2025年11月 3日 (月)

Irish Equine Centreを訪問しました

分子生物研究室の川西です。

 先月、アイルランドのIrish Equine Centre(IEC)を訪れました。JRA競走馬総合研究所(総研)は、IECと2024年に学術交流協定を締結しています。私は、馬インフルエンザと馬鼻肺炎の調査・研究活動に関する理解を深めるとともに、総研の代表として研究者との交流を通じて今後の協力関係を構築することを目的に訪問しました。また、滞在中に、Irish National Studも見学しました。アイルランドに滞在した4日間について簡単にご紹介したいと思います。

IECについて

 IECはキルデア県のネース町に所在し、馬伝染性子宮炎の流行によりアイルランドの馬産業に大きな経済的損失が生じたことをきっかけに1983年に設立された検査施設です。現在は、馬をはじめとする動物(家畜、伴侶動物)、環境(土壌、植物、水)や食物の各種検査や診断業務を行っています。運営費の多くは、検査・診断料金に加え、アイルランド競馬統括団体やアイルランドサラブレッド生産者協会などの組織や団体からの支援で賄われています。

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IECのメインエントランス

 IECでは、正確な測定・結果を出す能力を証明する国際規格ISO/IEC 17025を30検査項目以上で取得しています。特に馬のウイルス感染症のうち、馬インフルエンザと馬鼻肺炎に関しては、欧州唯一のWOAH(国際獣疫事務局)リファレンスラボラトリーとしての役割を担っています。筆者はVirology Unit(ウイルス部門)の研究者から、馬インフルエンザの血清診断法やウマヘルペスウイルス1型の遺伝子解析法について指導を受けました。

Irish National Stud(アイリッシュ・ナショナル・スタッド)の見学

 Irish National Studは、1900年にスコットランド出身のウィリアム・ホール・ウォーカー大佐が購入し、競走馬の生産・育成を始めたのがきっかけです。敷地内には、大佐の日本人庭師により造られた「人間の一生」をテーマとした日本庭園があります。
 Irish National Studで特に印象に残ったのは、"The Irish Racehorse Experience"という、競走馬の一生をバーチャルで体験できる施設です。ここでは、タブレット操作で1歳馬の選択、調教メニューや騎手の決定を行い、自分だけの競走馬を育ててレースに出走させることができます。レース時には、体験者自身が騎手として模型の馬に騎乗できるため、初めて競走馬に触れる人でも楽しみながら、その誕生から引退までの軌跡を深く学べるシステムに感銘を受けました。

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バーチャルでのレース画面。体験者は木馬に跨いでいます。これからゲートインです。

2025年10月28日 (火)

European College of Sport Science 2025に参加してきました

運動科学研究室の向井です。

少し前になりますが、7月にイタリアのリミニで開催された ECSS 2025(European College of Sport Science;ヨーロッパ運動科学会議)に参加してきました。
リミニはアドリア海に面した美しい歴史都市で、古代ローマ時代に建設された アウグストゥスの凱旋門(図1) や ティベリウス橋 (図2)が今も現役で使われています。街全体が歴史と海の雰囲気に包まれた、とても魅力的な場所でした。

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図1 アウグストゥスの凱旋門。競馬関係者は凱旋門と聞くと、パリのエトワール凱旋門が頭に浮かびますが、文字通りの“凱旋門”は世界各地にあるようです。

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図2 ティベリウス橋。アウグストゥスが建築を命じ、息子のティベリウスの時代に完成した橋とのことです。

 ECSSは世界最大級のスポーツ科学の国際学会で、世界中から研究者が集まります。今回は90以上のシンポジウムと、 2,000を超える一般発表が行われ、まさにスポーツ科学の最前線を体感することができました。

 私は「高強度インターバル運動における高酸素吸入が運動後のウマ骨格筋mRNA応答に与える影響」というタイトルで発表を行いました。


 これまでの我々の研究で、一過性の低酸素運動後に、骨格筋のミトコンドリア生成を促すシグナル(PGC-1α)や毛細血管を増加させる因子(VEGF)のmRNAが、常酸素運動に比べて減少することがわかっています。そこで今回は、「高酸素運動では逆にそれらが増加するのではないか?」という仮説を立てて実験を行いました。


