1歳JRA育成馬が入厩しました(宮崎)

428日のJRAブリーズアップセールで売却された2歳馬たちが、続々とデビューする新馬戦(メイクデビュー)の季節となりました。

一方、「Big Dream Stables」宮崎育成牧場は次世代にむけてのスタートをきりました。78日の八戸市場でJRAが購買した4頭(すべて牡馬)の1歳馬が710日の朝、入厩しました。

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78日の八戸市場(青森)せり風景。景気の低迷もあってか他の市場同様売上を下げましたが、マイネレーツェル号(本年のフィリーズレビュー馬)やタムロチェリー号(01年最優秀2歳牝馬でJRA宮崎の育成馬)を輩出した実績ある市場。

まる1日以上の長時間輸送を経て宮崎に到着した1歳馬たちは、まず馬体の特徴や怪我のチェックおよび尿の検査を実施してから馬房でひと休みです。宮崎は連日30度を超える猛暑が続いていますが、この日からの数日間は風もあって比較的涼しく感じる気候でした。東北で育った馬たちにとっては、いい導入日になったといえます。ただ若馬にとって大きな環境の変化になるので、数日間は体調や怪我に細心の注意を払い、暑熱対策として扇風機を使用し、風量もこまめに調整しています。

さて、ひと休みした後はビッグイベントともいえる最初の放牧に向かいます。全馬青森産ですが、それぞれ違う牧場出身の4頭をはじめて同じ場所に放牧する瞬間です。

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710日、到着後最初の放牧に向かいます。

放牧早々、ボスの座を強く主張するチアズフリート07(父キンググローリアス)が他の3頭に次々と攻撃を仕掛けます。特に牡馬は噛み付いたり蹴りあったりで、少々の怪我は覚悟の上で放牧しますが、フェンスの付近でやりあったり、あまりにもひどい攻撃など危険の高い情況は避けられるように、職員がしばらく監視を続けます。最後まで抵抗していたプリンセスホーラーの07(父は新種牡馬マイネルセレクト)が「降参」のサインを出すまで概ね20分間、チアズフリートの07は全身汗だくで走り、他の3頭に攻撃を続けました。とりあえず同馬がボスに君臨したようで、群れはほぼ落ち着き、幸い怪我もみられませんでした。

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黒鹿毛馬チアズフリートの07(父キンググローリアス)が栗毛馬プレゼントの07(父は新種牡馬バゴ)に噛み付いて離そうとしません。

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711日には夜間放牧を開始しました。左からクリスタルクリアの07(父キャプテンスティーヴ)、チアズフリートの07(父キンググローリアス)、プレゼントの07(父は新種牡馬バゴ)、プリンセスホーラーの07(父は新種牡馬マイネルセレクト)の青森産4頭です。

翌日には群れもすっかり安定し、夜間放牧を開始しました。極端な暑さの日中を避け、概ね夕方4時から朝8時まで放牧します。青草を十分に採食し、群れで適度な運動をすることで、基礎体力を養成し、馬体の成長を待ちます。9月に始まる騎乗馴致までは、人との信頼関係を築き、扱いやすい馬になるよう、手をかけて管理していきたいと思います。

     九州産育成馬も入厩しています。

実はこれより前の530日、入厩一番乗りはゲイリーアミューズの07(牝・父は新種牡馬ボーンキング)でした。すでに十分な引き馬・手入れの馴致がなされ、ウォーキングマシンやゲートの周り、調教トラック内など様々な場所での引き運動を実施しています。九州市場(5/12)で購買した同馬は、数少ない地元九州産馬としても注目されます。ちなみに07年のサラブレッド生産頭数(7516頭)に占める九州産(98頭)の割合は1.3%で、95.6%は北海道産となっています。

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九州産馬ゲイリーアミューズの07(牝・父は新種牡馬ボーンキング)

JRA育成馬展示会を実施しました(宮崎)

前回の育成馬日誌(宮崎)でお知らせしたとおり、324日(月)13時から、JRA育成馬展示会を開催しました。

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「比較展示」の様子。写真のインディペンデンスの06(父シルバーチャーム)には多くの人の注目が集まりました。

前日1日中降り続いた雨もあがって快晴となり、絶好の日和の中、馬主・調教師・生産者の方々およびファンの皆様で約200名のご来場をいただきました。中には北海道の馬産地から足を運んでいただいた方も少なくはなく、大変感謝しております。

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比較展示は芝生の上で内向きに3頭×2列で実施しました。

まずは2歳育成馬全24頭を間近でご覧いただく「比較展示」からスタートです。本年の展示では例年の8頭×3組展示から、6頭×4組展示に変更してみました。これは限られた展示エリアの中で、近くの他馬を気にせずに、一頭一頭ゆったりご覧いただけるようにとの考えからです。結果として大変スムーズに運んだのですが、事前には近くに他馬がいないことで、馬が寂しがるのではとの危惧もありました。事前に何度となく、展示の練習を繰り返したこともよかったと思いますが、大勢の人に囲まれると意外に馬は大人しくできるようにも思われます。

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「調教供覧」前のウォーミングアップを内馬場(500mコース)で実施します。先頭はアドラーの06(父アグネスタキオン)、右後はミスバンダムの06(父サニングデール)。

続いての「調教供覧」では、現時点で十分な調教をお見せできる(怪我、病気の2頭を除く)全22頭を供覧しました。

昨年までも全頭みたいといったご要望を多くいただいていましたので、昨年までの倍近い頭数を、2鞍に分けて供覧させていただきましたが、多くのお客様に遅くまでご覧いただき感謝しております。

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調教供覧の様子。左はラベンダーノートの06(父ジェニュイン)、右がラブイズトゥルーの06(父スペシャルウィーク)。ラスト2ハロンを15.0-12.4

 

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押えきれない手ごたえの左ローズレディの06(父クロフネ)と、右メガミグリーンの06(父マヤノトップガン)。ラスト2ハロンを14.0-12.0。

宮崎はなんといいましても、気候が温暖で、快晴日数が全国でもトップクラスです。放牧地はエバーグリーンで、牧草は年間を通じて採食することができますので、特に冬季の競走馬育成に好適な地であることは間違いありません。

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騎乗後はグラスピッキングを実施。リラックスした雰囲気の中、多くの関係者の方が青々とした放牧地まで足を運んでくださいました。

宮崎育成牧場では、大きな舞台で活躍できる馬を輩出する夢をもっています。そして、夢を夢で終わらせないために、JRA育成馬厩舎をビッグ・ドリーム・ステイブル(Big Dream Stables)と名づけ、その夢に向かってステップアップしていこうとしています。

今後育成馬の調教は、420日の中山競馬場への出発まで、火曜を除く毎日実施されます。馬主・調教師・生産者等関係者の皆様にはいつでもご来場いただきたくお待ちしております。

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育成馬厩舎入り口にあるBig Dream Stablesの石碑と、満開の花をつけたタムロチェリー号(当場育成のGⅠ勝馬)記念植樹のサクランボ。

宮崎へJRA育成馬を見に来てください(宮崎)

2008 JRAブリーズアップセール428日・中山競馬場)に上場予定の2歳馬に興味をお持ちの馬主・調教師・生産者等関係者の皆様、宮崎まで育成馬を見にいらっしゃいませんか?。宮崎育成牧場では324日(月)13時~15時、現在育成・調教中の24頭の2歳育成馬の展示会を開催いたします。この展示会では全24頭を間近でご覧いただく「比較展示」および約12頭の調教をご覧いただく「調教供覧」を実施します。また15時すぎより17時頃まで他馬の調教供覧(12頭程度)、およびご要望の馬の自由展示も実施しますので、お時間の許す方はこちらも是非ご覧下さい。なお、展示会はファンの皆様にもご覧いただけますが、一部ご入場いただけないエリアもありますことをご了承願います。

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「比較展示」の様子(昨年の展示会)

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「調教供覧」の様子(昨年の展示会)

JRA育成馬の購買を検討されている馬主・調教師等関係者の皆様は、324日以外の日でもご覧いただけます。事前に宮崎育成牧場(電話0985-25-3448)まで連絡をいただけると幸いです。通常調教は8時~11時頃、馬の展示はそれ以降の時間にご覧いただけますが、火曜日は休馬日、また420日以降はブリーズアップセールに向けて全馬中山競馬場に移動します。

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スタッフ一同、ご来場をお待ちしております。

それでは初めていらっしゃる方のために簡単に道のりをご案内します。

本州からのご来場はなんといっても飛行機の利用が便利です。宮崎空港には羽田から16便、伊丹から11便、名古屋(中部)から3便、広島から1便が毎日運航しています。空港から宮崎育成牧場まではタクシーで約25分の近さです。昔のなごりでタクシーには「宮崎競馬場」と伝えた方がとおりがいいようです。

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育成牧場は宮崎の中心街より車で7分程度の位置です。一周1,600mのメイントラックの内側には500mのショートトラック、放牧地、採草地などがあります。

また、育成牧場から徒歩3分の位置にある宮崎神宮駅には、宮崎空港駅から電車で1530分・340円で到着できます。ただしこれは本数がかなり少ないので、宮崎空港からバスで宮崎駅(25分・400円)→タクシーで宮崎育成牧場(7分程度・約1000円)といったルートが現実的かと思われます。

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厩舎の間近を電車が頻繁に通ります。

さて調教の近況ですが、3月初旬現在、週2回、1000m1,100mのインターバルをおいたスピード調教を実施しています。それぞれ最後の3ハロンを19秒、17秒の指示ですが、ほとんどの馬が楽にタイムを出せています。

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馬は左がアドラーの06(父:アグネスタキオン、母父:Nureyevという期待の良血馬です)、右はナガラフラッシュの06(父:マンハッタンカフェ、母は重賞2勝馬。柔軟性に富む馬体です。)

馬をみていただくためのポイント(引き馬)(宮崎)

南国・宮崎もさすがに2月には朝・夕冷え込む日があります。先日も雨が降った翌朝に気温が氷点下まで下がったため、馬道が凍結する事態になりました。しかしこれはめったにみられることではなく、ある意味貴重な状況でした。

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7時 ハローを掛けても、砂は硬く固まったままです。

しかしさらにハロー掛けを行うと、気温が上がってきたこともあり、午前8時すぎには固まりも融け、十分調教できるまでに回復しました。やはり日中は「暖かい」と感じられる日が多く、さすがにプロ野球キャンプ地のメッカです(ホークスのキャンプ地「アイビースタジアム」までは、当場から車で15分程度です)。

ですから採草地の牧草も、年中青々とした状態を保っています。JRA育成馬たちは放牧中もこの青草を採食しますが、宮崎育成牧場では毎日この新鮮な青草を刈り取り、馬房の中でも十分に給与しています。他の生産・育成地ではなかなか得がたい宮崎での育成のメリットであると思います。

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青々としたイタリアンライグラスの採草地の奥を、常歩運動しているJRA育成馬達がみえますでしょうか?

それでは本題の「馬をみていただくためのポイント」にいきましょう。今回は引き馬展示についてです。馬を引いてみせる時は、常歩、速歩ともキビキビと歩かせることが重要です。

JRA宮崎育成牧場・日高育成牧場では、次のような手順で行うこととしています。

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  引き馬展示の手順 ①~④

①検査者には、馬の左を向けて立たせる。

②検査者から常歩で遠ざかり、右回りで回転して真っ直ぐ検査者に向かって戻る。

③右回りでおにぎり形に速歩。

④馬の右を向けて立たせる。

この方法であれば、検査する方が動かなくとも、馬全体を観察することができます。なお、速歩検査では、馬の頭頚の動きを阻害しないように、引き綱は少し長めに持つのがいいでしょう。ただしこの速歩検査は事前に十分な練習が必要であり、簡単なものではありません。1歳の秋・冬以降であれば、実際の調教での動きを確認することもできますが、それ以前の馬の場合、その闊達さや跛行を確認するにはこの方法が大変有効です。1歳夏に育成馬を購買するJRAでもこの検査を大変重要視しています。

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常歩・速歩とも右回りで回転させます

常歩を要求されたときは、直線的に10m程度遠ざかり、右回りで回転して、検査者に向かって戻ってきます。右回りでの回転には、馬を制御しながら検査者に対して回転時の歩様を見やすくする意味があります。また、狭い廊下などで回転する際には、回転により壁にぶつかることなどで起こるケガを防止できます。

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右回りのコツ:内側に押しながら

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常歩・速歩とも検査者に肢の動きがよくみえるよう、真っ直ぐ戻ることが重要です。

馬をみていただくためのポイント(宮崎)

馬をみていただく際に、馬の保持者はどのような点に注意したらよいのでしょうか。まず、検査する方に馬をみていただく時は、動かないように左側を向けて、写真のように正しく立たせること。そしてタテガミは頚のラインを見せるために右側に寝かせることが基本中の基本です。

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 ヤナビの06さんもきちんとポーズをとっています。

また、馬を検査する方の動きに伴って保持者は位置を変化させる必要があります。その基本は検査者が馬を見渡せ、保持者から検査者の位置が確認でき、検査者にとって安全なポジションであることです。

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 駐立展示における保持者の位置の変化。例えば検査者が①の場所にいる時は、保持者は左手で手綱の根本を持ち検査者をみる(①の位置)。検査者が②の位置に動いたならば保持者は手綱の根本を右手に持ち変え検査者をみる(②の位置)。

また検査する方に馬を引いてみせる時は、常歩、速歩ともキビキビと歩かせることが重要です。そのポイントについては次回掲載いたします。

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 2月に入り1,600m馬場での調教は単走・併走を織り交ぜて、駈歩の総距離は3,100mまで、最後の2ハロンを21秒‐17秒ほどで実施しています。写真はモーリフェアリーの06(牡:父は新種牡馬プリサイスエンド)23日)

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 最後は調教中のおぼっちゃま?馬ヒロジュエルの06。放牧中とは一変した精悍な表情でやる気満々。

皆様にみて、触れていただける馬づくり(宮崎)

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 突然ですが、宮崎イチの美女育成馬?ヤナビの06さん(父は新種牡馬ネオユニヴァース)からの問題です。「私は昨年のセリで買ってもらった中で、最もフツーの育成馬です。それはなぜかしら?

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 一方、宮崎イチのおぼっちゃま馬?ヒロジュエルの06くん(父はフサイチコンコルド)もなにか言ってます。「ホントは僕、宮崎で一番フツーの育成馬なんだよ」。

決してフツーとは思えない派手顔のこの二人、いったい何をいってるんでしょうか?

正解は「セリで購買したとき(1歳時)の価格」なんです。

日本では年間約8,000頭近いサラブレッドが生産されますが、そのうちの約1,000頭近くが1歳市場(セリ)で売却されます。この頭数は当歳市場(約350頭)や2歳市場(約200頭)よりずっと多く、宮崎の育成馬達もみんな昨年の1歳市場で売却された(といいますかJRAが購買した)馬なのです。

ヤナビの06さんをJRAが購買した価格こそ、ほぼ昨年の全国1歳市場での平均取引価格(約824万円)にあたるのです。ちなみにJRAが昨年購買し宮崎にやってきた馬達に限ると、その平均価格はちょっと割安でほぼヒロジュエルの06くん購買価格(683万円)にあたるというわけです。

この購買時価格はJRA育成馬の個別情報の一部なのですが、これ以外にもJRAでは皆様に育成馬をよく知っていただくための資料として、体の大きさ(体重や体高など)、調教実施状況、病歴およびくせなどを育成馬個体情報として開示しています。育成馬の価格は超高級車並ですから、車でいうパンフレットにあたるこれらの情報発信はますます充実させていきたいと考えています。

一方でパンフレットだけではなく、「自分はこんな馬ですよ」と実物を見て、触れて、ご納得いただける馬であることも重要です。すぐに暴れる、蹴るまたは触れさせないようでは、大きなマイナスポイントとなるわけです。現在行っている「調教」には、運動能力の向上のみならず、精神的な成長を促すことも含まれており、多くの皆様にみて、触れていただける馬づくりはその一部です。みて、触れていただくにはそのような状況をつくり練習していくことになります。人と馬とが信頼しあいながら、時間をかけて、繰り返し繰り返し実施することが大切です。

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駈歩調教後のクーリングダウン。324日の育成馬展示会にむけ、展示会場予定地である旧宮崎競馬場一等馬見所(スタンド)にはじめてやってきました(27日撮影)。

南国宮崎にやってきました!(宮崎)

今回から育成馬日誌(宮崎)を担当することとなりました。これまで様々の場面でお世話になってきた師匠(と呼ばせていただきます)の後任は重責ですが、このブログについては育成馬のこと、宮崎のことを楽しく広範に書き連ねていきたいと思います。

ところで当宮崎育成牧場の業務の柱は、年が明け2歳となったJRA育成馬たちを、4月、5月のセールに向けて仕上げていき、その過程で得られた様々の知見や成果を民間に普及することにあります。そのためには当たり前ですが多くの時間馬をみて、馬に触れてその変化を感じ取ることが重要です。私はこれまで5年間のデスクワークを楽しく過ごしすぎたため?か、不摂生ですっかり体がなまってしまいました。来年のダービー・オークスを目指し日々鍛錬中の育成馬とともに、私も体力を向上させていく必要がありそうです。がんばっていきますので、どうぞよろしくお願いします。

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112日の朝、宮崎育成牧場に虹のアーチ。この後気温がぐんぐん上昇して・・・・

さて、みちのく出身の私にとって九州地区に勤務するのははじめてです。こちらにきて、まず驚かされたのが、その想定外の温かさ(時には暑いほど)でした。 

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上の図は、私の勤務がスタートした19日から一週間の最高気温の推移です。この間の宮崎の最高気温は平均でなんと15!!。東京との差は5.5度、みちのくとは15度以上の差があります。そんなことは天気予報をみていれば誰でも知ってるよ、といわれそうですが、実際それぞれの地に住んでみると新鮮な驚きがありますよ。多分。

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12日の気温は23℃にまで上昇し、半そで姿で騎乗です。左から大きなストライドが魅力のシフォンケーキの06、ダイナミックな走りのラブイズトゥルーの06、期待の良血馬アドラーの06は額にハート型の星(白斑)があるんです。そして右端は新種牡馬シルバーチャーム期待の産駒インディペンデンスの06

もちろん寒い地方にはスキーにスケート、雪自体の美しさやワカサギの穴釣り、そしてなんといっても春が訪れたことへの感激、なんて色々楽しみもあるわけですが、しばらくはこの温かさに感謝しつつ、また新たな発見があるはずの宮崎の地を楽しみたいと思います。

併走での調教(宮崎)

明けましておめでとうございます。年が明けて、馬たちも、入厩したときよりも随分たくましくなってきたように感じます。現在は、500m馬場で準備運動(速歩1000m、駈歩1000m)後、1600m馬場で1000m1400mの距離をF22F20程度のスピードで調教しています。あまりスピードが遅すぎると馬が遊ぶので、遊ばないように徐々にベースとなるスピードを上げてしっかりと走ることを覚えさせています。また、12月から500m馬場での準備運動は併走で実施しています。一般に、併走での調教は2頭がお互いに走りたい気持ちを高めて走るスピード調教において実施します。しかし、この準備運動での併走運動は、競って速く走らせるというよりも、2列縦隊の状態で調教することで、馬を前後左右に他の馬がいることに慣らすことを目的としています。騎乗者も前と横の馬を意識しながら騎乗する必要があるので、より、馬をコントロールすることができます。また、500m馬場で同じ併走パートナーに慣らしていると、1600m馬場でスピード調教を実施する際にも安心して馬同士を近づけて走らせることが出来る効果もあります。競馬は集団で走ることが要求されるので、そのエッセンスを分解したトレーニングが縦列や併走による調教であると思います。

JRA人事異動により、私がこの育成馬日誌を書くのは今回で最後になりました。次回からは私の後任が引き継ぎますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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500m馬場での牝馬の準備運動風景です。リードホースを先頭につけて併走で実施しています。(126日)

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脚浴場の通過に慣らしています。ひざから下が水につかるまで徐々に水を増やし、調教後に肢についた砂を洗い落とし、肢を冷やすことができます。後ろはミスバンダムの06(牡・父サニングデール)。(1220日)

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この日はハートレートモニターを装着してⅤ200を測定しました。内(向かって右)がオグラテスコの06(牝・父キッケンクリス)、外(向かって左)がローズレディの06(牝・父クロフネ)。(1227日)

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(向かって右)アドラーの06(牡・父アグネスタキオン)、外(向かって左)はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(1227日)

まっすぐに走ること(宮崎)

9月中旬に騎乗馴致を開始した第1(9)10月中旬に開始した第2群(13頭)は1130日から合流し、ようやく調教が軌道に乗り始めました。現在、牡および牝のロットに分けて、一列での隊列を組んでハッキングといわれるゆっくりとしたスピードのキャンターを実施しています。この時期には①前に進むこと②まっすぐ走ること③落ち着いて走ることの3つを馬に求めるようにしており、このことについては、1年前の日誌「集団での調教」で書かせていただきました。

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リードホースを先頭にキャンター調教を実施している第2群の牡馬です。リードホースの後はビショップリングの06(牡・父ナリタトップロード)。(1122日)

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1群と第2群合流しての調教です。このような縦列調教の中でまっすぐに走ることを教えていきます。先頭はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(121日)

まっすぐに走ることを要求するときに騎乗者が勘違いしやすいのが、馬の「口向き」を気にするあまりハミに対して左右別々に拳を強く使用することです。拳の操作が強すぎると馬の口を鈍感にするのみならず、馬が前に出ることができずに立ち上がる、後退する等の悪い癖を覚えやすいと思います。この時期の騎乗技術で重要なことは、騎乗バランスと脚の指示による前進気勢および柔らかい拳と考えています。手綱の持ち方はネックストラップに指をかけて、ダブルブリッジで保持することを私は好みます。若馬の筋肉は左右不均等に発達していて当たり前です。したがって、騎乗者が「口向き」を直すためには、長いスパンで馬の不均等な筋肉を左右均等に発育させることを意識することが重要です。例えば、調教時には両方の手前でトラック調教を行うことで左右均等な筋肉の発達を促し、また、縦列調教においてはリードホースの後ろをくっついて走ることで、まっすぐに走るための筋肉発達を促していくことができるものと考えています。競馬において正しく手前を換えることができる馬を教育することは、能力を発揮するために重要な要素のひとつと信じています。

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冬毛の伸びた馬についてはクリッピングを開始しました。クリッピングにはいろいろな毛の刈り方がありますが、体の上半分と四肢の毛を残すトレースクリップという方法を採用しています。馬はローズレディの06(牝・父クロフネ)。(1130日)

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1600mトラック内に高くそびえるパームツリーの下で朝日を浴びながらクーリングダウンを行っています。(1121日)

宮崎競馬100年記念式典を開催(宮崎)

明治40年に第1回宮崎競馬が、現在の宮崎育成牧場がある場所で開催されてから今年でちょうど100年になります。それを記念して1115日に地元周辺自治会長、宮崎県出身の調教師(池江調教師、野元調教師および小原調教師)、南九州育成業者、役所関係者、JRA役員および宮崎育成牧場歴代場長などが集まり、盛大に式典を開催しました。当日、式典の催し物として、育成馬10頭の展示および草競馬「宮崎チャンピオンステークス(Myz)」を実施しました。

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式典での鏡割り(もちろん焼酎!)の様子です。(1115日)

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育成馬10頭の展示を、昭和6年に建設された歴史あるスタンド前で実施しました。(1115日)

南九州では、草競馬が盛んに行われています。宮崎市の西にある美しい自然に恵まれた綾町で実施される「綾競馬」は114日に開催されましたが、2万人近い来場者で賑わいました。草競馬には軽種のレースのみならず、子供たちが参加するポニーレースもあります。子供たちの家で飼っているポニーを競馬に向けて仕上げ、多くの人たちが子供たちを応援すると同時に予想大会も楽しみ、町ぐるみで競馬をお祭りとして盛り上げるイベントが南九州に存続していくことは重要です。宮崎競馬場は宮崎育成牧場に変わりましたが、今後も多くの人に「競馬の原点」を楽しんでもらうため、「馬に親しむ日」等のイベントで草競馬を開催していきます。もちろん、宮崎育成牧場で刻んできた100年の歴史の重みを感じ、競走馬の育成業務に対しても益々励んでまいりたいと思っています。

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本格的な草競馬「宮崎チャンピオンS」は6頭立てで実施され、徳重推幸氏所有のアイラ号が、エイシンクッシング号を見事差しきり、優勝しました。写真は優勝したアイラ号と関係者。(1115日)。

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2群も順調に調教が進んでいます。500m馬場で速歩を実施している牡のストリング(隊列)です。先頭はヒロジュエルの06(牡・父フサイチコンコルド)。1118日現在、第2群は500m馬場でゆっくりしたキャンターを1000m実施しており、11月下旬から1600m馬場でのキャンターを開始し、先に馴致を開始した第1群と合流していく予定です。(118日)