冬毛の悩み(宮崎)

宮崎では、日中はまだ暑い日が続いています。10月は最高気温が25℃以上あった日が19日間(31日間すべて20℃以上)ありました(北海道の夏とたいして変わりません)。このように宮崎は暖かいので、馬も冬毛があまり伸びないと思っておられる方も多いと思います。しかし、この時期の馬体管理をしっかり行わないと、場合によっては北海道よりも冬毛が伸びることも多々見られるのです。その原因として、①10月中旬まで夜間放牧を実施していること、②日中暑いのですが、馬体を洗うと乾くまでに馬房内で馬体が冷えること、③暑さ対応の厩舎構造となっており、馬房内があまり暖かくないことがあげられると思います。夜間放牧を行うと毛が伸びて皮膚は厚くなるのは自然な馬の反応で、馬にとって決して悪いことではありません。しかし、暖かい宮崎では、冬毛が伸びるとトレーニング中に必要以上に汗をかくことになり、馬にとってストレスとなることが私たちは気になるのです。また、見栄えも良くないので、騎乗馴致を開始した時点からは競走馬と同様に皮膚が薄くなるように馬体管理するように心がけています。具体的には、①馴致開始とともに夜間放牧の終了、②丸洗い後のクーラーラグ着用、③夜間のサマーシーツ(薄手の馬服)着用および④騎乗時に馬体を暖かく保つために薄手のエクセサイズシーツ着用などを行っています。しかし、それでも冬毛が伸びてしまったら、バリカンで冬毛を短く刈るクリッピングも実施します。もちろん、その際には馬服を重ね着するなど通常よりも暖かく保つ必要があります。近年、北海道でもライトコントロール法と呼ばれる馬体管理を育成馬に対しても実施することで、4月に宮崎の馬以上に換毛を促進する技術も開発されてきました。宮崎育成牧場の私たちは危機感を感じています。今まで、何もしなくても春になれば、自然に冬毛が抜けて馬の見栄えが良かったのですが、今後は、春に馬体の見栄えをよくするためには、秋のこの時期から今まで以上に人が手をかける必要性を強く感じています。

 

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左は午後に馬体を洗った後にクーラーラグを着用しているところです。馬はメガミグリーンの06(牝・父マヤノトップガン)。また、右は夕方の手入れ時にクーラーを脱がしてサマーシーツを着用しています。馬はヒロジュエルの06(牡・父フサイチコンコルド)。(111日)

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調教後のクーリングダウンの風景です。人はまだ半袖ですが、馬はエクセサイズシーツを着用しています。先頭からモーリフェアリーの06(牡・父プリサイスエンド)、インディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(1028日)

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920日に騎乗馴致を開始した第1群は、現在、500mトラックを3周(1500m)、ゆっくりしたキャンターで縦列調教を行っています。先頭はアドラーの06(牡・父アグネスタキオン)。(1031日)

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2群も1018日から騎乗馴致を開始しています。杉林の間をドライビングしているのはシフォンケーキの06(牡・父タイキシャトル)です。(112日)

ドライビング~騎乗まで(宮崎)

1本レーンでのランジングを教え、ローラー(腹帯)を装着することが可能になった馬は、次のステップとして、2本のレーン(ダブルレーン)を用いてのランジングを教えていきます。その際、2本目のレーンを馬の外側面に回して後肢(飛節の上)の後にまわし、御者が両手で保持して実施します。後肢にレーンが触れた際に、敏感な馬では蹴る等の反抗を示すこともありますが、根気よく馬を慣らします。

2本レーンでのランジングに慣れた後、馬の後方に人が移動し、馬を後方から動かすドライビングを教えていきます。最初はラウンドペンの中で実施し、ドライビングで方向変換等を行うことから始めます。ドライビングに慣れてきたら、ラウンドペンの外に出て今後騎乗する場所等、様々な場所をドライビングで歩かせ、馬の前進気勢と口向きを作っていきます。

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ブレーキングを開始して6日目。ローラーおよびサイドレーンを装着し、ダブルレーンでのランジングを行っています。サイドレーンはキ甲をクロスして装着しており、頭頸の位置を安定させています。馬はディマーの06(牝・父アラムシャー)。(928日)

