馬体重の日内変動について

前回、宮崎からの日誌では「馬体重の変動」を話題として、長時間輸送等による30kgもの体重減が数日間で回復する例をお伝えしました。今回は1日の中でどれだけ体重が変動するかについての話です。なお、日内変動といっても朝と夕方のみの比較ですのでご了承ください。

● 体重の日内変動

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上の図1は夏季の連続9日間、朝・夕の体重を計測したものです。これをみますと、1歳の育成馬(牝馬)と14歳の乗馬(去勢馬)の2頭とも、夕方に比べて朝の馬体重が増加していることがわかります。この9日間を平均すると、1日の変動幅は乗馬で9kg、育成馬で5kgとなりました(下の図2)。これは、65kg の大人に換算すると0.91.3kgほどの変動幅です。なお1日の最大変動幅は乗馬で15kg、育成馬で13kgでした。

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ちなみにこの2頭は毎日一緒に放牧されていて(2頭のみ)、計測開始の1週間前から、涼しい夜間は放牧、暑い昼間は厩舎で静養というパターンで管理していました。もう少し詳しくいいますと、①朝8時に放牧地から厩舎に戻り、体重計測後に軽い運動、②厩舎にて、830分と15時に餌付け(太りやすい14歳乗馬は合計1kg1歳育成馬は合計3kg)、③16時に体重計測後、放牧(以降朝まで夜間放牧)といった管理でした。

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2頭で仲良く放牧中。今回データをとった育成馬(右)と乗馬(左)です。

朝の体重がなぜ増加したかといいますと、夜間放牧での十分な青草の採食などの理由が、逆に夕方の減少は、厩舎での制限された餌の量や昼の暑さによる消耗などの理由が考えられます。特に14歳乗馬の方は太りやすい傾向でしたので、昼間の餌の量が少なかったこと(夜間の青草採取量が多かったであろうこと)が、変動幅を大きくした要因といえるでしょう。厩舎の馬房内で管理されている競走馬の場合は、これほどの変動幅はないのかもしれません。

また興味深いことに図1をみると、前半の4日間に比べ後半の5日間で、2頭とも同じように変動の幅が大きくなる傾向がみられました。原因は不明ですが、気象条件や夜間放牧中の運動量が一因と思われます。蒸し暑い日も雨の日も夜間放牧は継続されます。天候のほかにも小動物の出現や街の騒音などに驚いて走り出すなど夜間の運動量も日によって変化があったのでしょう。馬は群れで行動する動物ですし、特に仲良く寄り添っていたこの2頭は、ほぼ同じ運動量であったと思われることも、同一の変動傾向がみられた理由ではないかと考えています。

     宮崎の育成馬24頭が揃いました。

Big Dream Stables 宮崎育成牧場の今シーズンのラインナップが揃いました。7月のセレクションセール購買牡馬4頭(当初は日高育成牧場で繋養)と8月のサマーセール購買馬13頭のあわせて17頭が95日に入厩しました。

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今回入厩した8月購買馬たちはしばらく夜間放牧を継続し、馬体の成長を促がします。写真は朝、集牧前の8月購買牡馬4頭です。先頭はタヒチアンブリーズの07(父:ボストンハーバー)。後続は左からバルジの07(父:タップダンスシチー)、ホットマイハートの07(父:スパイキュール)、エイダイヒロインの07(父:クロフネ)。

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台風13号が過ぎ去った920日より、7月購買馬を中心に、騎乗のための馴致をスタートさせました。馬はスラムインの07(父:ゼンノロブロイ)。

輸送による馬体重の変動(宮崎)

宮崎は暑い日が続き、育成馬を担当する私たちは毎日いい汗をかいています。でも夏バテで食欲が低下し、体重が落ちる人もいますし、水分の補給を怠ると熱中症などにつながりやすい時期でもあります。今回は「馬体重の変動」が話題です。

