2023年9月11日 (月)

競走馬総合研究所(総研)にも秋が来た!

JRA総研の桑野です。

 今回は、総研で感じられる秋について溢れ話を少し。

 総研にはちょっとした雑木林、灌木そして藪がそこかしこにあります。夜になると薮からは虫の音が聞こえてきますが、その中に自生しているスズムシの美しい鈴の音が混じっております。残暑厳しい折、夕闇に響く鈴の音は少しですが暑さを和らげてくれます。

 それにしても、都会ではスズムシは売っているものと思われがちですが、沖縄を除く各都道府県ではそれなりに自生しているようです。温暖化の影響でしょう、昔はいなかった北海道ですら、移入された個体が自生しているそうです。ただ、全国的にだいぶ少なくなっているのは事実で、宮城県や群馬県では絶滅危惧種に指定されています(参考;日本のレッドデータ)。 

 さて晩夏になって、夏の間に繁茂した草木の刈り込みも始まりました(写真1)。普段は藪に隠れて姿を見せないスズムシも、刈り込み時には逃げ場を求めて這い出してくることも(写真2)。虫を見慣れない方が、室内に入り込んだオスをGと間違えて驚嘆する事件も発生! 音色の美しさと裏腹に真っ黒な姿で広い羽を持つオスはヤバいやつに見えるのも頷けます。

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    写真1. 下草の刈込み風景                    写真2. 落ち着かない様子のオス

 そんな総研ですが、馬たちは夜になると涼やかな虫の音を独り占めしているはず…。翌朝には「お腹すいた!」「早く出して!」というアピールしか見せないので、夜の音楽会をどう鑑賞しているのかわからないのですが、言葉を話せたら聞いてみたいものです。

 来年も同じように涼やかな音色を奏でてくれると期待してます。

参考;日本のレッドデータ(NPO法人 野生生物調査協会&Envision環境保全事務所)http://jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=07090100480(外部リンク)

2023年9月 6日 (水)

JRA総研サマースクールが開催されました

企画調整室の福田です。

 今年は9月になってもひどい暑さが続いています。心なしか紫外線も例年より強い気がして、外仕事をこなすのに対策を蔑ろにしていた私はどこに目があるのかわからないくらいに真っ黒な顔に焼けました。

 そんな中、6月1日に当ブログ(リンク)でも紹介した「JRA総研サマースクール」が8月末に開催され、当研究所に全国から獣医系大学生達(12人/コース×2コース)が集まって馬に特化した「感染症コース」や「臨床コース」を受講しました。

 このプログラムは、学生に社会の一端を経験してもらい、広い視野で将来を考えてもらおうと開かれている「家畜衛生・公衆衛生獣医師インターンシップ(VPcamp)事業」の一環であります。ここでは、大学で経験できないような実習を受けられる貴重な場を提供しています。

 上記2コースを用意しましたが、どちらでも馬の扱い方、検温、聴診、触診などの一般実習を受けていただき、さらに選ぶコースによって感染症診断のような実験室レベルの内容に重きを置くか、内視鏡や超音波検査といった診断実習に重きを置くかが区別されました。普段は経験しない診断・医療業務の実体験は、学生さん達には大変有意義かつ興味深いものだったようで、猛暑の中でも時間を忘れて夢中で取り組んでいました。さらに、希望者(結果的には全員参加)には、実習後に乗馬体験の機会も与えられました。

将来、この中から何人かでも馬獣医師が誕生することを期待しています。

Img1_2 実際の馬を使った聴診の実習。腸の動きを聴診しています。

Img2体験乗馬。これができるのは、JRAならではです。


 

2023年8月21日 (月)

