2025年5月 1日 (木)

クリープフィーデングを開始しました🌸

 日高育成牧場の桜は見頃を迎え、この春生まれた子馬たちはすくすくと成長しています。今回は子馬たちの成長に関連するクリープフィーディングについてご紹介いたします。

 哺乳期の子馬に飼料を給与することを「クリープフィーディング」と呼びます。簡単に言えば、まだ母乳を飲んでいる子馬が、離乳に向けて徐々に固形飼料に慣れていくために飼料を給与することです。

 クリープフィーディングの目的は主にふたつあります。ひとつめは栄養補給、ふたつめは離乳へのスムーズな移行です。過去の調査によると、生後2か月齢頃から哺乳量が急激に減少し、母乳や放牧草のみでは栄養不足となることが明らかとなっています。そのためクリープフィード(クリープフィーディング用の飼料)を給与し、不足する栄養素を補います。さらに、サラブレッドは生後半年ほどで離乳を迎え、母乳による栄養摂取ができなくなります。その時期に急激に採食内容が変化すると、消化不良や栄養不足、離乳ストレスによる成長停滞を呈します。離乳を実施する数か月前からクリープフィードを給与し、固形飼料からの栄養摂取に馴らすことで、離乳後もスムーズな栄養摂取が可能となり、成長停滞を予防することができます。

 この春生まれた子馬たちは数週間前からクリープフィーディングを開始しました。まずは母馬とともに、飼桶からの飼料摂取を学び、徐々に子馬専用の飼桶からの摂取に馴らしているところです。クリープフィードを摂取しない子馬に対しては、人間の手から食べさせることも試しています。ここから数か月かけて、離乳の頃には一人前の飼料を摂取することができるようにこころもからだも大きくなります。

 夏には場内の見学ツアーを開催予定ですので、成長した子馬たちにぜひ会いに来てくださいね。

Photo満開の桜の下、ぐっすりの子馬

Photo_4母馬とともに飼料摂取

Photo_3子馬専用の飼桶から食べられるようになりました

2025年2月27日 (木)

2025年ホームブレッド誕生のお知らせ

 今回は2025年のホームブレッド誕生をお知らせいたします。2月18日、20日、22日、26日と4頭の分娩がありました。

 2025年最初のホームブレッドは予定日から16日遅れての誕生となりましたが、出生後1時間経たずに起立し、元気な様子を見せてくれました。父カラヴァッジオと母ユッコの間に生まれた牝馬です。毎日元気いっぱいで、おてんば娘になりそうな予感がしています。

 日高育成牧場では、出生翌朝から昼放牧を実施しています。数日間はインドアパドック(屋内)で過ごし、その後成長に合わせて屋外、また広い放牧地へと移動していきます。地面はまだ積雪や凍結がありますので、ロール牧草を広げ、子馬が寝転んでも濡れないようにしています。来月には他の親子とともに広い放牧地へと移動です。子馬同士で遊ぶ姿が今から楽しみです。

S__29352018娩出直後のユッコ2025

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放牧地でくつろぐユッコ親子

2025年1月 7日 (火)

「ブルーライトマスク」

新年あけましておめでとうございます。

巳年ですので昨年度の自分から脱皮し新しく成長した自分となれるよう邁進していきたいと思います。

 

それでは本題ですがまずは動画をご覧ください。

闇夜に光る青い光
YouTube: 闇夜に光る青い光

闇夜に光る青い光、いったい何だと思いますか?

知らない人が見た際には心霊現象に感じるかもしれませんが幽霊等ではありません。

これが「ブルーライトマスク」です。

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馬生産の現場では、冬至頃から人工的に日照時間を長くし、繁殖牝馬の繁殖シーズンを早期化する「ライトコントロール」という技術が広く使われており、馬房内で夜を過ごす馬に対して、馬房の電球を夜間、早朝に一定時間点灯させるのが一般的です。

今回のブルーライトマスクは24時間放牧管理している馬でもライトコントロールが可能となる商品で、馬房に戻す必要がないため、馬房清掃、集牧作業がなくなり労働の省力化に大きく貢献できます。

 

近い将来馬生産地の夜は青く光る放牧地でいっぱいになる日が来るかも…

2024年12月25日 (水)