JRAではこの夏の小倉記念・札幌記念などの出走予定馬について、「調教後の馬体重」として、レースの34日前(水曜か木曜)の体重を発表しています。ただし、競走馬の体重は変動も大きく、健康な時でも一日に10kg以上も変わることがあると説明されています。一般に競走馬では、12分間強い運動を行った場合で約1ℓ(1kg)、1時間の運動で約11ℓ(11kg)の発汗があるといわれており、1回の排糞や排尿で2kg以上減ったりもします。

それでは1歳の育成馬ではどうでしょうか。育成馬の3日間での体重変動について、やや極端な例を示します。

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上の図は17月に入厩した育成馬4頭(牡馬)について、入厩時(入厩日の放牧後)と3日後の馬体重を計測したものです。最大では実に33kg!4頭の平均でも30kgの変動を示しています。これを65kgの大人に置き換えると実に60kgにまで減じたことになります。その要因としては入厩時27時間の長時間輸送による消耗が挙げられます。輸送時は馬運車内の環境に配慮して塵埃の発生につながる乾草の給餌を行いません。また、疝痛予防の観点からも、餌の量は意識的に減らしています。実際には馬自身の食欲も減退する場合がほとんどです。つまり、排糞・排尿、発汗に対し、採食量が大幅に減じることとなります。なお、給水は十分に行う必要があります。もうひとつの要因としては最初の集団放牧による消耗(4頭の順位付けが定まるまで、暑さの中、飲水もせずに発汗するほど走り回るため)です。

これほどの変動はあまり好ましいことではありませんが、この4頭は入厩後体温の上昇や食欲の減退もなく、体重も安定し、順調に放牧を継続しています。つまり一見健康で順調に入厩した場合でも、入厩時の体重は通常体重よりも大幅に減じており、3日間で30kg増加して、ほぼ正常まで回復したものと考えられます。育成馬入厩に際しては、輸送中の健康管理(体温計測、温度管理、換気、飲水、飼葉、補液)や入厩当初の放牧地における飲水確認(必要に応じて飲水場まで引いて行く)に特に気を配っています。暑熱期における水分の補給は人馬を問わず大切なことです。

     セレクト・セレクションセール購買の牝馬2頭も入厩しました。

7月のセレクトセール・セレクションにおけるJRA購買のうち、2頭の牝馬が87日に入厩しました。血統、馬体ともたいへん期待のもてる楽しみな2頭で、すでに九州市場で購買し入厩済みのゲイリーアミューズの07(父は新種牡馬ボーンキング)とともに、夜間放牧(16時~8時まで)を開始しています。3頭の新たな群れはとても仲良く、順調なスタートをきっています。

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北海道内(静内・早来)から宮崎への輸送は日本の本土を縦断する旅で、まる2日間に近い長距離輸送です。写真は函館から青森に向けての高速フェリー(本年5月に就航した東日本フェリーの通称「ナッチャンワールド」)への馬運車乗り込み風景です。従来船なら4時間近くを要する青森までを2時間で結びます。馬運車の運転席左横モニターには車内の馬の様子がきれいに映し出され、常に監視が可能です。

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仲良く牝馬3頭で放牧中です。中央に九州産馬ゲイリーアミューズの07(父:ボーンキング)をはさみ、左のタイキフレグランスの07(父:サクラバクシンオー)は、重賞勝馬アポロティアラの半妹で、体高158.5cmとひときわ大きな馬格です。右のスーパードレスの07(父:キングカメハメハ)は2歳の短距離でレコード勝ちしている母に、先日の函館2歳ステークスを勝った種牡馬という期待の配合です。

1歳JRA育成馬が入厩しました(宮崎)

428日のJRAブリーズアップセールで売却された2歳馬たちが、続々とデビューする新馬戦(メイクデビュー)の季節となりました。

一方、「Big Dream Stables」宮崎育成牧場は次世代にむけてのスタートをきりました。78日の八戸市場でJRAが購買した4頭(すべて牡馬)の1歳馬が710日の朝、入厩しました。

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78日の八戸市場(青森)せり風景。景気の低迷もあってか他の市場同様売上を下げましたが、マイネレーツェル号(本年のフィリーズレビュー馬)やタムロチェリー号(01年最優秀2歳牝馬でJRA宮崎の育成馬)を輩出した実績ある市場。

