骨が正常に成熟せず、そのまま表面に残ってしまったものこそがOCDの正体なのです。

今回我々が手術に踏み切ったのは、単純に「OCDがあったから」ではありません。決め手となったのは飛節が軽度に腫れていたことです。つまり、外見でわかる症状があり、レントゲン検査でもその領域に所見が見られたため、手術するべきとの結論に至りました。JRAでは、OCDがあっても外見でわかる腫れや熱感などの症状がない場合や、OCDの見つかった場所が獣医学的・経験的に問題の起こりにくい場所である場合には、ほとんど問題視しません。むしろ、手術をしないと決断することを賢明と考えます。これはレントゲン検査でOCDが見つかっても、必ずしも跛行や休養の原因とならないことや、現在競走馬として活躍している馬の中にはOCDの手術をせずに出走し、活躍している馬が数多くいるためです。

どれだけの若馬にOCDが見られるのか、OCDの有無と疾病発症の間には何か関係があるのか、またOCDが出走回数や獲得賞金などの競走成績に影響を与えるのか、などについて両育成牧場で現在調査を行い、データを集積しているところです。調査の結果、何か知見が得られた場合には当ブログ上でも紹介していきたいと思っています。

なお、今回の手術は鹿児島大学付属動物病院で実施しました。同病院の施設等については、後日お伝えする予定です。

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今回摘出した遊離軟骨です(それぞれ左・右の飛節より)。小豆くらいの大きさでした。

○欧米のセリにおける「レポジトリー」とOCD

レントゲンを撮ると、飛節以外にも球節や膝関節などにOCDがみつかることは珍しくありません。欧米では、セリに出場する馬のレントゲン写真などが閲覧できる「レポジトリー」というシステムが普及しています。馬の所有者がセリで馬を売却する際は、購買するお客様に悪い印象をもたれたくないと考えるのは当然で、手術や治療によりOCDをなくそうとする傾向がありました。しかし最近では、OCDは時間が経過すると消失することもあり、競走馬としての能力に影響を与えないことが多い、と考えられています。その根拠としては、GⅠ勝ち馬の中にもOCDを持つ馬がたくさんいることがあげられます。欧米の購買者はこのような情報を多く得るにつれて、OCDをあまり心配せず寛大になっているようです。

日本のセリにおける「レポジトリー」

一方日本では、セレクトセールやセレクションセール、一部のトレーニングセールやJRAが主催するブリーズアップセールにおいて、「レポジトリー」による情報開示が行われています。

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ブリーズアップセールのレポジトリールームでは、レントゲンや喉の内視鏡所見について、JRAの獣医スタッフが説明します。

それ以外のセールでは、気になる部分のレントゲンを自主的に提出する意識の高い上場者も一部にみられますが、過去に骨の手術歴がある馬でさえもレントゲンの提出がないことが殆どです。これは、レントゲンなどの提出義務がないためです。

購買者の立場からみれば、少なくとも骨の手術歴がある馬についてはレントゲンを確認し、納得した上で購買したいと考えるのが当然です。日本のセリにおいてレポジトリーがしっかり定着して、上場者から積極的に情報提供がなされ、購買希望者がセリ当日に気軽にレントゲン撮影を依頼出来るような環境が整えば、購買者にとってセリはもっと魅力的になるでしょう。

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チアズフリートの07。手術1か月後の10/10から軽運動とパドック放牧を再開しました。11月初旬には初めての騎乗まで進むことが出来そうです。

管囲の日内変動(宮崎)

10月になりました。南国宮崎も朝夕はだいぶ涼しくなりましたが、日中はまだまだ25℃以上まで上昇し、汗ばむ日もあります。また、9月の後半は2回にわたり台風が接近し、多量の雨をもたらしました。幸いにして風が比較的弱かったこともあり、Big Dream Stables宮崎育成牧場に大きな被害はありませんでした。

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 台風による暴風に備え、騎乗馴致用のラウンドペンを補強します。取り囲む板もすべて取り外しました。

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通常使用時のラウンドペンです。

さて、前回の宮崎からの日誌では馬体重の日内変動」についてデータを示しました。今回は管囲の日内変動についてです。

○ 管囲の日内変動

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管囲の計測。測定位置や巻尺の締め具合、馬の立ち方などに注意して計測します。

