« 2023年7月 | メイン | 2023年9月 »

2023年8月

2023年8月21日 (月)

馬学講座・ホースアカデミーを撮影しました

 こんにちは、運動科学研究室の吉田です。

 今回は先日、競走馬総合研究所(総研)で撮影・収録が行われた「馬学講座・ホースアカデミー」について紹介します。「馬学講座・ホースアカデミー」は、JRAの付属機関である日高・宮崎両育成牧場が保有する技術や研究成果を、動画を用いて生産地に広く普及、啓発しようと2011年にスタートした事業です。今回はいくつかのテーマについて総研に情報発信の依頼があり、我々運動科学研究室からは、胡田職員が「競走馬における暑熱対策」について紹介しました。暑熱環境下での運動負荷(どれくらい負担が増すのか)や運動後の馬体冷却(なるべく早くシャワーなどで多量の水をかけ続けることが推奨される)について詳しく話しています。

D116af8f560d4d4489e38bd4ace3a881_1_

スポットライトを浴びる胡田職員

 この内容は本年9月に、BSグリーンチャンネル(※外部リンク)で放映予定です(BSを視聴できるならば、グリーンチャンネルを契約していなくても無料で視聴できます)。

 また、2012年から昨年までの馬学講座・ホースアカデミー(※外部リンク)については、(公社)日本軽種馬協会(JBBA)の事業としてすでに動画が配信されておりますので、興味があれば是非視聴してみてください。

0815_1「撮影」の様子

 なお、本年2月15日に当ブログ(リンク)で予告紹介していた馬学講座・ホースアカデミー「スポーツ科学基礎講座」(※外部リンク)も我々運動科学研究室から発信されておりますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。

2023年8月16日 (水)

欧州獣医薬理毒性学会学術大会(EAVPT)の参加について

臨床医学研究室の黒田です。                               

 7月2~6日にベルギーのブルージュで開催された第 15 回欧州獣医薬理毒性学会学術大会(EAVPT)に参加しましたので紹介します。

 EAVPTは、欧州に拠点を置いていますが、獣医の薬理毒性を考える上では世界的規模の学会で、専門誌(Journal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics)を発刊しています。今回も世界中から350名あまりの獣医・研究者が参加していました。私がフランス・トゥールーズ獣医学校の薬理学研究室にて師事し、昨年来日して頂きましたPierre-Louis Toutain教授が本学会の前会長であったため、今回、教授が主催する抗菌薬の薬物動態に関するワークショップの講師依頼を受け参加しました。

Img_7296_h

写真1;Toutain教授と 

 本ワークショップは、ヨーロッパにおけるヒトの感染症専門組織であるEUCASTの獣医部門(VetCAST)が主催となり、臨床的ブレイクポイントを検討するための解析を学ぶ会です。臨床的ブレイクポイントとは、感染している菌が抗菌薬に対して有効か無効かを判断する基準のことであり、以下の3つの項目によって決定されます。1つはその抗菌薬に対して菌が耐性遺伝子を持つかどうか、次いで臨床的効果の有無、そして3つ目に薬物動態的な有効性(PK/PD カットオフ値の決定)です。本ワークショップでは、特に3つめのPK/PD カットオフ値の解析法を、解析ソフトを用いて習得していただきました。データは、ウマのペニシリンの薬物動態を用い、日本を含む世界各国で行われた実験データを用い、解析します。複数の国で様々な投与法で決定されたカットオフ値を、一つのモデルで解析かつ判断することは難しく、かなり専門的な内容となりました。言語の問題もあるので役目を果たせるかどうか不安はありましたが、何とかお役に立つことが出来たと思っております。

Img_7200

写真2;ワークショップ風景

 学会では、美味しいベルギービールを交えて日本の獣医大学の先生方、私の留学先のフランスの先生方、競走馬のドーピングを専門とされている先生方とも交流が出来ました。薬物動態に関する専門学会はあまり多くないため、貴重な経験が出来たと思います。ウマの演題も多く、麻酔薬、鎮痛薬、抗菌薬など多くの発表が行われました。次回はヘルシンキ開催と聞いておりますので、興味がある獣医師もしくは分析研究者は是非参加してみてください。

Img_7112

写真3;学会主催のビール工場見学

Img_7230

写真4;ベルギービールとタルタルステーキ

2023年8月 8日 (火)

獣医病理学の大家 Fabio Del Pielo (ファビオ デル ピエロ)先生の来日

微生物研究室の上野です。

 当研究室の越智研究役が昨年の海外研修でお世話になったルイジアナ州立大学のFabio Del Pielo先生が、ご自身のサバティカル休暇(自主的な学習・研究のための休暇)を利用して7月に来日されました[写真1]。先生のご出身はイタリアですが、獣医病理学を専門に学んだ後、アメリカの大学で教鞭をとられ、かれこれ約30年にわたり動物の病理診断業務に携わられている、この分野で著明な先生です。“病理学”とは、病気になった動物の身体に生じている変化を調査・研究する、字のごとく病の成り立ちを明らかにする学問分野です。主として解剖技術や顕微鏡觀察等の形態学的手法を用いて実施され、その成果は患畜の病気の診断や検診および予防に生かされます。病理学を専門とする私達は特にお会いできることを楽しみにしていました。