まる1日以上の長時間輸送を経て宮崎に到着した1歳馬たちは、まず馬体の特徴や怪我のチェックおよび尿の検査を実施してから馬房でひと休みです。宮崎は連日30度を超える猛暑が続いていますが、この日からの数日間は風もあって比較的涼しく感じる気候でした。東北で育った馬たちにとっては、いい導入日になったといえます。ただ若馬にとって大きな環境の変化になるので、数日間は体調や怪我に細心の注意を払い、暑熱対策として扇風機を使用し、風量もこまめに調整しています。

さて、ひと休みした後はビッグイベントともいえる最初の放牧に向かいます。全馬青森産ですが、それぞれ違う牧場出身の4頭をはじめて同じ場所に放牧する瞬間です。

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710日、到着後最初の放牧に向かいます。

放牧早々、ボスの座を強く主張するチアズフリート07(父キンググローリアス)が他の3頭に次々と攻撃を仕掛けます。特に牡馬は噛み付いたり蹴りあったりで、少々の怪我は覚悟の上で放牧しますが、フェンスの付近でやりあったり、あまりにもひどい攻撃など危険の高い情況は避けられるように、職員がしばらく監視を続けます。最後まで抵抗していたプリンセスホーラーの07(父は新種牡馬マイネルセレクト)が「降参」のサインを出すまで概ね20分間、チアズフリートの07は全身汗だくで走り、他の3頭に攻撃を続けました。とりあえず同馬がボスに君臨したようで、群れはほぼ落ち着き、幸い怪我もみられませんでした。

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黒鹿毛馬チアズフリートの07(父キンググローリアス)が栗毛馬プレゼントの07(父は新種牡馬バゴ)に噛み付いて離そうとしません。

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711日には夜間放牧を開始しました。左からクリスタルクリアの07(父キャプテンスティーヴ)、チアズフリートの07(父キンググローリアス)、プレゼントの07(父は新種牡馬バゴ)、プリンセスホーラーの07(父は新種牡馬マイネルセレクト)の青森産4頭です。

翌日には群れもすっかり安定し、夜間放牧を開始しました。極端な暑さの日中を避け、概ね夕方4時から朝8時まで放牧します。青草を十分に採食し、群れで適度な運動をすることで、基礎体力を養成し、馬体の成長を待ちます。9月に始まる騎乗馴致までは、人との信頼関係を築き、扱いやすい馬になるよう、手をかけて管理していきたいと思います。

     九州産育成馬も入厩しています。

実はこれより前の530日、入厩一番乗りはゲイリーアミューズの07(牝・父は新種牡馬ボーンキング)でした。すでに十分な引き馬・手入れの馴致がなされ、ウォーキングマシンやゲートの周り、調教トラック内など様々な場所での引き運動を実施しています。九州市場(5/12)で購買した同馬は、数少ない地元九州産馬としても注目されます。ちなみに07年のサラブレッド生産頭数(7516頭)に占める九州産(98頭)の割合は1.3%で、95.6%は北海道産となっています。

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九州産馬ゲイリーアミューズの07(牝・父は新種牡馬ボーンキング)

JRA育成馬展示会を実施しました(宮崎)

前回の育成馬日誌(宮崎)でお知らせしたとおり、324日(月)13時から、JRA育成馬展示会を開催しました。

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「比較展示」の様子。写真のインディペンデンスの06(父シルバーチャーム)には多くの人の注目が集まりました。

前日1日中降り続いた雨もあがって快晴となり、絶好の日和の中、馬主・調教師・生産者の方々およびファンの皆様で約200名のご来場をいただきました。中には北海道の馬産地から足を運んでいただいた方も少なくはなく、大変感謝しております。

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比較展示は芝生の上で内向きに3頭×2列で実施しました。

まずは2歳育成馬全24頭を間近でご覧いただく「比較展示」からスタートです。本年の展示では例年の8頭×3組展示から、6頭×4組展示に変更してみました。これは限られた展示エリアの中で、近くの他馬を気にせずに、一頭一頭ゆったりご覧いただけるようにとの考えからです。結果として大変スムーズに運んだのですが、事前には近くに他馬がいないことで、馬が寂しがるのではとの危惧もありました。事前に何度となく、展示の練習を繰り返したこともよかったと思いますが、大勢の人に囲まれると意外に馬は大人しくできるようにも思われます。