管囲とは馬の管骨(球節と腕節の間にある長骨)部分中間の太さを示す値で、骨の太さを示す指標ともいえます。一般に左前肢で測定を行い、馬を売買するセリ市場などでは体高や胸囲などとあわせて個体ごとに公表されます。この太さから馬の丈夫さを推し量る人もいる重要な数値なのですが、1ミリ単位で発表されるこの数値の計測は比較的難しく、計測者による誤差が出やすい指標ともいえます。計測の際は測定位置(正確に管骨の中位)、巻尺の締め具合(管部を圧迫するほどは締めない)、馬の立ち方(四肢に均一に体重をかけてまっすぐに立った状態)などに注意して、同一の者が計測した値を比較するべきでしょう。昨年宮崎で育成した育成馬(現2歳)は、管囲の平均値が19月:牡馬(19.1cm)牝馬(18.8cm)、24月:牡馬(19.7cm)牝馬(19.7cm)で、半年近くの間に大きく成長したことがわかります。当場は、毎回同一の条件(測定部位、時間、測定者など)で測定することを心がけています。

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今夏、1歳育成馬(牝馬1頭)の両前肢の管囲の変化を追跡調査しました。計測は朝夕2回、9日間実施しました。その結果、図1のようにほぼ毎日、朝よりも夕方の値が大きい(太い)というデータが得られ、管囲にもある程度の日内変動が認められました。図2に示すとおり、その変動幅は平均すると左前肢で2.1mm、右前肢で2.3mmでした。なお朝→夕、または夕→翌朝の最大変動幅は6mmでした。

データを取った育成馬は、夜間放牧(涼しい夜間は放牧、暑い昼間は厩舎で静養)をしていました。詳細には、①朝8時に放牧地から厩舎に戻り、管囲計測後軽運動、②朝830分と昼15時に厩舎で餌付け(合計3kg)、③夕方16時に管囲計測後、放牧(以降朝まで夜間放牧)といった管理でした。

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夕方の値が大きくなる主要因は、骨が太くなるわけではなく、管囲計測部分にある屈腱領域がむくむのではないかと考えられます。

人の場合でも足のむくみに悩まされる方は多いですね。その原因は、立ち仕事や乗り物への乗車などで同じ姿勢を長時間続けるたり、運動不足により全身の血行が悪くなり、不要な水分が下半身に溜まってしまうことが原因です。予防には、足踏みや足首を回すなど、足の筋肉を動かすことが大切です。今回の管部周囲のむくみも、昼間を過ごす厩舎内では運動量が制限されるため、血行が悪くなりむくんだのだと考えられます。

経験的には、夜間放牧を終え騎乗調教期に入った秋季以降の育成馬では、これほどの日内変動はないように感じています。今後は秋季以降の計測や、屈腱部のエコー検査とあわせて計測することで、さらに知見を得たいと考えています。

     ビッグキャンドルの07

Big Dream Stables宮崎育成牧場で育成中の24頭の中から注目!?1頭をご紹介します。名前はビッグキャンドルの07(父は新種牡馬:バゴ)で通称「キャンドル」です。サマーセールにて、350万円(税抜)で購買しました。小ぶりな体(9月末現在、宮崎で最軽量の401kg)ですが、闊達な動きが目立つ牝馬です。

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819日 サマーセールでの購買時に撮影

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925日 宮崎育成牧場にて撮影

「キャンドル」については、その成長などを次号以降でも紹介していきます。必ずしも順調なことばかりではないとも思いますが、1頭の育成馬がどのような過程を経て競走馬を目指していくのかをお知らせできるのではないかと考えています。

馬体重の日内変動について

前回、宮崎からの日誌では「馬体重の変動」を話題として、長時間輸送等による30kgもの体重減が数日間で回復する例をお伝えしました。今回は1日の中でどれだけ体重が変動するかについての話です。なお、日内変動といっても朝と夕方のみの比較ですのでご了承ください。

