昨今、各地で熊が出没して話題となっていますが、とうとう当場にも熊が出没しました!!テレビや新聞のニュースで皆さんを驚かせないよう、こっそり育成牧場に現れたこの熊、実は北海道民なら誰でもご存知のあの熊、そう、ブリスキー・ザ・ベアー{通称B⭐︎Bさん(⭐︎はつのだ⭐︎ひろさん同様に発音しないそうです)}なんです!
B⭐︎Bさんは2004年の北海道日本ハムファイターズ誕生から14年間もの間、球団マスコットとして活躍されましたが、2018年から北海道みらい事業として道内の地域貢献活動に活躍の場を移されています。2020〜21年のこの事業の対象市町村が馬産地である浦河町となったことから、浦河町特別アドバイザーとして浦河町を盛り上げるために乗馬を始められたそうです。今回の出没は、いつか皆さんの前で華麗な騎乗を披露するため、こっそり乗馬特訓に訪れたという事情があったようです。
乗馬を始めてまだ日が浅いにもかかわらず、軽快な軽速歩(けいはやあし)で余裕の表情をみせるB⭐︎Bさん、さすがですね!
血統登録審査は馬の戸籍に相当する生まれた最初の登録であり、競走馬を目指すサラブレッド にとっては決して避けて通ることはできません。競馬に関わるサラブレッドには様々な登録が存在しますが、この血統登録審査は、生まれて初めての登録になります。
血統登録審査は、書類審査、実馬審査および毛根採取の順に行われます。書類審査は、母馬の身分を証明する繁殖登録証明書と父馬を証明する種付証明書を元に記載事項に間違いがないか確認されます。その後、実馬検査として実際の子馬をみながら、その特徴を一つ一つ確認したり首のマイクロチップ を読み取る作業が続きます。最後にDNA型で親子判定をするためのタテガミを抜いて審査が終了します。ちょっと痛くて思わずouch!!って叫んじゃったけど、競走馬になるためだもんね、仕方ないよね。
8月も残りわずかとなりましたが、北海道らしくない蒸し暑い日が続いています。
日高育成牧場では、今週から当歳馬の離乳が始まっています。離乳は、母馬が翌年の出産に万全の態勢で望めるよう授乳を断ち切る目的のほか、子馬側にも飼料給与で成長をコントロールする目的があります。野生の馬では分娩数ヶ月前にあたる年明け頃(子馬は9〜10ヶ月齢)で離乳がみられますが、生産牧場における離乳の適期は、体重が220kg程度まで成長して1〜1.5kgの飼料摂取が可能となる、5〜6ヶ月齢とされています。また、離乳時期の決定には、これら栄養面の要因のほかに母子の精神面への影響も考慮する必要があります。
離乳の方法については様々な方法が試行されていますが、少し前までは母子の厩舎から子馬を一斉に離れた厩舎に移動させる方法が一般的でした。しかし、この方法だとストレスから子馬の発育に悪影響が現れたり、母馬や子馬が大騒ぎして怪我をすることがある点が問題でした。この問題を解決するため、日高育成牧場では数年前から「間引き法」を導入しています。間引き法とは、離乳に先立って母子の群れに子なしの乳母を混ぜることで予め群れに慣らしておき、数週間かけて数頭づつ数回に分けて母馬を間引いていく方法です。この方法でも母馬がいなくなった子馬は母馬を探して騒ぎ出しますが、群の大半を占める他の仲間は落ち着いているため、比較的早く子馬が落ち着くようになります。最終的に群れには子馬と乳母だけが残る形となりますが、乳母がいることで子馬もとりあえず安心感を覚えているようです。
今年の1回目の離乳を行ったこの日、長い間子馬たちを見守ってくれていたスタッフの一人が育成牧場から旅立って行きました。新天地でのご活躍をお祈りしています。
みなさんは、「新・馬学講座ホースアカデミー 」という番組をご存知でしょうか?ホースアカデミー は、(一財)グリーンチャンネルで10年近くも放映されている長寿番組なのですが、毎年、軽種馬生産や育成調教に関する新たな知見やJRA日高育成牧場での研究成果について、牧場関係者の皆様を対象に情報発信しています。この番組は(公社)JBBAの軽種馬高度化指導研修事業の一環として制作されており、毎年、個性豊かな8名の講師が軽種馬に関する様々なテーマについて、分かりやすく誰でも実践できるように解説する30分の番組です。本年放映予定のものについては、今週火曜日から4日間かけて日高育成牧場で収録され、来月8月から来年3月までの間、1ヶ月毎にテーマを替えて放送される予定です。今年も選りすぐりの8題をご提供しますので、どうぞご期待ください!
