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2019年6月

2019年6月15日 (土)

子宮内膜杯

 今年度の繁殖シーズンは、10頭の繁殖牝馬が受胎しました。

 しかし、その内の1頭は、6週目の受胎確認で妊娠維持が確認されていたものの、8週目の検査で胚が無くなっていました。8週目と云えば、エコー検査で雌雄鑑別が可能となる時期ですが、残念ながら流産してしまいました。

 馬の受精卵は、受精後1週間程度で卵管から子宮に侵入します。その後、3週までに子宮に固着し、5週以降にようやく着床することになります。その頃、子宮内膜の絨毛膜と接している一部分は、輪帯細胞へと変化し子宮内膜杯(endometrial cup)が形成されます。この子宮内膜杯からは、妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)が分泌され、黄体の維持と副黄体の形成が促され、妊娠が維持されることtなります。

 今回、この繁殖牝馬の子宮の中を内視鏡で検査すると、子宮内膜杯の跡が確認できました。反対側の子宮角には、死滅したと思われる胎胞も認められました。

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白く膨隆した部分が子宮内膜杯(子宮粘膜に赤い出血斑も認められる)

2 白い膿様のものは死滅した胚と思われる

2019年6月12日 (水)

育成管理品評会

第63回三石軽種馬1歳馬育成管理品評会に参加しました。

現在、日高地区で行われている軽種馬の品評会は、今回の三石、浦河・荻伏、平取の3か所のみです。品評会では、各生産牧場で育て上げられた馬たちを出陳し、その馬体や手入れ、馬の取り扱いなども含めて審査員が評価します。

今回は、1歳の牡・牝各12頭が出陳されました。

品評会は、多くの馬を比較して見ることができるだけでなく、実際に繫養管理されている牧場や牧場主さんと交流できる貴重な機会です。

管理技術は、年々向上しているように思えます。

各賞を受賞された牧場の関係者の皆様、おめでとうございました!

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天気も良く、馬体も輝きます

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審査結果

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表彰式

Img_0250 副賞は実用的なものが盛りだくさん!

2019年6月 6日 (木)

立位腹腔鏡手術による馬顆粒層細胞腫の摘出

 顆粒膜細胞腫 Granulosa Cell Tumor(GCT)とは、卵胞を裏打ちする顆粒層細胞が増殖する卵巣の腫瘍です。増殖した顆粒層細胞からは、インヒビンが過剰分泌されるため下垂体からのFSH分泌が抑制され、反対側の卵巣は静止し萎縮してしまいます。GCT は良性腫瘍に分類されていますが、内分泌学的な異常により無発情や持続性発情となり、交配することができなくなるため繁殖分野で問題となる病気です。有効な内科療法はなく、外科的な卵巣摘出が必要となります。

 今回、当場繋養の繁殖牝馬に発症したGCTを立位腹腔鏡下で摘出手術したので、その様子を紹介します。

 症例は12歳の繁殖牝馬。一昨年分娩後より左卵巣の肥大を認め、エコー検査では蜂巣状の小卵胞が多数確認されていました。顆粒膜細胞腫の診断マーカーである抗ミューラー管ホルモン(AMH)の値は、20.38pg/mLと高値でした(正常馬の場合は1.0以下)。

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手術は、帯広畜産大学の動物医療センターに搬入して実施しました。

2 術野を決めるためにエコーで血管走行を確認

3 腹腔鏡、鉗子、超音波凝固切開器(リガシュア)を挿入し、卵巣を間膜から切り離す

5 切り離した卵巣を取り出すために術野を広げポーチを挿入

6 腹腔鏡を見ながらポーチに切り離した卵巣を収納

7 取り出せる大きさになるように卵胞を切り刻み、容積を減らす

9 直径約8cmに肥大した卵巣を摘出

8 切開部位は最大9cm

 手術時間は約2時間でしたが、鎮静および鎮痛剤による処置のみなので、終了とともに馬運車に乗り込むことが可能でした。

 立位腹腔鏡下における顆粒膜細胞腫の摘出手術は、装置と熟練した手技が必要ではありますが、馬にとって侵襲が少ない手術です。

 学生さん達にとっても非常に良い経験になったのでは無いでしょうか?

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2019年6月 3日 (月)

日高育成牧場サマーセミナー2019 募集開始

獣医学科生を対象とした体験実習プログラム。

募集を開始しました。

日程
2019年8月26日(月曜)~9月1日(日曜) *移動日を含む

対象
獣医学を専攻する4年生から5年生 6名程度

応募方法
「VPcamp」ホームページにて内容を確認のうえ、専用フォームよりご応募ください。

http://www.vetintern.jp/project/jra-hidaka/

ご応募お待ちしております!

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 注記:
本セミナーは文部科学省が実施する「家畜衛生・公衆衛生獣医師インターンシップ VPcamp(Veterinary Public health camp)」事業の一環として開催します。