育成馬ブログ 宮崎⑦

○強調教後の乳酸値測定(宮崎)

 

3月に入り、まだまだ朝は肌寒く感じる日もありますが、

日中は春を感じる日が多くなってきた宮崎です。

 

さて、3月は卒業式など別れの季節というイメージがありますが、

JRAでも人事異動が行われ、スタッフの入れ替えが行われました。

宮崎から北海道に旅立つ者、一方、北海道から宮崎に赴任する者もおり、

それぞれ新しい職場での活躍が期待されます。

 

新しいメンバーも加わりました宮崎育成牧場ですが、

これまで同様に、スタッフ一丸となって育成馬の管理に励んでいきたいと思います。

 

季節の変化に敏感な育成馬達は毛艶に輝きが増し、

調教中の動きも俊敏さが目立つようになってきており、

我々以上に春の訪れを喜んでいるかのように映ります。

 

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写真① 調教後、牡はサンシャインパドック(左)、牝は放牧地(右)に放牧しています。

牝の放牧地では青草が生い茂ってきており、春を感じさせます。

 

 

育成馬の近況

 

さて、宮崎育成牧場のJRA育成馬22頭は、

4月26日(火)にJRA中山競馬場で開催されるブリーズアップセールに向けて

調教メニューをこなしています。

 

500mトラック馬場では、速歩2周の後、直線はキャンター、

コーナーは速歩という調教を左右両手前で2周ずつ実施しています。

 

500mトラック馬場での調教は、

ウォーミングアップとしての目的があることはもちろん、

スピード調教を繰り返していくと、

ハミにかかる傾向が強くなるのを改善する目的もあるため、

ハミを必要以上に取らずに、

馬自身のバランスで走行させることを主眼に置いて実施しています。

 

一方、調教のベースとなる1600m馬場では、

4頭単位の1列縦隊で

ハロン22~20秒のイーブンペースでの

2400~3000mのステディキャンターを基本調教としています。

 

週1~2回のスピード調教では、

1200mを2本走行させるインターバルトレーニングを実施し、

2本目に3ハロンを45~48秒(ハロン15~16秒)程度で走行しています。

 


YouTube: 【動画】15 16育成馬日誌宮崎⑦

動画 2月下旬の調教動画。

   

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写真② 週1回実施している牡馬の強調教時の様子。

内:上場番号13番フラワーパフュームの14(牡 父:シンボリクリスエス)、

外:上場番号62番エイシンブランディの14(牡 父:ヴァーミリアン)。

 

強調教後の乳酸値測定

 

ここからは、宮崎育成牧場で実施している

「強調教後の乳酸値測定」について触れてみたいと思います。

 

乳酸値は運動強度(速度、距離あるいは運動持続時間など)を上げていくと、

上昇していきます。

これは

「速筋線維が糖を分解することによって乳酸を生成するためであり、

またアドレナリンのような糖利用を高めるホルモンが放出されるため」

といわれています。

 

一方、乳酸値は最初から直線的に上昇するのではなく、

ある運動強度を超えた時点(LT:乳酸性作業閾値)から急速に上昇していきます。

これは

「運動時の酸素需要量と供給量のバランスが維持されていれば

乳酸は蓄積されず、需要供給のバランスが崩れると上昇していく」

という性質によるものです。

 

調教が進むと同じ運動強度でも、乳酸値が上昇しなくなります。

この理由は、有酸素運動能が高まり、

同じ運動強度でも糖を利用する無酸素性エネルギーを利用しないで

走行できるようになるためです。

 

「乳酸」という言葉から「疲労物質」という言葉を連想する方が多いと思われます。

つまり、単純に「乳酸値が高い」=「過負荷」と結びつけてしまう傾向があります。

 

この考え方は正しいと思われる反面、

アスリートにおいては、乳酸を多く出せるということは、

それだけ筋肉が糖を利用して、エネルギーを作り出す能力が高い、

つまり絶対的なスピードに優れているという見方もあるようです。

 

過去の育成馬の乳酸値と競走成績を照らし合わせてみると、

この考え方は競走馬にも当てはまるように思われます。

つまり、育成期においては、まず乳酸を多く産生できる負荷をかけること、

すなわち、筋肉に糖を最大限に利用させることが

トレーニングの第一歩であると考えられます。

 

その後、さらに調教が進むと、同じ負荷をかけた場合には、

長距離競走に適した馬では、乳酸値の上昇は抑えられるのに対して、

短距離競走に適した馬では、乳酸値が上昇しやすい傾向があります。

 

これらのことは、

長距離適性の高い馬は、蓄積した乳酸を再びエネルギーとして利用できる

「乳酸処理能」

を高めることができる能力がある一方で、

短距離適性の高い馬は乳酸が溜まった状態でもさらに運動を継続できる

「耐乳酸能」

を高めることができる能力があると考えられるのではないかと思われます。

 

乳酸値の測定など、科学的指標に頼ることによって客観性は高まる一方で、

データへの興味が高まることによって

機械的に調教メニューを立ててしまう状況に陥りやすく、

馬の状態を省みない状況を生み出す過ちを犯しがちになります。

そのため、常に走行時や走行後の息遣いのみならず、

特に牝馬ではメンタル面を確認しながら、

各馬に応じた負荷をかけるよう慎重に検討しております。

 

