初期育成 Feed

2024年1月 5日 (金)

JRA育成牧場管理指針-生産編-(第3版)発刊のお知らせ

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。本年もJRA日高育成牧場をよろしくお願い申し上げます。年が明け1歳になったホームブレッドは、昼夜放牧を通して心もからだも日々成長しています。妊娠馬は昼夜放牧から昼放牧に切り替え、2月上旬から幕開けとなる分娩シーズンにむけて、準備を整えているところです。

23

2323

 さて、日高育成牧場ではJRAホームブレッドを活用してサラブレッドの生産および育成に取り組み、調査・研究や技術開発を行っています。2010年には「JRA育成牧場管理指針-生産編-」として成果を取りまとめ、生産地における講習会で使用する普及用参考書として活用してきました。

 このたび本指針を改訂し、第3版を発刊いたしました。繁殖牝馬や子馬の管理に関する最新の知見を追加するとともに、動画への二次元コードを掲載し、これまで以上に活用しやすい内容となっております。引き続き、生産・育成の参考書として利用いただけますと幸いです。JRA HPに冊子PDFを公開しておりますので、ぜひご活用ください。

 (リンク先:https://jra.jp/facilities/farm/training/research/ )

Photo_2



2023年10月25日 (水)

胚移植による生産馬誕生

 胚(受精卵)移植によって生産された馬が誕生しましたのでご紹介いたします。

 胚移植とは生殖補助医療技術のひとつであり、代理母出産ともよばれます。馬の場合はドナー(胚提供馬)が本交配や人工授精によって自らの子宮内で胚を生産したのち、その胚を回収してレシピエント(代理母)へ移植します。

 ドナーとなったのは2023年現在17歳になるオランダ混血種(KWPN)の牝馬(写真1)です。2020東京五輪の総合馬術競技リザーブ馬になるなど高い能力を有していましたが、怪我によりハイクラスの競技会からは引退しました。現在は日高育成牧場で胚移植技術の実践に供しています。

3

写真1. ドナーとなった牝馬

 昨年10月、このドナーから一度にふたつの胚(いわゆる二卵性の双子)を回収、それぞれひとつずつ2頭のレシピエントへと移植し、順調に妊娠を継続してきました。

 2頭ともに9月20日が出生予定日でしたが、1頭(写真2)は9月13日に、もう1頭(写真3)は10月4日に誕生しました。血統的には同じ両親から生まれた全兄弟である2頭ですが、レシピエントの違いからか出生には3週間の差が生じ、出生時体重もそれぞれ42kg、50kgと差がありました。毛色や白斑にも違いがあり、血統の奥深さを感じます。


23

写真2. 9月13日生まれの子馬

23_2

写真3. 10月4日生まれの子馬

 サラブレッド生産時期と比較すると暖かく青草も豊富なため、生後早いうちから放牧時間を長くした管理を実施しています(写真4)。寒くなるこれからの季節に備えて、サラブレッド生産とは異なる飼養管理方法について模索しているところです。この馬たちの成長も楽しみにしていてくださいね。

Photo

写真4. 少しずつ距離が縮まってきた2頭

2023年7月24日 (月)

牧草収穫

 北海道でも最高気温が25℃を超える夏日が続き、放牧地の馬たちは暑さと虫の多さに悩まされているようです。母馬、子馬ともにびっしょりと汗をかき、尻尾や肢で虫を払っています。

Photo 

 日高地方ではこのひと月ほどが牧草収穫の繁忙期となりました。輸入飼料の価格高騰が長引く中、良質な粗飼料確保は特に重要です。日高育成牧場でもより良質な自家牧草を得るため、牧草の生長度合および天気予報とにらめっこしながらの収穫作業が行われています。

 牧草収穫は刈取、反転、集草、梱包という手順で行っていきます。刈り取った牧草を平らにならし、適宜反転させながら3~5日かけて乾燥させ、ロール状に集めて梱包します。梱包されたロール牧草はひとつ300kgにもなります。この日は200個ほどのロール牧草を収穫し、保管倉庫に移動させました。

