2020年8月21日 (金)

別れ・・・

 8月も残りわずかとなりましたが、北海道らしくない蒸し暑い日が続いています。

 日高育成牧場では、今週から当歳馬の離乳が始まっています。離乳は、母馬が翌年の出産に万全の態勢で望めるよう授乳を断ち切る目的のほか、子馬側にも飼料給与で成長をコントロールする目的があります。野生の馬では分娩数ヶ月前にあたる年明け頃(子馬は9〜10ヶ月齢)で離乳がみられますが、生産牧場における離乳の適期は、体重が220kg程度まで成長して1〜1.5kgの飼料摂取が可能となる、5〜6ヶ月齢とされています。また、離乳時期の決定には、これら栄養面の要因のほかに母子の精神面への影響も考慮する必要があります。

 離乳の方法については様々な方法が試行されていますが、少し前までは母子の厩舎から子馬を一斉に離れた厩舎に移動させる方法が一般的でした。しかし、この方法だとストレスから子馬の発育に悪影響が現れたり、母馬や子馬が大騒ぎして怪我をすることがある点が問題でした。この問題を解決するため、日高育成牧場では数年前から「間引き法」を導入しています。間引き法とは、離乳に先立って母子の群れに子なしの乳母を混ぜることで予め群れに慣らしておき、数週間かけて数頭づつ数回に分けて母馬を間引いていく方法です。この方法でも母馬がいなくなった子馬は母馬を探して騒ぎ出しますが、群の大半を占める他の仲間は落ち着いているため、比較的早く子馬が落ち着くようになります。最終的に群れには子馬と乳母だけが残る形となりますが、乳母がいることで子馬もとりあえず安心感を覚えているようです。

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 今年の1回目の離乳を行ったこの日、長い間子馬たちを見守ってくれていたスタッフの一人が育成牧場から旅立って行きました。新天地でのご活躍をお祈りしています。

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2020年7月10日 (金)

ホースアカデミー 撮影終了

 みなさんは、「新・馬学講座ホースアカデミー 」という番組をご存知でしょうか?ホースアカデミー は、(一財)グリーンチャンネルで10年近くも放映されている長寿番組なのですが、毎年、軽種馬生産や育成調教に関する新たな知見やJRA日高育成牧場での研究成果について、牧場関係者の皆様を対象に情報発信しています。この番組は(公社)JBBAの軽種馬高度化指導研修事業の一環として制作されており、毎年、個性豊かな8名の講師が軽種馬に関する様々なテーマについて、分かりやすく誰でも実践できるように解説する30分の番組です。本年放映予定のものについては、今週火曜日から4日間かけて日高育成牧場で収録され、来月8月から来年3月までの間、1ヶ月毎にテーマを替えて放送される予定です。今年も選りすぐりの8題をご提供しますので、どうぞご期待ください!

過去に放映された番組は、DVDに収録して各地の講演会等で配布している他、YouTubeでもご覧いただけます。

番組の放映予定はこちら

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2020年6月 8日 (月)

過ごしやすくなりました

出産、種付けも落ち着き、育成牧場は穏やかな毎日です。

気候も過ごしやすくなり、浦河は今がベストシーズンです。

残念ながら、今年は新型コロナの影響で各種イベントや研修の開催が中止となってしまいましたが、来年は皆様にお会いできることを願っております。

Img_5365育成牧場外れの林に差し込む木漏れ日…

Img_5350キツツキの古巣をちゃっかり拝借した五十雀


2020年5月20日 (水)

来年こそ!

