JRA日高育成牧場の敷地内には、道内最大(国内で3番目の大きさ)のエゾヤマザクラが立っているのをご存知でしょうか。樹齢80年、幹周4.8mのこのサクラ、日高育成牧場の東端の日当たりの良い斜面に鎮座しているのですが、普段は関係者以外の立ち入りが制限されているため、モンスター級の巨木であるにも関わらず、その存在は一部の関係者の間でしか知られていませんでした。しかし、平成26年から始められた浦河町内の桜等名木調査によりその存在が知られ、道内最大のサイズであったことから「うらかわオバケ桜*」と名付けられて「うらかわの名木」、環境省の巨樹・巨木林データベースに登録されることとなりました。併せて、オバケ桜周辺を整備して開花時期に一般公開することも決まり、公開日に向けて着々と準備を進めてまいりました。写真はつい先日、満開となったオバケ桜です。
しかし残念ながらこのオバケ桜、今年も美しく咲き誇る姿を皆様にお見せすることができませんでした。新型コロナウィルスの拡大防止のための外出自粛が要請されたためです。そのため、本年より予定していた一般公開については取りやめることとなりました(関係者以外の立ち入りを制限しております)。来年こそはたくさんの方々にご覧いただけることを願います。
*桜の名前は、モンスター級の大きさに由来したのではなく、傍を流れるオバケ川に由来しています。オバケ川には文字通り「お化け」から由来したとの説があります。
まだまだ朝晩の寒さが残りますが、日高育成牧場では2020年のホームブレッド(JRA日高育成牧場生産馬)の第一号が誕生しました!お母さんは元JRA育成馬のアイハヴアジョイ(母父アイルハヴアナザー)、お父さんは今年本邦初年度産駒がデビューするマクフィという血統で、順調に育ってくれればお母さん同様にJRA育成馬になる予定です。
虚な瞳と額の大きな流星がとっても印象的ですが、生まれて40分でしっかりと自分の足で立ち上がった元気な女の子です。日高育成牧場には、分娩を控えた繁殖牝馬があと8頭在厩していますが、まずは順調に生まれてくれることを祈るばかりです。
この子が産まれた今日は、今まで一緒に働いてきた仲間とのお別れの日でもありました。新天地でのご活躍を祈ります。
昨日は2.14、バレンタインデーでした。
2月14日は、サラブレッドの生産地にとって「愛の告白日」ならぬ「種付けの解禁日」となります。交配から分娩までの平均期間が340日にも及ぶサラブレッドの妊娠期間ですが、前後30日程度の誤差もあります。そのため、年明け早々の分娩を計画する上で、種付け開始はバレンタインデーを目安とするのが良いのです。しかし、例年2月上旬の日高地方は雪に覆われる真冬日です。この時期に種付けを行うためには、ライトコントロールを行い、馬服を着せ寒冷の保護、BCSを保つ栄養管理などの様々な飼養管理の工夫が必要になるのです。
しかし、今年の冬は暖冬でした。雪が降るのも少なく、積雪は全くない状況でした。放牧地には茶色い牧草があり、放牧中の馬たちは茶色くなった牧草をタラフク食べていました。
雪が無いとは言っても、放牧地は硬く凍てついた地面となります。そのため体重の重い繁殖牝馬や柔らかい1歳馬の蹄はボロボロになりました。蹄壁と蹄底の境目となる白線の部分が乖離して泥や砂が入ってしまうのです。
その様な場合、白線が乖離した部分がそれ以上広がらないように、括削してしまう必要があります。
私も日高に来て10年が経ちましたが、このような暖冬、積雪の無い冬は初めての経験です。年々温暖化してきている地球環境ですが、北海道もいづれは雪の降らない地域なってしまうのかも知れませんね。
このような環境の変化が、繁殖牝馬や生まれてきた子馬にどのような影響を及ぼすのか、生産育成研究室では自ら軽種馬の生産を行うことで調査を継続していきたいと思います。
今回は、~進化するサラブレットの育成調教~と題して、乳酸を活かしたスポーツトレーニング・運動と疲労との関係など運動生理学の分野では第一人者である東京大学の八田秀雄先生をお招きし、特別講演を実施していただきました。
講演の内容は以下の通りです。
特別講演
①『乳酸をどう考え利用したらよいのか?』
八田秀雄(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