 昨年は長雨の影響で牧草の質が少し落ちてしまいましたが、今年は晴れた日が続いたことから良質な牧草が収穫できています。繁殖牝馬や育成馬にとって良い栄養になることを期待しています。

Photo_2

Photo_3

2023年6月 1日 (木)

毎日体重増

今年の3月から日高育成牧場に異動してきた私ですが、先日異動後初めて「暑い!」という単語を発しました。少しだけ夏の訪れを感じる今日この頃です。

さて、今年生まれたホームブレッド達はすくすくと成長し、一番大きい子は200kgに達しようとしており、生まれて約3か月で目線は成人男性とほぼ同じ高さになっています。

子馬は4か月齢まで毎日1~2kgずつ体重が増えます。数字の理解はしていますが、実際にこの成長を目の当たりにすると、やはり大動物の成長速度に驚嘆するばかりです。

体の成長や放牧地で走ることに起因する骨端炎や骨折なども生じやすい時期ですが、このまま無事に離乳まで健やかに育ってほしい限りです。

Photo_2「母の刹那の休息」

Photo_4「食べることは生きること」

Photo_5「トリオ結成」

Photo_6「ホラー映画でビックリするやつ」

2023年5月10日 (水)

ホームブレッドすくすく成長中

GWも終わり、日高育成牧場では桜の木もすっかり葉桜になりました。

放牧地の牧草も青々と茂りだし、放牧に出た親子は嬉しそうに駆け回っております。

 

放牧地での親子の距離感にも変化が出始めています。

生まれて1か月程度までの子馬達は、母馬からあまり離れず親子で過ごす時間がほとんどですが、年長の子馬達は、親から離れる時間が増え、子馬同士で遊び始める時期になりました。

一般的に15~16週齢以降に、子馬は群れの中で「精神的」に自立すると考えられており、早期離乳のタイミングの基準になっています。

 

今年のホームブレッド達も秋の離乳に向けて精神的にもすくすくと成長中です!

Photo

「遊ぼうよー。」「えー眠いからやだー。」

Photo_2

「1か月齢ですけど何か?」

2023

「桜をバックにハイポーズ」

Photo_3

「寝る子は育つ!」

2023年2月17日 (金)

2023年 ホームブレッド第1号・第2号が誕生しました

 2月12日22時頃、今シーズンのホームブレッド第1号となるルイゼリアクィーン2023が誕生しました。大きな星が特徴的な牝馬です。父は2022年より供用が開始されたミスチヴィアスアレックスで、この世代が初年度産駒となります。

S__114245640_2 ルイゼリアクィーン2023

 また、16日7時頃には第2号となるブレシッドサイレンス2023も誕生しました。母馬によく似た白斑をもつ牡馬で、父はデクラレーションオブウォーです。

S__114245638 ブレシッドサイレンス2023親子

 日高育成牧場では出生翌朝(出生8~12時間後)に子馬の血中免疫グロブリン濃度を測定して、初乳免疫移行の確認を行っています。今回生まれたルイゼリアクィーン2023は出生3時間以内に哺乳行動を確認していたものの、翌朝の母馬の乳房が大きく腫れていたこと、また子馬の免疫グロブリン濃度が低かったことから、十分な初乳摂取ができていなかった可能性が考えられました。子馬が初乳から免疫抗体を吸収できるのは生後24時間以内と言われており、中でも6時間以内が最も吸収率が高いと言われています。そのため分娩直後の初乳(搾乳し、冷凍保存しておいたもの)とその場で搾乳した母乳の強制投与を行い、初乳免疫の獲得を促しました。

 処置翌朝(出生翌々日)、子馬の血中に十分量の免疫移行が確認できたことから、初乳免疫獲得は成功したと考えられました(ここで移行確認ができなければ、血漿輸血の検討も必要です)。その後数日間母馬の乳房を確認したところ大きな腫れは引いたことから、子馬の哺乳は上達し十分な栄養摂取ができていると判断しました。

 子馬の初乳免疫移行にはタイムリミットがあり、新生子馬は感染症に弱いためその確認は極めて重要です。免疫グロブリン濃度の測定が難しい場合でも、母馬の乳房の状態から母乳摂取状況を推察することで、子馬の健康状態把握の一助となるかもしれません。

