育成馬ブログ 生産編②「その3」

実践研修プログラムのご案内(10 月~12 月)

 

JBBA 軽種馬経営高度化指導研修事業の一環として、JRA 日高育成牧場で

実施する「実践研修プログラム」についてご案内いたします。

 

本研修は、これまでの講習会などで行われてきた「講師からの一方通行の情報提供」

ではなく、参加者が主体となって内容を自由に選択できる研修です。

JRA日高育成牧場は、参加者のご要望に最大限お応えする「情報提供」はもとより、

参加者の皆様に充実した「学びの場・機会」を提供していきたいと考えています。

 

この機会に是非、職場の同僚やご近所の牧場のみなさんをお誘いの上でお申込み

下さい。

当場の職員も皆様にお会いし、一緒に馬を見ながらディスカッションできることを

楽しみにしています。

 

実践研修プログラムの主なポイント

 

①少人数(4~6名)での参加が原則

 (2~3名の場合には要相談、他グループとの合同もあり)

②参加者が自由に研修内容を選択できる

③講義・実技・ディスカッションの3部構成

 

期間:10月~12月までの月~金曜

場所: JRA日高育成牧場(現地集合・現地解散となります)

対象: 競走馬の生産・育成に従事している方

 

詳細はこちらをご覧ください。

http://www.jbba.jp/150910.pdf

 

1

2

33

実践研修プログラム(夏期)の様子

 

参加者の声(2015年実践研修プログラム夏期 アンケート回答より)

 

ž   実馬を使った、いつでも質問できる研修でした。貴重な時間が過ごせました。

 

ž   もう少し時間が長いと良い。とても充実した講習会だと思いますので

 今後も参加したい。

 

ž   盛り沢山の内容でとても得した気分です。ひとつひとつ、トップレベルの技術を

 教えていただける貴重な研修でした。

 

ž   馴致の仕方について、どうしてこうするのか説明がわかりやすかった。実際に

 馬を使って説明してもらえることも良い。

 

ž   一緒に参加した他の牧場の方からも色々な意見、体験談が聞けて大変興味

 深かった。

育成馬ブログ 生産編②「その2」

離乳 その2

 

子守役の牝馬の必要性については議論の余地があるかもしれませんが、母馬を

全頭間引いた後の子馬達の落ち着いた様子を見る限りでは、少なからず効果は

あったような気がします。

 

離乳から1週間後、牧柵修理のために重機車両が放牧地内に入ってきたときの

ことです。

 

そわそわして走り周りそうな子馬達をよそに、子守役の牝馬は落ち着いて草を食んで

いました。その後方で戸惑いながらもじっとしている子馬達の様子を見ると、ある程度

の精神的な支えになっているのではないかと感じました。

 

21

工事車両(左奥)に戸惑う様子を見せる子馬達(右馬群)と

落ち着いて草を食む子守役の牝馬(左)

22

同じく戸惑う様子を見せる子馬達(左馬群)と落ち着いて草を食む子守役の牝馬(右)

 

 

8頭の子馬達については、現在使用している放牧地(4ha)から、その2倍の広さに

あたる8haの放牧地に移動させて、伸び伸びと育てていきます。

なお、子守役の牝馬は次の放牧地で子馬達が落ち着いた後に、群から引き離す

予定です。

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対する

ご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、

JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

 

育成馬ブログ 生産編②「その1」

離乳 その1

 

JRA日高育成牧場では、本年生産したホームブレッド8頭の離乳を8月中旬から

9月初旬にかけて段階的に行いました。

 

離乳は例年どおり、段階的に母馬を放牧群から引き離す「間引き法」、事前に性格が

穏やかな牝馬を子守役として群に加える「コンパニオン牝馬の導入」の2つの方法を

用いました。

方法の詳細はこちらをご覧下さい。

https://blog.jra.jp/ikusei/2013/09/4-174b.html

 