 その結果、運動前と運動後を比較した場合、VEGF mRNAは高酸素運動でのみ増加しましたが、PGC-1α mRNAは常酸素運動も高酸素運動も同程度に増加はしたものの、その結果は期待していたほどのものではありませんでした。高酸素下ではさらに高い速度で走行できるため、さらに強度が高い条件を設定すれば、その発現がより高まる可能性もあると考えています。

  獣医学の分野でスポーツ科学的な研究を行っている動物は、実はウマだけといっても過言ではありません。さらに、日本でウマの運動生理やトレーニングに関する研究を行っているのは、JRAおよびその共同研究機関が中心です。
 そのような背景からも、ヒトを対象としたスポーツ科学の国際学会に参加し、最新の研究やトレンドを学び続けることは、ウマの運動科学研究を発展させていく上で非常に重要だと感じました。





2025年10月17日 (金)

総研に藤沢元調教師がやってきた!

企画の桑野です。

 暑さがちょっとぶり返した長月(ながつき)も終わろうとする頃、現在JRAのアドバイザーをしていただいている藤沢和雄元調教師が、業務の一環で競走馬総合研究所(総研)にいらっしゃいました。この中で本会職員との座談会が行われました。

 総研の職員は開催日に執務するし、そもそも研究所に来る前は競馬場やトレーニングセンター(トレセン)で執務していた訳ですから、当然、藤沢元調教師とは顔馴染みです。ですが、競馬場やトレセンは師にとっては主戦場であり、そんな場で私たち職員と気を許したお付き合いは当然できません。今回の座談会では、すでに調教師を引退されている師が、肩肘張らずに我々と向き合う良い機会となりました。

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座談会の一幕;屈託ない笑顔で語られる藤沢元調教師の優しい瞳が印象的でした。

 さて、元調教師が競馬の世界へ入った経緯は、学生時代に馬の生産牧場へ働きに出たことがきっかけだったそうです。「勉強より馬の方が面白い」と調教助手を目指して、JRA競馬場(当時、トレセンはまだ無かった)の厩舎に入ったのは20歳を過ぎた頃で、最初は馬車馬のように働き、その数年後、当時まだ新人の一人だった国枝氏(東京農工大獣医学科をご卒業の現調教師)と一緒に、調教師試験に向けて猛勉強したことは、辛かったものの懐かしい記憶として残っていると語っていらっしゃいました。

 以下は師のお言葉です。

 「立派な強い競走馬になりたいなんて考えている馬は存在しません。よって厳しい調教を無理やり強いるならば、馬は嫌気がさしてやる気をなくしてしまうでしょう。そうならないように、まずは自分が仕事でイライラしないよう細心の注意を払って冷静を保つよう心がけました。また、叱られた従業員が馬を叱り返さないように、自分は従業員を叱りつけないのも気配りの一つでした。そして、生産地で子馬を選ぶときは、自分は馬を見る目があるなどと傲慢にならずに、牧場の人達が言うことにしっかり耳を傾けました。また、引退する馬は成績の良し悪しによらず、リスペクトを持って綺麗に洗って怪我も治して美しい姿で生産地に返すことも心がけました。」 など、先生のモットーをたくさん伺うことができました。

 最後に先生は、総研を見学して「これからも競走馬のために一生懸命に研究してください。」と言葉を残してお帰りになられました。

  調教師としてJRAでG1(最もグレードの高いレース)を34勝、海外G1で1勝、年間最多勝利によって得られる最多勝利調教師賞を12回、優秀調教師賞を21回も受賞した名伯楽の後ろ姿に、競馬の世界に大きな足跡を残された男の逞しさを見た思いがしました。

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総研所長(右から2人目)の影に隠れちゃう控えめな藤沢元調教師(左から2人目)とパチリ

2025年10月 7日 (火)

