2019年7月30日 (火)

アブ(Horsefly)対策

 毎年7月の終わりからお盆を過ぎる1ヶ月程度、アブに悩まされます。放牧を夜間放牧(午後15:30に放牧して、午前9:30に収牧)にして対応したりしますが、馬たちには試練の季節となります。

 馬は尾と尾が届かない範囲にある皮筋をブルブル振動させることでアブを追い払います。しかし、アブはこの尾と皮筋が及ばない、腹の下と腰を目掛けてしつこく刺しに来ます。

Horsefly アブ
YouTube: Horsefly アブ

 日高育成牧場では、ドライアイスを使用しないアブのボックストラップを使用しています。非常に沢山のアブを捕ることができますが・・・イタチごっこですかね。

Horsefly Trap (No need any dry Ice) アブトラップ
YouTube: Horsefly Trap (No need any dry Ice) アブトラップ

 非常に悩ましいアブですが対策が進まないのは、お盆を過ぎると途端にアブは少なくなるからでしょうか!?

2019年7月28日 (日)

うらかわ馬フェスタ2019

 この週末は、猛暑の中、うらかわ馬フェスタ2019が開催されました。

Img_0456_2

 土曜日はジンギスカンパーティが開催される中のサラブレッド馬上結婚式、日曜日は日本馬キャラダービー選手権やウラカワサマーダッシュジョッキベイビーズ北海道地区代表決定戦などが行われました。

全日本馬キャラダービー選手権
YouTube: 全日本馬キャラダービー選手権

 全日本馬キャラダービー選手権では、我らがターフィ君、今年は勝ちにこだわり、昨年度の覇者「うららん」に大きなハンデをもらい優勝することができました!

Img_0466_2

 ウラカワサマーダッシュでは、少年団の子供たちが頑張りました。

 暑い中、沢山のご来場いたただき大変有難うございました。

2019年7月19日 (金)

ホースアカデミー馬学講座

 セレックションセールが盛況に終わり、日高育成牧場では今年度の「ホースアカデミー馬学講座」の収録を行いました。

Img_0348

「馬学講座ホースアカデミー」は、公益社団法人日本軽種馬協会(JBBA)が実施する軽種馬経営高度化指導研修事業において、2011年から毎年制作されているもので、今年で9年目になります。講師は、JRAやJBBAの職員が務めます。

 放映は、グリーンチャンネル(無料放送)で行われる予定の他に、過去の番組はJBBAのホームページやYouTubeでも観ることができます。

 本年も8月から新しい8つのテーマについて講座の放映を以下の通り予定していますので、是非ともご期待ください。

ホースアカデミー馬学講座2019 放映予定

8月        中村 北斗          草地管理について

9月        遠藤 祥郎          ケンタッキーにおける育成調教

10月      琴寄 泰光          馬の手入れのガイドライン

11月      福田 一平          疝痛の診断・予防・治療法

12月      荻島 靖史          馬と蹄とフットケア

1月        松井 朗              運動前の飼料給与のタイミングについて

2月        冨成 雅尚          コンフォメーションの基礎

3月        守山 秀和          馬の眼について

2019年6月15日 (土)

子宮内膜杯

 今年度の繁殖シーズンは、10頭の繁殖牝馬が受胎しました。

 しかし、その内の1頭は、6週目の受胎確認で妊娠維持が確認されていたものの、8週目の検査で胚が無くなっていました。8週目と云えば、エコー検査で雌雄鑑別が可能となる時期ですが、残念ながら流産してしまいました。

 馬の受精卵は、受精後1週間程度で卵管から子宮に侵入します。その後、3週までに子宮に固着し、5週以降にようやく着床することになります。その頃、子宮内膜の絨毛膜と接している一部分は、輪帯細胞へと変化し子宮内膜杯(endometrial cup)が形成されます。この子宮内膜杯からは、妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)が分泌され、黄体の維持と副黄体の形成が促され、妊娠が維持されることtなります。

