栄養 Feed

2023年9月28日 (木)

ドローン飛行

 近年スマート農業とよばれる農業の効率化や簡略化の観点からドローンやAIを活用した草地管理が注目を集めており、植物の育ち具合や肥料をどれくらい与えたらいいかの推定、さらには放牧牛の健康管理など様々な活用法が研究されています。

 日高育成牧場においても、放牧地の植生(イネ科やマメ科、その他の草がどのような割合で生えているか)に関する研究のため、無人航空機(ドローン、写真1)飛行を行いました。3.5haの放牧地について、撮影は20分ほどで終了し、450枚の写真を撮影しました。450枚の写真を組み合わせることで放牧地の全体像を得ることができます(写真2)。写真から草の分布、糞の位置などを検出し、放牧地の状態を把握しました。

 現在は牛での研究が盛んですが、馬の放牧地や採草地でもドローンやAIによって草地管理の省力化を図り、また馬の健康や発育の管理に活用すること目標に調査してまいります。

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写真1. ドローン(重さ950g)

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写真2. 450枚の写真を組み合わせてできた放牧地の全体像

2023年7月24日 (月)

牧草収穫

 北海道でも最高気温が25℃を超える夏日が続き、放牧地の馬たちは暑さと虫の多さに悩まされているようです。母馬、子馬ともにびっしょりと汗をかき、尻尾や肢で虫を払っています。

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 日高地方ではこのひと月ほどが牧草収穫の繁忙期となりました。輸入飼料の価格高騰が長引く中、良質な粗飼料確保は特に重要です。日高育成牧場でもより良質な自家牧草を得るため、牧草の生長度合および天気予報とにらめっこしながらの収穫作業が行われています。

 牧草収穫は刈取、反転、集草、梱包という手順で行っていきます。刈り取った牧草を平らにならし、適宜反転させながら3~5日かけて乾燥させ、ロール状に集めて梱包します。梱包されたロール牧草はひとつ300kgにもなります。この日は200個ほどのロール牧草を収穫し、保管倉庫に移動させました。

 昨年は長雨の影響で牧草の質が少し落ちてしまいましたが、今年は晴れた日が続いたことから良質な牧草が収穫できています。繁殖牝馬や育成馬にとって良い栄養になることを期待しています。

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2023年2月17日 (金)

2023年 ホームブレッド第1号・第2号が誕生しました

 2月12日22時頃、今シーズンのホームブレッド第1号となるルイゼリアクィーン2023が誕生しました。大きな星が特徴的な牝馬です。父は2022年より供用が開始されたミスチヴィアスアレックスで、この世代が初年度産駒となります。

S__114245640_2 ルイゼリアクィーン2023

 また、16日7時頃には第2号となるブレシッドサイレンス2023も誕生しました。母馬によく似た白斑をもつ牡馬で、父はデクラレーションオブウォーです。

S__114245638 ブレシッドサイレンス2023親子

 日高育成牧場では出生翌朝(出生8~12時間後)に子馬の血中免疫グロブリン濃度を測定して、初乳免疫移行の確認を行っています。今回生まれたルイゼリアクィーン2023は出生3時間以内に哺乳行動を確認していたものの、翌朝の母馬の乳房が大きく腫れていたこと、また子馬の免疫グロブリン濃度が低かったことから、十分な初乳摂取ができていなかった可能性が考えられました。子馬が初乳から免疫抗体を吸収できるのは生後24時間以内と言われており、中でも6時間以内が最も吸収率が高いと言われています。そのため分娩直後の初乳(搾乳し、冷凍保存しておいたもの)とその場で搾乳した母乳の強制投与を行い、初乳免疫の獲得を促しました。

 処置翌朝(出生翌々日)、子馬の血中に十分量の免疫移行が確認できたことから、初乳免疫獲得は成功したと考えられました(ここで移行確認ができなければ、血漿輸血の検討も必要です)。その後数日間母馬の乳房を確認したところ大きな腫れは引いたことから、子馬の哺乳は上達し十分な栄養摂取ができていると判断しました。

 子馬の初乳免疫移行にはタイムリミットがあり、新生子馬は感染症に弱いためその確認は極めて重要です。免疫グロブリン濃度の測定が難しい場合でも、母馬の乳房の状態から母乳摂取状況を推察することで、子馬の健康状態把握の一助となるかもしれません。

S__114245635 哺乳の様子

2020年8月21日 (金)

別れ・・・

 8月も残りわずかとなりましたが、北海道らしくない蒸し暑い日が続いています。

 日高育成牧場では、今週から当歳馬の離乳が始まっています。離乳は、母馬が翌年の出産に万全の態勢で望めるよう授乳を断ち切る目的のほか、子馬側にも飼料給与で成長をコントロールする目的があります。野生の馬では分娩数ヶ月前にあたる年明け頃(子馬は9〜10ヶ月齢)で離乳がみられますが、生産牧場における離乳の適期は、体重が220kg程度まで成長して1〜1.5kgの飼料摂取が可能となる、5〜6ヶ月齢とされています。また、離乳時期の決定には、これら栄養面の要因のほかに母子の精神面への影響も考慮する必要があります。

 離乳の方法については様々な方法が試行されていますが、少し前までは母子の厩舎から子馬を一斉に離れた厩舎に移動させる方法が一般的でした。しかし、この方法だとストレスから子馬の発育に悪影響が現れたり、母馬や子馬が大騒ぎして怪我をすることがある点が問題でした。この問題を解決するため、日高育成牧場では数年前から「間引き法」を導入しています。間引き法とは、離乳に先立って母子の群れに子なしの乳母を混ぜることで予め群れに慣らしておき、数週間かけて数頭づつ数回に分けて母馬を間引いていく方法です。この方法でも母馬がいなくなった子馬は母馬を探して騒ぎ出しますが、群の大半を占める他の仲間は落ち着いているため、比較的早く子馬が落ち着くようになります。最終的に群れには子馬と乳母だけが残る形となりますが、乳母がいることで子馬もとりあえず安心感を覚えているようです。

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 今年の1回目の離乳を行ったこの日、長い間子馬たちを見守ってくれていたスタッフの一人が育成牧場から旅立って行きました。新天地でのご活躍をお祈りしています。

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