育成馬ブログ 宮崎②

○初期馴致とナチュラルホースマンシップの考え方(宮崎)

 

9月20日に宮崎県を直撃した台風16号によって、

県内では突風や浸水などの被害を受けました。

宮崎育成牧場においても、

倒木による放牧地のフェンスの破損等の被害が見られました。

幸いにも育成馬に怪我等はありませんでしたが、

改めて自然災害の恐ろしさを痛感しました。

 

台風後も10月上旬までは30度を越える夏日が続きましたが、

10月中旬に入ると、秋の気配を感じるようになってきました。

寒暖の差が激しくなる季節の変わり目でもありますので、

人馬ともに体調管理を第一に考えて、育成調教を実施しています。

               

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写真① 台風16号の突風による倒木が放牧地のフェンスを破損

 

育成馬の近況

 

2群に分けて騎乗馴致を進めている育成馬の近況をお伝えいたします。

9月上旬から騎乗馴致を開始している1群(牡馬10頭)は、

最初の3週間はドライビング中心に馴致メニューを組み、

現在は角馬場での騎乗による速歩調教を重点的に実施し、

500m馬場においてハッキング程度の

キャンター調教を行えるまでになっています。

11月からは1600m馬場でのキャンター調教を実施する予定です。

 

一方、10月上旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬12頭)は、

ドライビングを中心に実施しながら、

同時に丸馬場での騎乗も行っています。

11月には角馬場において集団での速歩調教を開始する予定です。

 

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写真② 500m馬場で隊列を整えた速歩を実施する1群牡の育成馬

 

初期馴致とナチュラルホースマンシップの考え方

 

JRA育成馬に対する初期馴致は、

「育成牧場管理指針」に基づいて実施しています。

海外では初期馴致のことを「ブレーキング(Breaking)」と呼んでいます。

これは「馬と馬の関わる社会(野生の群れ)の約束事を壊して(Break)、

新たに人と馬の関わる社会の約束事を構築する」という意味を表しています。

 

近年、初期馴致を含めた馬の調教において、

「ナチュラルホースマンシップ」に基づく考え方が浸透してきています。

一言で述べるのは困難ですが、群れで行動する馬の本能を利用して、

人を群れのリーダーと見なして

尊敬あるいは信頼(リスペクト)させることが重要であるという考え方です。

 

尊敬やリーダーという言葉からは、

馬を物理的あるいは精神的に

屈服させることを想像するかもしれませんが、

馬が自発的に人のことを

群れのリーダーと見なすようにならなければならず、

そこに「恐れ」という感情があっては成り立たちません。

 

さらに掘り下げて考えると、

野生の馬の世界では相手のスピードと方向を制御する

「アルファ」と呼ばれるリーダーが群れを統制しているので、

人が「アルファ」とならなければなりません。

「アルファ」としてどのように行動すれば良いかを考える時に、

母馬と子馬の関係が分かりやすいといわれています。

 

子馬は母馬の目の届く「円形の範囲」で過ごしており、

母馬は子馬が円の外に出ると、円の中の戻そうと行動します。

つまり、母馬が子馬の方向を制御し、

円の内側に入れてスピードを制御して「アルファ」となります。

子馬の側から見ると、

前後左右の動作は母馬の許可を得なければならず、

スピードと方向を制御されているということになります。

 

この考え方を利用したのが、

JRA育成牧場における初期馴致のプロセスのなかで

重点的に取り組んでいるドライビングです。

ドライビングは、騎乗せずに2本のロングレーンを使用して、

馬車の御者のように馬を後方から制御することです。

下の動画のように、速歩でのドライビングによる手前変換こそが

母馬が円の外に出ようとする子馬を

円の中の戻そうとする行動そのものとなります。

 

つまり、ドライビングによって

馬のスピードと方向を制御することが可能となります。

ドライビングで自在にコントロールできるようになると、

騎乗後もスピードと方向を制御することが容易となるのみならず、

初期馴致を開始する前には取り扱いが難しかった馬が

従順になることもよく見受けられます。

 


YouTube: 16-17年育成馬日誌宮崎②VTR

 

このように考えてみると、

欧州で伝統的に行われてきた「ブレーキング」という考え方が、

近年、ナチュラルホースマンシップというツールを通して

「アルファ」や「リスペクト」という

異なった言葉で表現されるようになっただけであり、

根本の考え方は変わってはいないように思われます。

 

どちらが正しいかということではなく、

重要なことは「馬は接する人の姿を映す鏡」ともいわれるように、

正しいアプローチであるかどうかの答えは

馬が出してくれるということなのかもしれません。

 

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写真③ ドライビングによるスラロームで杉林の間を通過

育成馬ブログ 宮崎①

○  「馬に親しむ日」の開催とサマーセール購買馬の入厩(宮崎)

 

宮崎育成牧場における馬事普及業務の最大のイベントともいえる

「馬に親しむ日」を8月28日に開催しました。

 

50%を超える降水確率のとおり、

開始前には激しい雨が降りましたが、

開場となった9時には雨も止み、開会式がスタートしました。

 

「馬に親しむ日」の名のとおり、

メインイベントとなる全国ポニー競馬選手権「ジョッキーベイビーズ」の

九州地区代表決定戦や草競馬のみならず、

乗馬試乗会、流鏑馬(やぶさめ)、装蹄実演、

ホースショー、ポニーショーなど盛りだくさんのイベントが行われました。

 

