2023年5月10日 (水)

ホームブレッドすくすく成長中

GWも終わり、日高育成牧場では桜の木もすっかり葉桜になりました。

放牧地の牧草も青々と茂りだし、放牧に出た親子は嬉しそうに駆け回っております。

 

放牧地での親子の距離感にも変化が出始めています。

生まれて1か月程度までの子馬達は、母馬からあまり離れず親子で過ごす時間がほとんどですが、年長の子馬達は、親から離れる時間が増え、子馬同士で遊び始める時期になりました。

一般的に15~16週齢以降に、子馬は群れの中で「精神的」に自立すると考えられており、早期離乳のタイミングの基準になっています。

 

今年のホームブレッド達も秋の離乳に向けて精神的にもすくすくと成長中です!

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「遊ぼうよー。」「えー眠いからやだー。」

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「1か月齢ですけど何か?」

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「桜をバックにハイポーズ」

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「寝る子は育つ!」

2023年4月10日 (月)

3年ぶりにスプリングキャンプを開催しました

 3月中旬に獣医学生向けのスプリングキャンプ(5日間の実習)を開催しました。本実習はVPcampを介して受入を実施しており、今回は約7倍の応募者の中から選ばれた6名の学生が全国各地から集まりました。新型コロナウイルス感染症の影響で2年間開催中止が続いていたため、学生たちも再開を待ち望んでいたようです。

 本実習の一番の目的は繁殖シーズンに馬の生産を学ぶことですので、繁殖学や繁殖牝馬と子馬の管理を中心にカリキュラムを組みました。繁殖学実習での直腸検査や親子の引き馬、採血、レントゲン撮影、造鉄見学など、大学では得られない経験ができたのではないでしょうか。職員の話に真剣に耳を傾け、積極的に質問する姿が印象的でした。この経験を糧に、良い獣医師になってくれることを願っています。

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講義

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直腸検査

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ルイゼリアクィーン2023親子の引き馬

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繫殖牝馬の採血

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造鉄見学

2023年2月17日 (金)

2023年 ホームブレッド第1号・第2号が誕生しました

 2月12日22時頃、今シーズンのホームブレッド第1号となるルイゼリアクィーン2023が誕生しました。大きな星が特徴的な牝馬です。父は2022年より供用が開始されたミスチヴィアスアレックスで、この世代が初年度産駒となります。

S__114245640_2 ルイゼリアクィーン2023

 また、16日7時頃には第2号となるブレシッドサイレンス2023も誕生しました。母馬によく似た白斑をもつ牡馬で、父はデクラレーションオブウォーです。

S__114245638 ブレシッドサイレンス2023親子

 日高育成牧場では出生翌朝(出生8~12時間後)に子馬の血中免疫グロブリン濃度を測定して、初乳免疫移行の確認を行っています。今回生まれたルイゼリアクィーン2023は出生3時間以内に哺乳行動を確認していたものの、翌朝の母馬の乳房が大きく腫れていたこと、また子馬の免疫グロブリン濃度が低かったことから、十分な初乳摂取ができていなかった可能性が考えられました。子馬が初乳から免疫抗体を吸収できるのは生後24時間以内と言われており、中でも6時間以内が最も吸収率が高いと言われています。そのため分娩直後の初乳(搾乳し、冷凍保存しておいたもの)とその場で搾乳した母乳の強制投与を行い、初乳免疫の獲得を促しました。

 処置翌朝(出生翌々日)、子馬の血中に十分量の免疫移行が確認できたことから、初乳免疫獲得は成功したと考えられました(ここで移行確認ができなければ、血漿輸血の検討も必要です)。その後数日間母馬の乳房を確認したところ大きな腫れは引いたことから、子馬の哺乳は上達し十分な栄養摂取ができていると判断しました。

 子馬の初乳免疫移行にはタイムリミットがあり、新生子馬は感染症に弱いためその確認は極めて重要です。免疫グロブリン濃度の測定が難しい場合でも、母馬の乳房の状態から母乳摂取状況を推察することで、子馬の健康状態把握の一助となるかもしれません。

S__114245635 哺乳の様子

2022年11月 3日 (木)

宮崎育成牧場を訪問してきました

 JRA育成馬を用いた研究のため、宮崎育成牧場を訪問してきました。宮崎で育成、2020年ブリーズアップセールにて売却され、ファン投票によってアイドルホースに選出されたヨカヨカや、2022年に売却されたウメムスビなどの活躍もあり、宮崎育成牧場に注目されている方もいるかもしれません。現在リニューアル工事中のため一部閉鎖されていますが、公園地区には新しい遊具などが設置、ウインズ宮崎も新しく改築されており、来年4月にオープンが予定されています。

 宮崎では温暖な気候を生かし、昼夜放牧や青草給与を積極的に行うことで馬体の成長促進をはかっているそうです。放牧地では馬たちが自由に過ごしている姿がみられました。日高と同様、ドライビング実施時からゲート馴致を開始し、時間をかけながら馬の理解を促しています。7月に日高から移動したJRAホームブレッドの2頭にも再会することができました。2頭はすっかり宮崎に馴染んでおり、順調に馴致調教を積んでいる様子でした。来年のブリーズアップセールが楽しみになるとともに、わたしも育成馬たちに負けないよう、研究やその他業務に精進してまいりたいと思いました。

Photo_2放牧地の様子

21ゲート馴致の様子(タムロブライト2021)

21_5ホームブレッドとの再会(フーダムール2021)

2022年9月26日 (月)