馬学講座・ホースアカデミーを撮影しました

 こんにちは、運動科学研究室の吉田です。

 今回は先日、競走馬総合研究所(総研)で撮影・収録が行われた「馬学講座・ホースアカデミー」について紹介します。「馬学講座・ホースアカデミー」は、JRAの付属機関である日高・宮崎両育成牧場が保有する技術や研究成果を、動画を用いて生産地に広く普及、啓発しようと2011年にスタートした事業です。今回はいくつかのテーマについて総研に情報発信の依頼があり、我々運動科学研究室からは、胡田職員が「競走馬における暑熱対策」について紹介しました。暑熱環境下での運動負荷(どれくらい負担が増すのか)や運動後の馬体冷却(なるべく早くシャワーなどで多量の水をかけ続けることが推奨される)について詳しく話しています。

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スポットライトを浴びる胡田職員

 この内容は本年9月に、BSグリーンチャンネル(※外部リンク)で放映予定です(BSを視聴できるならば、グリーンチャンネルを契約していなくても無料で視聴できます)。

 また、2012年から昨年までの馬学講座・ホースアカデミー(※外部リンク)については、(公社)日本軽種馬協会(JBBA)の事業としてすでに動画が配信されておりますので、興味があれば是非視聴してみてください。

0815_1「撮影」の様子

 なお、本年2月15日に当ブログ(リンク)で予告紹介していた馬学講座・ホースアカデミー「スポーツ科学基礎講座」(※外部リンク)も我々運動科学研究室から発信されておりますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。

2023年8月16日 (水)

欧州獣医薬理毒性学会学術大会(EAVPT)の参加について

臨床医学研究室の黒田です。                               

 7月2~6日にベルギーのブルージュで開催された第 15 回欧州獣医薬理毒性学会学術大会(EAVPT)に参加しましたので紹介します。

 EAVPTは、欧州に拠点を置いていますが、獣医の薬理毒性を考える上では世界的規模の学会で、専門誌(Journal of Veterinary Pharmacology and Therapeutics)を発刊しています。今回も世界中から350名あまりの獣医・研究者が参加していました。私がフランス・トゥールーズ獣医学校の薬理学研究室にて師事し、昨年来日して頂きましたPierre-Louis Toutain教授が本学会の前会長であったため、今回、教授が主催する抗菌薬の薬物動態に関するワークショップの講師依頼を受け参加しました。

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写真1;Toutain教授と 

 本ワークショップは、ヨーロッパにおけるヒトの感染症専門組織であるEUCASTの獣医部門(VetCAST)が主催となり、臨床的ブレイクポイントを検討するための解析を学ぶ会です。臨床的ブレイクポイントとは、感染している菌が抗菌薬に対して有効か無効かを判断する基準のことであり、以下の3つの項目によって決定されます。1つはその抗菌薬に対して菌が耐性遺伝子を持つかどうか、次いで臨床的効果の有無、そして3つ目に薬物動態的な有効性(PK/PD カットオフ値の決定)です。本ワークショップでは、特に3つめのPK/PD カットオフ値の解析法を、解析ソフトを用いて習得していただきました。データは、ウマのペニシリンの薬物動態を用い、日本を含む世界各国で行われた実験データを用い、解析します。複数の国で様々な投与法で決定されたカットオフ値を、一つのモデルで解析かつ判断することは難しく、かなり専門的な内容となりました。言語の問題もあるので役目を果たせるかどうか不安はありましたが、何とかお役に立つことが出来たと思っております。

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写真2;ワークショップ風景

 学会では、美味しいベルギービールを交えて日本の獣医大学の先生方、私の留学先のフランスの先生方、競走馬のドーピングを専門とされている先生方とも交流が出来ました。薬物動態に関する専門学会はあまり多くないため、貴重な経験が出来たと思います。ウマの演題も多く、麻酔薬、鎮痛薬、抗菌薬など多くの発表が行われました。次回はヘルシンキ開催と聞いておりますので、興味がある獣医師もしくは分析研究者は是非参加してみてください。

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写真3;学会主催のビール工場見学

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写真4;ベルギービールとタルタルステーキ

2023年8月 8日 (火)