話題提供
②『日高育成牧場における乳酸を指標とした育成調教』
冨成 雅尚(JRA日高育成牧場 業務課長)
③『科学的トレーニングへの可能性 エクワインレーシングの取り組み』
瀬瀬 賢(株式会社エクワインレーシング代表)
④総合討論
講演の様子は、ニコニコ生放送でも中継され6000人にも及ぶ視聴者がいたとのことですが、改めてYoutubeにアップしてみましたので、ご覧ください。
YouTube: 2019強い馬① 強乳酸をどう考え利用したらよいのか? 八田秀雄
YouTube: 2019強い馬② JRA日高育成牧場における乳酸を指標とした育成調教 冨成雅尚
今日は当歳ホームブレッド達の血統登録を行いました。
審査では、書類と実馬との照合による個体鑑別、マイクロチップについての審査、DNA型親子判定検査のための毛根サンプルの採取を行います。
マイクロチップは、予め頸に打ち込んでおきました。
毛根サンプルの採取は、たて髪から行います。
引き抜いた毛根サンプルは、競走馬理化学研究所に送られDNA親子鑑定が行われます。
かつて親子判定は血液型で行われていましたが、DNA鑑定に代わり、その精度は格段に上がりました。
以前、2回目の種付けで1回目の種付けとは異なる種牡馬を交配する「配合変更」を行って誕生したホームブレッドの中に、血統登録時のDNA親子鑑定で1回目の種付けの種牡馬の産駒であることが判明した事例がありました。1回目と2回目の交配は1周期も開いていたにも関わらず・・・不思議なこともあるようです。
暑い中、ジャパンスタッドブックインターナショナルの方々、有難うございました。
毎年7月の終わりからお盆を過ぎる1ヶ月程度、アブに悩まされます。放牧を夜間放牧(午後15:30に放牧して、午前9:30に収牧)にして対応したりしますが、馬たちには試練の季節となります。
馬は尾と尾が届かない範囲にある皮筋をブルブル振動させることでアブを追い払います。しかし、アブはこの尾と皮筋が及ばない、腹の下と腰を目掛けてしつこく刺しに来ます。
日高育成牧場では、ドライアイスを使用しないアブのボックストラップを使用しています。非常に沢山のアブを捕ることができますが・・・イタチごっこですかね。
YouTube: Horsefly Trap (No need any dry Ice) アブトラップ
非常に悩ましいアブですが対策が進まないのは、お盆を過ぎると途端にアブは少なくなるからでしょうか!?
この週末は、猛暑の中、うらかわ馬フェスタ2019が開催されました。
土曜日はジンギスカンパーティが開催される中のサラブレッド馬上結婚式、日曜日は日本馬キャラダービー選手権やウラカワサマーダッシュ、ジョッキベイビーズ北海道地区代表決定戦などが行われました。
全日本馬キャラダービー選手権では、我らがターフィ君、今年は勝ちにこだわり、昨年度の覇者「うららん」に大きなハンデをもらい優勝することができました!
ウラカワサマーダッシュでは、少年団の子供たちが頑張りました。
暑い中、沢山のご来場いたただき大変有難うございました。
セレックションセールが盛況に終わり、日高育成牧場では今年度の「ホースアカデミー馬学講座」の収録を行いました。
「馬学講座ホースアカデミー」は、公益社団法人日本軽種馬協会(JBBA)が実施する軽種馬経営高度化指導研修事業において、2011年から毎年制作されているもので、今年で9年目になります。講師は、JRAやJBBAの職員が務めます。
放映は、グリーンチャンネル(無料放送)で行われる予定の他に、過去の番組はJBBAのホームページやYouTubeでも観ることができます。
本年も8月から新しい8つのテーマについて講座の放映を以下の通り予定していますので、是非ともご期待ください。
ホースアカデミー馬学講座2019 放映予定
8月 中村 北斗 草地管理について
9月 遠藤 祥郎 ケンタッキーにおける育成調教
10月 琴寄 泰光 馬の手入れのガイドライン
11月 福田 一平 疝痛の診断・予防・治療法
12月 荻島 靖史 馬と蹄とフットケア
1月 松井 朗 運動前の飼料給与のタイミングについて
2月 冨成 雅尚 コンフォメーションの基礎
3月 守山 秀和 馬の眼について