離乳

 当歳馬の離乳を行いましたのでその様子をお伝えいたします。

 日高育成牧場では子馬のストレス軽減のため、間引き法で離乳を行っています。間引き法とは母子群から徐々に母馬の頭数を減らしていく離乳方式のことです。まず、離乳前の母子群に保母役として子なしの牝馬(リードホース)を導入します。母子群がリードホースを受け入れたころに、段階的に2~3頭ずつ離乳していき、最終的にはリードホースと子馬のみになります。リードホースの存在、また数頭ずつ離乳を行うことで子馬の落ち着きが早く、ストレスや怪我のリスクが低減されます。

 最終組の離乳後、子馬は15分ほどで落ち着き、仲良く草を食んでいる様子がみられました。また一歩、大人になったね。

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離乳15分後の様子(最右のリードホースの周りで落ち着く)

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離乳翌日の様子

2022年9月15日 (木)

馬運車馴致

 先日当歳馬の馬運車馴致を行いました。

 離乳を目前に控え、母子一緒の最後のひとときを過ごしている彼ら(最後のひとときとは知る由もありませんが...)。当歳馬は離乳後、馬運車に乗って別の放牧地へ移動することが決定しているため、例年離乳前のこの時期に母馬とともに馬運車馴致を行っています。離乳してから当歳馬のみで馴致するよりも、格段に早く慣れて馬運車に乗り降りできるようになります。母の力は偉大です。今回が初めての馬運車乗車となった当歳馬たち。みんなよく頑張りました💮

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2022年7月22日 (金)

ホームブレッド1歳馬の巣立ち

 本年も九州市場からサラブレッド1歳馬のセリがスタートし、日高育成牧場でも2021年産駒の後期育成に向けた準備が本格化してきました。日高育成牧場で生産される年10頭程度のJRAホームブレッドは、1歳夏まで集団放牧中心の管理を行っています。その後8頭は日高育成牧場内育成厩舎にて、2頭は宮崎育成牧場にて騎乗馴致が開始され、調教へと移行していきます。

 まず、7月19日にフーダムール2021(牡:父バゴ)とラキュストル2021(めす:父マクフィ)の2頭が宮崎育成牧場へ向けて出発しました。翌20日には残りのホームブレッド7頭が日高育成牧場内の育成厩舎へ移動しました。誕生の瞬間から1年数ヶ月間をともに過ごした彼らの巣立ちは寂しいですが、少し遠くから応援したいと思います。

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ラキュストル2021(めす:父マクフィ)

2022年7月 4日 (月)

マイクロチップ

 7月に入って浦河も急に気温が高くなり、放牧中の馬たちも汗ばみはじめました。暑い日中には水桶に集まり、我先にと水を飲む姿もみられます。

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放牧地の水桶に集まる親子たち

 さて、本日はJRAホームブレッド当歳馬8頭にマイクロチップの埋込を行いました。

 馬用のマイクロチップは固有の番号を書き込んだ長さ14.6mm、太さ2mmの小さなチップです。これを体内に埋め込み、専用の読み取り機で番号を読み取ることで個体照合を行います。先月(2022年6月)には販売される犬猫へのマイクロチップ装着を義務付ける改正動物愛護法も施行されたことから、関心のある方もいらっしゃるかもしれません。競走馬ではイギリスやアイルランドにおいて1999年の産駒から個体照合方法のひとつとして導入されています。日本では2007年以降の産駒に対して血統登録時の埋込(マイクロチップ番号の登録)を義務付けており、マイクロチップがなければ競馬に出走することはできません。それまで毛色や白斑、旋毛などの馬体特徴を用いて照合されていましたが、マイクロチップの導入によってより短時間に正確な個体照合が可能となりました。

 競走馬の場合、マイクロチップは左側頸部中央の項靱帯付近に専用の注射器で埋め込まれます。獣医師によって素早く埋め込まれたため、当歳馬たちも駐立したまま我慢できました。これでまた一歩競走馬に近付いたね。

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マイクロチップを埋め込まれるタキオンメーカー2022(牡:父エスケンデレヤ)

2022年4月 8日 (金)

新年度がスタートしました

 4月に入って放牧地の雪もおおかた融け、浦河も少しずつ春めいています。先月19日にスノーボードロマン2022(めす:父アニマルキングダム)が誕生し、今シーズンの出産は全頭終了しました。日々心もからだも大きく成長している子馬たち。放牧地では元気よく駆けまわったり、お昼寝をしたりと、広い世界を楽しんでいるようです。Photo_8スノーボードロマン親子(2022めす:父アニマルキングダム)

 

 さて、新年度のスタートとともに繁殖班に新しい仲間を迎えました。高校馬術部での活動を通じて馬に魅せられ、入会してくれました。さっそく子馬の扱い方や親子の引き馬などを先輩職員から学んでいます。慣れないことも多く大変だと思いますが、全力でサポートします。これからよろしくお願いします!Photo_9新入職員とタキオンメーカー親子(2022牡:父エスケンデレヤ)

2022年2月14日 (月)

ホームブレッド第1号が誕生しました!

 2月12日23時24分頃、本年のホームブレッド第1号(通算101頭目)となるアーツィハーツ2022(父:デクラレーションオブウォー)が誕生しました。両親と同じ鹿毛の牝馬です。外は雪が舞うほどの寒さでしたが、母子ともに無事に分娩を終えました。今回で2産目となる母馬。子を乳まで優しく誘導する姿に感心しました。子馬には少しずつ新しい世界を楽しんでもらいたいと思います。

 本年のホームブレッドはあと8頭生まれる予定です。全頭の無事を祈り、楽しみに待っています。

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