● 体重の日内変動

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上の図1は夏季の連続9日間、朝・夕の体重を計測したものです。これをみますと、1歳の育成馬(牝馬)と14歳の乗馬(去勢馬)の2頭とも、夕方に比べて朝の馬体重が増加していることがわかります。この9日間を平均すると、1日の変動幅は乗馬で9kg、育成馬で5kgとなりました(下の図2)。これは、65kg の大人に換算すると0.91.3kgほどの変動幅です。なお1日の最大変動幅は乗馬で15kg、育成馬で13kgでした。

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ちなみにこの2頭は毎日一緒に放牧されていて(2頭のみ)、計測開始の1週間前から、涼しい夜間は放牧、暑い昼間は厩舎で静養というパターンで管理していました。もう少し詳しくいいますと、①朝8時に放牧地から厩舎に戻り、体重計測後に軽い運動、②厩舎にて、830分と15時に餌付け(太りやすい14歳乗馬は合計1kg1歳育成馬は合計3kg)、③16時に体重計測後、放牧(以降朝まで夜間放牧)といった管理でした。

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2頭で仲良く放牧中。今回データをとった育成馬(右)と乗馬(左)です。

朝の体重がなぜ増加したかといいますと、夜間放牧での十分な青草の採食などの理由が、逆に夕方の減少は、厩舎での制限された餌の量や昼の暑さによる消耗などの理由が考えられます。特に14歳乗馬の方は太りやすい傾向でしたので、昼間の餌の量が少なかったこと(夜間の青草採取量が多かったであろうこと)が、変動幅を大きくした要因といえるでしょう。厩舎の馬房内で管理されている競走馬の場合は、これほどの変動幅はないのかもしれません。

また興味深いことに図1をみると、前半の4日間に比べ後半の5日間で、2頭とも同じように変動の幅が大きくなる傾向がみられました。原因は不明ですが、気象条件や夜間放牧中の運動量が一因と思われます。蒸し暑い日も雨の日も夜間放牧は継続されます。天候のほかにも小動物の出現や街の騒音などに驚いて走り出すなど夜間の運動量も日によって変化があったのでしょう。馬は群れで行動する動物ですし、特に仲良く寄り添っていたこの2頭は、ほぼ同じ運動量であったと思われることも、同一の変動傾向がみられた理由ではないかと考えています。

     宮崎の育成馬24頭が揃いました。

Big Dream Stables 宮崎育成牧場の今シーズンのラインナップが揃いました。7月のセレクションセール購買牡馬4頭(当初は日高育成牧場で繋養)と8月のサマーセール購買馬13頭のあわせて17頭が95日に入厩しました。

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今回入厩した8月購買馬たちはしばらく夜間放牧を継続し、馬体の成長を促がします。写真は朝、集牧前の8月購買牡馬4頭です。先頭はタヒチアンブリーズの07(父:ボストンハーバー)。後続は左からバルジの07(父:タップダンスシチー)、ホットマイハートの07(父:スパイキュール)、エイダイヒロインの07(父:クロフネ)。

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台風13号が過ぎ去った920日より、7月購買馬を中心に、騎乗のための馴致をスタートさせました。馬はスラムインの07(父:ゼンノロブロイ)。

輸送による馬体重の変動(宮崎)

宮崎は暑い日が続き、育成馬を担当する私たちは毎日いい汗をかいています。でも夏バテで食欲が低下し、体重が落ちる人もいますし、水分の補給を怠ると熱中症などにつながりやすい時期でもあります。今回は「馬体重の変動」が話題です。

JRAではこの夏の小倉記念・札幌記念などの出走予定馬について、「調教後の馬体重」として、レースの34日前(水曜か木曜)の体重を発表しています。ただし、競走馬の体重は変動も大きく、健康な時でも一日に10kg以上も変わることがあると説明されています。一般に競走馬では、12分間強い運動を行った場合で約1ℓ(1kg)、1時間の運動で約11ℓ(11kg)の発汗があるといわれており、1回の排糞や排尿で2kg以上減ったりもします。