本年についても、離乳時の事故など大きなトラブルがなく、例年以上に馬群が

落ち着いていた印象が見受けられました。

  

11

子馬から離される母馬。左後方は落ち着いて草を食べる子馬達。

(撮影 田中哲実氏)

 

12
母馬がいないことに気付いて走り回る子馬達。(撮影 田中哲実氏)

 

13
10分も立たないうちに落ち着きを取り戻し草を食む子馬達。

右から2頭目は子守役の牝馬(撮影 田中哲実氏)

 

この方法を実施するための条件は、母馬を子馬から完全に引き離すことができる

施設があることです。

母子お互いの姿が見えたり、泣き声がそれぞれの耳に届いたりする場所にしか

母馬を移動できない場合には、子馬が柵を飛越するなどの事故のリスクがあるため、

この方法を実施すべきではないでしょう。

また、たとえ母馬ではなくても隣接する放牧地に他の馬がいる場合には、

事故のリスクは避けられないため注意が必要です。

 

つづく

 

育成馬ブログ 日高①

○  サマーセールでの育成馬購買(日高)

 

お盆を過ぎても暑い日が続く今年の日本列島ですが、北海道浦河町にある日高育成牧場ではシーズンを通して最高気温が30度を超える日のない比較的過ごしやすい夏となりました。早くも秋の気配が漂いはじめており、空模様や虫の鳴き声が変わりゆく季節を感じさせてくれます。

1

写真1.朝もやの中、放牧地で元気に青草を頬張るJRA育成馬たち。まさに「馬肥ゆる秋」です。写真左からセレーサ14(牡、父:ステイゴールド、購買価格:1,200万円)、ビューティコマンダ14(牡、父:アルデバラン、JRAホームブレッド)、ハートノイヤリング14(牡、父:アイルハヴアナザー、購買価格:1,100万円)、スノーボードロマン14(牡、父:バゴ、JRAホームブレッド)。

 

1歳市場「サマーセール」に参加しています

季節の変わり目にあたるこの時期、馬産地北海道の風物詩ともいえる国内最大規模の1歳馬市場「サマーセール」が開催されています。今年は8月24日から4日間のスケジュールで1,300頭近い1歳馬が上場されます。国内外から購買者が集まるこのセールにはJRAも参加し、今年育成するJRA育成馬を購買しています。

セールに向けた事前検査を実施しました

サマーセール当日は朝8時から比較展示が行われ、12時からセリがはじまります。購買者は午前中に組まれた展示時間を使って、血統情報の出ているセリ名簿と実馬の馬体や健康状態、性格などを見比べて購買候補馬を決定します。一般的な購買者は馬を選定してから検査するため時間的に余裕がありますが、1日300頭以上が上場されるこの市場で全馬を時間内に確認することは不可能です。そこでJRAでは、上場馬を多く預託しているコンサイナーにお願いして、事前に牧場をまわり上場馬を検査させてもらっています。今年は48か所のコンサイナーの皆様に協力していただき、767頭の事前検査を行うことができました。協力していただきましたコンサイナーの皆様にはこの場を借りて御礼申し上げます。

1_2
写真2.事前検査では、経験豊富なJRAの獣医・装蹄職員が購買候補馬を選定します。今年は殆ど雨も降らず、快適な環境のなかで検査することができました。

 

 

在厩している育成馬の近況

さて、現在日高育成牧場には17頭のJRA育成馬(セレクトセール購買馬2頭、セレクションセール購買馬8頭、日高育成牧場で生産したJRAホームブレッド7頭)が在厩しています。育成厩舎に入厩してすぐに夜間放牧(午後15時に放牧して朝8時に集牧)をはじめましたので、夜間放牧の期間も既に1カ月が経過したことになります。最初は新しい仲間との出会いに戸惑っていた馬達。今ではお互いに寄り添いながら、仲良く新鮮な青草を食べています。