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「調教供覧」前のウォーミングアップを内馬場(500mコース)で実施します。先頭はアドラーの06(父アグネスタキオン)、右後はミスバンダムの06(父サニングデール)。

続いての「調教供覧」では、現時点で十分な調教をお見せできる(怪我、病気の2頭を除く)全22頭を供覧しました。

昨年までも全頭みたいといったご要望を多くいただいていましたので、昨年までの倍近い頭数を、2鞍に分けて供覧させていただきましたが、多くのお客様に遅くまでご覧いただき感謝しております。

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調教供覧の様子。左はラベンダーノートの06(父ジェニュイン)、右がラブイズトゥルーの06(父スペシャルウィーク)。ラスト2ハロンを15.0-12.4

 

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押えきれない手ごたえの左ローズレディの06(父クロフネ)と、右メガミグリーンの06(父マヤノトップガン)。ラスト2ハロンを14.0-12.0。

宮崎はなんといいましても、気候が温暖で、快晴日数が全国でもトップクラスです。放牧地はエバーグリーンで、牧草は年間を通じて採食することができますので、特に冬季の競走馬育成に好適な地であることは間違いありません。

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騎乗後はグラスピッキングを実施。リラックスした雰囲気の中、多くの関係者の方が青々とした放牧地まで足を運んでくださいました。

宮崎育成牧場では、大きな舞台で活躍できる馬を輩出する夢をもっています。そして、夢を夢で終わらせないために、JRA育成馬厩舎をビッグ・ドリーム・ステイブル(Big Dream Stables)と名づけ、その夢に向かってステップアップしていこうとしています。

今後育成馬の調教は、420日の中山競馬場への出発まで、火曜を除く毎日実施されます。馬主・調教師・生産者等関係者の皆様にはいつでもご来場いただきたくお待ちしております。

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育成馬厩舎入り口にあるBig Dream Stablesの石碑と、満開の花をつけたタムロチェリー号(当場育成のGⅠ勝馬)記念植樹のサクランボ。

宮崎へJRA育成馬を見に来てください(宮崎)

2008 JRAブリーズアップセール428日・中山競馬場)に上場予定の2歳馬に興味をお持ちの馬主・調教師・生産者等関係者の皆様、宮崎まで育成馬を見にいらっしゃいませんか?。宮崎育成牧場では324日(月)13時~15時、現在育成・調教中の24頭の2歳育成馬の展示会を開催いたします。この展示会では全24頭を間近でご覧いただく「比較展示」および約12頭の調教をご覧いただく「調教供覧」を実施します。また15時すぎより17時頃まで他馬の調教供覧(12頭程度)、およびご要望の馬の自由展示も実施しますので、お時間の許す方はこちらも是非ご覧下さい。なお、展示会はファンの皆様にもご覧いただけますが、一部ご入場いただけないエリアもありますことをご了承願います。

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「比較展示」の様子(昨年の展示会)

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「調教供覧」の様子(昨年の展示会)

JRA育成馬の購買を検討されている馬主・調教師等関係者の皆様は、324日以外の日でもご覧いただけます。事前に宮崎育成牧場(電話0985-25-3448)まで連絡をいただけると幸いです。通常調教は8時~11時頃、馬の展示はそれ以降の時間にご覧いただけますが、火曜日は休馬日、また420日以降はブリーズアップセールに向けて全馬中山競馬場に移動します。

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スタッフ一同、ご来場をお待ちしております。

それでは初めていらっしゃる方のために簡単に道のりをご案内します。

本州からのご来場はなんといっても飛行機の利用が便利です。宮崎空港には羽田から16便、伊丹から11便、名古屋(中部)から3便、広島から1便が毎日運航しています。空港から宮崎育成牧場まではタクシーで約25分の近さです。昔のなごりでタクシーには「宮崎競馬場」と伝えた方がとおりがいいようです。