それでは1歳の育成馬ではどうでしょうか。育成馬の3日間での体重変動について、やや極端な例を示します。

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上の図は17月に入厩した育成馬4頭(牡馬)について、入厩時(入厩日の放牧後)と3日後の馬体重を計測したものです。最大では実に33kg!4頭の平均でも30kgの変動を示しています。これを65kgの大人に置き換えると実に60kgにまで減じたことになります。その要因としては入厩時27時間の長時間輸送による消耗が挙げられます。輸送時は馬運車内の環境に配慮して塵埃の発生につながる乾草の給餌を行いません。また、疝痛予防の観点からも、餌の量は意識的に減らしています。実際には馬自身の食欲も減退する場合がほとんどです。つまり、排糞・排尿、発汗に対し、採食量が大幅に減じることとなります。なお、給水は十分に行う必要があります。もうひとつの要因としては最初の集団放牧による消耗(4頭の順位付けが定まるまで、暑さの中、飲水もせずに発汗するほど走り回るため)です。

これほどの変動はあまり好ましいことではありませんが、この4頭は入厩後体温の上昇や食欲の減退もなく、体重も安定し、順調に放牧を継続しています。つまり一見健康で順調に入厩した場合でも、入厩時の体重は通常体重よりも大幅に減じており、3日間で30kg増加して、ほぼ正常まで回復したものと考えられます。育成馬入厩に際しては、輸送中の健康管理(体温計測、温度管理、換気、飲水、飼葉、補液)や入厩当初の放牧地における飲水確認(必要に応じて飲水場まで引いて行く)に特に気を配っています。暑熱期における水分の補給は人馬を問わず大切なことです。

     セレクト・セレクションセール購買の牝馬2頭も入厩しました。

7月のセレクトセール・セレクションにおけるJRA購買のうち、2頭の牝馬が87日に入厩しました。血統、馬体ともたいへん期待のもてる楽しみな2頭で、すでに九州市場で購買し入厩済みのゲイリーアミューズの07(父は新種牡馬ボーンキング)とともに、夜間放牧(16時~8時まで)を開始しています。3頭の新たな群れはとても仲良く、順調なスタートをきっています。

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北海道内(静内・早来)から宮崎への輸送は日本の本土を縦断する旅で、まる2日間に近い長距離輸送です。写真は函館から青森に向けての高速フェリー(本年5月に就航した東日本フェリーの通称「ナッチャンワールド」)への馬運車乗り込み風景です。従来船なら4時間近くを要する青森までを2時間で結びます。馬運車の運転席左横モニターには車内の馬の様子がきれいに映し出され、常に監視が可能です。

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仲良く牝馬3頭で放牧中です。中央に九州産馬ゲイリーアミューズの07(父:ボーンキング)をはさみ、左のタイキフレグランスの07(父:サクラバクシンオー)は、重賞勝馬アポロティアラの半妹で、体高158.5cmとひときわ大きな馬格です。右のスーパードレスの07(父:キングカメハメハ)は2歳の短距離でレコード勝ちしている母に、先日の函館2歳ステークスを勝った種牡馬という期待の配合です。

1歳JRA育成馬が入厩しました(宮崎)

428日のJRAブリーズアップセールで売却された2歳馬たちが、続々とデビューする新馬戦(メイクデビュー)の季節となりました。

一方、「Big Dream Stables」宮崎育成牧場は次世代にむけてのスタートをきりました。78日の八戸市場でJRAが購買した4頭(すべて牡馬)の1歳馬が710日の朝、入厩しました。

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78日の八戸市場(青森)せり風景。景気の低迷もあってか他の市場同様売上を下げましたが、マイネレーツェル号(本年のフィリーズレビュー馬)やタムロチェリー号(01年最優秀2歳牝馬でJRA宮崎の育成馬)を輩出した実績ある市場。

まる1日以上の長時間輸送を経て宮崎に到着した1歳馬たちは、まず馬体の特徴や怪我のチェックおよび尿の検査を実施してから馬房でひと休みです。宮崎は連日30度を超える猛暑が続いていますが、この日からの数日間は風もあって比較的涼しく感じる気候でした。東北で育った馬たちにとっては、いい導入日になったといえます。ただ若馬にとって大きな環境の変化になるので、数日間は体調や怪我に細心の注意を払い、暑熱対策として扇風機を使用し、風量もこまめに調整しています。