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ラウンドペンの中でドライビングを行いながら右方向に方向変換を行っています。馬はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(104日)

ドライビングが確実に出来るようになった後、騎乗のステージへと進んでいきます。騎乗は、数日かけて馬の横でジャンプをしたり、背中に体重をかけたりして騎乗動作や体重負荷に慣らした後、馬房の中で実施します。騎乗者が脚を使って馬を動かせることができるようになったら、少し広いラウンドペンの中で騎乗し、やがて走路での騎乗が可能となります。

馴致を開始して2週間から3週間で騎乗することが可能となるわけですが、このように短期間で進められるのも、近年、コンサイナーがセリ前に引き運動を十分行う等、手をかけるようになってきたことが大きいと思います。セリにおいて、美しくプレゼンテーションされ、活発に大きく歩く馬は多くの購買者の目を引くことにつながります。したがって、セリの23ヶ月前に生産牧場からコンサイナーに預けられた1歳馬は、引き運動で人の指示に従って活発に歩くことが出来るように、また、購買者の前で暴れたりせず大人しく立っていることを教育されています。この中で、人と馬との信頼関係と人のリーダーシップの基礎が形づくられ、環境が変わったときの精神面安定や騎乗馴致時の理解力向上に役立っているのだと思います。

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体重負荷に慣らすための「横乗り」を行っています。馬はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(105日)

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馬にとって、生まれて初めて人に騎乗された緊張の一瞬です。騎乗者は馬の様子を確認しながら、徐々に頭を上げようとしています。馬はミスバンダムの06(牡・父サニングデール)。(105日)

ランジングについて(宮崎)

まだ、日中は30℃前後の暑い日が続いていますが、さすがに朝夕は涼しく過ごし易くなってきたようです。馬たちも南国・宮崎の環境に慣れ、入厩したときよりも一回り成長し、ブレーキングを開始できる体格になってきました。宮崎では、7月に入厩した9頭(牡5・牝4)を第1群として920日から騎乗馴致を開始しました。

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騎乗馴致を開始する前のプレ馴致として引き運動を行っています。すでにコンサイナーがセリ馴致として教えているのですが、人との約束事を再確認し、また、群れで行動することで集団調教にも慣らしていきます。(917日)

まず、初日にはラウンドペン内で、馬を引いて壁際を歩くことに慣らすことから開始し、壁に沿って落ち着いてランジングでの速歩ができることまで要求します。

教えるにあたって、人が馬に与える「人から離れなさい・前に進みなさい」という人のプレッシャー(馬を推進するための声や鞭などを含むアクション)とラウンドペンの壁が馬に加える「これ以上、外には行けない」という壁のプレッシャーを上手にコントロールしながらラウンドペンの壁際を走ることを馬に教えます。人が馬に与えるプレッシャーが強ければ馬は慌てて走るために後肢で前肢を踏みかけたり、壁にぶつかったりすることに、弱ければ馬が内側に入ってくるということになります。馬は人の与えるプレッシャーに対して敏感に反応します。例えば、人が(ペン内で動いている)馬の真横に対面して、側面よりもお尻方向にずれれば、それだけで馬を前方に推進し、逆に人が馬の頭方向にずれると減速しようとします。したがって、そのようなプレッシャーと声のコマンドwalk, trot, standや、常歩!速歩!とまーれなどの号令)を同時に使用しながら、馬が上手にできたら、プレッシャーを解除し馬をほめることで理解させ、馬自ら前に進んで壁沿いを走ることを教えていきます。よくパブロフの犬に例えるのですが、人のアクションを伴った強いプレッシャーと同時に声のコマンドを使用することで、やがては音声の指示に置き換えて馬を動かすことができるようにするということです。この際、一度にたくさんのことを教えようとして馬の頭の中をコンフューズ(混乱)させないよう、シンプルに教えていくことが重要だと考えています。

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Day1、馬は初めての経験なのでどのように回っていいのか解らず、壁沿いを走らずに壁からのプレッシャー(矢印)を感じ、内に入ってこようとしています。馬はミスバンダムの06(父・サニングデール)(920日)