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写真① 高校生によるミニチュアポニーのプリン(左)とモック(左)のショー

  

メインイベントであるポニー競馬は、

予選3組を勝ち上がった人馬6頭が決勝戦に進出することができます。

決勝戦では10月9日(日)に開催される

「第8回ジョッキーベイビーズ」の九州地区代表の

1枚の切符をかけた熱いレースが繰り広げられました。

 

結果は鹿児島県から参加の「ユキノビクトリー号」に騎乗した

上薄君(小学6年生)がスタートダッシュを決めて、

そのまま先頭を譲ることなくゴールし、九州地区代表の座に輝きました。

 

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写真② ポニー競馬決勝では11番ユキノビクトリー号(左)に騎乗した

上薄君(小6)が優勝し、10月9日に東京競馬場で行われる

「第8回ジョッキーベイビーズ」の九州地区の代表に輝きました。

 

昨年に引き続き、今年もスペシャルゲストとして

名古屋競馬で活躍する木之前騎手をお招きし、

トークショー、ポニー競馬のパドック解説や

優勝騎手へのプレゼンターのみならず、

草競馬の誘導馬の騎乗までお手伝いいただきました。

ご存知のように、木之前騎手は宮崎県三股町の出身であり、

小学6年生から当場の乗馬スポーツ少年団で

乗馬をされていたという縁があり、

凱旋といった感じでお越しいただきました。

 

このイベントの前の週には、地元のテレビ局で

木之前騎手の名古屋競馬場での密着取材の模様が放送されており、

多くの来場者が記念撮影やサインを頼んでいました。

笑顔で対応する木之前騎手の表情はとても印象的でした。

 

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写真③ 優勝騎手の上薄君と関係者による口取り写真(左)、

スペシャルゲストの木之前騎手から

「第7回ジョッキーベイビーズ」の招待状を受け取る優勝騎手の上薄君(右)。

 

終了間際に小雨に見舞われましたが、

日中は晴天に恵まれたことも手伝い、

お蔭様で約6,000名(うちお子様約2,000名)を

超えるお客様が来場されました。

 

このようなイベントを通じて馬と触れあうことによって、馬のみならず

競馬への興味を深めていただけるのではないかと思っております。

この場をお借りいたしまして、ご来場いただきましたお客様、

ならびにご協力いただきました関係者の皆様に感謝申し上げます。

 

馬に親しむ日が終わると、いよいよ育成馬の馴致がスタートします。

9月3日には日高育成牧場で生産されたJRAホームブレッド2頭のほか

サマーセールで購買した馬15頭が入厩しました。

これにより、

本年度の宮崎育成牧場繋養馬22頭(牡10頭、牝12頭)がすべて揃い、

今後は牡から順次、騎乗馴致を開始していく予定です。

次回は馴致の様子をお伝えいたします。

 

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写真④ 最初の放牧で初めての仲間と挨拶を交わし、序列を確認する育成馬たち。

育成馬ブログ 宮崎⑧

○春の育成馬見学会の開催(宮崎)

 

宮崎は3月中旬までは天候の優れない日が続いていましたが、3月下旬に入ると、

日中は少し体を動かすと半袖でも過ごせるほどの暖かい日が多くなってきました。

同時に桜も開花し、宮崎は1年のベストシーズンを迎えています。

 

育成馬の近況

 

さて、宮崎育成牧場のJRA育成馬22頭は、

4月26日(火)にJRA中山競馬場で開催されるブリーズアップセールへ向けての

最終調整に入っております。

 

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写真① 週1回実施している強調教時の様子

前左:上場番号58番セイカシリアスの14(牝 父:パイロ)

前右:上場番号28番プルームリジェールの14(牡 父:スマートファルコン)

後左:上場番号81番タイキノワールの14(牝 父:ストーミングホーム)

後右:上場番号10番プレギエーラの14(牡 父:ハービンジャー)

 

 

500mトラック馬場では、

ウォーミングアップおよびルーティーンワークとして速歩1周の後、

直線はキャンター、コーナーは速歩という調教を

左右両手前で2周ずつ実施しています。

 

スピード調教を繰り返していくと、

ハミにかかる傾向が強くなるのを改善する目的もあるため、

ハミを必要以上に取らずに、

馬自身のバランスで走行させることを主眼に置いています。

特にスピード調教翌日には、この500mトラック馬場での調教のみで終了し、

メンタル面のコントロールにも注意を払っています。

 

調教のベースとなる1600m馬場での週1回のスピード調教では、

1200mを2本走行させるインターバルトレーニングを実施し、

2本目には3ハロンを45秒(ハロン15~14秒)程度で走行しています。

 

 動画 3月下旬の調教動画

    

春の育成馬見学会

 

さて、「春の育成馬見学会」を3月26日(土)に開催しました。

地元宮崎にお住いのお客様を対象としたこの「育成馬見学会」は、

毎年、秋(10月中旬)と春(3月下旬)の年2回実施しております。

 

春の見学会では「サポーターズクラブ」と題して、

お気に入りの馬を牡牝それぞれ1頭ずつ選んでいただき、

その馬がJRAの競走で優勝した際には、

ゴール前写真をプレゼントする企画を開催しております。

この企画は、JRA育成馬への応援を通じて、

より競馬に親しんでいただくことを趣旨に実施しています。

 

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写真② 「サポーターズクラブ」でお気に入りの馬が

JRA競走で優勝した際にプレゼントしている「ゴール前写真」

 

 

今回の育成馬見学会には、

天候に恵まれたことも手伝って、119名ものお客様にご来場いただきました。

 

我々スタッフは、このような大勢の方々の前で育成馬を展示する機会は少ないため、

この見学会をブリーズアップセールに向けての良い馴致の機会と捉えています。

 

参加者の皆様方は、

真剣な眼差しでそれぞれの視点に基づき、自分の好みの馬を選ばれていました。

このような企画を通じて、競馬の魅力をお伝えし、

競馬に親しんでいただければと考えております。

 

育成馬見学会に参加していただきました方々には、

この紙面をお借りして、改めてお礼申し上げます。

 

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写真③ 育成馬見学会は天候にも恵まれ119名ものお客様にご来場いただきました

 

 

宮崎育成牧場「育成馬展示会」のお知らせ

 

宮崎育成牧場では、ブリーズアップセールに先立ちまして、

本年も4月5日(火)に「育成馬展示会」を開催いたします。

なお、朝10時開始となりますこと併せてお知らせいたします。

以下に簡単な当日のスケジュールをお示しいたします。

 

10:10 ~ 比較展示

11:10 ~ 騎乗供覧

 

皆様方のご来場を心よりお待ちしております。

なお、育成馬展示会は関係者(馬主、調教師、牧場関係者等)を対象として

おりますので、一般のお客様の来場はご遠慮させていただいております。

 

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写真④ 昨年の展示会の調教供覧の様子

育成馬ブログ 宮崎⑥

○育成馬調教見学会の開催(宮崎)

 

 南国宮崎では、初春の風物詩となっているプロ野球球団のキャンプが2月1日から

スタートしています。昨年同様、巨人、ソフトバンク、オリックス(宮崎市)、広島、西武

(日南市)の5球団がキャンプインしています。

 

 宮崎がキャンプ地として選ばれる理由は、温暖な気候はもちろん、宮崎県を挙げて

取り組んでいる充実したスポーツ施設環境といわれています。キャンプが始まると、

県内外から多くの観光客が訪れ、活気づきます。

 宮崎の春は、そこまで来ているように感じられます。

 

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写真① 宮崎市清武総合運動公園でキャンプ中のオリックスの選手たち。

 

 

育成馬の近況

 

 さて、宮崎育成牧場のJRA育成馬22頭の近況をお伝えいたします。

 最初にウォーミングアップとして500mトラック馬場で直線をキャンター、コーナーを

速歩という調教を左右3周ずつ実施しています。この調教メニューは、騎乗馴致後から

毎日実施している、いわゆる「ルーティーン」であり、同じ環境で同じ調教を実施する

ことによるメリットであるメンタル面の安定を主眼に置いています。

 

 一方、1600m馬場では、3月からの本格的なスピード調教に向けて、現在は基礎

体力養成を主眼に調教を実施しています。

 4~5頭単位の1列縦隊でハロン22~20秒のイーブンペースでの2400mの

ステディキャンターを基本調教としています。

 週1回は群れを意識して馬群の中で落ち着くこと、および1600m馬場の利点を

生かした長距離を一定ペースで走行することによって持久力を向上させることを

目的として3000mのステディキャンターを実施しています。

 

 また、週1回実施している強調教時には、普段とは異なるパターン、つまり、1200m

を2本走行するインターバルトレーニングを行うことによって、馬に“オン”の日である

ことを理解させるように工夫しています。

 1本目は4~5頭単位の1列縦隊でハロン22~20秒でのステディキャンターを実施

し、2本目は4頭単位の2列縦隊で3ハロンを54~51秒、つまりハロン18~17秒

ペースでの強調教を実施しています。

 

 このように1週間の調教の流れをパターン化して、馬が“オン”と“オフ”の切り替えを

自らできるように工夫する試みを行っています。

 

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写真② 週1回実施している強調教時の様子。

左:エーシンブランディの14(牡 父:ヴァーミリアン)、

右:フラワーパフュームの14(牡  父:シンボリクリスエス)

 

育成馬調教見学会

 

 ここからは、2月13日(土)に開催いたしました「育成馬調教見学会」について

ご紹介いたします。この見学会は、地元の一般来場者の方々が、育成馬の疾走する

姿を間近で見ることができるイベントです。

 毎年10月と3月に開催している立ち馬展示をご覧いただく、「育成馬見学会」ととも

に、宮崎の地で成長していく育成馬の姿を間近で見て、少しでも身近に感じていただく

ことを趣旨に実施しています。

 

 当日は小雨の降るあいにくの天候にもかかわらず、40名を越えるお客様にご来場

いただきました。降雨のため室内からの見学となってしまいましたが、ブリーズアップ

セール上場予定馬が疾走する姿を間近でご覧いただきました。

 

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写真③ 小雨の降る天候にもかかわらず、育成馬調教見学会には

40名を超えるお客様にお集まりいただきました。

 

参加していただきました方々には、この紙面をお借りして、改めてお礼申し上げます。

なお、3月26日(土)には「春の育成馬見学会」を開催する予定です。

「サポータズクラブ」にご登録いただいている皆様には、3月上旬にご案内をお送り

いたします。皆様のご来場をお待ちしております。

育成馬ブログ 宮崎⑤

○調教時における速歩について(宮崎)

  

 全国的に1月中旬になってようやく真冬と感じる寒さになりましたが、

今冬は暖冬との声が聞かれています。

南国宮崎も例外ではなく、正月三ヶ日には最高気温が20℃を超える日もありました。

 昨年と同時期の芝の状態(写真①)を比較してみると、

宮崎も暖冬であることが確認できます。

宮崎の短い冬は、あっという間に過ぎ去って行きそうです。                                                                                       

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写真① 昨年と今年の同時期の芝状態を見比べると、暖冬であることが明らかです。

 

育成馬の近況

 

 宮崎育成牧場所属のJRA育成馬の近況をお伝えいたします。

最初にウォーミングアップとして

500mトラック馬場で直線をキャンター、

コーナーを速歩という調教を左右3周ずつ実施しています。

 その後は1600mトラック馬場に場所を変えて、

一列縦隊で2400mのステディキャンターを実施しています。

ハロン20秒程度のイーブンペースで走行し、基礎体力を付けるとともに、

馬群の中で落ち着いて走れることを目標に調教しています。

2月からは週に1回の強調教を実施する予定です。

 

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写真② 1600m馬場で隊列を整えたキャンターを実施する育成馬。

先頭からサニーサイドの14(牝 父:ステイゴールド)、

ジョイオブフライトの14(牝 父:アイルハヴアナザー)、

プルームリジェールの14(牝 父:スマートファルコン)、

マイネミニケリーの14(牝 父:ニューイングランド)。

 

速歩調教

 

 騎乗馴致では、

前に(Go forward)、②真っ直ぐ(Go straight)、③落ち着いて(Go calmly)

走行させることを目標に掲げて取り組んでいます。

これを実現するために、初期調教時には、「速歩」に重点を置いています。

 

 その理由は、馬の動きを邪魔しないように騎乗すること、

つまり、騎乗者の重心と馬の重心とを一致させ、馬の動きを邪魔しないと同時に、

馬に人が騎乗することを許容させることこそが、馬の持っている能力を

可能な限り発揮させる上で重要なことであると考えているからです。

 

 つまり、速歩は対角に位置する前後肢がほとんど同時に動くことから、

3種の歩様の中で、重心の移動および頭頚の動きが最も少ない

という特徴があります。

 そのため、騎乗者は馬の重心に近い「鐙」の一点で体重を支えることによって、

騎乗者の重心と馬の重心とを一致させやすくなるとともに、

馬の背を解放することによって、馬の負担の軽減と

馬自身によるバランスでの走行が容易となるからです。

 

 さらに、馬自身によるバランスでの走行を馬が自ら習得できるように、

角馬場での8の字乗りや、キャンターと速歩との移行の繰り返しを実施します。

この繰り返しにより、

キャンター時にも真っ直ぐ落ち着いた走行が比較的容易になります。

 初期調教を終えた後も、前述のとおり、ウォーミングアップとして、

500mトラック馬場で「直線(約150m)をキャンター」、「コーナー(約100m)を速歩」

という調教を実施し、

毎日の「ルーティーン」という位置づけで、

馬自身のバランスで走行しやすい「速歩調教」を重要視しています。

動画 角馬場(10月下旬)および500mトラック馬場(1月中旬)での「速歩調教」の

様子。馬自身によるバランスでの走行を習得できるように、速歩とキャンターとの移行

を繰り返し実施しています。

 

育成馬検査

 

 1月中旬に育成馬検査が実施されました。

育成馬検査とは、JRA生産育成対策室の職員が

日高および宮崎育成牧場で繋養している育成馬を、

第三者の視点から市場での購買時からの馬体の成長具合、現在の調教進度、

馬の取り扱いなどをチェックし、ブリーズアップセール上場に向けての

中間確認を行う検査です。

検査に合わせて、

牡牝それぞれの「ベストターンドアウト賞」の審査が行われたため、

緊張感が漂う中、育成馬の調教供覧、展示および馬体検査が行われました。

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写真③ 育成馬検査における「ベストターンドアウト賞」の審査で最優秀馬に選ばれた

ヴァルホーリングの14(写真左 牡 父:ジャングルポケット)と

プルームリジェールの14(写真右 牝 父:スマートファルコン)

育成馬ブログ 宮崎④

○初期馴致の目的(宮崎)

 11月下旬までは日中に暑いと感じることもあった南国宮崎でも、最低気温が10℃

を下回り、最高気温も15℃を下回る日が徐々に増えてきており、本格的な冬を迎え

ようとしています。とはいえ、北海道の10月上旬ぐらいの気温であり、さらに例年と

比較すると気温が少し高いため、冬は南国で過ごすのが人馬ともに良いと実感して

おります。

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写真① 南国宮崎では12月に入っても秋に播種したイタリアンライグラスが繁茂しています。

育成馬の近況

 宮崎育成牧場所属のJRA育成馬の近況をお伝えいたします。9月上旬から騎乗

馴致を開始している1群(牡馬11頭)は、角馬場での速歩およびハッキング、500m

トラック馬場で約800mのハッキングを実施し、その後1600mトラック馬場に場所を

変えて一列縦隊で1200mと1600m、合計2800mのキャンターを実施しています。

スピードはハロン22~24秒程度とゆっくりとしたキャンターですが年内は落ち着いて

真っ直ぐ走行させることを主眼に置いて調教を進めていきたいと考えています。

 一方、10月上旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬11頭)は、11月中は

角馬場および500mトラック馬場において速歩中心の調教を実施してきましたが、

12月に入ってからは、1群の牡と同様に1600mトラック馬場でのキャンター調教を

実施できるまでになりました。まだまだ、何かに驚いて走行中にフラフラすることも

ありますが、牡と同様に落ち着いて真っ直ぐ走行させることを第一に調教を進めて

います。

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写真② 1600m馬場で隊列を整えたキャンターを実施する1群牡の育成馬。

先頭からエレガントトークの14(牡 父:マンハッタンカフェ)、

スイートピグレットの14(牡 父:クロフネ)、ラブシービルの14(牡 父:サマーバード)、

エーシンブランディの14(牡 父:ヴァーミリアン)。                                                                              

初期馴致の目的

 JRA育成馬に対する初期馴致は「育成牧場管理指針」に基づいて実施しています。

初期馴致のプロセスのなかで重点的に取り組んでいるのはドライビングです。

ドライビングというのは、騎乗せずに2本のロングレーンを使用して、馬車の御者の

ように馬を後ろから制御することです。欧州では競走馬の騎乗に先立って実施されて

います。初期馴致時に実施するドライビングには、後方からの御者の指示と内方の

リードレーンの操作を馬に対して受け入れさせる効用があります。つまり、騎乗前に

馬に「扶助」を受け入れさせるために実施しています。

 初期馴致の最終目標は人が馬に騎乗することであるため、可能な限り早く騎乗した

方が効率的であるという考え方が一般的であるかもしれません。しかし、何をすれば

良いかということを理解していない若馬に対して、約束事である「扶助」を一つ一つ

繰り返して確実に理解させることが最も重要であるため、ドライビングを重点的に実施

すべきであると考えています。

                                                                

ドライビング動画リンク

https://www.youtube.com/watch?v=POrJ6MKYjdQ&feature=youtu.be

                                                                          

 本年は9月中旬から10月下旬まで馬場の改修工事が行われたため、工事車両が

往来し、さらに工事が進行するなかでのドライビングの実施となりました。当初は、

馬が驚くために馴致中には工事を中断していただこうと考えていましたが、人と馬との

信頼関係を構築するとともに、工事が行われている環境に慣らしさえすれば、重機の

音や動きに対応することが可能となっていきました。

 馬の馴致調教とは、決して人が思い描いたひとつの「型」に馬をはめ込むことでは

なく、馴らすことによって馬が自ら進んで行動するように導くことであるということを

改めて理解することができました。馬の行動は人が導いた結果であるということを

肝に命じ、馬の目線に立って馬の個性を考えながら馴致調教を進めていきたいと

思います。最良のホースマンとは、ひとつの「型」に馬をはめ込んで問題を解決する

のではなく、多くの引き出しを持ったなかで状況に応じて対応できる者のことであり

さらに、どのような状況下でも、「忍耐強く」馬と接することができる者のことではないか

と思っています。

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写真③ 本年は馬場改修工事が行われたため、工事車両が往来するなかでの

ドライビングの実施となりました。

 

育成馬ブログ 宮崎③

○秋の育成馬見学会の開催(宮崎)

 10月に入り、宮崎でも秋の気配を感じるようになってきました。特に、朝夕の冷たい

は早くも冬の到来さえ予感させます。寒暖の差が激しくなる季節の変わり目でも

ありますので、人馬ともに体調管理を第一に考えて、育成調教を実施しています。

育成馬の近況

 2群に分けて騎乗馴致を進めている育成馬の近況をお伝えいたします。9月中旬

から騎乗馴致を開始している1群(牡馬11頭)は、最初の4週間はドライビング中心に

馴致メニューを組み、現在は角馬場での騎乗による速歩調教を重点的に実施し、

500m馬場においてハッキング程度のキャンター調教を行えるまでになっています。

11月からは1600m馬場でのキャンター調教を実施する予定です。

 一方、10月上旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬11頭)は、ドライビングを

中心に実施しながら、徐々に丸馬場での騎乗も行っている現状です。11月には

角馬場において集団での速歩調教を開始する予定です。

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写真① 500m馬場で隊列を整えた速歩を実施する1群の牡の育成馬。

腹帯馴致について

 JRA育成馬に対する騎乗馴致は、「育成牧場管理指針」に基づいて実施して

います。騎乗馴致において、馬にとっての大きな山場は「ローラー」と呼ばれる「腹帯」

を初めて装着するときだと思われます。なぜならば、「腹帯」による圧迫は自然状態下

では決して経験することのない刺激であり、さらに、「腹帯」は一旦装着すると

締め具合が固定されてしまうため、段階的に慣らしていくことが困難であるからです。

JRA育成牧場では「育成牧場管理指針」にも記載しているとおり、腹帯による圧迫を

段階的に慣らしていくために「ストラップ」による馴致方法を導入しています(図1)。

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図1.「ストラップ馴致」は腹帯馴致の有効な手段となります。

 

 この「ストラップ」は、革ベルトの一端にリングというシンプルな構造で、留め金などに

より締め付けた状態を固定しないため、解除が容易であり、使用方法も簡便です。

さらに、馬に対して、段階的に圧迫に慣らすことが可能であるために、非常に有効な

方法です。しかし、「ストラップ」による腹帯馴致方法を実施しても、敏感な反応の

良い馬は、ローラー装着時に「カブリ(Bucking)」(動画)と呼ばれる「四肢で跳ね

上がる反応」をみせます。

動画 ローラー装着時の「カブリ」の様子。プルームリジェールの14(牝 父:スマートファルコン)

⇒ https://www.youtube.com/watch?v=rYnN5dW81SU

 この「カブリ」という反応は、大きな呼吸を行うことによって胸郭が膨らみ、経験した

ことのないローラーによる強い圧迫を感じて驚き、それを振り解こうとする自然な反応

です。馬が「カブリ」を見せた場合には、必ず、ムチなどの扶助を使って馬を前に出し

馴致者の安全を確保するとともに、馬に対して扶助に従って前に出ることによって、

問題が解決されるということを理解させます。この際にも、馴致者は冷静に明確な

指示を出すことが要求されます。ローラーに対して激しい「カブリ」をみせた馬に対して

は、馴致終了後も、ローラーを装着したままウォーキングマシンでの運動、あるいは

放牧を行ってローラーの圧迫に慣らすことが効果的です。

 馴致の進度は、個体差があるので、「急がば回れ」の格言のとおり、個々の馬に

合わせて、段階的に進めていきたいと思っています。

育成馬見学会

 さて、前回の育成馬日誌でも案内させていただきました「秋の育成馬見学会」を

10月17日(土)に開催しました。このイベントは、毎年、10月中旬のこの時期と

ブリーズアップセールの約1ヶ月前の3月中旬の年2回実施しております。地元宮崎に

お住まいのお客様に宮崎の地で成長していく育成馬の姿を間近で見て、少しでも

身近に感じていただくこと、さらに3月の見学会では「サポーターズクラブ」と題して、

お気に入りの馬を牡牝それぞれ1頭ずつ選んでいただき、その馬が競走馬として

活躍した際にはゴール前写真をプレゼントするなど、JRA育成馬への応援を通じて

より競馬に親しんでいただくことを趣旨に実施しています。

 また、実馬展示に先立ち、「サラブレッドの血統」をテーマにした簡単な講義を行い

ました。このような座学をとおして、少しでも競馬の面白さを感じていただけたらと

思っています。

 今回の育成馬見学会には、104名ものお客様にご来場いただきました。我々

スタッフにとっては、このような大勢の方々の前で育成馬を展示する機会は少ない

ため、良い馴致の機会と捉えています。展示では、普段と異なる雰囲気を察知して

落ち着かない馬も散見されましたが、多くの馬は大人しく駐立することができました。

この調子で3月に行われる「春の育成馬見学会」まで、根気よく馬の調教および管理

に取り組んでいきたいと思います。

 育成馬見学会に参加していただきました方々には、この紙面をお借りして、改めて

お礼申し上げます。

 

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写真② 育成馬見学会は晴天にも恵まれ、100名を超えるお客様に

      ご来場いただきました。

育成馬ブログ 宮崎②

○  馬に親しむ日の開催(宮崎)

 

 

JRA宮崎育成牧場における馬事普及業務の最大のイベントともいえる

「馬に親しむ日」を8月30日に開催いたしました。

 前日から激しい雨が降り続き、当日の天気予報も雨となっておりましたが、

開場となった9時には雨も止み、開会式がスタートしました。

「馬に親しむ日」の名のとおり、乗馬試乗会、流鏑馬(やぶさめ)、ホースショー、

ポニーショー、馬に関するクイズ大会、さらには草競馬やポニー競馬など

盛りだくさんのイベントが行われました。

 

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写真① ミニチュアポニーのモック(左)とプリン(右)のショー

 

 多くのイベントの中でもポニー競馬は、予選2組を勝ち上がった人馬6頭が

決勝戦に進出し、10月11日(日)に開催される「第7回ジョッキーベイビーズ」の

九州地区代表の1枚の切符をかけた熱いレースが繰り広げられました。

結果は鹿児島県から参加の「サツマヨカニセ号」に騎乗した福元君(小学6年生)が

ゴール前で見事に差し切り、九州地区代表の座に輝きました。

ポニー競馬に参加した子供達の騎乗技術のレベルは上がってきており、

人馬の実力が拮抗してきたため、来年はさらに熱い戦いが予想されるため、

早くも来年が待ち遠しいです。

 

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写真② ポニー競馬には12頭がエントリーし、上位6頭で決勝が行われました。

優勝は5番サツマヨカニセ号(左)に騎乗した福元君(小6)で、10月11日に東京

競馬場で行われます「第7回ジョッキーベイビーズ」の九州地区の代表となりました。

 

 

今年はスペシャルゲストとして名古屋競馬で活躍する木之前騎手をお招きし、

トークショー、ポニー競馬のパドック解説のみならず、ポニー競馬の優勝騎手への

プレゼンターまでお願いしました。実は木之前騎手は地元宮崎県三股町の

出身であり、小学6年生から当宮崎育成牧場の乗馬スポーツ少年団で乗馬を

はじめ、騎手を目指すようになったという背景をお持ちであり、まさに凱旋といった

感じがしました。木之前騎手のポニー競馬の騎手たちへの温かいまなざしは

とても印象的でした。

 

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写真③ スペシャルゲストの木之前騎手(右)から「第7回ジョッキーベイビーズ」の

招待状を受け取る優勝騎手の福元君(真中)とサツマヨカニセ号(左)。

 

 

 時折小雨に見舞われましたが、大きな天気の崩れはなかったのも幸いし、

お蔭様で4,200名ものお客様が来場され、お楽しみいただきました。

普段、馬とはあまり身近でないお客様が、このようなイベントを通じて馬と触れあう

ことによって、馬のみならず競馬への興味を深めていただけるのではないかと

思っております。この場をお借りいたしまして、ご来場いただきましたお客様、

ならびにご協力いただきました関係者の皆様に感謝申し上げます。

 馬に親しむ日が終わると、いよいよ育成業務が本格化します。北海道から

44時間の輸送を経て、9月3日には宮崎育成牧場所属の育成馬15頭が

宮崎に到着しました。これにより、本年度の宮崎育成牧場繋養馬22頭(牡11頭、

牝11頭)が全て入厩したことになります。今後は牡から順次、騎乗馴致を開始していく

予定です。なお、本年は日高育成牧場で生産したJRAホームブレッド2頭についても、

宮崎育成牧場で後期育成を行います。

 

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写真④ 「北の国」北海道から44時間かけて「南国」宮崎に到着した育成馬は

輸送の疲れも見せず、放牧地を元気に駆け回っていました。

 

 なお、昨年も開催いたしました「一般市民向け育成馬見学会」を本年は

10月17日(土)に開催する予定です。詳しくは場内の掲示板、もしくは

宮崎育成牧場ホームページのイベント情報(http://jra.jp/miyazaki/05.html

をご覧ください。職員一同、皆様のご来場を心よりお待ちしております。

育成馬ブログ 宮崎①

 ○  JRA育成馬の入厩(宮崎)

1歳セリでの購買

本年度の1歳セリは7月7日(火)に開催されました八戸市場からスタートしました。八戸市場では54頭が上場され、31頭が売却されました(売却率は57.4%)。JRAは八戸市場において、4頭(牡1頭、牝3頭)を購買しました(写真1)。

1写真1.八戸市場において購買した本年度のJRA育成馬第1号となったタイキノワールの14(牝 父:ストーミングホーム) 【馬市ドットコム様提供】

続いて開催されたのは、今や日本一のセリにとどまらず、世界でも有数のセリとなった「JRHAセレクトセール」でした。北海道の苫小牧市の「ノーザンホースパーク」において、7月13日(月)に行われ、238頭が上場され、210頭が売却されました(売却率は88.2%)。JRAはセレクトセール(1歳セール)において、牝2頭を購買しました。

セレクトセールの1週間後の7月21日(火)には、北海道静内町で「HBAセレクションセール」が開催されました。本年のセレクションセールには、231頭が上場され、166頭が売却されました(売却率は71.9%)。JRAは10頭(牡:6頭、牝:4頭)を購買しました。

7月セリの締めは7月28日(火)に鹿児島で開催された九州市場でした。21頭が上場され、9頭が売却されました(売却率は42.9%)。JRAは牝1頭を購買しました。

いずれのセリも多くのお客様が参加されており、さらに、昨年と比較すると売却率も上昇しており、非常に盛況な印象を受けました。これらのセリでの盛り上がりとともに、競馬全体が盛り上がっていくことを期待せずにはいられません。

 

JRA育成馬の入厩(宮崎)

さて、7月25日には宮崎育成牧場に八戸市場およびセレクションセールで購買した6頭のJRA育成馬が入厩いたしました。育成馬6頭は北海道静内を7月23日の15時に出発し、函館から青森間のフェリー経由で本州に渡り、42時間かけて宮崎に到着しました(写真2)。到着後に発熱を認める馬もいましたが、大事には至らず、放牧することができました。

Photo写真2.北海道から宮崎への長距離輸送の途中で、少し疲れた表情を見せるセイカシリアスの14(牝 父:パイロ)

セリ上場のために舎飼中心の個体管理が行われていた馬達は、自身が“馬”であることを再確認するかのように放牧地内を疾走します(写真3)。その後、特に牡は新しい群れの中で“我こそは”と強さをアピールし、群れの中での順位が決まるまでは、しばしば争いが繰り返されます(写真4)。そのため、放牧時のケガなどのアクシデントの発生にはハラハラさせられます。

Photo_4写真3.到着後の初めての放牧時に疾走する育成馬

このようなアクシデントを承知の上で、入厩数日後には夜間放牧を開始します。その理由は、“騎乗馴致”が始まるまでの間に成長を待つとともに“草食動物”として “馬”らしく行動させることが重要であると考えているからです。競走馬を取り扱う上で忘れてはならないことは、馬は“草食動物”であるということを理解することだと考えています。

Photo_5写真4.“我こそは”と自らの強さをアピールするフラワーパフュームの14(牡 父:シンボリクリスエス)

欧州では調教後に、ハミを装着したまま、放牧地の草を食べさせることも珍しくはありません。青草だけを食べさせる目的であれば、刈り取った青草を馬房で食べさせれば良いようにも思われます。しかし、地面に生えている草を摘んで食する行動そのものによって、“草食動物”としての本能が惹起され、メンタル面を安定させる効果が期待されます。

このように、欧州では、馬は“草食動物”であるということを常に念頭に置いて、馬と接しているように感じられます。私達もこの意識を忘れることなく、来年4月のブリーズアップセールまで馴致および調教を行っていきたいと考えております。

育成馬ブログ 宮崎⑧

調教後の乳酸値の測定(宮崎)

 宮崎では3月22日に桜の開花が発表され、それ以降は宮崎らしい快晴の日々が続き、少し体を動かすと汗をかいてしまうほどの暖かい日が多くなってきており、まさに春爛漫といったところです。

 そろそろ桜の見ごろも過ぎ去る頃ではありますが、ブリーズアップセール上場のために、まもなく宮崎を離れる育成馬とともに宮崎のベストシーズンともいわれている「短い春」を過ごしています。

                       

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写真① 桜の木をバックに500m馬場でのウォーミングアップを実施する育成馬。

 

 

育成馬を知ろう会

 ここからは、3月30日~31日の2日間に渡って開催いたしました「育成馬を知ろう会」についてご紹介いたします。この企画は比較的馬主歴の浅いJRAの馬主の皆様に対して、「馬の見方」、「セリにおけるレポジトリーの見方」などの講義、あるいは「調教師と交流」を趣旨に、JRA馬事部生産育成対策室および当場が主催する形で実施いたしました。

 初日は「馬の見方」の講義の後に、実際に乗馬を教材にして馬のコンフォメーションに関する理解を深めていただきました。続いて、その知識を基にブリーズアップセール上場予定馬をご覧いただきました。また、初日の日程終了後には、参加していただきました調教師との意見交換会が開催されました。

 

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写真② 「育成馬を知ろう会」の初日は、実際に乗馬を教材にして「コンフォメーション」の理解を深めていただきました。

 

 

 2日目は、小雨の降る中、ブリーズアップセールに向けての最終段階の育成馬のスピード調教をご覧いただきました。また、調教の合間には、「セリにおけるレポジトリーの見方」の講義の後に、実際に乗馬の内視鏡検査をご覧いただき、競走馬の「喉(ノド)」の疾病に関する理解を深めていただきました。

 ご多忙中にもかかわらず、今回参加していただきました皆様方には、この場をお借りしてお礼申し上げます。


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写真③ 2日目はBUセール上場予定馬の調教を間近でご覧いただきました。

 

 

調教後の乳酸値の測定

 ここからは、宮崎育成牧場で実施している「調教後の乳酸値の測定」について触れてみたいと思います。

 「乳酸」からは「疲労」という言葉が連想される方が多いのではないでしょうか?運動強度を上げていくと、LT(乳酸性作業閾値)と呼ばれる地点を超える負荷から急速に血中乳酸濃度が高くなります。これは速筋線維が糖を分解することによって乳酸を生成するためであり、またアドレナリンのような糖利用を高めるホルモンが放出されるためであるといわれています。

 トレーニングが進むと同じ運動強度でも、乳酸濃度が上がらなくなります。この理由は、有酸素運動能が上がり、同じ運動強度でも糖を利用する無酸素性エネルギーを利用しないで走行できるようになるためです。さらに、乳酸値の測定は、コンディション判定のツールとしても利用されています。同じ負荷をかけているにもかかわらず、乳酸値が高い場合には、コンディションが良くない状態であることが推測されます。

 育成馬のスピード調教後の乳酸値を測定していると、乳酸値と馬の走行や息遣い等の状態とが一致しない場合が少なからずあります。つまり、単純に「乳酸値が高い」=「過負荷」と結びつけることができないように感じられます。

 スポーツ選手においては、乳酸を多く出せるということは、それだけ筋肉が糖を利用して、エネルギーを作り出す能力が高い、つまり絶対的なスピードに優れているとも考えられています。この考え方は育成馬にも当てはまるような気がします。そしてトレーニングとは、蓄積した乳酸を再びエネルギーとして利用できる「乳酸処理能」を高める、あるいは乳酸が溜まった状態でもさらに運動を継続できる「耐乳酸能」を高めることであるように思われます。前者は長距離馬に、後者は短距離馬に必要な要素ではないかと想像しています。

 そのためにも、育成期の馬においては、まず乳酸を産生できる状態を作ることがトレーニングの第一歩なのではないかと考えています。昔から「ハロン15‐15」と呼ばれる調教がひとつの目安とされてきたのは、「ハロン15‐15」の負荷が乳酸を産生できるステージであることを先人の方々は経験的に理解していたからであると想像されます。

宮崎育成牧場「育成馬展示会」のお知らせ

 宮崎育成牧場では、ブリーズアップセールに先立ちまして、本年も4月6日(月)に「育成馬展示会」を開催いたします。なお、本年も朝10時開始となりますこと併せてお知らせいたします。以下に簡単な当日のスケジュールをお示しいたします。

10:10 ~ 比較展示

11:10 ~ 騎乗供覧

 皆様方のご来場を心よりお待ちしております。

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写真④ 昨年の展示会の調教供覧の様子。左:デイドリーム号(2014年2回小倉 芝1200m 2歳新馬優勝 父:アドマイヤムーン 母:シルクヴィーナス)、右:ノーブルルージュ号(2014年3回阪神 芝1400m 2歳新馬優勝 父:ショウナンカンプ 母:スプラッシュビート)