さて、ひと休みした後はビッグイベントともいえる最初の放牧に向かいます。全馬青森産ですが、それぞれ違う牧場出身の4頭をはじめて同じ場所に放牧する瞬間です。

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710日、到着後最初の放牧に向かいます。

放牧早々、ボスの座を強く主張するチアズフリート07(父キンググローリアス)が他の3頭に次々と攻撃を仕掛けます。特に牡馬は噛み付いたり蹴りあったりで、少々の怪我は覚悟の上で放牧しますが、フェンスの付近でやりあったり、あまりにもひどい攻撃など危険の高い情況は避けられるように、職員がしばらく監視を続けます。最後まで抵抗していたプリンセスホーラーの07(父は新種牡馬マイネルセレクト)が「降参」のサインを出すまで概ね20分間、チアズフリートの07は全身汗だくで走り、他の3頭に攻撃を続けました。とりあえず同馬がボスに君臨したようで、群れはほぼ落ち着き、幸い怪我もみられませんでした。

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黒鹿毛馬チアズフリートの07(父キンググローリアス)が栗毛馬プレゼントの07(父は新種牡馬バゴ)に噛み付いて離そうとしません。

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711日には夜間放牧を開始しました。左からクリスタルクリアの07(父キャプテンスティーヴ)、チアズフリートの07(父キンググローリアス)、プレゼントの07(父は新種牡馬バゴ)、プリンセスホーラーの07(父は新種牡馬マイネルセレクト)の青森産4頭です。

翌日には群れもすっかり安定し、夜間放牧を開始しました。極端な暑さの日中を避け、概ね夕方4時から朝8時まで放牧します。青草を十分に採食し、群れで適度な運動をすることで、基礎体力を養成し、馬体の成長を待ちます。9月に始まる騎乗馴致までは、人との信頼関係を築き、扱いやすい馬になるよう、手をかけて管理していきたいと思います。

     九州産育成馬も入厩しています。

実はこれより前の530日、入厩一番乗りはゲイリーアミューズの07(牝・父は新種牡馬ボーンキング)でした。すでに十分な引き馬・手入れの馴致がなされ、ウォーキングマシンやゲートの周り、調教トラック内など様々な場所での引き運動を実施しています。九州市場(5/12)で購買した同馬は、数少ない地元九州産馬としても注目されます。ちなみに07年のサラブレッド生産頭数(7516頭)に占める九州産(98頭)の割合は1.3%で、95.6%は北海道産となっています。

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九州産馬ゲイリーアミューズの07(牝・父は新種牡馬ボーンキング)

JRA育成馬展示会を実施しました(宮崎)

前回の育成馬日誌(宮崎)でお知らせしたとおり、324日(月)13時から、JRA育成馬展示会を開催しました。

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「比較展示」の様子。写真のインディペンデンスの06(父シルバーチャーム)には多くの人の注目が集まりました。

前日1日中降り続いた雨もあがって快晴となり、絶好の日和の中、馬主・調教師・生産者の方々およびファンの皆様で約200名のご来場をいただきました。中には北海道の馬産地から足を運んでいただいた方も少なくはなく、大変感謝しております。

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比較展示は芝生の上で内向きに3頭×2列で実施しました。

まずは2歳育成馬全24頭を間近でご覧いただく「比較展示」からスタートです。本年の展示では例年の8頭×3組展示から、6頭×4組展示に変更してみました。これは限られた展示エリアの中で、近くの他馬を気にせずに、一頭一頭ゆったりご覧いただけるようにとの考えからです。結果として大変スムーズに運んだのですが、事前には近くに他馬がいないことで、馬が寂しがるのではとの危惧もありました。事前に何度となく、展示の練習を繰り返したこともよかったと思いますが、大勢の人に囲まれると意外に馬は大人しくできるようにも思われます。

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「調教供覧」前のウォーミングアップを内馬場(500mコース)で実施します。先頭はアドラーの06(父アグネスタキオン)、右後はミスバンダムの06(父サニングデール)。

続いての「調教供覧」では、現時点で十分な調教をお見せできる(怪我、病気の2頭を除く)全22頭を供覧しました。

昨年までも全頭みたいといったご要望を多くいただいていましたので、昨年までの倍近い頭数を、2鞍に分けて供覧させていただきましたが、多くのお客様に遅くまでご覧いただき感謝しております。

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調教供覧の様子。左はラベンダーノートの06(父ジェニュイン)、右がラブイズトゥルーの06(父スペシャルウィーク)。ラスト2ハロンを15.0-12.4