未来のウマ博士をめざせ!-「こども馬学講座」の開催 -

総務の河治です。

  9月23日(火・祝)、地域の小学校高学年のお子様を対象に「こども馬学講座」を開催しました。本イベントでは、競走馬総合研究所(総研)近隣の子ども達に「ウマとはどんな生き物なのかを知ってもらう機会をつくろう」という趣旨のもと、獣医師による講義、乗馬・馬とのふれあい体験、そして装蹄師による造鉄実演の見学などを毎年開催するものです。今回は計14名の子ども達にご参加いただきましたが、好評で参加希望が絶えません。

Photo_3獣医師による講義に集中する子供たちの面々

_ver馬の扱い方についての講義

 最初に行われた獣医師による馬の講義では、馬の身体や走行フォームなどについて解説があり、子ども達は興味深そうに講義を聞いていました。続いて、トレッドミルでの馬の走りを直に観察していただきました。目の前で見るキャンター(襲歩:しゅうほ)の迫力には、お子様のみならず引率の親御様もビックリ。乗馬・ふれあいでは、子ども達は終始ワクワクした様子で、馬のかわいい部分など魅力が伝わったようでした。

Photo_4トレッドミル上で馬の走りを実演

Photo_5乗馬体験では事故がないよう細心の注意が払われる

 その後、装蹄師による造鉄実演が行われました。子ども達は熱い鉄が形を変えていく様に目を丸くしていました。中には馬よりも釘付けになっている子も。この中に将来、宇都宮の装蹄教育センターに入学する子がいるかもしれませんね。最後に、蹄鉄を使ったコースターの制作を行い、イベントは終了しました。

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全集中の装蹄師による造鉄実演

  

 総研は飼育馬への感染症の拡大といった防疫上の観点から、普段は近隣の方に施設や活動を見ていただくことができず、こうした行事は地域交流の面でも貴重な機会です。改めて、子ども達に馬の魅力を伝えると同時に、近隣の方々に競馬や馬への興味・関心や研究所へのご理解を深めていただけたら幸いです。

2025年10月 6日 (月)

フランス トゥールーズ獣医学校訪問

臨床医学研究室の黒田です。

 企画の川島さんからすでに報告されておりますが、フランスで開催された世界獣医麻酔・鎮痛学術会議に参加させていただきました(図1)。新しい麻酔薬のレミマゾラムにつきましては、ポスター賞受賞となり、非常に喜ばしい結果を得ることが出来ました。皆様方の、日ごろの御協力に大変感謝申し上げます。

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図1 日本から参加したメンバー

 また、学会後は私が2019年から留学しておりました、国立トゥールーズ獣医学校を再訪させていただきました。今回の訪問の目的は今後の研究のための打ち合わせで、私の師であるPierre-Louis Toutain教授(図2)と抗菌薬の研究者であるAude A. Ferran教授と、研究打ち合わせを行いました。

 私が本年春に論文発表した抗菌薬のサルファ剤とトリメトプリムの合剤(ST合剤)に関する馬の薬物動態について、フランスでも馬における研究を開始しており、進捗について共有することができました。ST合剤は本会の臨床現場でも用いられている抗菌薬です。トリメトプリムは各国共通の薬品ですが、サルファ剤は国によって異なる成分であることが多く、フランスでも我々とは異なる薬剤を用いています。

 私としてはトリメトプリムについて馬の薬物動態の国際解析を行い、この薬剤の薬剤感受性試験における判定基準(臨床ブレイクポイントと言います)を提案する国際共同研究を実施したい旨を説明しました。

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図2. Pierre-Louis Toutain教授と筆者

 Pierre-Louis Toutain教授には自宅にも招いていただき、夫人のクレアさんにも御挨拶することができました。Pierre-Louis Toutain教授とは現在投稿しているフルニキシンの薬物規制に関する研究と来年以降の国際発表についても意見交換を行うことができました。また、現在作成中のベタメタゾンに関する報告に関しても、アドバイスをいただき執筆を進めています。教授には御健康を維持していただき、引き続き御指導をいただく事を期待しています