騎乗馴致の準備をしています

現在、育成馬達は夜間放牧を行いながら9月から行う騎乗馴致の準備をしています。騎乗馴致がはじまると放牧地でのんびり草を食む生活が一変し、背中に人が騎乗することを受け入れて人の指示で動かなくてはなりません。馴致開始までの期間、引き馬や手入れなどを利用して人馬の信頼関係を構築する作業を地道に行っています。

馴致を開始する前に必ず実施するのが口腔内検査と歯科処置です。馴致を行う過程において、馬を操作するために必要な「ハミ受け」を教えます。ハミは馬を操作する際にハンドルの役割をする馬具で、馬がハミを気持ちよく受け入れられる環境を作る必要があります。

検査では口内炎や斜歯・狼歯の有無を確認します。馬の口内炎は多くの場合、飼料や草を上下の歯ですりつぶす際に臼歯(奥歯)が必要以上に尖ってしまい、口腔粘膜を傷つけておこります。斜歯とはその尖った歯のことで、尖っている場合には数種類の専用ヤスリを使って整えます。また、狼歯とはちょうど人の八重歯のように歯肉から少しだけ頭を出している(もしくは埋没している)歯で、ハミがあたると馬に不快感を与えるため取り除く必要があります。

JRAでは馴致を開始する前にこれらの検査・処置を全馬に行っています。これは騎乗馴致が始まると馬には多くのストレスがかかるため、馬が少しでもハッピーな状態で様々な課題に取り組める下地を作りたいと考えているからです。

Photo

写真3.口腔内検査を行っています。人馬とも安全に、しっかり検査するため枠場を使って検査しています。

 

Photo_2

写真4.抜き取った狼歯。形や大きさは様々で、多くの馬で上顎に左右1本ずつみられます。稀に下顎にもみられ、狼歯がない馬もいます。

今回は以上です。次回の日高育成牧場ブログでは騎乗馴致の様子についても触れていきたいと思っています。

育成馬ブログ 生産編①「その2」

・当歳馬に与えるクリープフィード その2

 

クリープフィード投与の2つ目の目的は、離乳後の「成長停滞」を防止もしくは最小限度に

抑制することです。

 

離乳後の子馬を観察すると、少なからず体重増加が滞ります。極端な体重減少でなけれ

ば、一時的な成長停滞そのものが中長期的な健康に及ぼす影響は大きくないかもしれま

せん。

 

しかし、体重増加が停滞した後に起こる「急成長」は、OCD(離断性骨軟骨症)などの

骨疾患発症に影響を及ぼすとの調査報告もあるため看過できません(図1)。

 

そこで、離乳前に一定量のクリープフィードを食べることに慣らしておき、「成長停滞」と

それに引き続いて起こる「急成長」を予防し、スムーズに成長させる工夫が必要になるの

です。

 

4

1.スムーズな成長曲線(左)と「成長停滞」と「急成長」が認められる成長曲線(右)。

後者はOCDなどのDODを発症し易い成長と考えられている。

 

なお、クリープフィードの給餌を離乳直前に開始しても、食べ慣れるまでに時間がかかる

うえ、離乳ストレスによる食欲低下も念頭に置かなくてはなりません。

 

このため、クリープフィードの開始時期は、母乳量が低下し始める2ヵ月齢が目安になり

す。もちろん、過剰摂取による過肥、骨端炎および胃潰瘍には十分注意する必要があり

すので、給餌量を決定する際には、これらの疾患の徴候、子馬の体重、増体量、ボディ

コンディションスコア、放牧地の草の状態を考慮しなければなりません。

 

5
給餌量の決定には、骨端炎や胃潰瘍の徴候、馬体重、増体量、ボディコンディションスコア、放牧地の草の状態などの把握が重要。

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

 

育成馬ブログ 生産編①「その1」

・当歳馬に与えるクリープフィード その1

 

 8月に入り暑い日が続いていますが、本年生まれた当歳馬たちにとっては母子の別れ、

「離乳」の時期が近づいています。

 