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育成牧場は宮崎の中心街より車で7分程度の位置です。一周1,600mのメイントラックの内側には500mのショートトラック、放牧地、採草地などがあります。

また、育成牧場から徒歩3分の位置にある宮崎神宮駅には、宮崎空港駅から電車で1530分・340円で到着できます。ただしこれは本数がかなり少ないので、宮崎空港からバスで宮崎駅(25分・400円)→タクシーで宮崎育成牧場(7分程度・約1000円)といったルートが現実的かと思われます。

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厩舎の間近を電車が頻繁に通ります。

さて調教の近況ですが、3月初旬現在、週2回、1000m1,100mのインターバルをおいたスピード調教を実施しています。それぞれ最後の3ハロンを19秒、17秒の指示ですが、ほとんどの馬が楽にタイムを出せています。

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馬は左がアドラーの06(父:アグネスタキオン、母父:Nureyevという期待の良血馬です)、右はナガラフラッシュの06(父:マンハッタンカフェ、母は重賞2勝馬。柔軟性に富む馬体です。)

馬をみていただくためのポイント(引き馬)(宮崎)

南国・宮崎もさすがに2月には朝・夕冷え込む日があります。先日も雨が降った翌朝に気温が氷点下まで下がったため、馬道が凍結する事態になりました。しかしこれはめったにみられることではなく、ある意味貴重な状況でした。

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7時 ハローを掛けても、砂は硬く固まったままです。

しかしさらにハロー掛けを行うと、気温が上がってきたこともあり、午前8時すぎには固まりも融け、十分調教できるまでに回復しました。やはり日中は「暖かい」と感じられる日が多く、さすがにプロ野球キャンプ地のメッカです(ホークスのキャンプ地「アイビースタジアム」までは、当場から車で15分程度です)。

ですから採草地の牧草も、年中青々とした状態を保っています。JRA育成馬たちは放牧中もこの青草を採食しますが、宮崎育成牧場では毎日この新鮮な青草を刈り取り、馬房の中でも十分に給与しています。他の生産・育成地ではなかなか得がたい宮崎での育成のメリットであると思います。

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青々としたイタリアンライグラスの採草地の奥を、常歩運動しているJRA育成馬達がみえますでしょうか?

それでは本題の「馬をみていただくためのポイント」にいきましょう。今回は引き馬展示についてです。馬を引いてみせる時は、常歩、速歩ともキビキビと歩かせることが重要です。

JRA宮崎育成牧場・日高育成牧場では、次のような手順で行うこととしています。

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  引き馬展示の手順 ①~④

①検査者には、馬の左を向けて立たせる。

②検査者から常歩で遠ざかり、右回りで回転して真っ直ぐ検査者に向かって戻る。

③右回りでおにぎり形に速歩。

④馬の右を向けて立たせる。

この方法であれば、検査する方が動かなくとも、馬全体を観察することができます。なお、速歩検査では、馬の頭頚の動きを阻害しないように、引き綱は少し長めに持つのがいいでしょう。ただしこの速歩検査は事前に十分な練習が必要であり、簡単なものではありません。1歳の秋・冬以降であれば、実際の調教での動きを確認することもできますが、それ以前の馬の場合、その闊達さや跛行を確認するにはこの方法が大変有効です。1歳夏に育成馬を購買するJRAでもこの検査を大変重要視しています。

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常歩・速歩とも右回りで回転させます

常歩を要求されたときは、直線的に10m程度遠ざかり、右回りで回転して、検査者に向かって戻ってきます。右回りでの回転には、馬を制御しながら検査者に対して回転時の歩様を見やすくする意味があります。また、狭い廊下などで回転する際には、回転により壁にぶつかることなどで起こるケガを防止できます。

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右回りのコツ:内側に押しながら

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常歩・速歩とも検査者に肢の動きがよくみえるよう、真っ直ぐ戻ることが重要です。

馬をみていただくためのポイント(宮崎)