2025年10月 1日 (水)

フランス発、国境と動物種を超えた研究者のつながり

Bonjour, 分子生物研究室の上林です。

 フランスでの留学も約半年が経過しました。こちらノルマンディー地方の近頃の最高気温は15℃前後で、東京の11月並です。気温的には過ごしやすいのですが、天候は不安定、日の出は朝8時前と遅く、生活リズムを作るのに少し苦労しています。

 さて、今回は私の研究留学先であるLABEOで開催された「Connecting Equine Health Research」という会議についてご紹介したいと思います。

 この会議は、馬の感染症をテーマにフランスとオーストラリアの各研究機関が集まって交流を図り、馬だけでなく他の動物や人における研究情報の共有や今後の協力体制のあり方について議論する場として用いられました。会議には、オーストラリアからメルボルン大学、そしてフランス国内からはLABEOをはじめ動物および人領域の複数の研究機関から総勢約40名の研究者と技術者が参加しました。今回は記念すべき第一回開催でした。

会議の前半は、①馬の感染症に関する最新知見②三次元の細胞培養モデルであるオルガノイドに関する最新知見③抗ウイルス薬や抗菌薬に関する研究や適正使用、の三つのセッションに分かれてシンポジウムが開催されました。私もセッション③で現在取り組んでいる抗ウイルス薬研究に関して発表する機会をもらいました。

Fig_1_12(左)会議プログラムと(右)肺オルガノイドに関する講演の様子

後半では、フランスとオーストラリア間での馬感染症における今後の研究協力をテーマに、約1時間みっちり議論が行われました。具体的には、国際的にどの分野で今後協働できるか、知識・技術をどう共有するか、人材交流・育成をどう進めるかなどについて活発な議論が交わされました。

今回の会議だけで何か具体的なプロジェクトが動き出すというわけではなさそうですが、こうして国境を越えて研究者が交流して知識の共有や意見交換を図ることで、馬の健康や馬産業のさらなる発展を目指すのは非常に価値ある取組みだと感じました。

前回(6月)のブログにも書いたように、LABEOがフランス国内の馬に関連する様々な組織との連携が盛んであることは日頃から感じていました。しかし、今回の会議を通じて他の動物や人の医学領域の研究機関とも強い繋がりを持っていることを改めて知り、感銘を受けました。この連携により、LABEOは馬の検査・研究機関でありながらも、人や他種の動物で応用されている高度な実験モデルや複雑な遺伝子発現解析などを自分たちの実験に応用可能にしています。フランスは馬産業の規模が大きいため馬に関する研究で資金獲得しやすいという事情がこの連携力に繋がっている可能性はあります。日本国内では簡単に真似できることではないかもしれませんが、研究の可能性を広げるという意味では学びたい姿勢であると感じました。

Fig_2_4(左)オープンディスカッションと(右)懇親会の様子。フランス語と英語が飛び交って交流が交わされた。

今回の会議は、私にとって大変刺激的かつ有意義で学ぶことの多い機会でした。大きな学会ではなくコンパクトな国際交流の場だからこそ、一対一でじっくりと関係性を構築できる点も大きな魅力です。是非次回はJRAもこの会議に呼んでもらえたらと期待しています。この半年間、研究だけでなく、人とのつながりもまた私の留学の大きな財産になっていると常々実感しています。留学生活も後半戦に入りますが、引き続き積極的に頑張りたいと思います。

それでは、 À bientôt!

2025年9月26日 (金)

フランスの学会で発表してきました!