 離乳方法の選択如何によっては、子馬の成長阻害や大きな事故に繋がる可能性が

あります。また、その後の取扱いに支障をきたすような精神的ダメージを負うこともある

かもしれません。このため、牧場の放牧地や厩舎などの施設環境を考慮した、最善の

離乳方法を選択する必要があります。

 

 当歳馬の離乳を成功させるための重要ポイントの1つとして、それまで母乳から摂取

していた栄養を牧草や固形飼料で代替することができるようになっていること、すなわち、

一定量(1~1.5kg)の固形飼料、いわゆるクリープフィードを食べられるようになっている

ことがあげられます。

 

1

クリープフィードを食べる当歳馬

 

 ところで、なぜクリープフィードを与える必要があるのでしょうか? 

 クリープフィードを与える目的は大きく2つあります。

 

 1つ目は母乳から得られる栄養の補填です。母馬の泌乳量は出産後から徐々に低下

していき、そこから摂取できるカロリーや栄養成分も同様に低下します。特にカルシウムや

銅などのミネラル含量は、生後1ヶ月を待たずして子馬の栄養要求量を充たさなくなります(図1)。

2
図1.母乳からの摂取ミネラルの要求量に対する割合(7週齢)

 

 このうち銅は、子馬の骨端炎やOCDなどの骨疾患の発症を抑制するために重要な働き

をするミネラルの1つです。もともと、母乳に含まれる銅の量は少なく、生まれて間もない

子馬は、母乳から十分な量の銅を摂取することができません。このため、子馬は母体に

いる胎子のときに、母馬から銅を受け取り肝臓に蓄えておき、生後はその蓄えを利用して

いると考えられています(図2)。しかし、肝臓に蓄えられた銅は、生後2~3ヶ月で枯渇

することが知られています。

 

3
図2.胎子は母馬から受け取った銅を肝臓に蓄積し、生後に利用する。

 

 もちろん、良好な牧草が繁茂した放牧地で飼養されていれば、子馬にとって必要な

カロリーは母乳と牧草から摂取することも可能かもしれません。しかし、健康な馬体成長

に欠かせないミネラルは固形飼料で補う必要があります。

 

つづく

育成馬ブログ 生産編⑪「その2」

当歳馬の駆虫に関するQ&A

 

先日、ブログ読者の方から、子馬の駆虫方法に関するお問い合わせをいただきましたので、回答と併せてご紹介します。

 

「生後1ヶ月が過ぎた子馬に、駆虫剤を与え始めるのはいつ頃からが良いでしょうか?

また、子馬に与える駆虫剤は成馬と同じものでも問題ないでしょうか?」

 

Q1.いつ頃から駆虫剤を与え始めるのがよいか?

 

A.生後2ヶ月

 

子馬で特に問題となる寄生虫は馬回虫です。

馬回虫は、子馬(特に15ヶ月齢未満)の小腸に大量寄生することがあり、

これにより、子馬は疝痛や腸管破裂を起こし、場合によっては開腹手術が必要となり、死に至るケースもあります。

この病気をアスカリド・インパクション(回虫便秘)と言います。

 

馬回虫が寄生した場合、寄生1ヶ月後では幼虫の段階であり、駆虫剤の効果が半分程度であることが知られています。

一方、寄生3ヶ月後には馬回虫は成虫になり、駆虫剤の効果は高まりますが、アスカリド・インパクションのリスクも高まります。

 

これらのことから、たとえ子馬が生後すぐに虫卵を摂取したとしても、生後2ヶ月までは、駆虫剤が十分な効果を示さない幼虫の状態ではないかと考えられます。

しかし、3ヶ月以上何もせず放置すると、腸の中で成長して大きくなり、疝痛を起こすリスクが高くなります。

以上の理由から、生後2ヶ月頃から、概ね2ヶ月間隔で駆虫をするのが「妥当」ではないか、と考えられています。

 5
 Q2.投与する駆虫剤は成馬のものと同じでよいか?

 