獣医病理学の大家 Fabio Del Pielo (ファビオ デル ピエロ)先生の来日

微生物研究室の上野です。

 当研究室の越智研究役が昨年の海外研修でお世話になったルイジアナ州立大学のFabio Del Pielo先生が、ご自身のサバティカル休暇(自主的な学習・研究のための休暇)を利用して7月に来日されました[写真1]。先生のご出身はイタリアですが、獣医病理学を専門に学んだ後、アメリカの大学で教鞭をとられ、かれこれ約30年にわたり動物の病理診断業務に携わられている、この分野で著明な先生です。“病理学”とは、病気になった動物の身体に生じている変化を調査・研究する、字のごとく病の成り立ちを明らかにする学問分野です。主として解剖技術や顕微鏡觀察等の形態学的手法を用いて実施され、その成果は患畜の病気の診断や検診および予防に生かされます。病理学を専門とする私達は特にお会いできることを楽しみにしていました。

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写真1:Del Pielo先生(総研正門)

 
 競走馬総合研究所(総研)では、症例を用いて先生が実際に米国で行われている検査手法ならびに標本作製方法についてご教授いただくまたとない機会を得ました。また、北海道新ひだか町で開催された「生産地における軽種馬の疾病に関するシンポジウム」において、病理学的な観点から馬の流産・死産ならびに子馬の病気についてご講演いただき[写真2]、我々が経験したことがない、しかしこの先も経験しないとも限らない、米国で遭遇した症例についても学ぶことができました。先生はこの他にも、愛知県の中京競馬場[写真3]や北海道の日高育成牧場を見学、関東圏の獣医大学での講義・情報交換など、3週間という短い滞在期間中にあっても精力的に国内各地を飛び回られました。

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写真2:シンポジウムでのご講演(北海道新ひだか町)

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写真3:中京競馬場牧場見学

 このようなお忙しい中にぽつんと空いた1日。先生のご希望で総研のある栃木県の世界遺産、日光東照宮を案内することになりました[写真4]。正直なところ、日常的な英会話もままならない私の案内で大丈夫かと思いましたが、流石にそこは世界遺産。英語の説明板がそこかしこにあり非常に助かりました。私には「三猿」も「眠り猫」も”That is the famous wood carving.”としか説明できませんでしたが…。海外の方と二人きりで旅する機会はそうそう巡ってきませんが、英語を学習しなければと改めて思った1日でした。まだ伸びしろがあると信じて…

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写真4:Del Pielo先生と上野(日光東照宮 陽明門)

2023年8月 4日 (金)

馬インフルエンザに関する国際的なWebセミナー

分子生物研究室の根本です。

5月31日に国際獣疫事務局(WOAH: World Organisation for Animal Health、これまでの略称はOIEでした)のアジア太平洋地域代表事務所主催の馬インフルエンザに関するWebセミナー(Webinar)で講演を行いました。(本ブログでは海外の学会で発表を行ったという内容が多いですが、私はWebセミナーということでいつもの職場からの講演でした・・・ですので特に写真はありません!)

JRA総研は2021年に馬インフルエンザに関するWOAHのリファレンスラボラトリー(詳細はリンクに)に認定されており、その関係で今回講演の機会をいただきました。JRA総研からは企画調整室の山中と私が講演しました。他の講演者は、WOAH、FEI(国際馬術連盟)やアイルランド、オーストラリア、中国の研究者などであり、国際色豊かなセミナーとなりました。

私の発表内容は馬インフルエンザのワクチンに関する内容で、現在使用されているワクチンの有効性の評価方法と新規ワクチンに関する研究内容を発表しました。セミナーの様子が下記リンク先のYouTubeに掲載さられていますが、つたない英語でお恥ずかしい限りです。

講演後は疲れ果ててしまいましたが、今後も国際会議で講演を依頼されるように業務に取り組まなければならない、と心を新たにした一日でした。

*本セミナーの詳細は下記リンクよりご覧ください。

外部リンク: https://rr-asia.woah.org/en/events/webinar-on-equine-influenza/

(2023年8月1日リンク確認)