企画調整室の川島です。

 この度、フランスで開催された世界獣医麻酔・鎮痛学術会議にて、馬ではまだ使われていない新しい麻酔薬;レミマゾラムの効果についてポスターを使って発表してきました。私の臨床時代の成績にちょっと色をつけての発表でした。

 その内容は、静脈から投与して使うレミマゾラムがウマの体内でどのように代謝され、濃度が変化していくのかを調べたものでした。そして、私とは別の本会職員がこの新しい麻酔薬の使い方について口頭で発表し、2人で1セットのような形での発表だでした。

 結論から言うと、本静脈麻酔でもウマの麻酔はスムーズに実施できそうであること、本麻酔の特徴とも言える麻酔終了後のウマの目覚めの良さが特徴であることがわかり、今後の応用が期待されました。

 なんと、私はポスター発表部門で最優秀賞をいただきました。私自身は発表を評価された初めての報告となり、大変な驚きと感動に包まれた瞬間を経験しました。

Img_3224表彰式で演台に呼ばれる筆者

 私が配属されている企画調整室は、研究に関する事務を主に担う部署ですので、本来なら海外の学術集会で発表する機会はいただけないのですが、今回は上司の深いご理解により貴重な経験をさせていただきました。大変、感謝しております。

 今回の経験は、もちろん希少な薬物に関する情報を国内から発信するという重要な任務でありましたが、それだけでなく、どんどん国際的になっていく競馬事業に獣医師も関わる際の心構えと言いますか、場慣れする意味でもとても重要なものであったと思います。今後は、臨床現場で、この薬物を使ったより安全でスムーズな麻酔方法の確立が研究されることと思います。そこにも関わって行けたら獣医師冥利に尽きることでしょう。

2025年9月24日 (水)

微生物アート ~カラフルな細菌で描く芸術~

微生物研究室の木下です。

“微生物アート”という言葉をこれまでに聞いたことはありますか? 微生物アートとは、色素を産生するさまざまな種類の細菌を「絵の具」とし、寒天培地を「キャンバス」に見立てて描くアート作品のことです。

<色を持つ細菌!?>
私たちの身の回りには、赤、黄、紫など、まるで絵の具のような鮮やかな色素を作る細菌たちがいます。例えば、赤い色素を作る「セラチア菌」や、黄金色のコロニーを作る「黄色ブドウ球菌」などです。
これらの細菌は、紫外線や活性酸素から身を守るためといった理由から色素を産生しますが、この色素を利用して描くが微生物アートです。

描き方は繊細で、「白金耳(はっきんじ)」という専用の道具を使い、目に見えない細菌を寒天培地に植え付けていきます。描いた直後ははっきりとは見えませんが、これを適切な温度で数日間置くことで、細菌が増殖し、それぞれの持つ色が徐々に現れて美しい絵が完成します。

<作品紹介>
土壌から分離した赤い色素を産生する細菌を使用して、当研究室で抜群の絵心を持つ星野さんに競走馬をイメージして作ってもらった作品がこちらです。

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素敵な作品だと思いませんか?

インターネット上には、国内外の様々な方が描いた素晴らしい作品がたくさんあります。「微生物アート」、「microbial art」、「bacterial art」といったキーワードで是非検索してみてください!

2025年9月 5日 (金)

JRA総研サマースクール終了報告!!

企画調整室の岡田です。 

 夏の恒例イベント“JRA総研サマースクール”が今年も無事に終わりました。獣医学生インターンシップ(VPcamp)の一環として催される当研修では、全国の獣医系大学から馬の疫学に関心のある学生さん12名、臨床医学に関心のある学生さん12名の計24名に参加していただき、各コースそれぞれ5日間の学術プログラム、馬の飼育作業、および乗馬を経験してもらいました。

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       座学の様子                     馬のハンドリング実習

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    トレッドミルでの歩様講義              臨床実習(上手く巻けた?)

 獣医学生といえども実際に馬を使用した実習は少ないため、初めて馬に触れる参加者も多くいる状況でした。そのため、感染症診断法や臨床診断法以外の馬のハンドリングや手入れ、厩舎作業、装蹄見学といった部分も思いのほか学生たちに喜んでいただけたようです。

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     乗馬後は馬の汗を拭く          蹄の手入れも初めての体験(蹄油塗布)

 参加前は「研修生は互いに牽制しあって、きっとお友達にはなれないと思っていた。」という学生さんも、実習後は、「楽しい経験が共有でき、こんなに仲良く学生間で交流できるとは思いもしなかった。」と、研修を振り返っていました。

 学生たちの限られた時間の中でも熱心に質問する姿に感銘を受けました。彼らの学びに対する意欲が伝わってきてこちらも刺激を受けました。

 来年も開催する予定で今後もより良い研修にして行きたいと考えていますので、獣医学生さんはVPcampやJRA総研のお知らせに注意していてくださいね。

*写真の各人には掲載許可をもらっております。

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「終わった〜」と馬も一息。学生やスタッフ一同だけでなく馬たちも暑い中お疲れさまでした!