胚移植による生産馬2頭の成長

 年の瀬を迎え、何かと慌ただしい時期となりました。日高育成牧場では来春の繁殖シーズンに向け、着々と準備を進めています。日に日に大きくなるおなかを抱えた受胎馬は分娩馬房に近い放牧地へと移動しました。早い馬は2月初旬の分娩を予定しています。

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 今回は2023年秋に胚移植にて生産した1歳馬の成長をご紹介いたします。誕生については過去ページ『胚移植による生産馬誕生』(2023年10月公開;https://blog.jra.jp/kitanoheya/2023/10/post-e15f.html )をご覧ください。
 約450日齢を迎えた2頭の体重はそれぞれ380kg、450kgにまで成長しました。離乳前に厳冬期を迎えるなど、春生まれのサラブレッドとは異なる飼養管理を実施しており、2024年2月の離乳以降、24時間放牧を継続しています。5月には新たな仲間を迎え入れ、3頭仲良く過ごしています。血統的背景の違いからか、これまでのJRAホームブレッドと比較して馬格がある様子で、今後の成長も楽しみです。寒い冬を元気に乗りきってもらえるよう、しっかり管理していきます。

 本年のブログはこれで最後となります。みなさまよいお年をお迎えください。

E 現在。中央と右の2頭が胚移植生産馬。(3頭仲良く走って寄ってきました)

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2024年11月14日 (木)

種牡馬に関する講習会に参加してきました。

皆さん季節の変わり目ですが体調はいかがですか?

筆者は見事に風邪をひき絶賛ひどい鼻声です。

本題ですが、去る11月6日(水)にJBBA静内種馬で開催された種牡馬に関する講習会に、種牡馬に関する知見を深めるため参加してきました。

講師は米国ケンタッキー州で種馬場専属の臨床獣医師として勤務し、種牡馬の飼養管理や専門医療のほか人工授精関連の研究等にも携わっているDr.Charles Scoggin獣医師(ROOD&RIDDLE EQUINE HOSPITAL)でした。(英語であいさつしてみましたが全く話せませんでした。。。)

午前の座学では種牡馬の管理法だけでなく米国での種牡馬種付け回数増加の懸念点など興味深い話がたくさん聞けました。午後の実習では精巣、副生殖腺のエコー検査を実施し、筆者も講師指導のもと練習させてもらいました。

70名もの参加者(獣医師、種馬場関係者)で、1日を通して活気あふれる講習会であったのと、馬生産地のたくさんの獣医師が集まる場でもあり、講習会の内容に限らず様々な情報交換の場となっておりました。

馬繁殖の研究対象として、繁殖牝馬だけでなく種牡馬側にも視点を広げ、外部組織と協力しながら研究してみたいなと感じた筆者でした。

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2024年11月 7日 (木)

実践研修プログラム(直腸検査体験)

日高育成牧場ではJBBA軽種馬経営高度化指導研修事業の一環として、日高育成牧場の職員が講師となり、競走馬の生産、育成に従事している方々に向けて、実際に繁殖馬、子馬、育成馬を活用する研修を行っております。

研修内容も研修生と相談の上、希望に沿ったものを随時行っているところですが先日、直腸検査(繁殖検診)の体験希望がありましたので講師をさせていただきました。

基本的に馬の直腸検査は獣医師が行うので研修生に必要な技術ではありません。しかし、私が日高育成牧場にきて2年、毎年のように数グループで直腸検査体験の希望があります。

直腸検査の最も大きな目的は「種付けタイミングの判断」です。

研修では卵巣や子宮の触診、そして超音波検査で得られる所見を種付けに向けてどう解釈していくか実演しながらレクチャーしています。そしてその後、研修生の方々にも実際に直腸検査をやってもらいます。

多くの方が体験後に「わけわかんない!」、「難しい!」と言うのと同時に「獣医さんはこんな難しいことをやっていたんだ!」と言って下さる研修生もちらほら。

 この研修を通して繁殖検診時に獣医師が何をしているのか、何を考えているのかを知っていただくことで、牧場と獣医師の意思疎通も深まるのではないかと考えています。

また、獣医師でなくとも馬繁殖の知識レベルが上がることで、日本の良い馬づくりの一助になればいいなと思っています。

 

(講師をしていて今回の写真が撮れませんでした。参考までに獣医学生の研修時の写真です。)

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2024年5月 7日 (火)

暖かくなってきました🌸

 最高気温が15℃を超える日も増え、放牧地の草も青々としてきました。馬たちにとっても、わたしたち人間にとっても過ごしやすい季節の訪れです。

 4月13日にミスミズ2024(牡:父アニマルキングダム)が誕生し、今シーズンすべての分娩が終了しました。子馬は破水から15分経たずに娩出され、介助要らずのスムーズな分娩となりました。全頭無事に分娩を終えることができ、安堵しています。

 2月、3月に誕生した子馬たちは広い放牧地での昼夜放牧を開始し、子馬同士で遊ぶ姿も見られるようになってきました。社会性を身につけはじめ、こころもからだも成長しています。元気に大きくなりますように!

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分娩1時間後のミスミズ親子

P4281574 満開の桜の下、爆睡中

24_2 遊ぼう!!

2024年2月16日 (金)

2024年JRAホームブレッド第1号

今年は北海道も稀にみる暖冬のようで、日高育成牧場も例年より雪が少なく雪好きの筆者としては少し残念な今日この頃です。

分娩予定日より2週間早く2024年JRAホームブレッド第1号が無事誕生いたしました。可愛い栗毛の女の子です。元気に丈夫に育ってもらいたいですね。

子馬が生まれ、親子の管理、そして種付けに向けた繁殖牝馬の管理等々、体も頭も忙しくなってきました。今シーズンも馬生産頑張ります!

P2151450_2 「まだお眠です。」

P2151466「はい!ひょっこりはん!」

P2151478「一時休憩」

P2151471「私の子供!」

2024年1月 5日 (金)

JRA育成牧場管理指針-生産編-(第3版)発刊のお知らせ

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年もJRA日高育成牧場をよろしくお願い申し上げます。年が明け1歳になったホームブレッドは、昼夜放牧を通して心もからだも日々成長しています。妊娠馬は昼夜放牧から昼放牧に切り替え、2月上旬から幕開けとなる分娩シーズンにむけて、準備を整えているところです。

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 さて、日高育成牧場ではJRAホームブレッドを活用してサラブレッドの生産および育成に取り組み、調査・研究や技術開発を行っています。2010年には「JRA育成牧場管理指針-生産編-」として成果を取りまとめ、生産地における講習会で使用する普及用参考書として活用してきました。

 このたび本指針を改訂し、第3版を発刊いたしました。繁殖牝馬や子馬の管理に関する最新の知見を追加するとともに、動画への二次元コードを掲載し、これまで以上に活用しやすい内容となっております。引き続き、生産・育成の参考書として利用いただけますと幸いです。JRA HPに冊子PDFを公開しておりますので、ぜひご活用ください。

 (リンク先:https://jra.jp/facilities/farm/training/research/ )

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2023年12月 7日 (木)

スプリングキャンプ参加者募集のお知らせ

 日高育成牧場では獣医学生の皆さんに馬産地における馬獣医師について知っていただくため、春と夏の年に2度、実習を開催しています。現在、来春の実習参加者を募集しております。

 繁殖シーズン真っ只中に開催するスプリングキャンプでは、繁殖牝馬と生まれたばかりの子馬を中心に取り扱い、生産現場の概要や獣医療について学んでいただきます。分娩の立ち会いや2歳馬の育成調教の見学などを通して馬産地の概要について幅広く知ることができる実習です。馬の獣医療に触れる数少ない実習であり学生にも大変好評で、参加者からのちに職員となった者もおります。過去の実習の様子については過去記事(以下URL)も併せてご覧ください。本実習はVP camp事業として開催するため、詳細はVP campのHPをご確認ください。

 ご興味のあるお知り合いがいらっしゃいましたら、ぜひお伝えいただけますと幸いです。

 

2023年開催:https://blog.jra.jp/kitanoheya/2023/04/post-a2bd.html

2019年開催:https://blog.jra.jp/kitanoheya/2019/03/post-f0b6.html

 

2024年スプリングキャンプ

【実習日程】2024年3月18日(月)~22日(金) 集合3/17 解散3/23

【参加条件】獣医学科3~4年次

【募集人数】6名

【応募方法】VP camp HPにて詳細を確認の上、専用フォームよりご応募ください。

 応募者多数の場合は書類選考を実施いたします。

        https://www.vetintern.jp/project/jra-hidaka/

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【応募締切】2023年12月20日(水)

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