24-25育成馬ブログ(生産②)

〇当歳馬の厳冬期の過ごし方

 日高育成牧場のある浦河では、12月中旬を過ぎてからついに寒さが増してきて、冬本番の様相を呈してきました。雪も放牧地を一面に覆い、いわゆる根雪が張った状態となりました。こうなると、放牧中の馬達は放牧地の草が食べられなくなってしまいます。

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 前回のブログ記事でご紹介したとおり、当場の当歳馬たちは10月下旬から新しい厩舎ができたハッタリ分場で過ごしてきましたが、11月末で別の厩舎に移動してきました。放牧時間は13時から朝8時までの19時間と変更はしないものの、この厩舎の移動は冬季の当歳馬管理に重要な意味を持っています。

 実は放牧地での馬達の行動について見てみると、寒い時期には運動量が低下することが分かっています。こちらは日高育成牧場の当歳馬において、GPSを使って放牧地での移動距離を調べたグラフですが、気温の変化と移動距離は連動しています。気温が低くなると、馬の移動距離は短くなるということです。

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 この理由はいくつか考えられますが、気温が低いと馬達は体温を維持するためにエネルギーを消費してしまうため、できるだけじっとして消費エネルギーや熱の放散を抑えるようになる、放牧地が雪で覆われていることで、食べる牧草を探して歩き回ることがなくなる、そもそも歩きにくいため歩かなくなる、などがあります。

 移動距離の減少は、子馬の体力づくりや健全な成長に悪影響を及ぼすかもしれません。そこでこの時期の日高育成牧場では、ウォーキングマシンの使用を開始します。ウォーキングマシンは、子馬の不足した運動量を補うことができます。歩行速度は4.5~5.0 km/hとそれほど速くない設定で、毎日30~60分程度行います。ウォーキングマシンを使用したいがために、この時期に子馬の繋養厩舎を変更している、というわけです。

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 ウォーキングマシン以外の運動量を維持するための工夫として、放牧地で与える乾草をできるだけ複数個所に分けるようにしています。こちらの写真は実際に当歳馬が使用している放牧地の空撮画像ですが、赤丸で示したように四角い放牧地の四隅で与えています。これによって馬達が草を求めて少しでも歩き回るように仕向けることができ、運動量の確保につながります。

Photo_4当歳馬を放牧している放牧地の空撮画像。赤丸のついた四隅に乾草を投げる

 放牧地で食べる草を与えるために、自家乾草のロールを置く方法もありますが、馬達はロールのある場所から動かなくなってしまうと考えられ、運動促進にはつながらないかもしれません。食べてなくなってしまう量を何回かに分けて与えるのが良いと考えています。

 このように、北海道の冬は馬達にとっても過ごしにくい環境となります。これから競走馬に育っていく子馬たちをどうしたらより強い馬にしていくことができるのか、工夫を凝らしていきたいと思います。

JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-について

 JRA日高育成牧場での繁殖牝馬や子馬の管理方法や考え方を記載した「JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-」を発行しています。下記のサイトからPDFファイルをダウンロードできますので、ぜひともご活用ください。
https://www.jra.go.jp/facilities/farm/training/research/pdf/research_seisan.pdf

24-25育成馬ブログ(日高②)

馬をまっすぐに走らせることと手前変換

 毎日寒くなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。9月に騎乗馴致を開始した61頭の育成馬たちの調教は順調に進み、現在800m馬場を2周した後、坂路を24秒/F程度で1本上がってくるメニューを消化しています。速歩でのドライビングの効果により、初めて坂路入りした際から馬がまっすぐ走れ、きれいな隊列での調教を行うことができています(写真1、動画1)。また、調教のタイム指示についてはステディキャンター(馬が落ち着く速度で安定した駈歩を続ける)となるように設定することで、馬が常に落ち着いた状態で調教を実施することができています。今回はその取り組みについてご紹介いたします。

Photo_2 (写真1)今シーズン初めての坂路調教

 

https://youtu.be/FGaU0j8Zj-M

(動画1)今シーズン初めての坂路調教

 

 我々は騎乗馴致段階で“速歩でのドライビング”を積極的に取り入れています。速歩のドライビングでは「左!」「まっすぐ!」「右!」「まっすぐ!」「左!」「まっすぐ!」「右!」・・・という風に、短時間で多くのコマンドを馬に出し続けることとなるため、馬が人にフォーカスし、人から出される命令にすぐに応えようと従順になる効果があると感じました。その結果、以前より人の言うことをきく馬が増えた気がしています。