 

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押えきれない手ごたえの左ローズレディの06(父クロフネ)と、右メガミグリーンの06(父マヤノトップガン)。ラスト2ハロンを14.0-12.0。

宮崎はなんといいましても、気候が温暖で、快晴日数が全国でもトップクラスです。放牧地はエバーグリーンで、牧草は年間を通じて採食することができますので、特に冬季の競走馬育成に好適な地であることは間違いありません。

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騎乗後はグラスピッキングを実施。リラックスした雰囲気の中、多くの関係者の方が青々とした放牧地まで足を運んでくださいました。

宮崎育成牧場では、大きな舞台で活躍できる馬を輩出する夢をもっています。そして、夢を夢で終わらせないために、JRA育成馬厩舎をビッグ・ドリーム・ステイブル(Big Dream Stables)と名づけ、その夢に向かってステップアップしていこうとしています。

今後育成馬の調教は、420日の中山競馬場への出発まで、火曜を除く毎日実施されます。馬主・調教師・生産者等関係者の皆様にはいつでもご来場いただきたくお待ちしております。

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育成馬厩舎入り口にあるBig Dream Stablesの石碑と、満開の花をつけたタムロチェリー号(当場育成のGⅠ勝馬)記念植樹のサクランボ。

宮崎へJRA育成馬を見に来てください(宮崎)

2008 JRAブリーズアップセール428日・中山競馬場)に上場予定の2歳馬に興味をお持ちの馬主・調教師・生産者等関係者の皆様、宮崎まで育成馬を見にいらっしゃいませんか?。宮崎育成牧場では324日(月)13時~15時、現在育成・調教中の24頭の2歳育成馬の展示会を開催いたします。この展示会では全24頭を間近でご覧いただく「比較展示」および約12頭の調教をご覧いただく「調教供覧」を実施します。また15時すぎより17時頃まで他馬の調教供覧(12頭程度)、およびご要望の馬の自由展示も実施しますので、お時間の許す方はこちらも是非ご覧下さい。なお、展示会はファンの皆様にもご覧いただけますが、一部ご入場いただけないエリアもありますことをご了承願います。

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「比較展示」の様子(昨年の展示会)

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「調教供覧」の様子(昨年の展示会)

JRA育成馬の購買を検討されている馬主・調教師等関係者の皆様は、324日以外の日でもご覧いただけます。事前に宮崎育成牧場(電話0985-25-3448)まで連絡をいただけると幸いです。通常調教は8時~11時頃、馬の展示はそれ以降の時間にご覧いただけますが、火曜日は休馬日、また420日以降はブリーズアップセールに向けて全馬中山競馬場に移動します。

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スタッフ一同、ご来場をお待ちしております。

それでは初めていらっしゃる方のために簡単に道のりをご案内します。

本州からのご来場はなんといっても飛行機の利用が便利です。宮崎空港には羽田から16便、伊丹から11便、名古屋(中部)から3便、広島から1便が毎日運航しています。空港から宮崎育成牧場まではタクシーで約25分の近さです。昔のなごりでタクシーには「宮崎競馬場」と伝えた方がとおりがいいようです。

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育成牧場は宮崎の中心街より車で7分程度の位置です。一周1,600mのメイントラックの内側には500mのショートトラック、放牧地、採草地などがあります。

また、育成牧場から徒歩3分の位置にある宮崎神宮駅には、宮崎空港駅から電車で1530分・340円で到着できます。ただしこれは本数がかなり少ないので、宮崎空港からバスで宮崎駅(25分・400円)→タクシーで宮崎育成牧場(7分程度・約1000円)といったルートが現実的かと思われます。

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厩舎の間近を電車が頻繁に通ります。

さて調教の近況ですが、3月初旬現在、週2回、1000m1,100mのインターバルをおいたスピード調教を実施しています。それぞれ最後の3ハロンを19秒、17秒の指示ですが、ほとんどの馬が楽にタイムを出せています。

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馬は左がアドラーの06(父:アグネスタキオン、母父:Nureyevという期待の良血馬です)、右はナガラフラッシュの06(父:マンハッタンカフェ、母は重賞2勝馬。柔軟性に富む馬体です。)

馬をみていただくためのポイント(引き馬)(宮崎)

