繁殖牝馬 Feed

2025年1月 7日 (火)

「ブルーライトマスク」

新年あけましておめでとうございます。

巳年ですので昨年度の自分から脱皮し新しく成長した自分となれるよう邁進していきたいと思います。

 

それでは本題ですがまずは動画をご覧ください。

闇夜に光る青い光
YouTube: 闇夜に光る青い光

闇夜に光る青い光、いったい何だと思いますか?

知らない人が見た際には心霊現象に感じるかもしれませんが幽霊等ではありません。

これが「ブルーライトマスク」です。

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馬生産の現場では、冬至頃から人工的に日照時間を長くし、繁殖牝馬の繁殖シーズンを早期化する「ライトコントロール」という技術が広く使われており、馬房内で夜を過ごす馬に対して、馬房の電球を夜間、早朝に一定時間点灯させるのが一般的です。

今回のブルーライトマスクは24時間放牧管理している馬でもライトコントロールが可能となる商品で、馬房に戻す必要がないため、馬房清掃、集牧作業がなくなり労働の省力化に大きく貢献できます。

 

近い将来馬生産地の夜は青く光る放牧地でいっぱいになる日が来るかも…

2024年12月25日 (水)

胚移植による生産馬2頭の成長

 年の瀬を迎え、何かと慌ただしい時期となりました。日高育成牧場では来春の繁殖シーズンに向け、着々と準備を進めています。日に日に大きくなるおなかを抱えた受胎馬は分娩馬房に近い放牧地へと移動しました。早い馬は2月初旬の分娩を予定しています。

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 今回は2023年秋に胚移植にて生産した1歳馬の成長をご紹介いたします。誕生については過去ページ『胚移植による生産馬誕生』(2023年10月公開;https://blog.jra.jp/kitanoheya/2023/10/post-e15f.html )をご覧ください。
 約450日齢を迎えた2頭の体重はそれぞれ380kg、450kgにまで成長しました。離乳前に厳冬期を迎えるなど、春生まれのサラブレッドとは異なる飼養管理を実施しており、2024年2月の離乳以降、24時間放牧を継続しています。5月には新たな仲間を迎え入れ、3頭仲良く過ごしています。血統的背景の違いからか、これまでのJRAホームブレッドと比較して馬格がある様子で、今後の成長も楽しみです。寒い冬を元気に乗りきってもらえるよう、しっかり管理していきます。

 本年のブログはこれで最後となります。みなさまよいお年をお迎えください。

E 現在。中央と右の2頭が胚移植生産馬。(3頭仲良く走って寄ってきました)

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2024年11月 7日 (木)

実践研修プログラム(直腸検査体験)

日高育成牧場ではJBBA軽種馬経営高度化指導研修事業の一環として、日高育成牧場の職員が講師となり、競走馬の生産、育成に従事している方々に向けて、実際に繁殖馬、子馬、育成馬を活用する研修を行っております。

研修内容も研修生と相談の上、希望に沿ったものを随時行っているところですが先日、直腸検査(繁殖検診)の体験希望がありましたので講師をさせていただきました。

基本的に馬の直腸検査は獣医師が行うので研修生に必要な技術ではありません。しかし、私が日高育成牧場にきて2年、毎年のように数グループで直腸検査体験の希望があります。

直腸検査の最も大きな目的は「種付けタイミングの判断」です。

研修では卵巣や子宮の触診、そして超音波検査で得られる所見を種付けに向けてどう解釈していくか実演しながらレクチャーしています。そしてその後、研修生の方々にも実際に直腸検査をやってもらいます。

多くの方が体験後に「わけわかんない!」、「難しい!」と言うのと同時に「獣医さんはこんな難しいことをやっていたんだ!」と言って下さる研修生もちらほら。

 この研修を通して繁殖検診時に獣医師が何をしているのか、何を考えているのかを知っていただくことで、牧場と獣医師の意思疎通も深まるのではないかと考えています。

また、獣医師でなくとも馬繁殖の知識レベルが上がることで、日本の良い馬づくりの一助になればいいなと思っています。

 

(講師をしていて今回の写真が撮れませんでした。参考までに獣医学生の研修時の写真です。)

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2024年5月 7日 (火)

暖かくなってきました🌸

 最高気温が15℃を超える日も増え、放牧地の草も青々としてきました。馬たちにとっても、わたしたち人間にとっても過ごしやすい季節の訪れです。

 4月13日にミスミズ2024(牡:父アニマルキングダム)が誕生し、今シーズンすべての分娩が終了しました。子馬は破水から15分経たずに娩出され、介助要らずのスムーズな分娩となりました。全頭無事に分娩を終えることができ、安堵しています。

 2月、3月に誕生した子馬たちは広い放牧地での昼夜放牧を開始し、子馬同士で遊ぶ姿も見られるようになってきました。社会性を身につけはじめ、こころもからだも成長しています。元気に大きくなりますように!