馬をみていただく際に、馬の保持者はどのような点に注意したらよいのでしょうか。まず、検査する方に馬をみていただく時は、動かないように左側を向けて、写真のように正しく立たせること。そしてタテガミは頚のラインを見せるために右側に寝かせることが基本中の基本です。

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 ヤナビの06さんもきちんとポーズをとっています。

また、馬を検査する方の動きに伴って保持者は位置を変化させる必要があります。その基本は検査者が馬を見渡せ、保持者から検査者の位置が確認でき、検査者にとって安全なポジションであることです。

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 駐立展示における保持者の位置の変化。例えば検査者が①の場所にいる時は、保持者は左手で手綱の根本を持ち検査者をみる(①の位置)。検査者が②の位置に動いたならば保持者は手綱の根本を右手に持ち変え検査者をみる(②の位置)。

また検査する方に馬を引いてみせる時は、常歩、速歩ともキビキビと歩かせることが重要です。そのポイントについては次回掲載いたします。

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 2月に入り1,600m馬場での調教は単走・併走を織り交ぜて、駈歩の総距離は3,100mまで、最後の2ハロンを21秒‐17秒ほどで実施しています。写真はモーリフェアリーの06(牡:父は新種牡馬プリサイスエンド)23日)

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 最後は調教中のおぼっちゃま?馬ヒロジュエルの06。放牧中とは一変した精悍な表情でやる気満々。

皆様にみて、触れていただける馬づくり(宮崎)

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 突然ですが、宮崎イチの美女育成馬?ヤナビの06さん(父は新種牡馬ネオユニヴァース)からの問題です。「私は昨年のセリで買ってもらった中で、最もフツーの育成馬です。それはなぜかしら?

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 一方、宮崎イチのおぼっちゃま馬?ヒロジュエルの06くん(父はフサイチコンコルド)もなにか言ってます。「ホントは僕、宮崎で一番フツーの育成馬なんだよ」。

決してフツーとは思えない派手顔のこの二人、いったい何をいってるんでしょうか?

正解は「セリで購買したとき(1歳時)の価格」なんです。

日本では年間約8,000頭近いサラブレッドが生産されますが、そのうちの約1,000頭近くが1歳市場(セリ)で売却されます。この頭数は当歳市場(約350頭)や2歳市場(約200頭)よりずっと多く、宮崎の育成馬達もみんな昨年の1歳市場で売却された(といいますかJRAが購買した)馬なのです。

ヤナビの06さんをJRAが購買した価格こそ、ほぼ昨年の全国1歳市場での平均取引価格(約824万円)にあたるのです。ちなみにJRAが昨年購買し宮崎にやってきた馬達に限ると、その平均価格はちょっと割安でほぼヒロジュエルの06くん購買価格(683万円)にあたるというわけです。

この購買時価格はJRA育成馬の個別情報の一部なのですが、これ以外にもJRAでは皆様に育成馬をよく知っていただくための資料として、体の大きさ(体重や体高など)、調教実施状況、病歴およびくせなどを育成馬個体情報として開示しています。育成馬の価格は超高級車並ですから、車でいうパンフレットにあたるこれらの情報発信はますます充実させていきたいと考えています。

一方でパンフレットだけではなく、「自分はこんな馬ですよ」と実物を見て、触れて、ご納得いただける馬であることも重要です。すぐに暴れる、蹴るまたは触れさせないようでは、大きなマイナスポイントとなるわけです。現在行っている「調教」には、運動能力の向上のみならず、精神的な成長を促すことも含まれており、多くの皆様にみて、触れていただける馬づくりはその一部です。みて、触れていただくにはそのような状況をつくり練習していくことになります。人と馬とが信頼しあいながら、時間をかけて、繰り返し繰り返し実施することが大切です。

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駈歩調教後のクーリングダウン。324日の育成馬展示会にむけ、展示会場予定地である旧宮崎競馬場一等馬見所(スタンド)にはじめてやってきました(27日撮影)。

南国宮崎にやってきました!(宮崎)

今回から育成馬日誌(宮崎)を担当することとなりました。これまで様々の場面でお世話になってきた師匠(と呼ばせていただきます)の後任は重責ですが、このブログについては育成馬のこと、宮崎のことを楽しく広範に書き連ねていきたいと思います。