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写真③ 乳酸値測定に使用している簡易キッド(ラクテート・プロ2:アークレイ社製)。

本体価格は約6万円、1回の測定にかかる経費は約220円です。

育成馬ブログ 日高⑥

○  春近し!(日高)

 

バレンタインデーの2月14日、関東地方をはじめ日本各地で春一番が吹きました。

 

先日発表された3カ月予報でも3月からの気温は平年よりも高い予報となっており、

3月に入ると一気に春の気候に切り替わりそうです。

 

JRA日高育成牧場のある浦河町でも気温が上昇する日が増え、

近隣中学校の校庭に作られたスケートリンクの氷も解けてしまいました。

待ちに待った春は、すぐそこまで来ています。

 

 

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写真1. 中学校の校庭に水をまいて作ったスケートリンク。

学校の授業でも活躍したリンクですが現在は氷が解けて滑れなくなってしまいました。

  

 

育成馬の調教状況

 

まずはJRA育成馬の調教状況についてお伝えします。

調教メニューは前回の同ブログから変わっておらず、

毎週2回(火曜日・金曜日)の坂路調教を実施しています。

 

坂路調教を行う日はまず、

屋内800mトラックでハッキング(キャンター2周)を行ってから、

坂路2本(縦列、3ハロン54~51秒程度)を駆けあがっています。

 

現時点の坂路調教では過剰にスピードを求めず、きれいな隊列のなかで

正しい走行フォームで走ることに重点を置いています。

 

とはいえ3ハロン51秒程度の登坂では息遣いや馬の表情、

さらには体力測定のために行っている乳酸値測定や心拍数の検査で

「余裕がある」と感じられる馬が増えてきたことから、

スピード調教に移行しても耐えられるだけの体力が備わってきたと考えています。

 

3月中旬を目処に坂路での併走調教を開始し、

徐々に馬の「走りたい気持ち」を膨らませる調教にシフトしていきます。

 


YouTube: 屋内1000m坂路馬場での調教風景

動画1.屋内1000m坂路コースでの調教。

先頭を走るのはイフリータ14(父:ケイムホーム)。

2本走行した後にも、全馬余裕たっぷりでした。

 

  

競馬学校騎手課程生徒の研修を行いました

 

先日、競馬学校から騎手課程第33期生が来場して生産地研修を実施しました。

 

この研修では生産牧場やスタリオンの見学なども行いますが、

メインは普段騎乗することのない若馬(JRA育成馬)の調教騎乗です。

 

彼らは競馬学校での基礎課程を修了してトレセンでの実践課程に進んでおり、

馬産地日高で毎年行われるこの研修で

若馬の騎乗方法や競走馬との違いなどを勉強します。

 

3日間の研修で10数頭の育成馬に騎乗し、

多くのことを感じてもらえたのではないかと思っています。

 

研修を通して生産・育成の現場で馬に携わる人々から直接話を聞くことで、

将来レースで騎乗するサラブレッドが背負っている

“様々な人の思い”を感じてもらうことができたと思います。

 

研修で学んだことを活かし、

競馬ファンの皆様や牧場関係者に愛される立派な騎手に育ってほしいです。

 


YouTube: 屋内800mトラックで育成馬に騎乗する騎手課程生徒

動画2.屋内800mトラックで育成馬に騎乗する騎手課程生徒(赤白の染め分け帽)。

前列左からフラワーロック14(父:キングズベスト)

サンセットロード14(父:ロージズインメイ)

後列左からタヒチアンメモリ14(父:フリオーソ)

ダノンスズラン14(父:ステイゴールド)

ナイキトライアンフ14(父:アルデバラン)

   

春が近づくにつれ、育成馬達もぐんと成長して良くなってくるこの季節。

日高育成牧場では購買関係者や生産牧場の皆様のご来場をお待ちしております。

是非お気軽に当牧場へお越しください!

育成馬ブログ 生産編⑥

●馬鼻肺炎の流産が多発しています!!

 

軽種馬防疫協議会の報告によると、

日高地方において馬鼻肺炎ウイルス(以下EHV-1)に起因した流産が

12 戸29 症例(2 月12 日現在)発生しており、

過去最高の流産頭数を示した2013-14 年シーズンに並ぶ発生頭数となっています。

 

特に同一牧場で複数が流産する「続発例」が多く見られ、

これも2013-14 年と同様の特徴を示しているようです。

 

http://keibokyo.com/wp-content/uploads/2016/02/16

軽防協ニュース号外【馬鼻肺炎】.pdf

  

1ehv

EHV-1ウイルスは、妊娠末期の流産および生後直死を引き起こす。

  

馬鼻肺炎の流産を発症させるEHV-1ウイルスは、

馬に一度感染すると、その体内に一生潜伏し、潜伏ウイルス保有馬になります。

 

そして何らかのタイミングで突然再活性化し、妊娠馬であれば流産を引き起こします。

また、再活性化した馬は感染源となり、ウイルスを周囲の馬に拡散します。

 

一度感染すると一生保有すること、潜伏したウイルスを死滅させる治療法がないこと

などの理由から、EHV-1ウイルスは撲滅困難なことで知られています。

 

2ehv

  

予防措置として、

 

「予防接種」「妊娠馬の隔離」「妊娠馬のストレスの軽減」「消毒」

 