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分娩1時間後のミスミズ親子

P4281574 満開の桜の下、爆睡中

24_2 遊ぼう!!

2024年1月 5日 (金)

JRA育成牧場管理指針-生産編-(第3版)発刊のお知らせ

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年もJRA日高育成牧場をよろしくお願い申し上げます。年が明け1歳になったホームブレッドは、昼夜放牧を通して心もからだも日々成長しています。妊娠馬は昼夜放牧から昼放牧に切り替え、2月上旬から幕開けとなる分娩シーズンにむけて、準備を整えているところです。

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 さて、日高育成牧場ではJRAホームブレッドを活用してサラブレッドの生産および育成に取り組み、調査・研究や技術開発を行っています。2010年には「JRA育成牧場管理指針-生産編-」として成果を取りまとめ、生産地における講習会で使用する普及用参考書として活用してきました。

 このたび本指針を改訂し、第3版を発刊いたしました。繁殖牝馬や子馬の管理に関する最新の知見を追加するとともに、動画への二次元コードを掲載し、これまで以上に活用しやすい内容となっております。引き続き、生産・育成の参考書として利用いただけますと幸いです。JRA HPに冊子PDFを公開しておりますので、ぜひご活用ください。

 (リンク先:https://jra.jp/facilities/farm/training/research/ )

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2023年10月25日 (水)

胚移植による生産馬誕生

 胚(受精卵)移植によって生産された馬が誕生しましたのでご紹介いたします。

 胚移植とは生殖補助医療技術のひとつであり、代理母出産ともよばれます。馬の場合はドナー(胚提供馬)が本交配や人工授精によって自らの子宮内で胚を生産したのち、その胚を回収してレシピエント(代理母)へ移植します。

 ドナーとなったのは2023年現在17歳になるオランダ混血種(KWPN)の牝馬(写真1)です。2020東京五輪の総合馬術競技リザーブ馬になるなど高い能力を有していましたが、怪我によりハイクラスの競技会からは引退しました。現在は日高育成牧場で胚移植技術の実践に供しています。

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写真1. ドナーとなった牝馬

 昨年10月、このドナーから一度にふたつの胚(いわゆる二卵性の双子)を回収、それぞれひとつずつ2頭のレシピエントへと移植し、順調に妊娠を継続してきました。

 2頭ともに9月20日が出生予定日でしたが、1頭(写真2)は9月13日に、もう1頭(写真3)は10月4日に誕生しました。血統的には同じ両親から生まれた全兄弟である2頭ですが、レシピエントの違いからか出生には3週間の差が生じ、出生時体重もそれぞれ42kg、50kgと差がありました。毛色や白斑にも違いがあり、血統の奥深さを感じます。


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写真2. 9月13日生まれの子馬

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写真3. 10月4日生まれの子馬

 サラブレッド生産時期と比較すると暖かく青草も豊富なため、生後早いうちから放牧時間を長くした管理を実施しています(写真4)。寒くなるこれからの季節に備えて、サラブレッド生産とは異なる飼養管理方法について模索しているところです。この馬たちの成長も楽しみにしていてくださいね。

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写真4. 少しずつ距離が縮まってきた2頭

2023年7月24日 (月)

牧草収穫

 北海道でも最高気温が25℃を超える夏日が続き、放牧地の馬たちは暑さと虫の多さに悩まされているようです。母馬、子馬ともにびっしょりと汗をかき、尻尾や肢で虫を払っています。

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 日高地方ではこのひと月ほどが牧草収穫の繁忙期となりました。輸入飼料の価格高騰が長引く中、良質な粗飼料確保は特に重要です。日高育成牧場でもより良質な自家牧草を得るため、牧草の生長度合および天気予報とにらめっこしながらの収穫作業が行われています。

 牧草収穫は刈取、反転、集草、梱包という手順で行っていきます。刈り取った牧草を平らにならし、適宜反転させながら3~5日かけて乾燥させ、ロール状に集めて梱包します。梱包されたロール牧草はひとつ300kgにもなります。この日は200個ほどのロール牧草を収穫し、保管倉庫に移動させました。