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Day1、御者が馬に対して近づき、さらに補助者が必要に応じて後方から推進を与えることで、馬を壁に沿って走らすことが可能となります。馬はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)(920日)

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Day3、ローラー(腹帯)を初めて装着したときの反応です。背を丸めながら跳ねて内に入ろうとする馬に対して、御者は馬に近づくことで外に行くようにプレッシャーを与え、同時に補助者が馬を前方に推進することで壁に沿って走らせます。馬はやがてローラーを受け入れ、落ち着きます。馬はアトラスマーカーの06(牝・父ティンバーカントリー)(922日)

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Day4、ローラーを装着して2日目です。吉本場長の見守る中、本日は頭頚の位置を安定させるためにサイドレーンを装着しました。馬はラブイズトゥルーの06(牡・父スペシャルウィーク)。(923日)

小倉競馬場で「宮崎競馬100年記念」(宮崎)

728日(土)は小倉競馬場「宮崎デー」として、宮崎にちなんだ特別レースが3レース行われました。残念ながら東国原知事は多忙のため来場できなかったのですが、当日は宮崎物産展をはじめ、「宮崎-小倉競馬観戦日帰りツアー」などのイベントが実施され、競馬場は大いに盛り上がりました。メインレースの「宮崎競馬100年記念」は武豊騎手騎乗の1番人気サンライズレクサス(4歳・牡・父フォーティナイナー)【馬主:松岡隆雄氏,生産牧場:()笠松牧場,石坂正厩舎】が見事に勝利しました。

ちなみに、同レースには〔抽〕グランドサファイヤ(日高育成牧場で育成)も出走していましたが、残念ながら14着でした。懐かしい〔抽〕の記号がつく馬もほとんどいなくなりましたが、まだ現役で3頭頑張っているようです(そのうち1頭は宮崎育成牧場で育成したアマノブレイブリー)。

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宮崎競馬100年記念の勝利馬サンライズレクサスの関係者(728日)

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競馬場での宮崎物産展の様子(早い時間帯の撮影のためお客さんは写っていませんが、午後はスタンドでビール片手に宮崎地鶏を食べながら競馬観戦をされている姿が多く見られました)(728日)

このレースは宮崎競馬場(現在の宮崎育成牧場)で明治40(1907)1116日に競馬が初めて開催されてからちょうど100年を記念して施行されました。宮崎競馬場では、日本競馬会および国営競馬時代を経て、昭和21年から昭和38年まで宮崎県および宮崎市に施設が貸与され、地方競馬が施行されていました。一方、競走馬の育成業務は昭和31年から開始されましたが、平成3年の競馬法改正までは「宮崎競馬場」という名称でよばれていました。現在、「宮崎育成牧場」ではJRA育成馬の育成研究を主な業務としていますが、所有する調教用1600mおよび500m走路を民間育成業者に対しても開放しています。また、乗馬教室やポニー馬車試乗会なども定期的に実施し、「馬のいる公園」として多くの市民に親しまれています。

「宮崎デー」の翌週、84日(土)2回小倉7日目第4レース 新馬戦(1000mダート)でアキノジャブ(馬主:穐吉正孝氏,生産牧場:伊藤牧場/青森,藤岡健一厩舎)が勝利をあげました。日高育成牧場の育成馬は既に2頭(エイシンパンサーおよびユウアールシー)早々と勝ち上がっていたのですが、宮崎育成牧場 (Big Dream Stables)育成馬の2歳新馬戦初勝利ということでわれわれの喜びもひとしおです。

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育成牧場時代のアキノジャブ(牝・父ジェイドロバリー・母ハッピードリーマー)

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勝利後、検体採取所前で撮影。よく頑張りました^^(84日)。

青森から育成馬4頭到着(宮崎)

72日の八戸市場(青森)でJRAが購買した4頭(牡2、牝2)は、翌3日の朝8時に八戸を出発し、約28時間かけて4日の昼12時頃に宮崎に到着しました。道中は梅雨前線の中を下ってきたため、日中の気温が涼しい中をスムーズな輸送ができたのでほっと一安心です。到着後は、いったん馬房の中でリラックスした後、それぞれ牡2頭、牝2頭のグループで約2時間放牧を行いました。

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期待の若駒たちが到着しました。馬運車から降ろしているのはオークアリダーの06(牝・父キンググローリアス)。(74日)

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到着後、始めての放牧です。輸送の疲れもなく、元気一杯です。先頭がアトラスマーカーの06(牝・父ティンバーカントリー)、後ろがオークアリダーの06(牝・父キンググローリアス)(74日)。

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翌日には早くもリラックスしておいしそうに草を食べています。向かって右がミスバンダムの06(牡・父サニングデール)、左の四白がモーリフェアリーの06(牡・父プリサイスエンド)(75日)

5日には、騎乗馴致開始前に馬の肢元の状態を確認する意味で、四肢のX線検査および屈腱のエコー検査なども実施しました。血液検査やおしっこの検査も行います。新しい環境で、初めて見る人や馬に囲まれて、馬たちは幾分緊張していたようですが、決して痛いことや怖いことをするわけではないことは理解してくれたと思うので、このような検査にもすぐに慣れてくれるはずです。また、我々も事前に馬の状態を確認することで、馴致開始時期の決定等、今後の調教方針を決めていく上で参考になります。

放牧地にも慣れた入きゅう3日後から夜間放牧を開始しました。最近は雨も多く、馬にとって決して快適な環境とはいえませんが、9月の騎乗馴致開始前まで夜間放牧を継続し、馬体の成長を待ちたいと思います。

さて、6月から新馬戦も始まり、宮崎育成牧場「Big Dream Stables」を巣立った馬たちも続々と競馬場でデビューしています。新馬戦は出走馬のレベルも高く、勝ち上がるのには苦戦していますが、なんとか頑張ってほしいものです。

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まだ、新しい環境に慣れていないこの馬(アトラスマーカーの06)は馬体を洗うことにも体を硬くして緊張しているようです。(74日)

千葉サラブレッドセール(宮崎)

ブリーズアップセールが終わり、ほっと一息といきたいところですが、まだまだ、終わっていません。馬体の成長を待ちながらブリーズアップセール上場を見合わせた馬たちや、ブリーズアップセールで思いどおりの走りができずに残念ながら未売却となった馬たちは、514日に船橋競馬場で開催される「千葉サラブレッドセール」および2122日に日高育成牧場で開催される「ひだかトレーニングセール」にむけて、それぞれ競馬学校および日高育成牧場において調整中です。

525日に競馬学校に移動した馬たちは、ハローヘレンの05(牡・父ヘクタープロテクター)、ヒカルパロサントの05(牡・父マイネルラヴ)、レガシークラウドの05(牡・父スクワートルスクワート)、クールドフランスの05(牝・父コマンダーインチーフ)、サクラパールの05(牝・スペシャルウィーク)、ダンスパーティーの05(牝・父コロナドズクエスト)の6頭です。ここでの馬たちは宮崎育成牧場からの出張職員で担当し、彼らが競走馬としてターフにデビューすることができるように、できる限りのことを行ってあげたいと思っています。

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ブリーズアップセールを欠場したクールドフランスの05(牝・父コマンダーインチーフ)ですが、無理せず調教を行ってきたため馬体も充実してきました(55日)。

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400m馬場での準備運動。奥(向かって左)がレガシークラウドの05(牡・父スクワートルスクワート)、手前(向かって右)はハローヘレンの05(牡・父ヘクタープロテクター)(55日)

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1400m走路でのキャンター調教。先頭はダンスパーティーの05(牝・父コロナドズクエスト)、2番目はサクラパールの05(牝・父スペシャルウィーク)(55日)。

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夕方のピッキング。左はハローヘレンの05、右はヒカルパロサントの05(父マイネルラヴ)

ピッキング(宮崎)

セール前に宮崎からお届けするブログは今回が最終便となりますので、まずは育成馬展示会のお知らせからです。宮崎育成牧場で育成した24頭の展示会が326日(13時~)に行われます。展示会では全馬の比較展示および約15頭の騎乗供覧を実施予定です。多くの皆様のご来場をお待ちしております。

ブリーズアップセールに向けて馬たちも仕上げの段階になりました。現在、週2回スピード調教(ゆっくりしたキャンターを500m馬場で5F実施後、1600馬場で5Fのキャンターを2本)として、1本目をF18程度のステディキャンター、2本目は最後3FF16秒程度の速度で走行するトレニーングを行っています。体の成長を待っている数頭の馬を除いて、概ね順調に調教を実施できているのですが、中には速いスピードでの調教を開始すると、飼葉食いが落ちてくる馬もでてきています。そのような馬に対しては、1回に与える飼葉の量を少なくして回数を増やしたり、嗜好性のよさそうなものを選んで与えたり、場合によっては胃潰瘍の薬をあげたりするのですが、食べたくない馬を食べさせるのは本当に大変なことです。

しかし、そんな馬たちが疲れたときに、一番食べたくなるのは「青草」のようです。私たちはスピード調教実施後に放牧地で下馬して、青草を短時間食べさせる「ピッキング」を行っています。これはヨーロッパの厩舎で、調教後や夕方などにピッキングを行っているのを真似ているのですが、草食動物である馬にとって精神面を健康に保つ上でいいことだと思っています。

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ピッキング風景です。写真左からオロールの05(♂・父アラムシャー)、ギザニアの05(♂・父ワイルドラッシュ)、サンドコロネットの05(♂・父アドマイヤコジーン)(314日)

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外(向かって左)トップライナーの05(♂・父イシノサンデー)、内はユーワソフィアの05(♂・父キャプテンスティーヴ)(31日)

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レディーフェアリーの05(♂・父アグネスタキオン)(38日)

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外(向かって左)はヒカルパロサントの05(♂・父マイネルラヴ)、内はアトラスマーカーの05(♂・父ステイゴールド)(318日)

ステディキャンター(宮崎)

宮崎キャンプも終了し、プロ野球はオープン戦が始まりました。南九州は、もう春の気配です。しかし、この時期にしては雨の日が多く、例年より約1ヶ月早い「菜種梅雨」のような日々が続いています。これも暖冬の影響でしょうか。「せめて、調教時間帯だけでも雨が降らないでほしいなあ」なんて思う毎日です。一方、農家の方にとっては、3月半ばに田植え(二期作)が始まることから、ありがたい雨なのかもしれません。

さて、日々の調教ではF2018のスピードで4Fを走行することが可能となってきました。我々はこのスピードをステディキャンターとよんでおり、一列の隊列を組み、前進気勢をためる調教を繰り返しながら、安定したフォームで走行することを馬に要求しています。また、このスピードをベースとしながら、徐々に速いキャンターも実施していきます。しかし、全馬に対して同じ内容の調教を実施していても、筋肉痛になったり肢に熱を持ったりする馬も出てきます。考えてみると、馬の成長に個体差があるのは当然です。我々はこのような馬の出すサインを謙虚に受けとめ、馬体の成熟の遅い馬に対しては無理をせず、調教進度を抑えて体が出来上がるのを待ちたいと考えています。

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この日はV200を測定するためにエクイパイロットを装着して調教を行いました。1本目は4.5F F20のスピードで、2本目は5.5FF1817のスピードで併走調教を実施しました。1本目を走行中のユーワソフィアの05(牡:父キャプテンスティーヴ)。222

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2本目の併走調教です。内(向かって左)がサンドコロネットの05(牡:父アドマイヤコジーン)、外がベルキスの05(牡:父マーベラスサンデー)222

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ケイウンクィーンの05(牡:父タヤスツヨシ)223

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ベルキスの05(牡:父マーベラスサンデー)224

「宮崎らしさ」(宮崎)

「天の声」の前知事が逮捕後、「そのまんま東」氏が知事に当選したり、はたまた、「鳥インフルエンザ」が流行したりと話題に事欠かない「宮崎」ですが、21日にプロ野球4球団がいっせいにキャンプインしました。宮崎は同じ南九州の中でも太平洋に面していることから、冬に晴れの日が多く気候が温暖であることが特徴で、キャンプ地が集中するのも理解できる気がします。一方、競走馬の世界に目を向けると、アメリカでは冬季に暖かいフロリダやカルフォルニア、ヨーロッパではドバイやイタリアに管理馬を移動して調教を実施する調教師もいます。人も馬も体を動かすという面からは暖かい地に利があるといえるかもしれません。