 JRA日高育成牧場の敷地内には、道内最大(国内で3番目の大きさ)のエゾヤマザクラが立っているのをご存知でしょうか。樹齢80年、幹周4.8mのこのサクラ、日高育成牧場の東端の日当たりの良い斜面に鎮座しているのですが、普段は関係者以外の立ち入りが制限されているため、モンスター級の巨木であるにも関わらず、その存在は一部の関係者の間でしか知られていませんでした。しかし、平成26年から始められた浦河町内の桜等名木調査によりその存在が知られ、道内最大のサイズであったことから「うらかわオバケ桜*」と名付けられて「うらかわの名木」、環境省の巨樹・巨木林データベースに登録されることとなりました。併せて、オバケ桜周辺を整備して開花時期に一般公開することも決まり、公開日に向けて着々と準備を進めてまいりました。写真はつい先日、満開となったオバケ桜です。

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 しかし残念ながらこのオバケ桜、今年も美しく咲き誇る姿を皆様にお見せすることができませんでした。新型コロナウィルスの拡大防止のための外出自粛が要請されたためです。そのため、本年より予定していた一般公開については取りやめることとなりました(関係者以外の立ち入りを制限しております)。来年こそはたくさんの方々にご覧いただけることを願います。

*桜の名前は、モンスター級の大きさに由来したのではなく、傍を流れるオバケ川に由来しています。オバケ川には文字通り「お化け」から由来したとの説があります。

2020年2月28日 (金)

ホームブレッド第一号が誕生しました

 まだまだ朝晩の寒さが残りますが、日高育成牧場では2020年のホームブレッド(JRA日高育成牧場生産馬)の第一号が誕生しました!お母さんは元JRA育成馬のアイハヴアジョイ(母父アイルハヴアナザー)、お父さんは今年本邦初年度産駒がデビューするマクフィという血統で、順調に育ってくれればお母さん同様にJRA育成馬になる予定です。

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 虚な瞳と額の大きな流星がとっても印象的ですが、生まれて40分でしっかりと自分の足で立ち上がった元気な女の子です。日高育成牧場には、分娩を控えた繁殖牝馬があと8頭在厩していますが、まずは順調に生まれてくれることを祈るばかりです。

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 この子が産まれた今日は、今まで一緒に働いてきた仲間とのお別れの日でもありました。新天地でのご活躍を祈ります。

2020年2月15日 (土)

2020・2・14 暖冬

昨日は2.14、バレンタインデーでした。

2月14日は、サラブレッドの生産地にとって「愛の告白日」ならぬ「種付けの解禁日」となります。交配から分娩までの平均期間が340日にも及ぶサラブレッドの妊娠期間ですが、前後30日程度の誤差もあります。そのため、年明け早々の分娩を計画する上で、種付け開始はバレンタインデーを目安とするのが良いのです。しかし、例年2月上旬の日高地方は雪に覆われる真冬日です。この時期に種付けを行うためには、ライトコントロールを行い、馬服を着せ寒冷の保護、BCSを保つ栄養管理などの様々な飼養管理の工夫が必要になるのです。

しかし、今年の冬は暖冬でした。雪が降るのも少なく、積雪は全くない状況でした。放牧地には茶色い牧草があり、放牧中の馬たちは茶色くなった牧草をタラフク食べていました。

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雪が無いとは言っても、放牧地は硬く凍てついた地面となります。そのため体重の重い繁殖牝馬や柔らかい1歳馬の蹄はボロボロになりました。蹄壁と蹄底の境目となる白線の部分が乖離して泥や砂が入ってしまうのです。

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その様な場合、白線が乖離した部分がそれ以上広がらないように、括削してしまう必要があります。

私も日高に来て10年が経ちましたが、このような暖冬、積雪の無い冬は初めての経験です。年々温暖化してきている地球環境ですが、北海道もいづれは雪の降らない地域なってしまうのかも知れませんね。

このような環境の変化が、繁殖牝馬や生まれてきた子馬にどのような影響を及ぼすのか、生産育成研究室では自ら軽種馬の生産を行うことで調査を継続していきたいと思います。

2019年12月 5日 (木)

Equilume ライトマスク

12月4日、空胎繁殖牝馬4頭に、Equilume ライトマスクを装着しました。

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ライトマスクは、右側片方のブリンカーに設置された青色LEDにより昼夜放牧中の繁殖牝馬でも放牧地でライトコントロール(光線長日処理)が行える装置です。

http://www.equilume.net/index.html

すでに日高地方の日の入りは16時、日の出は6時半過ぎとなっています。暗くて寒い時期ですが、来春の繁殖シーズンに向けて準備が始まっているのです。

2019年11月29日 (金)