などがあげられますが、

上記のようなウイルス特性から推察するに、

パーフェクトに予防することもやはり困難です。

 

このため、発生した場合を想定した「続発防止措置」が、

予防策と同等かそれ以上に重要といえます。

  

 

●流産が発生したら!!2つのT

 

EHV-1による流産は、

妊娠9ヶ月、時期としては2~3月に多発することが知られています。

 

このため、特にこの時期に流産もしくは生後1~2日後に子馬が死亡した場合には、

EHV-1感染を想定した「続発防止措置」が必要となります。

 

なお、流産がEHV-1によるものかどうかは、

家畜保健衛生所で検査を受けなければ確認することができませんので、

検査結果が判明するまでは、EHV-1感染に対する措置を講ずる必要があります。

 

続発防止措置には、2つのT、「徹底消毒」と「単独隔離」が重要となります。

 

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●「徹底消毒」

 

流産を発見したら、徹底的に消毒しましょう。 

流産胎子、羊水、胎盤には多量のウイルスが含まれています。

 

また、母馬からも多くのウイルスが排出されます。

このため、胎子や胎盤はもちろんのこと、寝藁や馬房壁、

母馬の馬体も消毒液を用いて消毒します。

 

この場合には、金属腐食性がなく、生体にも比較的安全とされる

コマやクリアキルなどの逆性せっけんの使用が推奨されます。

 

また、低温では消毒液の効果が低下するため、

温かいお湯で希釈した消毒液を大量に用いて徹底的に消毒します。

  

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「徹底消毒」胎子、胎盤、寝藁、馬房壁、母馬の馬体を消毒

  

 

なお、消毒後の胎子は、液漏れしないように密封したビニール袋等に入れて、

最寄りの家畜保健衛生所に搬入し検査を受けます。

また、消毒後の寝藁は焼却処理することが推奨されます。

 

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消毒後の胎子は密封したビニール袋に入れて家畜保健衛生所へ搬入する。

寝藁は焼却する。

 

 

 

●「単独隔離」

 

流産をおこした母馬は、ウイルスの感染源になるため、

他の妊娠馬への継続発生を防止するために、

牧場内の他の厩舎へ隔離する必要があります。

 

この際、他の馬がいる厩舎に隔離した場合、

それらに感染し、牧場全体の被害を拡大させる可能性がありますので、

出来るだけ単独隔離が可能な厩舎への移動が推奨されます。

 

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流産した母馬は、単独隔離する。

  

  

また、流産発生に備えて、消毒薬やバケツ・じょうろなどの必要品の準備に加えて、

事前に母馬の隔離場所などを決めるなどの行動計画を作成し、

厩舎スタッフで共有することも重要な続発防止措置であるといえます。

  

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。

当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。

皆様からいただきましたご意見は、

JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

育成馬ブログ 日高⑤

○  育成馬の体力測定(日高)

 

 前回お伝えしたとおり、暖冬の影響で日高育成牧場の育成馬59頭は

比較的過ごしやすい日々を送っています。

 朝夕の気温は氷点下10度を下回るものの、降雪があっても昼間に気温が

あがるため根雪にならずに溶けてしまいます。

 坂路馬場までのアクセス路確保に心配することのない恵まれた環境の中、

育成馬達の心身を鍛錬する日々が続いています。

  

育成馬の調教状況

 

 まずはJRA育成馬の調教状況についてお伝えします。日高では育成馬59頭を

出生時期や成長度合い、馬格や血統等を参考に3群にわけて騎乗馴致を開始し、

群ごとに運動メニューを作成して調教を進めてきました。しかし1月中旬には

最後に馴致を開始した3群の馬達にも基礎体力がつき、同じ調教メニューが

こなせるようになったため、全馬が同じ調教メニューをこなしています。

 現在は屋内800mトラックにおいて縦列のキャンター(1周:ハロン22秒程度)を

行った後、手前を変えて2or3列縦隊でのキャンター(2周:ハロン20秒程度)を行う

メニューをベースにしています。強い負荷を課す坂路調教は毎週火曜日・金曜日に

実施しており、屋内800mトラックでハッキング(キャンター2周)を行ってから坂路2本

(縦列、3ハロン54秒程度)を駆けあがります。

 体力のついた若馬は坂路で速く走りたがりますが、今はあえてスピードを求めず、

きれいな隊列で距離を詰め、正しい走行フォームで走ることに主眼を置いています。

全身を使って後躯をきちんと踏みこませた走りを教えることが現時点の課題だと考え

ています。

 また、休み明けの月曜日と坂路翌日にあたる水曜日・土曜日には800m屋内

トラックで「リラックス」させることに主眼を置いた調教を、木曜日にはスタミナ強化を

目指して普段より少し長い距離を乗る調教を行っています。

 このように1週間の調教メニューをパターン化することで、育成馬に「オン」と「オフ」を

理解させ、日々の調教にメリハリをつけられるように心がけています。

 

 


YouTube: 屋内1000m坂路コースでの調教風景

動画1.屋内1000m坂路コースでの調教 

先頭からグレインラインの14(父:エンパイアメーカー)、

シルクハリウッドの14(父:タニノギムレット)、

クイーンマーメイドの14(父:トビーズコーナー)

  

 

育成馬の体力測定

 