 今回、この繁殖牝馬の子宮の中を内視鏡で検査すると、子宮内膜杯の跡が確認できました。反対側の子宮角には、死滅したと思われる胎胞も認められました。

1

白く膨隆した部分が子宮内膜杯(子宮粘膜に赤い出血斑も認められる)

2 白い膿様のものは死滅した胚と思われる

2019年6月12日 (水)

育成管理品評会

第63回三石軽種馬1歳馬育成管理品評会に参加しました。

現在、日高地区で行われている軽種馬の品評会は、今回の三石、浦河・荻伏、平取の3か所のみです。品評会では、各生産牧場で育て上げられた馬たちを出陳し、その馬体や手入れ、馬の取り扱いなども含めて審査員が評価します。

今回は、1歳の牡・牝各12頭が出陳されました。

品評会は、多くの馬を比較して見ることができるだけでなく、実際に繫養管理されている牧場や牧場主さんと交流できる貴重な機会です。

管理技術は、年々向上しているように思えます。

各賞を受賞された牧場の関係者の皆様、おめでとうございました!

Img_0234_2

天気も良く、馬体も輝きます

Img_0246

審査結果

Img_0244

表彰式

Img_0250 副賞は実用的なものが盛りだくさん!

2019年6月 6日 (木)

立位腹腔鏡手術による馬顆粒層細胞腫の摘出

 顆粒膜細胞腫 Granulosa Cell Tumor(GCT)とは、卵胞を裏打ちする顆粒層細胞が増殖する卵巣の腫瘍です。増殖した顆粒層細胞からは、インヒビンが過剰分泌されるため下垂体からのFSH分泌が抑制され、反対側の卵巣は静止し萎縮してしまいます。GCT は良性腫瘍に分類されていますが、内分泌学的な異常により無発情や持続性発情となり、交配することができなくなるため繁殖分野で問題となる病気です。有効な内科療法はなく、外科的な卵巣摘出が必要となります。

 今回、当場繋養の繁殖牝馬に発症したGCTを立位腹腔鏡下で摘出手術したので、その様子を紹介します。

 症例は12歳の繁殖牝馬。一昨年分娩後より左卵巣の肥大を認め、エコー検査では蜂巣状の小卵胞が多数確認されていました。顆粒膜細胞腫の診断マーカーである抗ミューラー管ホルモン(AMH)の値は、20.38pg/mLと高値でした(正常馬の場合は1.0以下)。

1

手術は、帯広畜産大学の動物医療センターに搬入して実施しました。

2 術野を決めるためにエコーで血管走行を確認

3 腹腔鏡、鉗子、超音波凝固切開器(リガシュア)を挿入し、卵巣を間膜から切り離す

5 切り離した卵巣を取り出すために術野を広げポーチを挿入

6 腹腔鏡を見ながらポーチに切り離した卵巣を収納

7 取り出せる大きさになるように卵胞を切り刻み、容積を減らす

9 直径約8cmに肥大した卵巣を摘出

8 切開部位は最大9cm

 手術時間は約2時間でしたが、鎮静および鎮痛剤による処置のみなので、終了とともに馬運車に乗り込むことが可能でした。

 立位腹腔鏡下における顆粒膜細胞腫の摘出手術は、装置と熟練した手技が必要ではありますが、馬にとって侵襲が少ない手術です。

 学生さん達にとっても非常に良い経験になったのでは無いでしょうか?

P6050076

 

2019年6月 3日 (月)

日高育成牧場サマーセミナー2019 募集開始

獣医学科生を対象とした体験実習プログラム。

募集を開始しました。

日程
2019年8月26日(月曜)~9月1日(日曜) *移動日を含む

対象
獣医学を専攻する4年生から5年生 6名程度

応募方法
「VPcamp」ホームページにて内容を確認のうえ、専用フォームよりご応募ください。

http://www.vetintern.jp/project/jra-hidaka/

ご応募お待ちしております!

