先日、通算100頭目のJRAホームブレッドであるユッコ2021を紹介しましたが、その後無事に離乳(母親から離されること)を済ませ、さらに広い放牧地に移動しました。日高育成牧場では、離乳後しばらくは子馬たちが淋しがったり新しい環境に戸惑ったりしないように、今年出産しなかった繁殖牝馬を1頭つけることにしていまして、まるで保育園の先生のように子馬たちをリードしてくれています。
夜間放牧のあと、朝8時に健康チェックと朝飼付け(朝食)のため馬房に呼び戻すのですが、遠くにいても声を掛ければバクシンスクリーン(牝14歳)がいち早く気付いてこちらに向かって歩き始めるので、彼女を先頭に1列になって帰ってきます。まるでカルガモ親子みたいでかわいいですよ。
秋になり、今年生まれた当歳馬たちも離乳の時期が近づいてきました。JRA日高育成牧場で生まれた100頭目のホームブレッドとなるユッコ2021(父:クリエイターⅡ)(写真)も、離乳に備えているところです。
JRAホームブレッドのこれまでの生産履歴などを「JRA育成馬日誌」で紹介していますので是非ご覧ください⇨https://blog.jra.jp/ikusei/
昨今、各地で熊が出没して話題となっていますが、とうとう当場にも熊が出没しました!!テレビや新聞のニュースで皆さんを驚かせないよう、こっそり育成牧場に現れたこの熊、実は北海道民なら誰でもご存知のあの熊、そう、ブリスキー・ザ・ベアー{通称B⭐︎Bさん(⭐︎はつのだ⭐︎ひろさん同様に発音しないそうです)}なんです!
B⭐︎Bさんは2004年の北海道日本ハムファイターズ誕生から14年間もの間、球団マスコットとして活躍されましたが、2018年から北海道みらい事業として道内の地域貢献活動に活躍の場を移されています。2020〜21年のこの事業の対象市町村が馬産地である浦河町となったことから、浦河町特別アドバイザーとして浦河町を盛り上げるために乗馬を始められたそうです。今回の出没は、いつか皆さんの前で華麗な騎乗を披露するため、こっそり乗馬特訓に訪れたという事情があったようです。
乗馬を始めてまだ日が浅いにもかかわらず、軽快な軽速歩(けいはやあし)で余裕の表情をみせるB⭐︎Bさん、さすがですね!
血統登録審査は馬の戸籍に相当する生まれた最初の登録であり、競走馬を目指すサラブレッド にとっては決して避けて通ることはできません。競馬に関わるサラブレッドには様々な登録が存在しますが、この血統登録審査は、生まれて初めての登録になります。
血統登録審査は、書類審査、実馬審査および毛根採取の順に行われます。書類審査は、母馬の身分を証明する繁殖登録証明書と父馬を証明する種付証明書を元に記載事項に間違いがないか確認されます。その後、実馬検査として実際の子馬をみながら、その特徴を一つ一つ確認したり首のマイクロチップ を読み取る作業が続きます。最後にDNA型で親子判定をするためのタテガミを抜いて審査が終了します。ちょっと痛くて思わずouch!!って叫んじゃったけど、競走馬になるためだもんね、仕方ないよね。
8月も残りわずかとなりましたが、北海道らしくない蒸し暑い日が続いています。
日高育成牧場では、今週から当歳馬の離乳が始まっています。離乳は、母馬が翌年の出産に万全の態勢で望めるよう授乳を断ち切る目的のほか、子馬側にも飼料給与で成長をコントロールする目的があります。野生の馬では分娩数ヶ月前にあたる年明け頃(子馬は9〜10ヶ月齢)で離乳がみられますが、生産牧場における離乳の適期は、体重が220kg程度まで成長して1〜1.5kgの飼料摂取が可能となる、5〜6ヶ月齢とされています。また、離乳時期の決定には、これら栄養面の要因のほかに母子の精神面への影響も考慮する必要があります。
離乳の方法については様々な方法が試行されていますが、少し前までは母子の厩舎から子馬を一斉に離れた厩舎に移動させる方法が一般的でした。しかし、この方法だとストレスから子馬の発育に悪影響が現れたり、母馬や子馬が大騒ぎして怪我をすることがある点が問題でした。この問題を解決するため、日高育成牧場では数年前から「間引き法」を導入しています。間引き法とは、離乳に先立って母子の群れに子なしの乳母を混ぜることで予め群れに慣らしておき、数週間かけて数頭づつ数回に分けて母馬を間引いていく方法です。この方法でも母馬がいなくなった子馬は母馬を探して騒ぎ出しますが、群の大半を占める他の仲間は落ち着いているため、比較的早く子馬が落ち着くようになります。最終的に群れには子馬と乳母だけが残る形となりますが、乳母がいることで子馬もとりあえず安心感を覚えているようです。
今年の1回目の離乳を行ったこの日、長い間子馬たちを見守ってくれていたスタッフの一人が育成牧場から旅立って行きました。新天地でのご活躍をお祈りしています。
みなさんは、「新・馬学講座ホースアカデミー 」という番組をご存知でしょうか?ホースアカデミー は、(一財)グリーンチャンネルで10年近くも放映されている長寿番組なのですが、毎年、軽種馬生産や育成調教に関する新たな知見やJRA日高育成牧場での研究成果について、牧場関係者の皆様を対象に情報発信しています。この番組は(公社)JBBAの軽種馬高度化指導研修事業の一環として制作されており、毎年、個性豊かな8名の講師が軽種馬に関する様々なテーマについて、分かりやすく誰でも実践できるように解説する30分の番組です。本年放映予定のものについては、今週火曜日から4日間かけて日高育成牧場で収録され、来月8月から来年3月までの間、1ヶ月毎にテーマを替えて放送される予定です。今年も選りすぐりの8題をご提供しますので、どうぞご期待ください!
過去に放映された番組は、DVDに収録して各地の講演会等で配布している他、YouTubeでもご覧いただけます。