 また、常歩よりも速いスピードでドライビングを行うことにより、馬が本当にまっすぐ進んでいるか、開き手綱の扶助を理解しているかが確認でき、結果として騎乗調教開始後にまっすぐ走れる馬が増えました。例えて言えば、自転車を運転する際に、ゆっくり漕ぐとフラフラしてしまいますが、ある程度のスピードを出し続けることでまっすぐな状態を維持できるのと同じ理屈です。スタッフたちには速歩で進む馬と同じ速さで移動しなくてはならないため苦労をかけましたが、そのおかげで走路での騎乗調教開始直後からまっすぐ走れる馬を作ることができました。

 速歩でのドライビングについては過去の当ブログでも何度か取り上げていますので、興味のある方は過去記事をご覧いただけましたら幸いです。

 JRA育成馬日誌: 24-25育成馬ブログ(日高①)

JRA育成馬日誌: 23-24育成馬ブログ(日高②)

JRA育成馬日誌: 22-23育成馬ブログ(日高④)

 

 基礎体力を付けるため、2シーズン前から12月に800mトラックで連続3周(2400m)をハロン24秒程度で走る調教を開始しました。その中で、まっすぐ走れる馬については競馬と同じく「コーナー順手前、直線反対手前」の手前変換を教えています。競走馬の手前変換の仕方は、新しい外側(左→右だとしたら右)のあぶみに足を踏み込み、騎座を新しい外側(左→右だとしたら右)に位置させ、人の重心を先に移動させて、馬の重心を変えるように誘導し、さらに、新しい外側(左→右だとしたら右)の脚で扶助(合図)を送って、新しい内側(左→右だとしたら左)の手綱を軽く開くと手前を変えるように調教しています。馬場馬術のように後躯が先で前躯が後の手前変換ではなく、あくまでも前躯が先で後躯を後に手前変換することでよしとしています。 以前はごく限られた腕の達者な騎乗者のみがこの手前変換を行えていましたが、「速歩ドライビング」「ステディキャンター」で「落ち着いてまっすぐ走ること」を教えた結果、手前変換できる人馬が増えました(写真2、動画2)。

Photo_3(写真2)800mトラックでの調教(今シーズン)

 

https://youtu.be/v5Mw96undUM

(動画2)800mトラックでの手前変換(過去動画)



 800mトラックで連続3周(2400m)の調教は、基礎体力を付けたうえ手前変換を馬に教えることができるなどメリットが大きい反面、この調教を開始した2シーズン前には内側管骨瘤が多発するというデメリットがありました。原因は「同じ方向での周回」にあるのではないかと考え、22-23シーズンは通年で月・水・金曜日は右手前、火・木・土曜日は左手前というように走る方向を固定していたのですが、23-24シーズンより、11・1・3月は月・水・金曜日右手前、火・木・土曜日は左手前で走り、12・2・4月は月・水・金曜日左手前、火・木・土曜日は右手前で走るように変更しました。その結果、跛行を伴う内側管骨瘤の発症頭数を22-23シーズンの6頭から23-24シーズンは1頭に減少させることができました。このように、周回コースで長い距離を走る調教では、同じ手前ばかりにならないよう、注意が必要であることがわかりました。

 

 以上、現段階での調教についての取り組みをご紹介いたしました。今後は坂路での3列縦隊での集団調教などを教えながら、競走馬として必要な基礎体力を身につけさせていきたいと思います今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。

24-25育成馬ブログ(生産①)

秋は講習会の季節です


 今年は比較的暖かい秋となっている日高地方ですが、10月中旬を過ぎて急に朝夕冷え込むようになってきました。雪の季節ももう目前です。寒暖差が激しい時期になりますので、馬達同様、私たちも体調管理には十分気を付けて過ごしたいと思います。

 さて、日高育成牧場の繁殖班では9月~11月は例年多くの研修や講習会を行う季節となっています。例えば、JBBA主催で近隣牧場の皆様向けの「実践研修プログラム」。こちらは各牧場の比較的若手の皆様向けの講習で、学びたい内容を参加者の皆様に選んでいただき、それに合わせたカリキュラムを組み、講義や馬を使った実習を行います。
 その他にも毎月行っている「担い手飼養管理集中研修」なども通して、こちらから発信するだけでなく、牧場や馬産業関係者の皆様と貴重な情報交換をすることができる、とても有意義な時間となっています。