ところで当宮崎育成牧場の業務の柱は、年が明け2歳となったJRA育成馬たちを、4月、5月のセールに向けて仕上げていき、その過程で得られた様々の知見や成果を民間に普及することにあります。そのためには当たり前ですが多くの時間馬をみて、馬に触れてその変化を感じ取ることが重要です。私はこれまで5年間のデスクワークを楽しく過ごしすぎたため?か、不摂生ですっかり体がなまってしまいました。来年のダービー・オークスを目指し日々鍛錬中の育成馬とともに、私も体力を向上させていく必要がありそうです。がんばっていきますので、どうぞよろしくお願いします。

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112日の朝、宮崎育成牧場に虹のアーチ。この後気温がぐんぐん上昇して・・・・

さて、みちのく出身の私にとって九州地区に勤務するのははじめてです。こちらにきて、まず驚かされたのが、その想定外の温かさ(時には暑いほど)でした。 

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上の図は、私の勤務がスタートした19日から一週間の最高気温の推移です。この間の宮崎の最高気温は平均でなんと15!!。東京との差は5.5度、みちのくとは15度以上の差があります。そんなことは天気予報をみていれば誰でも知ってるよ、といわれそうですが、実際それぞれの地に住んでみると新鮮な驚きがありますよ。多分。

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12日の気温は23℃にまで上昇し、半そで姿で騎乗です。左から大きなストライドが魅力のシフォンケーキの06、ダイナミックな走りのラブイズトゥルーの06、期待の良血馬アドラーの06は額にハート型の星(白斑)があるんです。そして右端は新種牡馬シルバーチャーム期待の産駒インディペンデンスの06

もちろん寒い地方にはスキーにスケート、雪自体の美しさやワカサギの穴釣り、そしてなんといっても春が訪れたことへの感激、なんて色々楽しみもあるわけですが、しばらくはこの温かさに感謝しつつ、また新たな発見があるはずの宮崎の地を楽しみたいと思います。

併走での調教(宮崎)

明けましておめでとうございます。年が明けて、馬たちも、入厩したときよりも随分たくましくなってきたように感じます。現在は、500m馬場で準備運動(速歩1000m、駈歩1000m)後、1600m馬場で1000m1400mの距離をF22F20程度のスピードで調教しています。あまりスピードが遅すぎると馬が遊ぶので、遊ばないように徐々にベースとなるスピードを上げてしっかりと走ることを覚えさせています。また、12月から500m馬場での準備運動は併走で実施しています。一般に、併走での調教は2頭がお互いに走りたい気持ちを高めて走るスピード調教において実施します。しかし、この準備運動での併走運動は、競って速く走らせるというよりも、2列縦隊の状態で調教することで、馬を前後左右に他の馬がいることに慣らすことを目的としています。騎乗者も前と横の馬を意識しながら騎乗する必要があるので、より、馬をコントロールすることができます。また、500m馬場で同じ併走パートナーに慣らしていると、1600m馬場でスピード調教を実施する際にも安心して馬同士を近づけて走らせることが出来る効果もあります。競馬は集団で走ることが要求されるので、そのエッセンスを分解したトレーニングが縦列や併走による調教であると思います。

JRA人事異動により、私がこの育成馬日誌を書くのは今回で最後になりました。次回からは私の後任が引き継ぎますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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500m馬場での牝馬の準備運動風景です。リードホースを先頭につけて併走で実施しています。(126日)

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脚浴場の通過に慣らしています。ひざから下が水につかるまで徐々に水を増やし、調教後に肢についた砂を洗い落とし、肢を冷やすことができます。後ろはミスバンダムの06(牡・父サニングデール)。(1220日)

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この日はハートレートモニターを装着してⅤ200を測定しました。内(向かって右)がオグラテスコの06(牝・父キッケンクリス)、外(向かって左)がローズレディの06(牝・父クロフネ)。(1227日)

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(向かって右)アドラーの06(牡・父アグネスタキオン)、外(向かって左)はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(1227日)