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宮崎育成牧場場内にはワシントニアパームが多く、南国情緒を醸し出しています。クーリングダウンを行っている様子です。(29日)

従来、北海道は降雪や馬場の凍結などもあり、冬季には調教が十分出来ないというのが定説でした。しかし、近年、屋内坂路をはじめとした施設の充実にともなって、北海道でも冬季にスピード調教を行えるようになり、また、ライトコントロール法を応用して育成馬の性ホルモン分泌開始も早めることができるなど、暖地となんら遜色のない調教を進めることが可能となってきました。そのようなうわさを聞くと、周りに牧場や育成施設などがなく、当場以外の馬を見る機会の少ない我々は、不安やあせりを感じていないわけではありません。しかし、人の気持ちが揺らいで、馬にとって良いことは何もありません。我々は先人から引き継いだ「宮崎らしさ」を失わないよう、やるべきことに自信を持って調教を進めていこうと考えています。

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1F20秒平均のスピードで4Fを走れるようになってきました。先頭はコネクションロッドの05(牝・父ブライアンズタイム)

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34頭で単位を区切って縦列調教を行っています。先頭はハッピードリーマーの05(牝・父ジェイドロバリー)(24日)

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併走での調教。内(向かって左)はアポロバラードの05(牝・父シンボリクリスエス)、外はウインクアットデエンジャーの05(牝・父ボストンハーバー)。(28日)

若馬の体力測定(エクイパイロット)(宮崎)

まず、反省した話から・・・。先日、馬をウォーキングマシンに入れて運動させていたところ、蹄鉄がずれて釘を踏ませてしまいました。これは、我々が目を離していた間の出来事で、釘の刺さった痛みのため、馬が必死でマシンが動かないように踏ん張って止めている姿を目にしたときには、馬に対して申し訳なく、そして自分が情けなくなりました。これは、決してウォーキングマシンが悪いのではなく、マシンに入れる前の馬体チェックや途中の監視を怠った私の気の緩みにあります。あらためて、「馬を見る」という基本を忘れないようにしたいと考えています。

さて、若馬たちは元気いっぱい、毎日トレーニングに励んでいます。牡・牝ともにキャンターは平均F2220秒程度のペースで5F1000m)を走れるようになってきました。現在は概ねF20秒程度で安定して走れることを目標にしています。1_7

1600m馬場での縦列調教。先頭はギザニアの05(牡・父ワイルドラッシュ)。(113日)

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500m馬場での併走調教。外(向かって左)ヒースネックレスの05(牝・父コロナドズクエスト)、内はラヴォイラの05(牝・父アラムシャー)。(117日)

125日に、GPSシステムを利用して走行速度と心拍数を測定する機器「エクイパイロット」を馬体に装着して全馬の体力測定を実施しました。このデータはリアルタイムでは見ることができないのですが、現在負荷をかけているスピードおよびインターバル回数で、どの程度心拍数が上昇しているのか、あるいは調教後に上昇した心拍数が落ち着くまでの時間(息の入り)などを、個々に検査を行い、全体としての調教進度も評価しています。前回は12月中旬に測定したのですが、今後、2月および3月にも測定する予定です。我々の調教は、余裕残しの調教なので、心拍数のデータから馬の潜在能力を推し量ることはできませんが、調教負荷の判定という意味では、蓄積していく価値のあるデータと考えています。3_3

鞍の後ろにGPS、鞍下の番号ゼッケンの裏に心拍数を測定するための電極がついています。馬はハッピードリーマーの05(牝・父ジェイドロバリー)。(125日)

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今回の測定では500m馬場でキャンターを1000m実施後、1600m馬場で1000mのキャンターをインターバルトレーニングとして1本目(F2220平均)は縦列、2本目(F20平均)は併走で2本実施しました。内 (向かって左)レディフェアリーの05(牡・父アグネスタキオン)、外はギザニアの05(牡・父ワイルドラッシュ)。(125日)