*参考:2021年6月17日記事 馬インフルエンザのOIEリファレンスラボラトリーについて

https://blog.jra.jp/kenkyudayori/2021/06/17/

2023年8月 1日 (火)

日本炎症・再生医学会に参加して

臨床医学研究室の田村です。

 7月中旬にシティプラザ大阪で開催された第44回日本炎症・再生医学会に参加してきました(図1)。本学会は、炎症の病態解明とその治療法の開発を目指して設立された「日本炎症学会」を前身とし、2005年に再生医学の研究をも包括する形で現在の学会名に改称されたということです。本学会を通じて、これまでにも数多くの有効な薬剤や治療方法が発表されてきており、炎症を考える上で重要な学会の一つとして認識されています。

 ヒトのスポーツ選手と同じく競走馬でも、力強く、速く走るために関節や腱のケガを予防する、起きてしまった炎症を取り除く、ことは大変重要です。そのためには、日常的なケアがかかせません。なんと人のスポーツでは、古くて新しい治療として冷却療法に光が当てられていました。単に冷却するだけでなく、そのタイミングや冷却時間、また組織レベルで起こる諸変化を科学的に調査することで、より有効な炎症をコントロールする技術が模索されていました。その他、ヒト医療では、関節軟骨の再生に注目が集まっていました。幹細胞を用いて損傷した関節軟骨を再生させることができないか、盛んに研究されていました。これは我々も挑戦しているテーマ(図2)で大いに参考になりました。

 今回参加した日本炎症・再生医学会ではヒト医療に応用されている様々な治療法や新しい知見を知ることができました。今後、競走馬の獣医療に応用できるかもしれない分野で興味深かったです。

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図1.学会入口に立て掛けられた案内板

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図2.我々の研究室にて馬幹細胞から作製した軟骨ペレット(矢印)。まだ臨床応用には遠いものの軟骨ペレットを幹細胞から作れる時代はすでに到来している

2023年7月20日 (木)

地上最高のアウトドアショー ~スタンピード~

 こんにちは、カルガリー大学で研究留学中の運動科学研究室の高橋です。

 今回は、ここカルガリーで伝統となっている馬を用いた行事をご紹介します。カルガリーは石油の街として発展してきましたが、牧畜業から始まった街でもあります。そのため、毎年7月上旬の10日間、カウボーイの精神と文化をお祝いするスタンピードというお祭りがあります。愛称は「The Greatest Outdoor Show on Earth」と呼ばれ、100万人以上が国内外から来場すると言われています。100年以上前から続くカルガリーの伝統的なお祭りです。

 数百頭の馬がダウンタウンの街を行進するパレード(図1)を皮切りに、激しい動きをする馬の上に綺麗な姿勢でどれだけ留まっていられるかを競うロデオや、樽を指定された順番に回ってくるバレルレース、4頭のサラブレッドが1つの馬車を曳き、コースを1周するチャックワゴンレースなど馬にまつわるイベントもたくさんあります(図2, 3)。チャックワゴンレースはスタンピードのメインイベントの1つで、夜の8時頃から毎日開催されます。

1_2図1.ダウンタウンのパレードの1コマ

2_3図2. ロデオやチャックワゴンレースの会場

31000m_3図3. 1周1000m程の比較的小さめのトラック

 これらのウマのイベントの他にも、移動遊園地が設営されたり、様々なアーテイストのライブコンサートもあるので、どの世代にも楽しめるイベントとなっていました。

 余談ですが、樽を指定の順番に回るバレルレースは主にクオーターホースが走ります。最高速度は時速50-60km程度まで迫りますが、スタートからゴールまで20秒程度というとても短い運動時間にも関わらず、運動誘発性肺出血(EIPH)はよく起こるようです。当研究室の杉山が執筆したJRA平地競走における鼻出血のリスク因子に関する論文(Sugiyama et al., Animals 2023)でも短距離レースで鼻出血の発症が多いので、短い運動に特徴的な何かがEIPHや鼻出血発症に関わっているのかもしれませんね。以下がJRA平地競走の鼻出血発症要因に関する論文のリンクです。興味がある方はぜひご一読ください。

【外部リンク】https://www.mdpi.com/2076-2615/13/8/1348

2023年7月10日 (月)

馬も歩活(あるかつ)?WM建設中!

こんにちは、分子生物研究室の上林です。

梅雨明けも目前、夏本番の到来が近づいてきましたね。

栃木もかなり気温と湿度が上昇傾向にあり、ムシムシする日々が増えてきました。

さて、現在競走馬総合研究所ではある施設を建設中です。その写真がこちら。

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これは、基礎となる土台部分の写真ではありますが、何ができるかわかりますか?

ヒント、というか答えをタイトルに書いているのですが、これの完成品がこちらです。

どん!!

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わかりますか?

実はこれ馬用のウォーキングマシーン(WM)なんです。

実際に中に馬が入っている様子がこちら

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人のランニングマシンとは違い、床が動くわけではありません(馬にもトレッドミルはあります)。

上の写真のテントのように見える部分の真ん中に軸(ローター)があり、そこを中心として、さながらメリーゴーランドのように機械が回転します。

中は6~8個の仕切りで区切られており、同時に複数頭の馬を歩かせることができます。

当然、人が馬を持つ必要はありません。

人が馬を曳く必要なく、同時に複数頭の馬を同じペースで運動させられるという点で、人にとっても非常にありがたい設備です。

総研では研究用の馬の日々の運動として、毎日1時間ほどこのWMに入れて歩かせています。

機械の速度は調節可能ですが、概ね100 m/分のペースです。人だと結構早歩きのペースですね。

総研では既に1台が稼働していますが、現在建設中の1台は9月を目途に竣工予定です。

人間にとって歩活(あるかつ)には少し厳しい季節になってきましたが、馬たちは今日も元気に歩いています。

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「見てないであんたも歩きなさい!」とでも言いたげな顔ですね。笑

追伸:本記事を書いて少し経ちましたが、だいぶ組み立てが進みました。竣工が待ち遠しいですね。

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2023年7月 1日 (土)

骨・関節感染症学会

臨床医学研究室の三田です。

 

 6月24日と25日に三重県の津市で行われた第46回日本骨・関節感染症学会を聴講してきました。

 この学術集会では骨や関節の手術後に発生する術部感染症に対する予防・診断・治療方法をメインテーマにしており、人工関節の設置手術の後の感染症に関する発表が多かったです。ヒトの整形外科では近年の高齢化に伴い膝や股関節の人工関節を設置する手術が増加傾向にあり、その手術件数の0.25~2.0 %で手術部位の感染症が発生していると報告されています。参加者の先生はその治療のスペシャリストで、これらの感染症に対する近年の治療戦略の変遷や考え方について学ぶことができました。

 また、昨年この学術集会に参加した時には、抗菌薬を感染部位に継続的に投与する方法(CLAP〔クラップ〕)について勉強できましたが、本年はこの治療方法に関する演題数がかなり増えており、とても盛り上がりを見せていました。この治療方法では抗菌薬を感染部位に直接投与することで、静脈内投与や経口投与では実現できないような高い抗菌薬濃度を感染部位に提供することができます。そのため、従来治療ではなかなか治せなかった手強い感染症に対して有効に働くことが多いようです。

 昨年以降、馬医療での実現にむけてCLAP療法のパイオニアの先生達に多くのご指導いただいており、学会後の懇親会にもお招きいただきました。お酒のせいで少し記憶があいまいですが、その席で先生の1人が仰っていた

『感染症を治すことは当たり前になりつつある、大事なのはその先にある機能回復』

という言葉はとても印象的でした。

 ウマでも関節に感染症を起こすと、骨がいびつな形態となって機能が損なわれることがあります。そのようなケースでも早期に感染症をコントロールすることで機能の維持ができたら望ましいなと思います。

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今年の学術集会のテーマは「骨・関節感染症に勝つ!」でした。

抄録集のデザインからは会長がゲーム好きなのかと感じました。