1_2

 注記:
本セミナーは文部科学省が実施する「家畜衛生・公衆衛生獣医師インターンシップ VPcamp(Veterinary Public health camp)」事業の一環として開催します。

2019年4月 2日 (火)

あて馬による繁殖牝馬の試情検査

  日高育成牧場では繁殖牝馬の交配適期を見極めるために「あて馬」による試情検査を実施しています。

 先ずは、検査の様子をご覧ください。

Photo

YouTube: あて馬

 ここで見られる繁殖牝馬の発情行動とは...

1 尾の挙上

2 陰唇の開口による膣粘膜および陰核の露出(ライトニング)

3 尿あるいは粘液の排出

4 排尿姿勢

5 あて馬を許容し、攻撃的な行動(蹴る、威嚇)を示さない

 といったものになります。

 これらの行動を表す指標として試情スコアというものがあります。

試情スコア(点数が高いほど、良い発情徴候を表す)

0:当て馬を受け入れるしぐさを見せない。あて馬に対して、蹴る、いななく、などの攻撃的な行動をとる。

1:あて馬に対して、攻撃的な行動は見せない。

2:あて馬に対して、興味を示す。近づき、尾の挙上や陰唇の開閉を見せる。

3:あて馬に対して、強い興味を示し、尾の挙上、陰唇の開閉、排尿姿勢、排尿を見せる。

4:あて馬に対して、さらに強い興味を示し、腰を向けて受け入れる(その場から離れようとしない)。

 このスコアの推移を観察することで、発情徴候を客観的に把握することができる様になります。あて馬は、獣医師が居なくてもできる検査になりますが、最終的には、獣医師による直腸検査やエコー検査、膣検査により総合的に交配適期が判断されることになります。

2019年3月18日 (月)

日高育成牧場スプリングキャンプ

 今年は、3月5日(火)から3月14日(木)までの10日間、全国の獣医学部学生から多くの応募があった中、4年生を中心に6名の学生を選抜して行いました。

 幸運にも期間中に合計3頭の子馬が誕生する機会に恵まれました。それぞれ分娩の様子も分娩後の親子の様子も異なり、とても良い経験になったと思います。

 また、分娩だけでなく、種馬場での交配やHBA診療所の見学、育成馬の調教や引退競走馬のリトレーニング、装蹄などの研修も記憶に残ったことと思います。

 競走馬を理解する上で、交配から妊娠、出産、初期・中期育成のステージは欠かすことのできない大きな要素の1つであり、その一端を知ることはとても重要です。今回の研修が将来、馬に携わる切っ掛けになれば幸いです。

Photo

Photo_2

2019年2月24日 (日)

ホームブレッド第1号の誕生

今年の第1号ホームブレッド(JRA生産馬)が誕生しました!

Img_9858_2 アイハヴァジョイの19(♂)父マクフィー似の鹿毛でした。

その日は、15:30に集牧してウォーキングマシン運動を行い(4㎞/h*30min)、馬房に入れて乳汁を測定したらpH6.4, Brix31.2!

「まだ乳ヤニも付いていないけど産まれるんじゃね?!」ということで、汗モニターを腰に付けて分娩に備え、監視モニターを眺めたら「もう破水してんじゃん!」ということで、17:30に無事安産でした。破水後、胎位を確認した後は自然分娩。娩出後も10分以上も臍帯が切れることなく、胎児の胎盤中の血液はすべて回収されました。後産は分娩後30分で出てしまいました。3産目の母馬は授乳も上手で安心して見守ることが出来ました。

Img_9869まだ少し後肢の繋が硬いけど、経過観察しながら様子を見ていきたいと思います。

翌日、元気に母馬に付いて歩きます。

今年から新生子不適応症候群(NMS:Neonatal Maladjustment Syndrome)に関する調査の一環として、生後直後・1日後・3日後・7日後にプロジェステロン(P)値を免疫発光測定装置(パスファースト) により測定し、正常馬およびMNS馬の推移についてデータを蓄積しています。パスファーストは、血漿サンプルを用いて僅か17分で測定結果の出る装置です。この馬に関しては、分娩後40ng/mL以上あったP値は、翌日には4.9ng/mlまで低下していました(NMSでは上昇することが知られています)。

生産育成研究室では、これからも現場での応用し易い技術の検討も実施していく予定です。