A.同じで問題ないが、フルベンダゾールなどベンズイミダゾール系の駆虫剤が推奨されます。

 

アスカリド・インパクションは、ある種の駆虫剤の投与後に発症が多いことが知られています。

それは、イベルメクチンやピランテルなど、成馬で一般的に使用されている薬剤です。

このため、「子馬の糞便から回虫や回虫卵が排出されている場合」「牧場が回虫卵で汚染されている場合」には、これらの薬剤の投与はリスクを伴いますので、投与を避けた方が良いでしょう。

このため、アスカリド・インパクションの発症リスクが少ないと言われている、ベンズイミダゾール系の駆虫剤の投与が推奨されています。

6

7 

最も重要なことは、投与前に寄生虫の有無を確認すること、すなわち虫卵検査を実施することです。

子馬の糞便の採取が困難な場合は、親馬や牧場全体の馬における虫卵汚染の状態を把握することが推奨されます。

もし、回虫卵の汚染が認められる場合には、子馬に対してはベンズイミダゾール系の駆虫剤を投与した方がよいでしょう。

 

 

8

糞便を用いた虫卵検査

 

9
回虫卵(顕微鏡写真)

 

 

近年、薬に耐性をもつ寄生虫が問題視されています。

その原因は、「同じ駆虫剤を継続してすべての馬に投与する方法」であると考えられています。

 

このため、最近では糞便検査を実施し、寄生虫卵の有無のみならず、個数を計測したうえで、必要に応じた駆虫処置をする「ターゲットワーミング」という方法が推奨されています。

 

ターゲットワーミングについては、以前のブログで紹介していますので、参考にして下さい。

 

生産現場における駆虫 その1「耐性寄生虫の発生原因」

https://blog.jra.jp/ikusei/2013/10/1-7158.html

 

生産現場における駆虫 その2「ターゲットワーミング」

https://blog.jra.jp/ikusei/2013/10/2-1c95.html

 

生産現場における駆虫 その3「寄生虫をゼロにする必要はない」

https://blog.jra.jp/ikusei/2013/10/3-98d7.html

 

生産現場における駆虫 その4「駆虫剤投与以外に実施すること」

https://blog.jra.jp/ikusei/2013/10/4-d493.html

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

 

育成馬ブログ 生産編⑪「その1」

獣医・畜産系学生向け「サマースクール2015」の開催について

 

北海道の馬産地日高で牧場実習をしてみませんか?

JRA日高育成牧場では、獣医・畜産系大学の学生を対象としたサマースクールを

開催します。

 

牧場での体験学習を通じて、馬がどのような動物なのか理解し、飼養技術や獣医療、

さらには競馬開催業務まで、馬に関する幅広い知識・技術を学びます。

 

日程は、8月18日(火)~27日(木)の10日間、

参加条件は獣医・畜産学系の大学2~5年生です。

 

詳細な内容・応募方法については、下記ホームページをご覧ください。

http://www.jra.go.jp/news/201505/052502.html

1_42_3

 


 

 

34

育成馬ブログ 日高⑨

○  トレーニングセールに上場します(日高)

 

 先月開催しました2015JRAブリーズアップセールでは、上場したすべての馬を

ご購買いただくことができました。ご来場いただきました皆様、誠にありがとう

ございました。

 6月6日からは2歳戦が始まりますが、ご購買いただきましたJRA育成馬が早期から

活躍してくれますことを期待しています。

 JRAブリーズアップセール欠場馬のうち8頭は、5月26日(火)にJRA札幌競馬場で

開催されるトレーニングセールに上場する予定です。今回の上場予定馬にとって、

当セールは競走馬としてのスタートラインに立つラストチャンスです。公開調教で

良いパフォーマンスをご覧いただけるよう、しっかり仕上げてセールに臨みたいと

思っています。

 

 

上場予定馬

 No.292 ローランウィスパー13(牝、父:ブラックタイド)