   

2025年8月29日 (金)

帯広のばんえい競馬体験記

企画調整室の桑野です。

 帯広への出張に併せて、鉄製ソリを輓馬(ばんば)が曳くレース、すなわち輓曳(ばんえい)競馬とそれを支える競走馬臨床の現場を見てきました。ウイルス感染があってちょっとの期間、競馬ができなかった“ばんえい競馬”ですが、すっかり立ち直って正常に開催されていました。

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帯広競馬場入り口;閑散としているので入場者がいないのかと思いきや、場内は結構な人だかりでした。

 

 JRAと違って帯広の“ばんえい競馬”では、800から1200kgとサラブレッドの2倍の体重を持つ輓馬が2つの山越え(障害)と最後に軽い傾斜走路を抜ける総計200メートの直線の砂利走路で競い合います。曳いているソリは460kgから最高1000kgまでとされており、これに騎手が乗ります。登録された26厩舎で600頭ほどが繋養されており、毎週土・日・月の3日間を基本として、夏場は14時過ぎから20時過ぎまでだいたい1日に11レースが開催されています。そして輓馬の種類は、歴史的に北海道開拓のためにヨーロッパから輸入されたブルトン種とペルシュロン種が主体にベルジャン種がちょっと加わって混血を重ねてきた雑種が多くを占めています。過去、半血種と呼ばれていたこれらの輓馬は、2003年以降、総称して日本輓系種(にほんばんけいしゅ)と呼ばれるようになりました。

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この山を2つ越えていく

 「サラブレッドみたいにすごいスピードで走ることがない“ばんえい競馬”なんて面白いのか?」という疑問の声がある一方で、「筋骨たくましい輓馬の競り合いはスピードじゃ語れない迫力がある」という声があります。私が感動したのは、発走からゴールまでの200メートルを、お客様が歩きながら馬と並走して応援できるところにありました。1トンの巨体が発馬機を出た瞬間に出す馬の息遣いと砂煙を目の前で見られるのは、観覧席から遠くで発走するJRAレースでは感じることができないものがありましたし、筋骨たくましい大型の馬が巨体をせめぎ合いながら進んでいくのを間近で見られるのも結構な高揚感があります。「あっ」という間に目の前を過ぎ去るサラブレッドとは異なる躍動感を感じました。

 私が見ていたレースでは小さな子供たちが引率の大人と一緒に、推しの重種馬に付き添いながら並走して応援していました。馬券は買わない子供達にも、十分応援しがいのあるレースなのは、子供の足でも並走して応援できる点にあったと思います。スピードばかりが競馬じゃないという感動を味わわせてもらいました。

 

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ゴール付近;到着した馬から準じ馬装を解いて行きます。

 帯広競馬場には2つの診療所がありますが、そのうち一つは女性獣医師だけで運営されていました。線の細い彼女たちが、1トンもある輓馬に臆することなく診療をこなしており、逞しいと感じました。そういえば、女性騎手も数名いらっしゃいました。自分の胴体と同じくらい大きな顔をもつ輓馬に、鞍なしでゼッケン上に跨ってパドックを周回したり、それだけでなくレースのない時間帯は厩務員として馬房の掃除や馬体洗浄、飼い葉付けまで全部をこなしたり、競馬場の重要な戦力でした。女性パワーが“ばんえい競馬を”支えており、関係者の皆様ともども彼女たちの奮闘をも応援したいと思います。

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ばんえい競馬の今井千尋さんは笑顔の素敵な女性騎手でした!馬の飼い付けなど色々教えてくれました。