南国・宮崎もさすがに2月には朝・夕冷え込む日があります。先日も雨が降った翌朝に気温が氷点下まで下がったため、馬道が凍結する事態になりました。しかしこれはめったにみられることではなく、ある意味貴重な状況でした。

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7時 ハローを掛けても、砂は硬く固まったままです。

しかしさらにハロー掛けを行うと、気温が上がってきたこともあり、午前8時すぎには固まりも融け、十分調教できるまでに回復しました。やはり日中は「暖かい」と感じられる日が多く、さすがにプロ野球キャンプ地のメッカです(ホークスのキャンプ地「アイビースタジアム」までは、当場から車で15分程度です)。

ですから採草地の牧草も、年中青々とした状態を保っています。JRA育成馬たちは放牧中もこの青草を採食しますが、宮崎育成牧場では毎日この新鮮な青草を刈り取り、馬房の中でも十分に給与しています。他の生産・育成地ではなかなか得がたい宮崎での育成のメリットであると思います。

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青々としたイタリアンライグラスの採草地の奥を、常歩運動しているJRA育成馬達がみえますでしょうか?

それでは本題の「馬をみていただくためのポイント」にいきましょう。今回は引き馬展示についてです。馬を引いてみせる時は、常歩、速歩ともキビキビと歩かせることが重要です。

JRA宮崎育成牧場・日高育成牧場では、次のような手順で行うこととしています。

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  引き馬展示の手順 ①~④

①検査者には、馬の左を向けて立たせる。

②検査者から常歩で遠ざかり、右回りで回転して真っ直ぐ検査者に向かって戻る。

③右回りでおにぎり形に速歩。

④馬の右を向けて立たせる。

この方法であれば、検査する方が動かなくとも、馬全体を観察することができます。なお、速歩検査では、馬の頭頚の動きを阻害しないように、引き綱は少し長めに持つのがいいでしょう。ただしこの速歩検査は事前に十分な練習が必要であり、簡単なものではありません。1歳の秋・冬以降であれば、実際の調教での動きを確認することもできますが、それ以前の馬の場合、その闊達さや跛行を確認するにはこの方法が大変有効です。1歳夏に育成馬を購買するJRAでもこの検査を大変重要視しています。

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常歩・速歩とも右回りで回転させます

常歩を要求されたときは、直線的に10m程度遠ざかり、右回りで回転して、検査者に向かって戻ってきます。右回りでの回転には、馬を制御しながら検査者に対して回転時の歩様を見やすくする意味があります。また、狭い廊下などで回転する際には、回転により壁にぶつかることなどで起こるケガを防止できます。

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右回りのコツ:内側に押しながら

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常歩・速歩とも検査者に肢の動きがよくみえるよう、真っ直ぐ戻ることが重要です。

馬をみていただくためのポイント(宮崎)

馬をみていただく際に、馬の保持者はどのような点に注意したらよいのでしょうか。まず、検査する方に馬をみていただく時は、動かないように左側を向けて、写真のように正しく立たせること。そしてタテガミは頚のラインを見せるために右側に寝かせることが基本中の基本です。

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 ヤナビの06さんもきちんとポーズをとっています。

また、馬を検査する方の動きに伴って保持者は位置を変化させる必要があります。その基本は検査者が馬を見渡せ、保持者から検査者の位置が確認でき、検査者にとって安全なポジションであることです。

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 駐立展示における保持者の位置の変化。例えば検査者が①の場所にいる時は、保持者は左手で手綱の根本を持ち検査者をみる(①の位置)。検査者が②の位置に動いたならば保持者は手綱の根本を右手に持ち変え検査者をみる(②の位置)。

また検査する方に馬を引いてみせる時は、常歩、速歩ともキビキビと歩かせることが重要です。そのポイントについては次回掲載いたします。

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 2月に入り1,600m馬場での調教は単走・併走を織り交ぜて、駈歩の総距離は3,100mまで、最後の2ハロンを21秒‐17秒ほどで実施しています。写真はモーリフェアリーの06(牡:父は新種牡馬プリサイスエンド)23日)

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 最後は調教中のおぼっちゃま?馬ヒロジュエルの06。放牧中とは一変した精悍な表情でやる気満々。