 昨年は長雨の影響で牧草の質が少し落ちてしまいましたが、今年は晴れた日が続いたことから良質な牧草が収穫できています。繁殖牝馬や育成馬にとって良い栄養になることを期待しています。

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2023年5月10日 (水)

ホームブレッドすくすく成長中

GWも終わり、日高育成牧場では桜の木もすっかり葉桜になりました。

放牧地の牧草も青々と茂りだし、放牧に出た親子は嬉しそうに駆け回っております。

 

放牧地での親子の距離感にも変化が出始めています。

生まれて1か月程度までの子馬達は、母馬からあまり離れず親子で過ごす時間がほとんどですが、年長の子馬達は、親から離れる時間が増え、子馬同士で遊び始める時期になりました。

一般的に15~16週齢以降に、子馬は群れの中で「精神的」に自立すると考えられており、早期離乳のタイミングの基準になっています。

 

今年のホームブレッド達も秋の離乳に向けて精神的にもすくすくと成長中です!

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「遊ぼうよー。」「えー眠いからやだー。」

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「1か月齢ですけど何か?」

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「桜をバックにハイポーズ」

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「寝る子は育つ!」

2023年4月10日 (月)

3年ぶりにスプリングキャンプを開催しました

 3月中旬に獣医学生向けのスプリングキャンプ(5日間の実習)を開催しました。本実習はVPcampを介して受入を実施しており、今回は約7倍の応募者の中から選ばれた6名の学生が全国各地から集まりました。新型コロナウイルス感染症の影響で2年間開催中止が続いていたため、学生たちも再開を待ち望んでいたようです。

 本実習の一番の目的は繁殖シーズンに馬の生産を学ぶことですので、繁殖学や繁殖牝馬と子馬の管理を中心にカリキュラムを組みました。繁殖学実習での直腸検査や親子の引き馬、採血、レントゲン撮影、造鉄見学など、大学では得られない経験ができたのではないでしょうか。職員の話に真剣に耳を傾け、積極的に質問する姿が印象的でした。この経験を糧に、良い獣医師になってくれることを願っています。

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講義

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直腸検査

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ルイゼリアクィーン2023親子の引き馬

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繫殖牝馬の採血

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造鉄見学

2023年2月17日 (金)

2023年 ホームブレッド第1号・第2号が誕生しました

 2月12日22時頃、今シーズンのホームブレッド第1号となるルイゼリアクィーン2023が誕生しました。大きな星が特徴的な牝馬です。父は2022年より供用が開始されたミスチヴィアスアレックスで、この世代が初年度産駒となります。

S__114245640_2 ルイゼリアクィーン2023

 また、16日7時頃には第2号となるブレシッドサイレンス2023も誕生しました。母馬によく似た白斑をもつ牡馬で、父はデクラレーションオブウォーです。

S__114245638 ブレシッドサイレンス2023親子

 日高育成牧場では出生翌朝(出生8~12時間後)に子馬の血中免疫グロブリン濃度を測定して、初乳免疫移行の確認を行っています。今回生まれたルイゼリアクィーン2023は出生3時間以内に哺乳行動を確認していたものの、翌朝の母馬の乳房が大きく腫れていたこと、また子馬の免疫グロブリン濃度が低かったことから、十分な初乳摂取ができていなかった可能性が考えられました。子馬が初乳から免疫抗体を吸収できるのは生後24時間以内と言われており、中でも6時間以内が最も吸収率が高いと言われています。そのため分娩直後の初乳(搾乳し、冷凍保存しておいたもの)とその場で搾乳した母乳の強制投与を行い、初乳免疫の獲得を促しました。

 処置翌朝(出生翌々日)、子馬の血中に十分量の免疫移行が確認できたことから、初乳免疫獲得は成功したと考えられました(ここで移行確認ができなければ、血漿輸血の検討も必要です)。その後数日間母馬の乳房を確認したところ大きな腫れは引いたことから、子馬の哺乳は上達し十分な栄養摂取ができていると判断しました。

 子馬の初乳免疫移行にはタイムリミットがあり、新生子馬は感染症に弱いためその確認は極めて重要です。免疫グロブリン濃度の測定が難しい場合でも、母馬の乳房の状態から母乳摂取状況を推察することで、子馬の健康状態把握の一助となるかもしれません。

S__114245635 哺乳の様子