 No.293 ウインクルディール13(牝、父:アルデバラン)

 No.294 オヘソノタカラモノ13(牡、父:ナカヤマフェスタ)

 No.295 カシノリボン13(牝、父:タニノギムレット)

 No.296 コンゴウマライカ13(牝、父:ケイムホーム)

 No.297 シルキーメイン13(牡、父:カジノドライヴ)

 No.298 スペシャルウーマン13(牝、父:バトルプラン)

 No.299 フォレストメリー13(牡、父:ブラックタイド)

 

 Photo

写真1.調教後にグラスピッキングをする上場予定馬。日々これまで以上に厳しいトレーニングメニューをこなしていますが、調教後には青々とした牧草が食べられます。

 

 トレーニングセールの騎乗供覧はセリ前日の5月25日(月)、9:30から札幌競馬場

ダートコースで行われます。JRAブリーズアップセール同様、多数のお客さまのご来場

を心よりお待ち申し上げます。

 

育成馬ブログ 生産編⑩「その2」

・電気牧柵の利用

 

サラブレッドの生産現場では、鹿の放牧地への侵入防止策として電気牧柵が利用されています。日高育成牧場でも、3年前ほど前から設置しており、一定の効果をあげています。

              6         

鹿対策として設置している電気牧柵

 

一方、本年からの新たな試みとして、放牧地内の「間仕切り」を目的として電気牧柵の利用を開始しました。これは、アイルランドなどの牧場で一般的に行われている方法を参考にしたものです。

 

「間仕切り」をしている放牧地は、生後間もない子馬が利用します。

 

これまで当場では、母子の放牧地として、「砂パドック(1アール以下)」「インドアパドック(約1アール)」「約2ヘクタールの放牧地」「約4ヘクタールの放牧地」がありました。

 

このため、狭い砂パドックやインドアパドックで過ごした後は、いきなり広めの2haの放牧地に放されることになります。

 

昨年までは、広い放牧地に放されて、勢いよく走る母馬の後を生後間もない子馬が追いかける光景をヒヤヒヤした思いで見ていました。

この場合、骨折や腱断裂など大きな事故が起こっても不思議ではありませんでした。

 

一方、2~4週間もの長期間に亘って、狭いだけではなく、衛生環境もあまり良くない砂パドックやインドアパドックに閉じ込めておくことは、母子いずれにとっても健康的とは言えません。

 

そこで、2ヘクタールの放牧地を1ヘクタール以下の大きさに間仕切りすることで、生後1週間の子馬が利用可能な放牧地を設置しました。

7
2ヘクタールの放牧地を間仕切りして、1ヘクタール以下の放牧地にリフォーム

 

8

 電気牧柵で仕切られた放牧地

9
乾電池式のパワーユニット(電力装置)を使用

 

利用した電気牧柵は、馬にとって視認性が高い、幅4cmの帯状のものです。

あらかじめ、出産前の母馬を電気牧柵の放牧地に放して、良く見せておくことで馴致しておきました。

10
馬にとって視認性が高い、幅4cmの帯状の電気牧柵用テープ

 

興味本位でテープに触る子馬もいますが、一度電気を感じると怖がって近づかなくなります。

 

もちろん、何かのタイミングでパニックになった場合には、母子ともに突破するリスクは十分ありますので、あくまでも放牧地内の間仕切りに使用を限定した方が良さそうです。

 

電気牧柵の利点は、通常の牧柵と比較して安価で、一度設置した後も容易に移設できることです。このため、必要に応じて放牧地を何度でもリフォームすることができます。

 

また、放牧地の一部を養生したい場合や、何らかの理由で運動制限したい馬に対して、青草を食べさせたい場合にも有効かもしれません。

この場合であっても、突破されるリスクはありますので、その点を勘案した選択的な使用が推奨されます。

 

11
運動制限したい馬で、青草を食べさせたい場合にも有効

 

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp