繁殖牝馬 Feed

2019年7月30日 (火)

アブ(Horsefly)対策

 毎年7月の終わりからお盆を過ぎる1ヶ月程度、アブに悩まされます。放牧を夜間放牧(午後15:30に放牧して、午前9:30に収牧)にして対応したりしますが、馬たちには試練の季節となります。

 馬は尾と尾が届かない範囲にある皮筋をブルブル振動させることでアブを追い払います。しかし、アブはこの尾と皮筋が及ばない、腹の下と腰を目掛けてしつこく刺しに来ます。

Horsefly アブ
YouTube: Horsefly アブ

 日高育成牧場では、ドライアイスを使用しないアブのボックストラップを使用しています。非常に沢山のアブを捕ることができますが・・・イタチごっこですかね。

Horsefly Trap (No need any dry Ice) アブトラップ
YouTube: Horsefly Trap (No need any dry Ice) アブトラップ

 非常に悩ましいアブですが対策が進まないのは、お盆を過ぎると途端にアブは少なくなるからでしょうか!?

2019年4月 2日 (火)

あて馬による繁殖牝馬の試情検査

  日高育成牧場では繁殖牝馬の交配適期を見極めるために「あて馬」による試情検査を実施しています。

 先ずは、検査の様子をご覧ください。

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YouTube: あて馬

 ここで見られる繁殖牝馬の発情行動とは...

1 尾の挙上

2 陰唇の開口による膣粘膜および陰核の露出(ライトニング)

3 尿あるいは粘液の排出

4 排尿姿勢

5 あて馬を許容し、攻撃的な行動(蹴る、威嚇)を示さない

 といったものになります。

 これらの行動を表す指標として試情スコアというものがあります。

試情スコア(点数が高いほど、良い発情徴候を表す)

0:当て馬を受け入れるしぐさを見せない。あて馬に対して、蹴る、いななく、などの攻撃的な行動をとる。

1:あて馬に対して、攻撃的な行動は見せない。

2:あて馬に対して、興味を示す。近づき、尾の挙上や陰唇の開閉を見せる。

3:あて馬に対して、強い興味を示し、尾の挙上、陰唇の開閉、排尿姿勢、排尿を見せる。

4:あて馬に対して、さらに強い興味を示し、腰を向けて受け入れる(その場から離れようとしない)。

 このスコアの推移を観察することで、発情徴候を客観的に把握することができる様になります。あて馬は、獣医師が居なくてもできる検査になりますが、最終的には、獣医師による直腸検査やエコー検査、膣検査により総合的に交配適期が判断されることになります。

2019年2月24日 (日)

ホームブレッド第1号の誕生

今年の第1号ホームブレッド(JRA生産馬)が誕生しました!

Img_9858_2 アイハヴァジョイの19(♂)父マクフィー似の鹿毛でした。

その日は、15:30に集牧してウォーキングマシン運動を行い(4㎞/h*30min)、馬房に入れて乳汁を測定したらpH6.4, Brix31.2!

「まだ乳ヤニも付いていないけど産まれるんじゃね?!」ということで、汗モニターを腰に付けて分娩に備え、監視モニターを眺めたら「もう破水してんじゃん!」ということで、17:30に無事安産でした。破水後、胎位を確認した後は自然分娩。娩出後も10分以上も臍帯が切れることなく、胎児の胎盤中の血液はすべて回収されました。後産は分娩後30分で出てしまいました。3産目の母馬は授乳も上手で安心して見守ることが出来ました。

Img_9869まだ少し後肢の繋が硬いけど、経過観察しながら様子を見ていきたいと思います。

翌日、元気に母馬に付いて歩きます。

今年から新生子不適応症候群(NMS:Neonatal Maladjustment Syndrome)に関する調査の一環として、生後直後・1日後・3日後・7日後にプロジェステロン(P)値を免疫発光測定装置(パスファースト) により測定し、正常馬およびMNS馬の推移についてデータを蓄積しています。パスファーストは、血漿サンプルを用いて僅か17分で測定結果の出る装置です。この馬に関しては、分娩後40ng/mL以上あったP値は、翌日には4.9ng/mlまで低下していました(NMSでは上昇することが知られています)。

生産育成研究室では、これからも現場での応用し易い技術の検討も実施していく予定です。

2019年1月18日 (金)

妊娠後期の馬に対するエンロフロキサシンの投与

 昨年の強い馬づくり講習会でも紹介しましたが、近年米国で抗菌薬エンロフロキサシンを妊娠後期の馬に投与しても安全であることが報告され、胎盤炎の治療への応用が期待されています。Journal of Equine Veterinary Scienceという雑誌に詳細が記載されていましたので、その内容をご紹介いたします。

エンロフロキサシン製剤(バイトリル®)
 エンロフロキサシンは動物専用に開発されたフルオロキノロン系の抗菌薬で、「バイトリル®」という注射薬および経口薬が主に牛や豚の肺炎や下痢症の治療用として市販されています。

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エンロフロキサシン製剤(バイトリル®)

妊娠後期の馬に対するエンロフロキサシンの安全性
 米国イリノイ大学のグループが行った調査について紹介します。流産を引き起こす胎盤炎の原因の多くはE. coliやP. aeruginosaなどのグラム陰性菌であることが知られており、グラム陰性菌に良く効くエンロフロキサシンを治療に使うことができれば胎盤炎の治療の成功率も上がることが期待されます。しかし、エンロフロキサシンは子馬に高濃度で投与すると、関節軟骨や腱組織に障害を起こすことがあると報告されています。すでに生まれてきた子馬と、母馬の子宮の中にいる胎子では状態が異なるため、妊娠後期の馬にエンロフロキサシンを投与し、胎子への影響を調べました。

静脈内投与における試験
 まず、妊娠280日までの牝馬16頭を用いて静脈内投与による調査を行いました。何も投与されないコントロール群(4頭)、エンロフロキサシンを5mg/kgの濃度で24時間毎に10日間静脈内投与された通常投与群(6頭)、同じく10mg/kgの濃度で投与された倍量投与群(6頭)の3群に分けられました。その結果、エンロフロキサシンの母馬の血漿中の濃度、胎盤中の濃度、胎子の血漿中の濃度はいずれも高く、胎盤炎の原因菌に効果的に作用する可能性が示されました。また、投与量5mg/kgと10mg/kgで上記の値に有意差は認められず、5mg/kgで十分な効果があることが示されました。さらに、胎子の関節軟骨および腱組織に悪影響は認められず、安全性が示されました。

経口投与における試験
 さらに、実際の臨床現場における胎盤炎症例に対する抗菌薬投与は長期に渡るため、静脈内投与ではなく経口投与が行われることが一般的です。そこで、妊娠中の牝馬17頭を用いて、何も投与されないコントロール群(5頭)、エンロフロキサシンを7.5mg/kgの濃度で24時間毎に14日間経口投与された通常投与群(6頭)、同じく15mg/kgの濃度で経口投与された倍量投与群(6頭)の3群に分けて調査が行われました。その結果も静脈内投与の場合と同じであり、胎盤炎の治療に有効および安全であると考えられました。また、投与量は7.5mg/kgで十分であることが示されました。
詳しく知りたい方は、2018年のJournal of Equine Veterinary Science 66号p.232をご覧ください(英文)。

 現在のところ、胎盤炎と診断された妊娠馬には抗菌薬として主にサルファ剤が用いられていますが、サルファ剤の効果が認められない場合などの治療の選択肢の一つとして今回ご紹介した方法がお役に立てば光栄です。これらの方法を試したい場合はかかりつけの獣医師にご相談ください。

2018年12月27日 (木)

Steward Clogsによる蹄葉炎の装蹄療法

 流産後に蹄葉炎を発症してしまった繁殖牝馬。すでに2か月弱が経過しているが、ローテーションが進行してきたので、深屈腱切断術を実施したとのこと。

 レントゲン検査では、蹄壁と蹄骨の角度の開離(ローテーション)により反回ポイントが後ろに下がっていることが分かる(黄矢印)。蹄骨伸筋突起も沈下しているため(赤矢印)蹄冠部は指が入るほど陥凹していました。

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 歩く際には疼痛も認められるため、Clogを使用した装蹄療法を試みるとのことで見学させてもらいました。

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 Clogとは木靴の意味。これを装蹄することで反回を容易にし、反回ポイントも後ろに下げられます。蹄底の膨隆部が当たらないように窪みもあるが、さらに加工を施しました。


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 蹄又の部分には軟らかいタイプのACSを施し、ネジで挟み込むように固定しました。


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 コブラソックスを細断してエクイロックスに混ぜたもので固着して完成。


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 反回が良くなることで蹄の葉状層への負担も減る。Clog装着後の歩様はとても楽になりました。


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 今後の経過も追っていきたいと思います。

2018年12月26日 (水)

着地検査

 本日、キーンランド(Keeneland)のノベンバーセール(November breeding stock sale)で購買した繁殖牝馬2頭が輸入検疫を終えて日高育成牧場に到着いたしました。

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 着地検査とは、輸入検疫解放後に各都道府県が主導で行う検査のことです。これから3か月間、臨床検査および各種感染症(馬インフルエンザ、馬伝染性貧血、馬パラチフス、馬ウイルス性動脈炎、馬鼻肺炎)検査が家畜防疫員(日高育成牧場の獣医師を登録)により行われます。

 検疫場所は、他の馬と隔離され、作業は専用の長靴とタイベックを着用して行われます。


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 着地1ヶ月後の各種検査結果が陰性、併せて伝染性子宮炎検査結果も陰性であれば、着地検査中でも種付けは可能です。馬房にはライトコントロールも設置し、来春の交配に備えています。

2018年12月 7日 (金)

初雪

暖かいと思っていましたが、ようやく浦河にも雪が積もりました。

冬至まで昼夜放牧を続ける予定の妊娠馬たちは、まだ積もったばかりの雪をかき分けかき分け牧草を食べています。しかし、急激な食べ物の変化は注意が必要です。少しづつ乾草飼料へと移行する必要がありますが、馬たちは青草の方が好きですよね!

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一方、牧草は雪に覆われることで霜焼けせずに、雪解けとともに芽を吹き返すことができます。これから雪の下で、じっと春を待つことになるのです。

2018年11月28日 (水)

新生子に対する牧場でのチェックポイントと管理

今日はカリフォルニア大学デービス校のDr.Madigan教授による講演会がありました。

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 Madigan先生は新生子不適応症候群(NMS:Neonatal Maladjustment Syndrome)に対する治療として胸部圧迫療法(Rope squeeze)で有名な先生です。

https://www.youtube.com/watch?v=uZ9KpOSN6iU

 ほとんど感染症への抵抗性を持たずに生まれてくる子馬は、12時間以内に初乳を摂取することで腸管から抗体を取り込むことがとても重要です。しかし、この抗体が取り込める機能を有する期間の腸管は感染の原因となる細菌も入り易い状態なのです。

 そのため子馬が生まれる馬房環境や最初に触れる繁殖牝馬の体は、清潔にしておかなくてはなりません。講義に中では、子馬が立ち上がる前に初乳を人工的に投与することが有効とも仰っていました。

 また、多くのNMS症例馬も紹介していただき、改めて新生子馬に対する取り扱いを再認識できる講演でした。

2018年11月20日 (火)

「強い馬づくり講座」in浦河

昨日は、浦河文化ホールで「強い馬づくりのための生産育成技術講座2018」を開催しました。

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今年の講演内容は、以下の2つでした。

『交配から妊娠早期における繁殖管理』 宮越大輔(みなみ北海道NOSAI)
『疾患のある繁殖牝馬の管理』 遠藤祥郎(JRA日高育成牧場)

繁殖牝馬の管理は、軽種馬生産の根幹となるとても重要なポイントです。交配に向けた排卵時期の的確な判断、一年を通した体重管理など、とても為になる講義だったと思います。

お忙しい中、多くの方々のご来場、活発な質疑、本当に有難うございました。

ハンドアウト Lecture1.pdfをダウンロード0.69M)

YouTube動画 https://www.youtube.com/watch?v=JDsQRzOfNb4&t=171s

ハンドアウト Lecture2.pdfをダウンロード (1.19M)

YouTube動画 https://www.youtube.com/watch?v=dRGMB75itEk