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2023年7月

2023年7月20日 (木)

地上最高のアウトドアショー ~スタンピード~

 こんにちは、カルガリー大学で研究留学中の運動科学研究室の高橋です。

 今回は、ここカルガリーで伝統となっている馬を用いた行事をご紹介します。カルガリーは石油の街として発展してきましたが、牧畜業から始まった街でもあります。そのため、毎年7月上旬の10日間、カウボーイの精神と文化をお祝いするスタンピードというお祭りがあります。愛称は「The Greatest Outdoor Show on Earth」と呼ばれ、100万人以上が国内外から来場すると言われています。100年以上前から続くカルガリーの伝統的なお祭りです。

 数百頭の馬がダウンタウンの街を行進するパレード(図1)を皮切りに、激しい動きをする馬の上に綺麗な姿勢でどれだけ留まっていられるかを競うロデオや、樽を指定された順番に回ってくるバレルレース、4頭のサラブレッドが1つの馬車を曳き、コースを1周するチャックワゴンレースなど馬にまつわるイベントもたくさんあります(図2, 3)。チャックワゴンレースはスタンピードのメインイベントの1つで、夜の8時頃から毎日開催されます。

1_2図1.ダウンタウンのパレードの1コマ

2_3図2. ロデオやチャックワゴンレースの会場

31000m_3図3. 1周1000m程の比較的小さめのトラック

 これらのウマのイベントの他にも、移動遊園地が設営されたり、様々なアーテイストのライブコンサートもあるので、どの世代にも楽しめるイベントとなっていました。

 余談ですが、樽を指定の順番に回るバレルレースは主にクオーターホースが走ります。最高速度は時速50-60km程度まで迫りますが、スタートからゴールまで20秒程度というとても短い運動時間にも関わらず、運動誘発性肺出血(EIPH)はよく起こるようです。当研究室の杉山が執筆したJRA平地競走における鼻出血のリスク因子に関する論文(Sugiyama et al., Animals 2023)でも短距離レースで鼻出血の発症が多いので、短い運動に特徴的な何かがEIPHや鼻出血発症に関わっているのかもしれませんね。以下がJRA平地競走の鼻出血発症要因に関する論文のリンクです。興味がある方はぜひご一読ください。

【外部リンク】https://www.mdpi.com/2076-2615/13/8/1348

2023年7月10日 (月)

馬も歩活(あるかつ)?WM建設中!

こんにちは、分子生物研究室の上林です。

梅雨明けも目前、夏本番の到来が近づいてきましたね。

栃木もかなり気温と湿度が上昇傾向にあり、ムシムシする日々が増えてきました。

さて、現在競走馬総合研究所ではある施設を建設中です。その写真がこちら。

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これは、基礎となる土台部分の写真ではありますが、何ができるかわかりますか?

ヒント、というか答えをタイトルに書いているのですが、これの完成品がこちらです。

どん!!

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わかりますか?

実はこれ馬用のウォーキングマシーン(WM)なんです。

実際に中に馬が入っている様子がこちら

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人のランニングマシンとは違い、床が動くわけではありません(馬にもトレッドミルはあります)。

上の写真のテントのように見える部分の真ん中に軸(ローター)があり、そこを中心として、さながらメリーゴーランドのように機械が回転します。

中は6~8個の仕切りで区切られており、同時に複数頭の馬を歩かせることができます。

当然、人が馬を持つ必要はありません。

人が馬を曳く必要なく、同時に複数頭の馬を同じペースで運動させられるという点で、人にとっても非常にありがたい設備です。

総研では研究用の馬の日々の運動として、毎日1時間ほどこのWMに入れて歩かせています。

機械の速度は調節可能ですが、概ね100 m/分のペースです。人だと結構早歩きのペースですね。

総研では既に1台が稼働していますが、現在建設中の1台は9月を目途に竣工予定です。

人間にとって歩活(あるかつ)には少し厳しい季節になってきましたが、馬たちは今日も元気に歩いています。

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「見てないであんたも歩きなさい!」とでも言いたげな顔ですね。笑

追伸:本記事を書いて少し経ちましたが、だいぶ組み立てが進みました。竣工が待ち遠しいですね。

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2023年7月 1日 (土)

骨・関節感染症学会

臨床医学研究室の三田です。

 

 6月24日と25日に三重県の津市で行われた第46回日本骨・関節感染症学会を聴講してきました。

 この学術集会では骨や関節の手術後に発生する術部感染症に対する予防・診断・治療方法をメインテーマにしており、人工関節の設置手術の後の感染症に関する発表が多かったです。ヒトの整形外科では近年の高齢化に伴い膝や股関節の人工関節を設置する手術が増加傾向にあり、その手術件数の0.25~2.0 %で手術部位の感染症が発生していると報告されています。参加者の先生はその治療のスペシャリストで、これらの感染症に対する近年の治療戦略の変遷や考え方について学ぶことができました。

 また、昨年この学術集会に参加した時には、抗菌薬を感染部位に継続的に投与する方法(CLAP〔クラップ〕)について勉強できましたが、本年はこの治療方法に関する演題数がかなり増えており、とても盛り上がりを見せていました。この治療方法では抗菌薬を感染部位に直接投与することで、静脈内投与や経口投与では実現できないような高い抗菌薬濃度を感染部位に提供することができます。そのため、従来治療ではなかなか治せなかった手強い感染症に対して有効に働くことが多いようです。

 昨年以降、馬医療での実現にむけてCLAP療法のパイオニアの先生達に多くのご指導いただいており、学会後の懇親会にもお招きいただきました。お酒のせいで少し記憶があいまいですが、その席で先生の1人が仰っていた

『感染症を治すことは当たり前になりつつある、大事なのはその先にある機能回復』

という言葉はとても印象的でした。

 ウマでも関節に感染症を起こすと、骨がいびつな形態となって機能が損なわれることがあります。そのようなケースでも早期に感染症をコントロールすることで機能の維持ができたら望ましいなと思います。

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今年の学術集会のテーマは「骨・関節感染症に勝つ!」でした。

抄録集のデザインからは会長がゲーム好きなのかと感じました。