S__114245635 哺乳の様子

2022年9月26日 (月)

離乳

 当歳馬の離乳を行いましたのでその様子をお伝えいたします。

 日高育成牧場では子馬のストレス軽減のため、間引き法で離乳を行っています。間引き法とは母子群から徐々に母馬の頭数を減らしていく離乳方式のことです。まず、離乳前の母子群に保母役として子なしの牝馬(リードホース)を導入します。母子群がリードホースを受け入れたころに、段階的に2~3頭ずつ離乳していき、最終的にはリードホースと子馬のみになります。リードホースの存在、また数頭ずつ離乳を行うことで子馬の落ち着きが早く、ストレスや怪我のリスクが低減されます。

 最終組の離乳後、子馬は15分ほどで落ち着き、仲良く草を食んでいる様子がみられました。また一歩、大人になったね。

22_2離乳の瞬間

22_after15m

離乳15分後の様子(最右のリードホースの周りで落ち着く)

22_after1d

離乳翌日の様子

2022年9月15日 (木)

馬運車馴致

 先日当歳馬の馬運車馴致を行いました。

 離乳を目前に控え、母子一緒の最後のひとときを過ごしている彼ら(最後のひとときとは知る由もありませんが...)。当歳馬は離乳後、馬運車に乗って別の放牧地へ移動することが決定しているため、例年離乳前のこの時期に母馬とともに馬運車馴致を行っています。離乳してから当歳馬のみで馴致するよりも、格段に早く慣れて馬運車に乗り降りできるようになります。母の力は偉大です。今回が初めての馬運車乗車となった当歳馬たち。みんなよく頑張りました💮

22

222

223


2022年7月 4日 (月)

マイクロチップ

 7月に入って浦河も急に気温が高くなり、放牧中の馬たちも汗ばみはじめました。暑い日中には水桶に集まり、我先にと水を飲む姿もみられます。

Photo

放牧地の水桶に集まる親子たち

 さて、本日はJRAホームブレッド当歳馬8頭にマイクロチップの埋込を行いました。

 馬用のマイクロチップは固有の番号を書き込んだ長さ14.6mm、太さ2mmの小さなチップです。これを体内に埋め込み、専用の読み取り機で番号を読み取ることで個体照合を行います。先月(2022年6月)には販売される犬猫へのマイクロチップ装着を義務付ける改正動物愛護法も施行されたことから、関心のある方もいらっしゃるかもしれません。競走馬ではイギリスやアイルランドにおいて1999年の産駒から個体照合方法のひとつとして導入されています。日本では2007年以降の産駒に対して血統登録時の埋込(マイクロチップ番号の登録)を義務付けており、マイクロチップがなければ競馬に出走することはできません。それまで毛色や白斑、旋毛などの馬体特徴を用いて照合されていましたが、マイクロチップの導入によってより短時間に正確な個体照合が可能となりました。

 競走馬の場合、マイクロチップは左側頸部中央の項靱帯付近に専用の注射器で埋め込まれます。獣医師によって素早く埋め込まれたため、当歳馬たちも駐立したまま我慢できました。これでまた一歩競走馬に近付いたね。

22

マイクロチップを埋め込まれるタキオンメーカー2022(牡:父エスケンデレヤ)

2022年4月 8日 (金)

新年度がスタートしました

 4月に入って放牧地の雪もおおかた融け、浦河も少しずつ春めいています。先月19日にスノーボードロマン2022(めす:父アニマルキングダム)が誕生し、今シーズンの出産は全頭終了しました。日々心もからだも大きく成長している子馬たち。放牧地では元気よく駆けまわったり、お昼寝をしたりと、広い世界を楽しんでいるようです。Photo_8スノーボードロマン親子(2022めす:父アニマルキングダム)

 

 さて、新年度のスタートとともに繁殖班に新しい仲間を迎えました。高校馬術部での活動を通じて馬に魅せられ、入会してくれました。さっそく子馬の扱い方や親子の引き馬などを先輩職員から学んでいます。慣れないことも多く大変だと思いますが、全力でサポートします。これからよろしくお願いします!Photo_9新入職員とタキオンメーカー親子(2022牡:父エスケンデレヤ)