過去に放映された番組は、DVDに収録して各地の講演会等で配布している他、YouTubeでもご覧いただけます。
JRA日高育成牧場の敷地内には、道内最大(国内で3番目の大きさ)のエゾヤマザクラが立っているのをご存知でしょうか。樹齢80年、幹周4.8mのこのサクラ、日高育成牧場の東端の日当たりの良い斜面に鎮座しているのですが、普段は関係者以外の立ち入りが制限されているため、モンスター級の巨木であるにも関わらず、その存在は一部の関係者の間でしか知られていませんでした。しかし、平成26年から始められた浦河町内の桜等名木調査によりその存在が知られ、道内最大のサイズであったことから「うらかわオバケ桜*」と名付けられて「うらかわの名木」、環境省の巨樹・巨木林データベースに登録されることとなりました。併せて、オバケ桜周辺を整備して開花時期に一般公開することも決まり、公開日に向けて着々と準備を進めてまいりました。写真はつい先日、満開となったオバケ桜です。
しかし残念ながらこのオバケ桜、今年も美しく咲き誇る姿を皆様にお見せすることができませんでした。新型コロナウィルスの拡大防止のための外出自粛が要請されたためです。そのため、本年より予定していた一般公開については取りやめることとなりました(関係者以外の立ち入りを制限しております)。来年こそはたくさんの方々にご覧いただけることを願います。
*桜の名前は、モンスター級の大きさに由来したのではなく、傍を流れるオバケ川に由来しています。オバケ川には文字通り「お化け」から由来したとの説があります。
まだまだ朝晩の寒さが残りますが、日高育成牧場では2020年のホームブレッド(JRA日高育成牧場生産馬)の第一号が誕生しました!お母さんは元JRA育成馬のアイハヴアジョイ(母父アイルハヴアナザー)、お父さんは今年本邦初年度産駒がデビューするマクフィという血統で、順調に育ってくれればお母さん同様にJRA育成馬になる予定です。
虚な瞳と額の大きな流星がとっても印象的ですが、生まれて40分でしっかりと自分の足で立ち上がった元気な女の子です。日高育成牧場には、分娩を控えた繁殖牝馬があと8頭在厩していますが、まずは順調に生まれてくれることを祈るばかりです。
この子が産まれた今日は、今まで一緒に働いてきた仲間とのお別れの日でもありました。新天地でのご活躍を祈ります。
昨日は2.14、バレンタインデーでした。
2月14日は、サラブレッドの生産地にとって「愛の告白日」ならぬ「種付けの解禁日」となります。交配から分娩までの平均期間が340日にも及ぶサラブレッドの妊娠期間ですが、前後30日程度の誤差もあります。そのため、年明け早々の分娩を計画する上で、種付け開始はバレンタインデーを目安とするのが良いのです。しかし、例年2月上旬の日高地方は雪に覆われる真冬日です。この時期に種付けを行うためには、ライトコントロールを行い、馬服を着せ寒冷の保護、BCSを保つ栄養管理などの様々な飼養管理の工夫が必要になるのです。
しかし、今年の冬は暖冬でした。雪が降るのも少なく、積雪は全くない状況でした。放牧地には茶色い牧草があり、放牧中の馬たちは茶色くなった牧草をタラフク食べていました。
雪が無いとは言っても、放牧地は硬く凍てついた地面となります。そのため体重の重い繁殖牝馬や柔らかい1歳馬の蹄はボロボロになりました。蹄壁と蹄底の境目となる白線の部分が乖離して泥や砂が入ってしまうのです。
その様な場合、白線が乖離した部分がそれ以上広がらないように、括削してしまう必要があります。
私も日高に来て10年が経ちましたが、このような暖冬、積雪の無い冬は初めての経験です。年々温暖化してきている地球環境ですが、北海道もいづれは雪の降らない地域なってしまうのかも知れませんね。
このような環境の変化が、繁殖牝馬や生まれてきた子馬にどのような影響を及ぼすのか、生産育成研究室では自ら軽種馬の生産を行うことで調査を継続していきたいと思います。