1_3

写真1:Del Pielo先生(総研正門)

 
 競走馬総合研究所(総研)では、症例を用いて先生が実際に米国で行われている検査手法ならびに標本作製方法についてご教授いただくまたとない機会を得ました。また、北海道新ひだか町で開催された「生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」において、病理学的な観点から馬の流産・死産ならびに子馬の病気についてご講演いただき[写真2]、我々が経験したことがない、しかしこの先も経験しないとも限らない、米国で遭遇した症例についても学ぶことができました。先生はこの他にも、愛知県の中京競馬場[写真3]や北海道の日高育成牧場を見学、関東圏の獣医大学での講義・情報交換など、3週間という短い滞在期間中にあっても精力的に国内各地を飛び回られました。

2

写真2:シンポジウムでのご講演(北海道新ひだか町)

3_b

写真3:中京競馬場牧場見学

 このようなお忙しい中にぽつんと空いた1日。先生のご希望で総研のある栃木県の世界遺産、日光東照宮を案内することになりました[写真4]。正直なところ、日常的な英会話もままならない私の案内で大丈夫かと思いましたが、流石にそこは世界遺産。英語の説明板がそこかしこにあり非常に助かりました。私には「三猿」も「眠り猫」も”That is the famous wood carving.”としか説明できませんでしたが…。海外の方と二人きりで旅する機会はそうそう巡ってきませんが、英語を学習しなければと改めて思った1日でした。まだ伸びしろがあると信じて…

4_2

写真4:Del Pielo先生と上野(日光東照宮 陽明門)

2023年8月 4日 (金)

馬インフルエンザに関する国際的なWebセミナー

分子生物研究室の根本です。

5月31日に国際獣疫事務局(WOAH: World Organisation for Animal Health、これまでの略称はOIEでした)のアジア太平洋地域代表事務所主催の馬インフルエンザに関するWebセミナー(Webinar)で講演を行いました。(本ブログでは海外の学会で発表を行ったという内容が多いですが、私はWebセミナーということでいつもの職場からの講演でした・・・ですので特に写真はありません!)

JRA総研は2021年に馬インフルエンザに関するWOAHのリファレンスラボラトリー(詳細はリンクに)に認定されており、その関係で今回講演の機会をいただきました。JRA総研からは企画調整室の山中と私が講演しました。他の講演者は、WOAH、FEI(国際馬術連盟)やアイルランド、オーストラリア、中国の研究者などであり、国際色豊かなセミナーとなりました。

私の発表内容は馬インフルエンザのワクチンに関する内容で、現在使用されているワクチンの有効性の評価方法と新規ワクチンに関する研究内容を発表しました。セミナーの様子が下記リンク先のYouTubeに掲載さられていますが、つたない英語でお恥ずかしい限りです。

講演後は疲れ果ててしまいましたが、今後も国際会議で講演を依頼されるように業務に取り組まなければならない、と心を新たにした一日でした。

*本セミナーの詳細は下記リンクよりご覧ください。

外部リンク: https://rr-asia.woah.org/en/events/webinar-on-equine-influenza/

(2023年8月1日リンク確認)

*参考:2021年6月17日記事 馬インフルエンザのOIEリファレンスラボラトリーについて

https://blog.jra.jp/kenkyudayori/2021/06/17/

2023年8月 1日 (火)

日本炎症・再生医学会に参加して

臨床医学研究室の田村です。

 7月中旬にシティプラザ大阪で開催された第44回日本炎症・再生医学会に参加してきました(図1)。本学会は、炎症の病態解明とその治療法の開発を目指して設立された「日本炎症学会」を前身とし、2005年に再生医学の研究をも包括する形で現在の学会名に改称されたということです。本学会を通じて、これまでにも数多くの有効な薬剤や治療方法が発表されてきており、炎症を考える上で重要な学会の一つとして認識されています。

 ヒトのスポーツ選手と同じく競走馬でも、力強く、速く走るために関節や腱のケガを予防する、起きてしまった炎症を取り除く、ことは大変重要です。そのためには、日常的なケアがかかせません。なんと人のスポーツでは、古くて新しい治療として冷却療法に光が当てられていました。単に冷却するだけでなく、そのタイミングや冷却時間、また組織レベルで起こる諸変化を科学的に調査することで、より有効な炎症をコントロールする技術が模索されていました。その他、ヒト医療では、関節軟骨の再生に注目が集まっていました。幹細胞を用いて損傷した関節軟骨を再生させることができないか、盛んに研究されていました。これは我々も挑戦しているテーマ(図2)で大いに参考になりました。

 今回参加した日本炎症・再生医学会ではヒト医療に応用されている様々な治療法や新しい知見を知ることができました。今後、競走馬の獣医療に応用できるかもしれない分野で興味深かったです。

Photo

図1.学会入口に立て掛けられた案内板

Photo_2

図2.我々の研究室にて馬幹細胞から作製した軟骨ペレット(矢印)。まだ臨床応用には遠いものの軟骨ペレットを幹細胞から作れる時代はすでに到来している