 現在、育成馬の体力測定として毎週金曜日の坂路調教後に『乳酸値測定』を

行っています。これは坂路調教直後に採血を行い、血液中の乳酸値を測定して

馬個別のトレーニング効果を判断するものです。

 調教後の息遣いや騎乗者の感触などの感覚的なデータと乳酸値という科学的

データをあわせることで、各馬の現在の状態を判断しています。

 これと別に行っている体力測定に「V200値測定」があり、これは群全体のトレーニン

グ効果を見る検査として利用しています。「V200値」は心拍数が200拍/分に達した

時の走行速度を意味しており、競走馬でもこのV200値やVHRmax(最大心拍数に

達したときの走行速度)を測定して体力・持久力評価に用いています。

 日高育成牧場では17年前から2月と4月にV200値の測定を行っています。

毎年同時期に同じ馬場で測定するこのデータは、その世代の調教効果を過去と

比較する際に有用です。

 乳酸値測定は馬個別の体力変化を調べるために、V200値測定は“調教群”として

トレーニング効果が期待どおり得られているか判断するために使っています。

 

V200_2                       

写真1.V200測定を行う育成馬。最後の直線はハロン17秒で駈け抜けます。

 

 

 今年は2月3日に牡(24頭)、2月4日に牝(23頭)のV200値測定を実施しました。

全測定馬の平均値は631.7 m/min(牡平均:629.8、牝平均:633.7)であり、

今年の群は過去10年の2月平均のなかで最も高い値を示しました。

 このことから、現時点では調教負荷が適切にかかり、有酸素能が高められていると

考えられます。次回の検査は4月に行う予定なので、結果が出たら同ブログ内で

報告しようと思います。

 

  

 

 

セリ名簿用写真撮影を始めました

 

 4月26日に開催されるJRAブリーズアップセールに向けた準備を少しずつ始めて

います。その1つとして、例年より半月ほど早い2月初旬から写真撮影も開始しまし

た。これは今年のセリ名簿にはブラックタイプに加え、直近の育成馬写真も掲載する

ことが決まっているためです。撮影開始から2分とかからずに終わる馬もいれば、

いつまでも落ち着かず時間のかかる馬もいますが、現在のところ撮影は順調に

進んでいます。

 

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写真2.写真撮影を行うエブリシング14(牝、父:サマーバード、BU番号:50)。

  

 毎年のことですが、育成馬の写真撮影を始めるとセールが近づいてきたと感じます。

我々JRA職員が育成馬に手をかけられる時間はセールまでの残りわずかな時間で

す。この限られた時間を有効に使い、競走馬としてデビューしてから後悔しないよう、

スタッフ一丸となって日々の管理にあたろうと思います。

育成馬ブログ 生産編⑤「その2」

・SUKOYAKA馬体

 SUKOYAKA馬体は、

子馬や繁殖牝馬の個体情報を記録し、管理するためのソフトです。

 定期的に測定した馬体重を入力すると、自動的にグラフ化してくれます。

また、子馬については、標準曲線と比較することもできます。

 

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SUKOYAKA馬体 

測定体重の入力により、標準曲線と比較したグラフを作成することができる。

 

 標準曲線は、日高管内の30牧場の約2,400頭の子馬の馬体重データ4万点を

別・生まれ月ごとに分けた平均値をもとに作成したものです。

 

 この標準曲線と登録馬のデータを比較することで、

子馬が順調に成長しているかうかを確認することができます。

 

 ただし、「標準曲線はあくまで目安である」ということを念頭に置いて利用して下さい。

 

すなわち、

標準曲線を「上回ったら、飼料を減らす」、「下回ったら、飼料を増やす」

など機械的に利用するのではなく、

あくまで、実際の馬を観察したうえで、

BCS、体高、胸囲、管囲、疾病の有無、放牧草の状態などの情報と併せて

飼養管理に活用するとが合理的です。

 

 

1標準曲線との比較は馬の成長把握の1つの材料

 

 また、子馬および繁殖牝馬の様々なデータ蓄積は、生産牧場における

適切な飼養管理、もしくは管理方法の改善に大きく寄与します。

 

 ビジネスの世界で使われているPDCAサイクル、

つまり  Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)

4段階を繰り返すことにより業務を継続的に改善する手法は、

生産牧場でも活用することができます。

 

PdcaSUKOYAKAを活用した牧場におけるPDCAサイクル

  

 この場合、正しくCheck(評価)するためには、「事実の正しい認識」が重要です。

つまり、「曖昧な主観的感覚」ではなく、「客観的なデータ」の検証が必要になります。

 SUKOYAKA馬体は、馬体重だけではなく、

体高などの測尺値やBCS、出産、病気、離乳などの様々なイベント、

給与飼料や病名などの必要に応じたコメントを入力し、

データとして蓄積することができます。

 

Photo_5馬体重以外にも、測尺値やBCS、必要に応じたコメントの入力が可能

 

 

Photo_6

イベントやコメントなどはグラフにも反映される。

 

 これらの蓄積データを活用することにより、

過去に実施した飼養管理方法の評価「振り返り」が可能となり、

適切な改善へとつながります。

    

     

「振り返り」の具体例としては、

 

「昨年の世代と比較して、今年の1歳馬は骨疾患が多い。

昨年と今年の馬体成長や BCSに違いはあるだろうか?」

 

「今年の1歳馬は冬期のBCS保持が困難だった。

離乳期の馬体重やBCSは 問題なかっただろうか?」

 

「今年は繁殖牝馬の受胎成績が良くなかった。

成績が良かった昨年の馬体重や BCSと比較してみよう」

 

などがあげられます。

 

 このようなデータを活用した評価をすることで、

具体的な改善策が浮かび易くなりす。

また、栄養指導者などの第三者に相談する場合でも、

過去の蓄積データを示すことで、より適切な解決策の発見につながります。

 

是非、軽種馬牧場管理ソフト「SUKOYAKA」をご活用ください!!

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。

当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。

皆様からいただきましたご意見は、

JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

 

育成馬ブログ 生産編⑤「その1」

・栄養管理・馬体情報管理ソフト「SUKOYAKA」がリリースされました!

 

JBBAから軽種馬牧場管理ソフト「SUKOYAKA」がリリースされました。

SUKOYAKAは、軽種馬の栄養管理と馬体情報管理をサポートするソフトで、

JBBA日本軽種馬協会のウエブサイトからダウンロード(無料)できます。

(こちらからダウンロードできますhttp://jbba.jp/assist/sukoyaka/index.html

 

 当ソフトは、「SUKOYAKA栄養」と「SUKOYAKA馬体」の二つで構成されています。

 

Jbba

JBBA日本軽種馬協会のウエブサイトから、ソフトをダウンロード

 

 

・SUKOYAKA栄養

SUKOYAKA栄養は、各馬のステージにあった養分要求量を計算し、

現在与えている飼料の充足率を確認することができるソフトです。

 

簡単に言うと、

子馬であれば

「今与えているエサもしくは新たに導入しようとしているエサを与えることによって、

 病気にならずに適切な成長ができるか」

妊娠馬であれば、

「母体も健康で、健康な子馬を出産することができるかどうか」

「それらのエサをどのくらい与えればよいのか」

これらを判断するうえでの目安を提示してくれるものです。

 

Sukoyaka

SUKOYAKA栄養

 

では、具体的な飼料設計の例を見ていきましょう。

 

11_2

ここでは22時間放牧の昼夜放牧をしている1歳馬(9ヶ月齢 馬体重350kg)の

飼料を考えてみます。

 

この時期、北海道では積雪があるため、

放牧草からの栄養摂取は考慮しないこととします。

(実際には積雪量によっては雪の下にある青草を食べますが)

 

まず、エンバク(カナダ産)とルーサン乾草で設計してみます。

 

3kg5kg

この場合、SUKOYAKA栄養で計算すると、

DE(エネルギー)とCP(タンパク質)は充足していることが確認できます(図1)。

 

Decp 

DE(エネルギー)とCP(タンパク質)の充足率(図1)

 

 一方、銅や亜鉛など、欠乏症により子馬の骨軟骨症(成長過程における

軟骨の骨化不良により引き起こされる骨端炎、OCD、ボーンシストなどの総称)が

引き起こされるミネラル類については、充足率が14~15%であり、

明らかに不足していることが分かります(図2)。

 

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銅や亜鉛などミネラルの充足率(図2)

 

では以下のようにエンバクの一部をバランサータイプの飼料に置き換えてみましょう。

 

Photo_2

エンバク3kgを2kgに減らし、代わりにバランサータイプ飼料1kgを与えます。

 

これにより、濃厚飼料を増やすことなく、

銅や亜鉛などのミネラルも充足することができました(図3)。

 

Photo_3

 バランサータイプの飼料を利用した場合の充足率(図3)

 

 ただし、エネルギー、タンパク質、ミネラルおよびビタミンの充足率が

すべて100%以上であれば良いかといえば、決してそうではなく、

あくまで計算上の目安でしかありません。

 

 子馬の馬体成長や疾病発症に影響を及ぼす要因としては、

飼料から摂取する栄養以外に、遺伝や環境(気候など)なども無視できません。

 あくまで算出された値を目安として、個体ごとの健康状態や発育の程度、

疾病の有無などを把握しながらの飼料調整が必要となります。

 

 このため、定期的な馬体重や体高などの測定、

BCSや疾患の有無を確認するための馬体検査などの実施が推奨されます。

 

Bcs

 飼料設計には馬体重やBCSの測定による成長度合いの把握が必要

 

 これらの体重測定や馬体検査で得られたデータは、

その都度の飼料設計に利用できるだけではなく、

継続的に複数年(複数世代)のデータを蓄積していくことで、

飼養管理方法の改善にもつなげることができます。

これをサポートするツールが「SUKOYAKA馬体」です。

 

つづく

育成馬ブログ 日高④

○  本年もよろしくお願いします!(日高)

 日高から本年最初の投稿となります。昨年に引き続き、JRA育成馬ブログをよろしく

お願いします。例年1月には育成牧場全域が雪に覆われ一面銀世界となりますが、

今年は暖冬の影響で雪も少なく、比較的過ごしやすい冬となっています。

年末年始に短期間の放牧休養を挟み、リフレッシュした育成馬達は元気に調教を

再開しています。

 

育成馬の調教状況

 まずはJRA育成馬の調教状況についてお伝えします。

第1群(牡23頭)は、屋内800mトラックをキャンター1周(縦列:ハロン22秒程度)

した後、手前を変えてキャンター2周(2 or 3列縦隊:ハロン20秒程度)する調教を

こなしています。スタミナがついて速く走りたがる馬も増えてきましたが、行きたい

気持ちを我慢させて前後左右の間隔を詰め、競馬を意識した調教を目指しています。

12月からは屋内坂路馬場で週2回(火曜・金曜)の調教も開始しました。1月初旬

現在、坂路調教日には屋内800mトラックでウォーミングアップ(キャンター2周)を

してから、1000m坂路を1本(3ハロン54秒程度)駆けあがっています。


YouTube: 第1群(牡)の坂路調教

 

動画1.第1群の坂路映像。先頭からハンプトンコート14(父:バゴ)、

カネマサバレリーナ14(父:スマートファルコン)、

シルクハリウッド14(父:タニノギムレット)、

グレインライン14(父:エンパイアメーカー)、

ウエスティンタイム14(父:スズカマンボ)。

 

 1群より3週間遅く坂路調教を開始した第2群(牝21頭)もしっかり体力をつけ、

現在は1群と同内容の調教がこなせています。牝馬は牡馬より真面目で頑張り

過ぎてしまうことが多いので、オーバーワークにならないよう気をつけて調教して

います。


YouTube: 第2群(牝)の坂路調教

 

動画2.第2群の坂路映像。先頭からフラワーロック14(父:キングズベスト)、

オーブシュプレーム14(父:デュランダル)、タヒチアンメモリ14(父:フリオーソ)、

ダノンスズラン14(父:ステイゴールド)、サンセットロード14(父:ロージズインメイ)、

フェルガーナ14(父:サマーバード)。

 

 最後に馴致を開始した第3群(牡7頭、牝8頭)も12月末から坂路調教を開始しま

した。現在は1・2群と合流して、同じメニューをこなすべく基礎体力強化に努めて

います。

 


YouTube: 第3群(牝)の坂路調教

 

動画3.第3群(牝馬)の坂路映像。先頭からイフリータ14(父:ケイムホーム)、

アンプリペアード14(父:カネヒキリ)、バクシンスクリーン14(父:アルデバラン)、

ペパーミントグラス14(父:ペパーミントグラス)。

 

騎乗者目線の映像(坂路)

 ここで、JRA育成馬の利用している屋内1,000m坂路馬場についてご紹介します。

BTC屋内坂路馬場は全長1,000mの屋根付き馬場で、スタートして300mは

平坦コース、その後右にカーブしてから徐々に傾斜角度があがっていきます。

調教スピード(ハロンタイム)はスタート後150m地点からの600m(3ハロン)が

計測されます。

           

Photo 図.坂路模式図 

 

 全長1,000m、幅員10m、最大斜度5.5%のこの施設を騎乗者目線で撮影して

みました。撮影に使用したのはGo Pro Hero4という小型カメラです。装着しても

調教への支障はありません。

Photo_2

写真1.ヘッドライトのようにヘルメットに装着した小型カメラ

 


YouTube: 動画4騎乗者目線の調教映像

  

動画4.騎乗者目線での坂路調教映像。

 

 監視室のモニターではわからない、調教中の他馬の動きや騎乗馬の息遣いが

ダイレクトに伝わるこの映像技術を育成馬の調教に活用できないか、現在模索して

いるところです。

 

BTC 33期研修生の騎乗研修について

 1月13日からBTC研修生の騎乗研修を開始しました。この研修、研修生にとっては

9月・10月に馴致実習で触れ合ったJRA育成馬との2か月振りの再会であり、

はじめて若馬に騎乗する機会でもあります。久しぶりに再開した研修生たちは、

JRA育成馬の成長ぶりに驚いていました。4月11日(月)の育成馬展示会までという

短い研修期間ではありますが、彼らが育成牧場の最前線で働く際に役立つような

経験ができるよう、しっかりサポートしたいと思います。

Btc

写真2.BTC研修生の騎乗研修風景(向かって右側の騎乗者がBTC研修生)。

 

騎馬参拝に参加しました

 最後のトピックスは騎馬参拝です。騎馬参拝は明治43年、浦河町に旧農林水産省

日高種畜牧場が開設されて以来続く伝統行事で、今年107回目を迎えました。

人馬の無病息災を祈願し、馬に乗って西舎神社に御参りするという、馬産地浦河

ならではの一大イベントです。今年は過去に殆ど例のない雨天での開催となりました

が、当場の乗馬5頭も参加して人馬の安全祈願を行いました。

Photo_3

写真3.騎馬参拝。ちびっ子ライダーもそろいのハッピで参拝しました。

 

 日高育成牧場ではいつでも皆様のお越しをお待ちしています。是非育成馬の成長を

見にお越しください。

育成馬ブログ 生産編④

・強い馬づくりのための生産育成技術講座2015 

 ~移行免疫不全症に関するお問い合わせ~

 

 去る11月19および20日の両日に「強い馬づくりのための生産育成技術講座

2015」が浦河町および日高町門別で開催されました。

 

 各会場では以下の講演が行われ、浦河103名、門別206名の多くの皆様方に

ご参加いただき、盛況のうちに終了しました。

 

『分娩日の予測法 -乳汁のpH・Brix測定について-』

『子馬の飼養管理 -生後から2ヶ月齢-』

『BTC屋内坂路馬場の運動負荷について -美浦トレセン坂路馬場との比較-』

(※浦河会場のみ)

『ローソニア感染症対策』(※門別会場のみ)

 

 講演では質疑応答が活発に行われましたが、当日のみならず終了後も複数の方

から「移行免疫不全症」についてのお問い合わせをいただきましたので、回答を

含めてご紹介します。

 

1

講演会の様子(門別会場)

 

 

Q.移行免疫不全症の検査は、獣医師でなければ出来ないのでしょうか?

 

A.子馬の血中IgG濃度を測定するため、採血が必要になりますので、獣医師による

検査となります。ただし、獣医師以外でも可能な方法もありますので、ご紹介します。

 

 正確な検査ではありませんが、哺乳前後のBRIX値を比較することで、移行免疫

不全症かどうかの推定が可能です。

 

①哺乳前の初乳のBrix値を事前に測定し、出産10~12時間後のBrix値を再測定

して比較する。

 

②その数値の差が10以上であれば、子馬は十分量の初乳を摂取し、満足できる移行

疫を獲得したと推定できる。

 

③一方、Brix値の差が10未満の場合、子馬は十分量の初乳を摂取しておらず、

移行免疫不全の状態にあると推定できる。

 

例えば、哺乳前のBRIX値が25%の場合、

12時間後の値が15%以下に下がっていれば十分量の初乳を摂取したこととなり、

16%以上であれば十分量は摂取していないと推定できる。

 

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哺乳前後のBRIX値による移行免疫不全症の推定法

 

 なお、この検査では、保存初乳を採取していないことが条件です。

 採取した場合には利用できません。

 

 また、繰り返すようですが、子馬の血中IgG濃度を正確に計測できる検査ではあり

ません。このため、少なくとも以下の場合には、出産8~12時間後における血液検査

が推奨されます。

 

・出産前に漏乳が認められた(出産時のBRIX値が低い)。

・母馬の乳の出が悪い。

・子馬が初乳を飲めていない。

・フォールリジェクト(育子拒否)。

 

参考文献:Korosue K, Murase H, Sato F, Ishimaru M, Kotoyori Y, Nambo Y. Correlation of serum IgG concentration in foals and refractometry index of the dam's pre- and post-parturient colostrums: an assessment for failure of passive transfer in foals. J Vet Med Sci. 74(11):pp1387-95. (2012)

 

Q.馬の初乳の代替品として、牛の初乳を投与しても効果はあるのか?

 

A.米国のLavoieらが行った調査では、「通常どおり母馬から初乳を摂取した子馬

6頭(対照群)」と、「牛の初乳400mlを2時間間隔で20時間後まで合計4リットルを

投与した子馬6頭(投与群)」を比較したところ、血中IgG値に有意差は認められ

なかったと報告されています。

 ただし、初乳投与後のIgGの半減期(血中濃度が半分になる期間)は、対照群では

26日間であったのに対し、投与群では9日間と約3分の1程度の期間であったことが

確認されています。また、牛の初乳中にも厩舎環境に存在する多くの病原体に対して

の抗体は含まれていますが、馬特有の病原体に対しての抗体は含まれていないこと

も念頭に置く必要があります。

 これらのことから、積極的に推奨することはできませんが、馬の初乳が不足している

際、やむを得ない場合の緊急用として、牛の初乳をストックしておいても良いかもしれ

ません。

 

参考文献:Lavoie JP, Spensley MS, Smith BP, Mihalyi Absorption of bovine colostral immunoglobulins G and M in newborn foals. J.Am J Vet Res. 1989 Sep;50(9):1598-603.

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対する

ご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、

JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

 

育成馬ブログ 日高③

○  厳しい寒さの中で(日高)

  去る11月24日、JRA日高育成牧場のある北海道浦河町では例年より少し遅めの

初雪が観測されました。11月までは気温も少し高めで過ごしやすい日も多かった

今冬ですが、ここにきて寒さが厳しくなってきました。毎日の最低気温は氷点下に

達し、放牧地の水桶は凍りついています。寒さに呼応するように、育成馬たちの調教

メニューはどんどん強度を増していきます。

 

育成馬の近況

 JRA育成馬の近況をお伝えします。9月初旬に馴致を開始した第1群(牡23頭)は

屋内800mトラックで1周+2周の縦列調教(ハロン24-22秒程度、前馬との距離:

1馬身)を繰り返し行い、前後の馬に慣らし真っ直ぐ走る訓練を行ってきました。

11月には屋外1600m馬場での縦列調教(1周:ハロン22秒程度)も併用し、馬場

凍結のため1600m馬場が使えなくなった27日からは屋内坂路馬場でのキャンター

調教を開始しました。屋内坂路馬場で調教する日は屋内800mトラックでキャンター

2周のウォーミングアップをしてから坂路を1本駆けあがります。現在は馬場に慣らす

ことが主目的で、体力がつくのを待って強度をあげていきます。


YouTube: 屋外1600m馬場で駆歩調教を行う第1群の牡馬

 

動画1.屋外1600m馬場で駈歩調教を行う牡馬たち。

先頭からハンプトンコート14(父:バゴ)、パピュラ14(父:サマーバード)、

カネマサバレリーナ14(父:スマートファルコン)、

ゴッドビラブドミー14(父:デュランダル)、クルミ14(父:ストリートセンス)、

シルクアウローラ14(父:ケイムホーム)。

 

 また、10月初旬に馴致を開始した第2群(牝21頭)は現在、屋内800mトラックで

1周+2周の縦列調教(ハロン26-24秒程度、前馬との距離:1馬身)を繰り返し

行っている段階です。当初は落ち着きのない馬や我慢のきかない馬もいましたが、

ここにきて綺麗な隊列で安定した調教ができるようになりました。力強い走りをみせて

くれる馬も増えてきて、日々の成長を肌で感じることができます。まもなく、屋内坂路

馬場での調教を開始する予定です。


YouTube: 屋内800mトラックで駈歩調教を行う第2群の牝馬

 

動画2.屋内800mトラックで駈歩調教を行う牝馬たち。

先頭からタヒチアンメモリ14(父:フリオーソ)、

サンセットロード14(父:ロージズインメイ)、

ハローオンザヒル14(父:ゼンノロブロイ)、フェルガーナ14(父:サマーバード)、

ダノンスズラン14(父:ステイゴールド)。

 

 最後に馴致を開始した第3群(牡7頭、牝8頭)はまもなく馴致を完了できるところまで

きています。現在は屋内800mトラックで行う両手前1周ずつの縦列調教を通して、

現段階の目標と考える①前に(Go forward)、②真っ直ぐ(Go straight)

落ち着いて(Go calmly)走ることを教えています。第3群の15頭は段階的に

無理なく調教強度を増やしていき、年内に1・2群と合流することを目指しています。


YouTube: 屋内800mトラックで駈歩調教を行う第3群

 

動画3.屋内800mトラックで駈歩調教を行う第3群の馬たち。

先頭からトミケンソリッド14(牝、父:アンライバルド)、

誘導馬をおいてリスキーディール14(牡、父:シンボリクリスエス)、

シャトルシャロン14(牡、父:ヨハネスブルグ)、

クィーンマーメイド14(牡、父:トビーズコーナー)、キャリコローズ14(牡、父:パイロ)、

イフリータ14(牝、父:ケイムホーム)

 

育成馬検査を実施しました

 11月25日、26日にJRA馬事部生産育成対策室の職員が来場し、育成馬検査を

行いました。この検査は購買以降の馬体の成長具合や調教進度などを確認する

定期検査で、騎乗馴致が終わる11月下旬と調教が本格化する1月中旬の計2回

実施しています。

Photo

 この検査の主目的は現時点の馬の状態を把握することですが、育成馬と毎日

接している我々が見落としている点や「お客様が来られた時にいつでも対応できる

準備ができているか」を確認することも目的にしています。検査では「馬がよく躾け

られており美しく手入れされ、かつ人馬の一体感を感じさせる展示・引馬(リード)が

行えるか」をみるベストターンドアウト賞の審査も併せて実施しました。審査では、

これまでの騎乗馴致で培ってきた人馬の信頼関係や日頃の手入れ、何より「お客様に

見て頂く」姿勢が試されます。育成馬には「見られる」経験を積み重ねることで落ち

着いた展示ができるようにしつけ、購買関係者の皆様が来場された際に楽しんで馬を

みていただけるよう訓練しています。

  北海道はこれから本格的な冬を迎えます。日々成長していく育成馬の姿を見に、

ぜひ日高育成牧場まで足を運んでください。皆様のお越しをお待ちしております。

育成馬ブログ 生産編③「その4」

子馬の栄養管理 タンパク質④

 

 それでは、「②タンパク質過剰がDODを引き起こす原因である」については事実で

しょうか?

 

 ある調査によると、NRC飼養標準の70%、100%、130%のエネルギーおよび

タンパク質を離乳後の当歳馬に与えた場合、130%のエネルギーを与えた場合に、

最も多くの骨成長異常が認められ、130%のタンパク質を与えた場合にはほとんど、

もしくは全く異常が認められませんでした。

 一方、70%のタンパク質給与の場合には、馬体や骨の成長不良が認められたと

いうことです。

 

 この調査の他にも同様の報告があり、現在では、炭水化物の過剰摂取がDODの

リスクを高め、タンパク質についてはむしろ欠乏した場合にリスクが高まるとの理解が

一般的になっています。

 また、DODの原因としては、これら以外にもカルシウムや銅などのミネラルの欠乏、

遺伝、急成長、外傷など他のリスクファクターの存在も無視できません。

 

 例えば、タンパク質含量15%の飼料で、30%のそれと同量のタンパク質を与える

ためには、後者と比較して倍量を与えることになります。すなわち、エネルギーが倍に

なり、DODのリスクが高まります。このため、タンパク質含量30%の飼料はエネルギ

ー供給を抑制しつつ、十分量かつ良質なタンパク質を与えることができる飼料といえ

ます。もちろん、タンパク質以外にもミネラルやビタミンの必要量が摂取できる配合に

なっていることが条件です。

 

 本年12月に、JBBAから軽種馬栄養計算ソフト「SUKOYAKA」がリリースされます。

「離乳後の子馬には、どのような飼料が適しているのだろうか?」

「妊娠後期の繁殖馬に対してはどのような飼料をどのくらい与えたらよいのだろうか?」

 このような栄養や飼料に関する疑問をお持ちの方にとって、お役に立てる内容に

なっております。どうぞ、ご期待ください。

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JBBA軽種馬栄養計算ソフト「SUKOYAKA」

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対する

ご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、

JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp