野外でのデータ測定
運動科学研究室の胡田です。
当研究室では、トレッドミルというルームランナー上で、人が乗らずに馬を走らせてトレーニング適応やバイオメカニクスなどに関するデータを取得しています。いっぽう、これとは異なり、実際に人が乗って走る野外でのデータも重要です。より競馬に近い馬の運動データが得られると考えられるからです。しかし、これがなかなか難しく、施設や人の確保、安定的な走法の維持、データを取得する装置の馬体への装着など種々の問題をクリアーしなくてはいけません。
我々は、そういった難題を克服する目的で、今回、調教施設として充実しているJRA宮崎育成牧場に協力してもらい、野外での騎乗時の馬の駈歩中の筋活動データおよび動画をとってきました。
ここでJRA宮崎育成牧場について少し説明します。本育成牧場はかつて宮崎競馬場として実際に競馬が行われていた施設です。現在は育成場に転用し、温暖な気候を活かして1歳から2歳にかけて競走馬の育成を行っています。育成調教に用いるコースは、500メートルおよび1600メートルのダートコースです。これらの調教用コースを使わせていただきました。
馬の足元が見えるように撮影しなくてはいけないことから、まずコース縁に積まれている雨水対策用の土嚢を人力で移動させるところからがスタートです。さらに、広い走路のあちこちに装置を取り付けなくてはならない上に、走り抜ける姿を実際に画像として捉えられるかの確認のため、34歳と決して若くない筆者は走路を馬並みに走り通して準備するという重労働に堪えました(図1)。そんな苦労を経て、最適化した当該コースでいよいよデータ採取という当日、なんと雨模様! “日頃の行いが悪いのかも”とちょっとブルーになりかけましたが、それでも無事にデータを採ることができました(図2)。データの解析には時間がかかりますので、その話はまたいつか。
図1 測定準備のために20メートルをダッシュする筆者(34歳)
図2 測定風景
このように、競走馬が安全に、そしてもっている能力を余すところなく発揮できるように運動を解析して、調教技術の改善に役立てようと日夜努力している研究者がいることを覚えていてくださると嬉しいです。