強い馬づくりのための生産育成技術講座2019

Img_1484_nxpowerlite_copy  「強い馬づくり講習会」開催しました。

 今回は、~進化するサラブレットの育成調教~と題して、乳酸を活かしたスポーツトレーニング・運動と疲労との関係など運動生理学の分野では第一人者である東京大学の八田秀雄先生をお招きし、特別講演を実施していただきました。

 講演の内容は以下の通りです。


特別講演

①『乳酸をどう考え利用したらよいのか?』
八田秀雄(東京大学大学院総合文化研究科 教授)


話題提供

②『日高育成牧場における乳酸を指標とした育成調教』
冨成 雅尚(JRA日高育成牧場 業務課長)

③『科学的トレーニングへの可能性 エクワインレーシングの取り組み』
瀬瀬 賢(株式会社エクワインレーシング代表)

④総合討論

講演の様子は、ニコニコ生放送でも中継され6000人にも及ぶ視聴者がいたとのことですが、改めてYoutubeにアップしてみましたので、ご覧ください。

2019強い馬① 強乳酸をどう考え利用したらよいのか? 八田秀雄
YouTube: 2019強い馬① 強乳酸をどう考え利用したらよいのか? 八田秀雄

2019強い馬② JRA日高育成牧場における乳酸を指標とした育成調教 冨成雅尚
YouTube: 2019強い馬② JRA日高育成牧場における乳酸を指標とした育成調教 冨成雅尚

2019強い馬③ 科学的トレーニングの試み エクワインレーシングの取り組み 瀬瀬 賢
YouTube: 2019強い馬③ 科学的トレーニングの試み エクワインレーシングの取り組み 瀬瀬 賢

2019強い馬④ 総合討論
YouTube: 2019強い馬④ 総合討論

2019年8月 2日 (金)

ホームブレッドの血統登録

 今日は当歳ホームブレッド達の血統登録を行いました。

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 審査では、書類と実馬との照合による個体鑑別マイクロチップについての審査、DNA型親子判定検査のための毛根サンプルの採取を行います。

 マイクロチップは、予め頸に打ち込んでおきました。

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 毛根サンプルの採取は、たて髪から行います。

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 引き抜いた毛根サンプルは、競走馬理化学研究所に送られDNA親子鑑定が行われます。

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 かつて親子判定は血液型で行われていましたが、DNA鑑定に代わり、その精度は格段に上がりました。

 以前、2回目の種付けで1回目の種付けとは異なる種牡馬を交配する「配合変更」を行って誕生したホームブレッドの中に、血統登録時のDNA親子鑑定で1回目の種付けの種牡馬の産駒であることが判明した事例がありました。1回目と2回目の交配は1周期も開いていたにも関わらず・・・不思議なこともあるようです。

 暑い中、ジャパンスタッドブックインターナショナルの方々、有難うございました。

2019年7月30日 (火)

アブ(Horsefly)対策

 毎年7月の終わりからお盆を過ぎる1ヶ月程度、アブに悩まされます。放牧を夜間放牧(午後15:30に放牧して、午前9:30に収牧)にして対応したりしますが、馬たちには試練の季節となります。

 馬は尾と尾が届かない範囲にある皮筋をブルブル振動させることでアブを追い払います。しかし、アブはこの尾と皮筋が及ばない、腹の下と腰を目掛けてしつこく刺しに来ます。

Horsefly アブ
YouTube: Horsefly アブ

 日高育成牧場では、ドライアイスを使用しないアブのボックストラップを使用しています。非常に沢山のアブを捕ることができますが・・・イタチごっこですかね。

Horsefly Trap (No need any dry Ice) アブトラップ
YouTube: Horsefly Trap (No need any dry Ice) アブトラップ

 非常に悩ましいアブですが対策が進まないのは、お盆を過ぎると途端にアブは少なくなるからでしょうか!?