キャンドル競走馬への道 その6 ~ キャンドルの卒業式 (宮崎)

先日ご案内したBig Dream Stables宮崎育成牧場での育成馬展示会(宮崎)。これまで注目してきたビッグキャンドルの07(通称キャンドル、牝、父は新種牡馬 バゴ)ですが、展示会数日前になって39度の熱を出し、やや食欲も落ちてしまいました。小学生のように式に向けて張り切りすぎたわけではないのでしょうが、「卒業式」への参加が危ぶまれました。

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幸いにも発熱から回復し、「卒業式」の比較展示に颯爽と入場してきたキャンドル。展示中も落ち着いて堂々とした振る舞いでした。

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いよいよ騎乗供覧。緊張のスタート直前です。ゲイリーアミューズの07(白帽・父はボーンキング)とともに前の組の走りを見守るキャンドルと騎乗者(青帽)。

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2頭併走で、ラスト2ハロン14.2-13.9を記録。堂々とした走りをみせ、無事に卒業式を終えたキャンドル(青帽)。

○ブラックタイプ(血統情報)について

今回はブリーズアップセール前の掲載最終回となりますので、キャンドルをもっと深く知っていただくために、ブラックタイプ(血統情報)の話をさせていただきます。

セリ名簿のほか、インターネット情報でも公開されているブラックタイプ。皆様もご覧になったことがあるのではないでしょうか。「文字ばかりでつまらない」と思われた方、ここには実に多くの情報が詰まっているのです。それではキャンドルのブラックタイプを使って説明します。

まずは上段の血統表からです。血統表は文字通りその馬の父、母、さらには父の父、母の父などが記された一種の家系図です。上段に父が、下段に母が記されます。この表は3世代を遡って記してあり、3代血統表と呼ばれます。キャンドルの父は、フランスの競走馬で凱旋門賞やパリ大賞典など1,6002,400mのGⅠを5勝した名馬バゴ2006年にJRAが導入し、現在は日本軽種馬協会・胆振種馬場で繋養されています。父バゴにとって、2007年生まれのキャンドルは最初の世代の子供であり、バゴは今年の「2歳新種牡馬」としても注目されています。

バゴの父は1989年、英2000ギニーとエプソムダービーを制してニジンスキー以来のイギリスクラシック二冠を達成したナシュワン。さらにその父は1,1001,600mのGⅠを5勝し、種牡馬としても大成功を収めたブラッシンググルーム。この様に、父、父の父、父の父の父・・・・とつながる一番上の行をサイアーライン(父系)とよび、母ビッグキャンドルから続く一番下の行をファミリーライン(母系、牝系)とよびます。どうしても、名馬が綺羅星のごとく並ぶサイアーラインに目がいってしまいますが、実はファミリーラインにも馬の競走能力に大きな影響を与える重要な情報が隠されています。

仔馬の素質は母から55-60%を、父から40-45%を受け継ぐという研究報告があり、優秀な仔馬を生み出すためには母馬の資質や要因が大きいとされているのです。その母系の活躍度合いをひと目で理解できるように、近親馬名の書体や太さを競走成績のよいものほど目立たせるにようにした表記基準こそが「ブラックタイプ」であり、サラブレッドを売買する世界各国のセリ名簿で採用されています。

ブラックタイプでは、出生年、種牡馬と競走成績等について、母、2代母、3代母・・・さらにその子供たちを辿ります。

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ビッグキャンドルの07

再びキャンドルのブラックタイプをみますと、まずは母ビッグキャンドルの解説があります。母は岩手競馬で3勝を挙げました。そして、注目していただきたいのは母馬名のすぐ下の初仔(はつご)という表記です。これは読んで字のごとく初めての子供という意味です。キャンドルの場合、お母さんが9歳の時に初めて産んだ子供、ということになります。

2代母、おばあちゃんの欄には、その息子であるイナズマタカオーという太文字の馬がいます。94年の中日スポーツ賞4歳S(GⅢ)、95年の北九州記念(GⅢ)などを制し、現在はJRA中京競馬場で誘導馬として活躍しています。この馬は重賞勝ち馬ですから、最も太く表記されます。実はこのイナズマタカオーは旧宇都宮育成牧場で育てられたJRA育成馬でした。つまり、おじさんにあたるイナズマタカオーが大活躍したビッグキャンドルの07は、JRAと相性のよい馬であるといえそうです。

ブラックタイプは一見するとただ名前を羅列しているだけでつまらないもののようですが、じっくり検証してみると本当に色々なことがわかります。その馬の血統背景が見えてくる、非常に奥深いものなのです。“あっ!この馬知っている!”とか、“この馬の近親なのか~!そういえばあの時・・・・”などなど、あなただけの競馬ロマンが見つかるかもしれません。

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キャンドルをはじめJRA育成馬たちは、無限の可能性を秘め宮崎を巣立とうとしています。皆様、ブリーズアップセールにご注目ください。 

育成馬展示会を開催しました(宮崎)

 

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育成馬展示会での調教供覧を前に、1列で馬場入場。先頭はレッドジグの07(牝馬、父:ゼンノロブロイ)

JRA育成馬たちにとって約710か月に及んだBig Dream Stables宮崎育成牧場での育成。その卒業式ともいえるJRA育成馬展示会(宮崎)が330日に行われました。宮崎としては大変肌寒い1日となってしまいましたが、馬主・調教師・生産者の方々をはじめ、約110名のご来場がありました。

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調教供覧で、力強い走りを魅せたNo.15エイダイヒロインの07(白帽、父:クロフネ)とNo.16プレゼントの07(青帽、父:バゴ)の牡馬2

この世代の育成馬たちは、例年並みの調教メニューに加え、常歩での運動量を多く確保して、十分に鍛錬されてきました。この日は最後の2ハロンを15秒台~14秒台で、馬たちが走りたい気持ちをためた状態で、しっかりとした動きをご覧いただくことが目標でした。来場者の熱い視線に応えようと張り切ってしまったのか予定よりタイムが早くなった組もありましたが、無事に卒業式を終えることができました。

今後も個体ごとの状態に応じた調教・調整を心がけ、すべて馬たちが健全な状態で427日のブリーズアップセールを迎えられるよう、一同努力してまいります。

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3列併走でのウォーミングアップ。宮崎育成牧場は温暖な気候を活かし、500mおよび旧競馬場1,600mの広いダートコースで、馬場の凍結を心配することなく思い通りの調教が行えます。

なお、宮崎育成牧場での調教は、中山競馬場に向けて出発する419日まで毎日実施されます(火曜日を除く)。馬主・調教師・生産者等関係者の皆様にはいつでもご来場いただきたく、お待ちしております。

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調教後のグラスピッキングでは、生産者の方などが関係馬の成長を間近で確認されていました。馬はゲイリーアミューズの07(牝馬、父:ボーンキング)。宮崎は年中豊富な青草を給与できるため、育成馬たちの健康維持にも大変有利な土地柄といえます。

また、これまで注目してきたビッグキャンドルの07(通称キャンドル)の展示会での様子は次号で紹介いたします。

キャンドル 競走馬への道 その⑤ 受験番号が決定!(宮崎)

卒業・入学の季節です。JRA育成馬にとっても来る330日のJRA育成馬展示会(宮崎)が「卒業式」、そして427日のJRAブリーズアップセール(中山)が競走馬となるための「入学試験」といえます。このブログでも何度か紹介してきたビッグキャンドルの07(通称キャンドル、牝、父は新種牡馬:バゴ)はブリーズアップセールの上場番号が58に決まりました。これが競走馬訓練学校(トレセン)入学への受験番号といったところでしょうか。

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「受験番号ゼッケン」を背に整列する牝馬たち。左から2頭目の「58番」がキャンドルです。この日は3/30(月)に迫った育成馬展示会の調教予行演習を19日に実施しました。素直で扱いやすいキャンドルは単走でしっかり抑えたまま、ほぼ指示通りのタイム(ラスト2ハロンを16.1-14.9秒)を記録しました。

この受験生(育成馬)たちは、活躍を楽しみにされている購買予定の皆様からみれば、かわいいわが子のような存在でしょうし、大変高額な商品でもあります。その商品の内容・価値をきちんと説明するために、JRAでは病歴や調教状況など様々な個体情報を開示しています。中でも「育成馬写真カタログ」は最も基本的な個体情報のひとつであり、ブリーズアップセールの事前購買者登録をお済ませの馬主の皆様に冊子を郵送します。また、最新の個体情報と写真はホームページ上でどなたでもご覧いただけます(4月上旬頃、セール情報ページ内に掲載する予定です)。

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写真撮影準備中のプレミアムショールの07(牝・父:アグネスフライト)。たてがみをしっかりと右側に寝かせます。

宮崎では318日より写真カタログの撮影を開始しました。お客様が80頭のJRA育成馬を比較・検討するための貴重な資料となるのですから、どの馬もきちんと揃った姿勢での撮影が求められます。納得のいく写真が撮れるまで、天気とも相談しながら根気強く取り組みます。3分で終わる馬もいれば30分以上要する場合もあります。しかしその30分は馬とのコミュニケーションやしつけのための時間であり、決して無駄になるものではありません。

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写真の失敗例その1前のめりになってしまい耳も後ろを向いています。馬はホットマイハートの07(牡・父は新種牡馬:スパイキュール)

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写真の失敗例その2。風でしっぽを巻き込んでしまっています。天気もなるべく薄曇りの条件がよく、この日は光線がやや強すぎます。馬はニシノファンシーの07(牝・父:マヤノトップガン)

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何度かポーズを直し、所要時間7分で受験番号58・キャンドルのカタログ写真ができあがりました。現在の体高155cm、馬体重452kgBUセールまであと1か月、大切に育てあげます。

虹の彼方に駆ける Over the Rainbow(宮崎)

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雨上がりの旧競馬場スタンドを背に、育成馬たちは「虹の彼方」の大きな夢に向けてトレーニングに励んでいます。

JRAブリーズアップセールまで1か月余りとなり、毎年のことながら育成牧場は慌しくなってきました。馬たちは逞しく成長していますが、牡馬の中には噛み付いてきたり、運動中に立ち上がるなどの反抗的な態度を示す馬も出てきます。このような馬には人間が毅然とした態度で臨み、必要に応じて懲戒を与えることで、人がリーダーであることを再認識させなければなりません。

また、調教では走りたい気持ちを抑えきれないといった前向きさや、併走時の負けん気の強さが目立ってきており、騎乗者も手を焼いています。ただし、馬が走りたいと思うスピードで速く走らせるのではなく、騎乗者がスピードをコントロールして馬の力をためて、ある程度の我慢を教えつつ走らせることが重要です。これは、競馬において馬込みの中で折り合いをつけるための調教であり、オーバーワークを防ぐためでもあります。オーバーワークになると故障につながることはもちろん、かえって馬の走りたい気持ちが萎えてしまいます。

言い尽くされた言葉かもしれませんが、馬を常にフレッシュかつハッピーな状態に維持することが重要なわけですが、これは本当に難しい課題です。ちょっとした馬の変化も見逃さないように馬を毎日見続けることは、この仕事を与えられた我々の義務であり、若馬たちが競馬場にいってからの「活躍する可能性の芽」を摘むことのないよう、日々取り組んでいます。

さて今回は、最近の調教~クーリングダウンの様子を写真で紹介します。

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最初に500mトラックコースでのウォーミングアップを実施します。写真は速歩中の牡馬群です。このコースではゆっくりとした速度でリラックスした調教を心がけており、3列併走の馬たちもゆったりと速度をそろえて運動できるようになりました。

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続いて1,600mトラックコースに移ります。このコースでは速い速度で走行できることを覚えていて、育成馬たちの雰囲気も「競走モード」に変わります。ここでは1,0002,000mの駈歩を実施しますが、ベースとなる内容は1ハロン2120秒の速度で4ハロンを平均的に(4F8480秒)走行することです。また、週12回実施する強め調教では1ハロンを1716秒で3ハロン(3F5148秒)の走行を行います。写真は前からプレゼントの07(牡・父は新種牡馬バゴ)とタヒチアンブリーズの07(牡・父:ボストンハーバー)。

体力があり、脚元の頑丈な馬は週2回の強め調教を実施しますが、無理をするべきではないと判断した馬は強度を落とす、というように個体ごとに調教量の差をつけています。幸いなことに、ここまで跛行等の運動器疾患で長期の戦線離脱を余儀なくされる馬は出ていません。

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調教後のクーリングダウンでは、日替わりで様々な場所を通過して、馬の気分転換をはかっています。写真は「ミニ坂路」を1列で進んでいく育成馬群。

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クーリングダウンを終え、騎乗調教から開放された馬たちは、グラスピッキングで無心に青草をほお張ります。リラックスした雰囲気でさらなる気分転換がはかられています。手前はスラムインの07(牡・父は新種牡馬ゼンノロブロイ)

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最後に腕節までの深さの脚浴場を通過してクーリングダウンは終了です。四肢を冷却するための脚浴場の水には、肢の汚れを落とし清潔に保つ(皮膚炎の予防)目的で硫黄成分などが混ぜてあります。写真中央はスーパードレスの07(牝・父:キングカメハメハ)

育成馬の成長(宮崎)

世の中不景気な話題ばかりですが、最近の宮崎には景気のいい話(?)がありました。全国ニュースでも大きく報じられましたが、WBC日本代表チームが宮崎入りしています。キャンプ地のサンマリンスタジアムでは駐車場がパンク状態、道路は大渋滞となり、巨人との練習試合の日にはついにスタジアムの駐車場を閉鎖(車両乗り入れ禁止)するまでの事態に!! 来場者は45,000人にもなりました。市内のホテルもほぼ満杯のようで、各所で混乱と報じられましたが、街全体が活気付いています。

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2月も温暖な日が多く順調に調教中です。写真はクーリングダウン中の牡馬群で、向かって左がプレゼントの07(父:バゴ)、右はバルジの07(父:タップダンスシチー)。ちょっと似た顔の新種牡馬産駒2頭です。

WBC代表の他にも、多くのプロ野球チームがキャンプ地に選ぶだけの温暖な気候もあってか、体の小さかった当場育成馬ビッグキャンドルの07(通称キャンドル)もすくすくと成長し、9月に387kgだった馬体重も2月には453kg66kgも増加しました。当初436kgだった全24頭の平均体重も今では48kg増えて484kgになり、どの馬もずいぶんと逞しくなってきました。

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除脂肪体重の測定

Big Dream Stables宮崎育成牧場では、馬体重測定にあわせ脂肪厚の測定をすることで除脂肪体重を推定しています。この除脂肪体重は馬の全体重のうち、体脂肪を除いた筋肉や骨、内臓などの総量にあたりますので、その推移を継続して観察することで、育成馬の筋肉増量を推定することができます。方法としては臀部の脂肪厚を超音波(エコー)で測定することで、体脂肪率を推定(体脂肪率(%)≒5.47 × 脂肪厚(cm+2.47)します。体脂肪を含めた馬体重そのものだけではなく、この数値も含めて検討することは、トレーニング効果と馬体のコンディションを推定するうえで大変有用であると考えています。

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上の図は2世代の当場育成馬における脂肪厚の測定結果です。白丸が前世代(現3歳)の当場在厩時の数値で、青丸が現2歳世代の数値です。それぞれ10頭ずつ(牡牝各5頭)を測定した数値です。

未だ2世代だけのデータではありますが、11月~1月にかけて脂肪厚が増加する傾向がみられます。これはトレーニング内容等よりも気候による影響が大きいと考えられます。人でも冬期間には体脂肪率が増えるというデータがあります。ただし、現2歳世代の育成馬は前世代に比べ脂肪厚はやや低めで推移しています。

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上の図は先ほどの脂肪厚から推計した除脂肪体重の推移です。これをみると11月から12月にかけては2世代とも除脂肪体重が減少しており、体脂肪の増量で体重が維持されていたことが分かります。この時期の気候や運動・飼料量または情動の変化など様々な要因が考えられますが、はっきりとした理由は不明です。いずれにせよ次世代以降の育成馬を宮崎で順調にトレーニングしていく上で、注意しなければいけない時期といえるかもしれません。

また前世代(白丸)との比較では9月にはほとんど差のなかった除脂肪体重が、本2歳世代(青丸)では10月以降、増量が大きくなっています。トレーニング効果により、筋肉量の増加がより大きかったものと推定しています。

今後数年間はさらにデータを蓄積し、性差や競走成績との関連も調べることで、よりよい育成調教管理指針が得られるものと期待されます。特に温暖な宮崎における除脂肪体重の増加が、北海道におけるものとどのように違ってくるのかは興味深いところで、プロラクチン(※)というホルモンの測定とあわせて調査する予定となっています。

プロラクチンの測定

JRA育成馬を用いた研究データでは、北海道(日高)では冬から春にかけて、特に牝馬の除脂肪体重が増加しない傾向が認められています。宮崎の育成馬での除脂肪体重の増加は、温暖な気候での成長の早さを示すものではないかと推測しています。

現在宮崎育成牧場では、東京農工大学にご協力いただき、脳の下垂体から分泌されるホルモンであるプロラクチンの測定による新たな調査を実施中です。プロラクチンには成長ホルモン様の作用があり、その測定によって宮崎の馬の成長の早さ、暖地育成のよさを証明できることが期待されます。

育成馬展示会のお知らせ

Big Dream Stables宮崎育成牧場では330日(月)午後1時より育成馬展示会を実施します。当日は全24頭の展示と約12頭の調教をどなたでもご覧いただけます。また、生産・育成・競馬関係の皆様には、午前中の調教(12頭程度、830分頃より)もご覧いただけます。皆様のご来場をお待ちしております。また、当日以外でも関係者の皆様にはいつでもご覧いただけますので、どうぞお気軽にお問い合わせください(火曜日は馬休日となっております)。

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3列縦隊で常歩・速歩運動を実施する牝馬グループ。先頭は向かって左からプレミアムショールの07(父:アグネスフライト)、ゲイリーアミューズの07(父:ボーンキング)、ビッグキャンドルの07(父:バゴ)。ビッグキャンドルの後ろがレッドジグの07(父:ゼンノロブロイ)。

最近の調教内容紹介とスピード・心拍数の測定(宮崎)

1/17の中山1R(ダート1,200m)で、単勝1.1倍の1番人気に支持された当場育成のロジロマンス号(3歳・牡・父コロナドズクエスト・粕谷厩舎)が2着馬に26(16馬身)の大差をつける逃げ切りでの圧勝をみせてくれました。1111とタイムも優秀で、今後のさらなる活躍を期待しています。

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右側がロジロマンス号。1年前の1月、旧宮崎競馬場スタンドを背に駈歩調教後のクーリングダウン中。1歳秋の大人しい印象が一変し、調教での負けん気の強さが目立ってきた頃です。

さて、今回は1/22の調教内容をご紹介するとともに同日のスピードおよび心拍数の測定について報告します。心拍数とスピードの測定については、JRA競走馬総合研究所の協力を得て、調教する各馬にハートレートモニターと呼ばれる心拍数の測定装置とカーナビでおなじみのGPSを装着して実施しました。なおその測定から得られる数値であるV200等については、20073月の育成馬日誌V200の測定)で日高から紹介していますので、詳細な解説はそちらをご覧ください。

今回は調教内容の紹介とともに、毎度おなじみ「ビッグキャンドルの07」の心拍数データ・走行スピードについて報告します。

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122日、キャンドル号調教の軌跡

上の図がキャンドル号調教の軌跡をプロットしたもので、宮崎育成牧場の調教コース図が浮かび上がっています。以下、順を追って説明します。まずは厩舎地区での準備運動【上の図の】から、500mトラックコース【】へ移動。ここで速歩を1,000m、駈歩を1,000m実施(23列の併走)して、【】から1,600mトラックコースに出ます。そして1本目の駈歩(1列)を図の上方向へ(左回り)1,000m、【】の左側で折り返して、上方向(右回り)へ2本目の駈歩(併走)を1,000m実施しました。その後のクーリングダウンは【】の右側で折り返して、【】からコース外に出て【】の杉林、【】の採草地・芝馬場をとおり、【】の厩舎地区に戻ります。

調教タイムは1本目の後半600m66秒(F22)、2本目の後半600m57秒(F19)の目標としました。調教の総距離は常歩が4,000m、速歩が1,000m、駈歩が3,100mでした。

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122日、キャンドル号調教時の心拍数(桃色)とスピード(青色)

この調教時にキャンドル号の心拍数(桃色)とスピード(青色)をプロットしたものが、上の図です。横軸は馬装および機械装着からの時間経過です。競走馬の安静時心拍数は1分間に3040回程度ですが、機械を装着し、常歩運動に入ったキャンドルの心拍数は70回程度にまで上昇しているのが分かります。【A】の時点から500mトラックでの速歩調教で心拍は100回程度、【B】の時点からは駈歩運動で心拍が150回近く、スピードは6.5m/s(ハロンタイムで30秒程度)となります。【C】からが1,600mトラックでの1本目の駈歩、心拍が200回近く、スピードは約9.5m/s(ハロンタイムで21秒程度)、【D】からが2本目の駈歩で、心拍が200回以上、スピードは約11m/s(ハロンタイムで18秒程度)でした。

競走馬の最大心拍数は、220230回程度であり、今回のような心拍数200回前後の調教を、インターバルをはさみ2本こなすことは十分な運動強度であると捉えています。2月からはこの強度の運動を週2回程度実施(3Fタイムで5754秒)していて、それ以外の日は1,600mトラックでの調教は1本(駈歩1,0001,600m、最後の3Fタイムが6660秒)としています。

ただし馬によっては、今回の調教内容では2回とも心拍が200回に達せず比較的余裕のある運動であったりもします。またこの数値は騎乗者や隊列での位置(先頭か馬群の後ろか)および馬場状態や天候などによる馬の情動の変化にもある程度影響されます。そのほか駈歩を開始して心拍数が200に上昇するまでの時間、逆に駈歩後心拍数が100をきるまでの時間などを分析し、心肺機能を検討しています。

このようなデータは馬ごとの調教強度を見極め、個体に合ったトレーニング内容を課すための参考として大変貴重なものとなっています。

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500mトラックコースで速歩調教中の牝馬群です。向かって右からタイキフレグランスの07(父サクラバクシンオー)、スーパードレスの07(父キングカメハメハ)、ウォーターセレブの07(父グラスワンダー)、プレミアムショールの07(父アグネスフライト)。

キャンドル 競走馬への道 その4(宮崎)

昨年末はJRA育成馬であるセイウンワンダー号(父グラスワンダー)が朝日杯フューチュリティSに優勝するという大きなニュースがありました。JRA育成馬のG競走優勝は宮崎で育成したタムロチェリー号(01年・阪神ジュベナイルF)以来です。セイウンワンダー号は日高で育成した馬ですが、宮崎で育成に携わる我々にとっても大変励みになる出来事でした。現在宮崎で育成中の明け2歳馬24頭の中にも、G競走で優勝するかもしれない素材がいるはずであり、我々はその芽を摘むことのないよう、また少しでも勝利する可能性を高められるよう、日々試行錯誤しながらも張りきって育成に励んでいきます。

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タムロチェリー号(父セクレト・01年阪神ジュベナイルF優勝)

さて、前々回の宮崎からの日誌で、「ビッグキャンドルの07(通称キャンドル・牝馬)」が入厩早々に馬房内休養となったことをお伝えしました。今回はその後のキャンドルの経過についてお知らせします。

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シャワーを浴びて気持ちよさそうなキャンドル

99日、キャンドルは「右肩違和」と診断されました。症状としては右前肢を地面に着くときに痛がり、この肢の前方への展出が良くないというものでしたが、目立った外傷はありませんでした。このような場合、まずは蹄、球節、ヒザ(腕節)など下肢部の状態を確かめます。これらの部位に腫脹や帯熱、または触診による疼痛がみられる場合、骨折や骨瘤、腱や靭帯の損傷など比較的重傷である可能性も疑われ、必要に応じてレントゲンやエコー検査が実施されます。幸い、キャンドルにはそれらの異常はみあたりませんでした。検査の結果、肩から上腕の筋肉の一部に疼痛感があり、これらの筋肉の軽い炎症であると診断されました。

キャンドルに限らず育成馬たちは、少々痛くても放牧地では元気に走ってしまい、症状が悪化することがあります。そのため馬房内で休養し、鎮痛・消炎剤を投与することにしました。その後は痛みの軽減する度合いをみながら、鎮痛・消炎剤の投与量を減らし、少しずつ運動を課して、夜間放牧の集団に戻す適期を慎重に判断します。結局キャンドルは10日間の馬房内休養の後に6日間単独で昼間放牧を行い、そしてついに925日には夜間放牧の集団に戻されました。その後の経過はすこぶる順調で、本格的な騎乗馴致の開始となる1016日を健康な状態で迎えることができました。以下、キャンドルの騎乗馴致の様子を写真で示すこととします。

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10/22 (馴致5日目):鞍をつける前の腹帯馴致用として利用する「ローラー」を締めようとしているキャンドル。敏感なキャンドルは、ローラーの締めつけから逃れようとラウンドペン内を飛び回ることもありましたが、3回目となるこの日はだいぶ慣れがみられました。

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10/23(馴致6日目):後方から「ドライビング」と呼ばれる方法で馬を操り、騎乗することなくハミ受けを教えます。この日の段階ではまだ補助者が馬の前方に付きますが、徐々に馬と11の関係に移行します。ゲートに近づき、通過する練習もこの時期から行います。もちろん雨の日にも馴致は続けられます。

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10/30(馴致11日目):ドライビングでお尻や飛節に触れる調馬索(ロープ)をかなり嫌っていたキャンドルも、ずいぶん慣れて受け入れるようになりました。この日は実際に騎乗することとなる1,600m走路でドライビングを実施しました。コーンを置いてのスラローム走行も可能となり、ハミ受けも順調にできてきました。また同日、馬房内ではじめて人が跨り、記念すべき「初騎乗」を無難に終えました。この日の馬体重は408kg9月入厩時より+21kg)でした。

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11/12 (馴致18日目)14日目よりラウンドペン(丸馬場)内での騎乗を開始、16日目からは他馬と合流しての騎乗に慣れました。いよいよ明日からは500m馬場に入場するという段階まできました。

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11/23 500m馬場で速歩・駈歩をそれぞれ1,0001,500m程こなせるまでに成長しました。2頭目がキャンドルで先頭はサンドシャーディーの07(父:シルバーチャーム)。

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年が明けて15日、キャンドルの近況です。この日は常歩3,000m、速歩1,300m、駈歩2,700mの調教メニューで、1,600m馬場でのラスト3FF22秒のペースで走る調教を行いました。2頭目がキャンドルで先頭はトレヴィサンライズの07(父:ネオユニヴァース)。キャンドルの馴致時にみせた過敏さは騎乗後には解消し、素直で反応の良いところが目立ってきました。この日の馬体重は435kg9月入厩時より+48kg)でした。

鹿児島大学に軽種馬診療センターがオープンします(宮崎)

JRA宮崎育成牧場の公園地区は一般のお客様に開放されています。通常土日の14時からはポニー馬車の運行も実施され、日中はまだまだ暖かいこの時期は多くのお客様で賑わいます。

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ポニー馬車の運行。

さて、今回は九州地区における、新たな獣医療施設のオープンについてです。

九州地区における昨年のサラブレッド生産頭数は98頭で、そのほとんどが鹿児島・宮崎・熊本の南九州3県で行われています。全国的に見ると生産頭数(7516)95%以上は北海道であり、九州地区は1.3%にすぎません。しかしながら、温暖な南九州地区は特に秋~春季の育成・休養の好適地であり、意外に多くの競走馬が滞在・繋養されています。育成関連団体の統計では、育成馬約250馬房、休養馬約390馬房のあわせて641馬房の受け入れ態勢があるのです。

このような国内でのサラブレッド繋養地としては北海道の他、生産地の青森県、JRAトレセンのある関東、関西地区があげられます。これらの近隣地区にはサラブレッドなど軽種馬を診療する拠点施設があるものですが、残念ながら、南九州地区はこれまでやや立ち遅れていたといえます。

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本年9月の鹿児島大学付属動物病院における、JRA育成馬チアズフリートの07手術準備風景。施設が古く不便さは否めませんが、馬の手術になれたスタッフ、学生たちにより、手際よく進んでいきます(すでに育成馬は麻酔下で仰向けに寝ています)

鹿児島大学農学部は以前より、馬の診療に積極的に取り組んでいます。ここ数年の軽種馬の手術実績としては関節鏡による剥離骨折やOCDの摘出術、喉の形成手術などが中心です。

今回の新しい診療センターには、ハイクリーン陽圧手術室があり、精密な防塵フィルター、デジタルレントゲンやX線Cアームが設置されていて手術中のX線撮影および透視ができます。その設備と清潔な環境により、これまではできなかった螺子固定術(骨折をボルトで固定する)も可能となります。

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ハイクリーン陽圧手術室

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写真のような螺子固定術も可能となります。

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倒馬覚醒室:大型動物の全身麻酔導入(馬が倒れる)や覚醒(麻酔から覚めて起き上がる)には時として危険が伴い、二次的に骨折などを発症することもありえます。そのような危険を最小限に食い止めるため、周りをクッション材で囲むなど、さまざまな工夫がなされています。しっかりと麻酔導入された馬を手術台に移動させるためのクレーンも設置されています。

今後は施設稼動の準備に入り、4月にはいよいよ正式なオープンとなる予定です。同施設が南九州地区における馬医療基地としての役割を果たし、地方競馬の荒尾や佐賀の競走馬も含め、多くの軽種馬が安心して南九州での育成や調教に励むことができる環境が整ったといえるでしょう。それにより、南九州地区の生産および育成の基盤が強化され、軽種馬産業の維持・発展につながることと期待されます。

中央競馬会が実施する特別振興事業として設立

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12月初旬のJRA育成馬の調教風景です。2500mほどのキャンターをゆっくりとしたペースで、一団で走行中です。12月中旬現在では最後の3Fを併走で7075秒ほどのペースで実施しています。先頭はゲイリーアミューズの07、左端の栗毛はカリカーの07、右端はビッグキャンドルの07。※前号で「挫折」をお知らせしたキャンドルもすっかり立ち直っています。詳しくは後日お知らせします。

キャンドル 競走馬への道(キャンドルの日記) その③

前々回の宮崎からの日誌で、無事宮崎入りした「ビッグキャンドルの07(通称キャンドル・牝馬)」の近況をお伝えしました。そのキャンドルにいきなりの試練が訪れましたので、振り返りになりますが、9月のキャンドルの日記を紹介します。

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キャンドル(右端)ら3頭の放牧直後の様子。食欲旺盛な彼女は、放牧するとまずは走り回るよりも、食欲が優先のようです。おいしい青草を一心不乱に食べ続けます。

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騎乗馴致がはじまる前の育成馬たちは、放牧地で集団管理されています。ここで馬同士は互いの影響も受けつつ、思い思いに走り回り、自然の「運動」を実施することで、骨、筋肉、腱が発達し、心肺機能も高まります。また仲間同士でじゃれあって、蹴ったり蹴られたり、噛み付いたり噛まれたりする「遊び」の中で、競走馬として必要な競争心や勇気、前向きな性格が育まれているとも考えられます。このような「運動」や「遊び」は牡馬の群れの方がより活発にみられる傾向がありますが、今回の牝馬3頭の群れは牡馬に負けず劣らずの活発ぶりで、いわゆる「やんちゃ」なグループです。

やんちゃ仲間のトレヴィさんが原因かどうかは分かりませんが、キャンドルはこの日「右肩違和」と診断されました。キャンドルに限らず育成馬たちは、少々痛くても放牧地ではまた走ってしまい、症状が悪化する可能性が高いため、今晩は放牧をやめて馬房内休養が必要と判断されました。入厩5日目にしていきなりの試練です。   ※次号に続く。

秋の育成馬検査が実施されました(宮崎)

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育成馬の調教は、順調に進んでいます。11月後半には第1グループとなる10頭がメイントラックである1,600mコースにおいてキャンター調教を開始、残る第2グループも500mコースにおいてキャンター調教を開始しました(写真)。写真は誘導馬を先頭に前からプレミアムショールの07(栗毛)、カリカーの07(栗毛)、サンドシャーディーの07(鹿毛)他。

Big Dream Stables宮崎育成牧場に在厩する24頭のJRA育成馬たち。先日その成長や馴致状況をチェックするため、JRA本部の職員による育成馬検査が実施されました。午前中は実際の騎乗馴致を確認し、午後は個別の馬体検査(展示)を行ないました。馬体検査(展示)については3月に当日誌「馬をみていただくためのポイント」で紹介したように、手順に沿って検査者に馬を展示します。

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展示の際の馬の動き

詳しくは http://blogjra.lekumo.biz/ikusei/2008/03/post-3d48.html

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まずは駐立しての展示です。引き手は韓国研修生で、正しい立たせ方について本部職員と確認し合っています。馬はトレヴィサンライズの07(父:ネオユニヴァース)

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引き続き、常歩で後肢の動きがまっすぐ見えるよう遠ざかり・・・・・

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検査者が横からの馬体も確認できるよう右回転して・・・・・・

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前肢の動きがまっすぐ見えるよう戻ってきます。以上、馬はビッグキャンドルの07(父:バゴ)

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速歩も同様に、後肢→横→前肢の動きがまっすぐ見えるよう意識して、三角おにぎり型に右回転して戻ってきます。馬はニシノファンシーの07(父:マヤノトップガン)。全兄のJRA育成馬ケイアイマッシブ号11/16の東京・2才戦で勝利しました。

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最後に再度駐立の展示です。馬はプレミアムショールの07(父:アグネスフライト)

検査の前週には、日ごろにも増して馬の手入れに時間をかけ、タテガミや尾のトリミングにも取り組みます。また速歩の展示をスムーズにみていただくための練習も実施します。今回の検査では馬の進路の芝生に刈り込み(上の写真でも確認いただけるかと思います)を入れて、そのとおりに歩けるよう人馬とも練習をしました。

近隣に馬関係者が少なく、比較的みていただく機会が少ない当場にとって、検査などでの馬主、調教師、牧場関係者などの来場はいい刺激となります。宮崎にお立ち寄りの際は、どうぞお気軽にご来場いただき、育成馬たちをみてやって下さい。

馬を展示することは馴致の一環であり、人馬ともその状況に慣れて、落ち着いてみて・触れていただけるように、取り組んでいます。そのためには、日ごろから愛すべき育成馬たちと触れ合う時間を大切にし、人がリーダーであることをきちんと理解させた上で、馬に語りかけながら全身の手入れなどを行い、信頼関係を深めていくことが大切でしょう。