Photo_3牧場の皆様の研修の様子。馬のBCSのつけ方の実習などを行っています。

 また、今年は静内の小学校において、6年生に向けて馬に関する授業をする機会もいただきました。生徒さんたちが住んでいる日高地方が、競走馬生産にとってどれほど重要な地域なのか、馬はどのようにして生まれ、人を乗せることを覚え、そして競走馬になっていくのか、などをお話したのですが、皆さんとても真剣に聞いてくれました。
 質問の時間も、時間いっぱいまで途切れずにたくさんの手が挙がり、馬に対する興味や熱のすごさに圧倒されて帰ってきました。競馬サークルでは長らく人材不足が叫ばれていますが、今回の生徒さんたちのように、子供たちや若い方々が少しでも多く馬文化に関心をもってもらえたら、未来は明るいのではないかと思います。

Photo静内の小学校の授業の様子。皆さん熱心に授業を受けていました

 人材確保のトピックスとして、JRAでは本年から新しい試みとして、馬に関わる様々な職業をご紹介するサイト「UMAJOB」を開設いたしました。馬に関わる仕事としては、牧場スタッフ、厩務員、騎手、獣医師、装蹄師など様々ありますが、それらが実際にどのような仕事内容なのか、どうしたらその職に就けるのかなどの情報をわかりやすくまとめています。ご興味のある読者の方は是非一度ご覧ください。

UMAJOB −お仕事紹介 生産牧場スタッフ−

 最後に、日高育成牧場の当歳馬たちの近況です。9月中旬までで、10頭全ての離乳が終わり、子馬たちだけでの昼夜放牧が続けられています。例年は9月中により広い放牧地がある分場に移動させるのですが、今年は分場の厩舎の改築のため移動できずにいました。しかし、この工事もつい先日無事に終わり、新しい厩舎が完成しました。

Photo_4完成した分場の新しい厩舎

 近々移動させる予定なのですが、現在は「馬運車に乗る練習」をしています。当歳馬達にとっては初めての経験になる馬運車への乗車。馬は狭くて暗い環境は得意ではなく、そもそも初めてのものには「物見(ものみ)」をして警戒する性質があるため、初めはなかなか乗ってくれません。大体数日から1週間程度かけて「馴致(じゅんち。ならすこと)」をします。初日は車を近くで見せるだけ、翌日は荷台の入り口に近づけるだけ、その次は入口に少し入ってみる・・・といったように、馬の反応を見ながら少しずつ納得させていきます。面白いもので、こういった行程を馬に経験させる中では、馬ごとの性格の違いがハッキリ出てきます。嫌がって立ち上がって抵抗する馬、はじめは怖がっても意外にすんなり入る馬、など様々です。このように色々な経験をたくさん積むことで、成長して強い馬になってほしいと願っています。

Photo_2馬運車馴致の様子

JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-について

 JRA日高育成牧場での繁殖牝馬や子馬の管理方法・考え方を記載した「JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-」を発行しています。下記のサイトからPDFファイルをダウンロードできますので、ぜひともご活用ください。

「JRA育成牧場管理指針(生産編)」

24-25育成馬ブログ(日高①)

〇新人職員の速歩ドライビング練習

 サマーセールも終わり、現在日高育成牧場では54頭(ホームブレッド7頭、市場購買馬47頭)のJRA育成馬を繋養しています。これまで当ブログでも何度かご紹介してきましたが、近年騎乗馴致の際に速歩でのドライビングを行っています。今回は、新人職員の速歩ドライビング練習についてご紹介したいと思います。

 2年ほど前から我々は騎乗馴致段階で“速歩でのドライビング”を積極的に取り入れています(写真1、動画1)。まず、速歩のドライビングでは「左!」「まっすぐ!」「右!」「まっすぐ!」「左!」「まっすぐ!」「右!」・・・という風に、短時間で多くのコマンドを馬に出し続けることとなるため、馬が人にフォーカスし、人から出される命令にすぐに応えようと従順になる効果があると感じました。その結果、以前より人の言うことをきく馬が増えた気がしています。
 また、常歩よりも速いスピードでドライビングを行うことにより、馬が本当にまっすぐ進んでいるか、開き手綱の扶助を理解しているかが確認でき、結果として騎乗調教開始後にまっすぐ走れる馬が増えました。例えて言えば、自転車を運転する際に、ゆっくり漕ぐとフラフラしてしまいますが、ある程度のスピードを出し続けることでまっすぐな状態を維持できるのと同じ理屈です。スタッフたちには速歩で進む馬と同じ速さで移動しなくてはならないため苦労をかけましたが、そのおかげで走路での騎乗調教開始直後からまっすぐ走れる馬を作ることができました。

Photo(写真1)速歩でのドライビング

https://youtu.be/EmuFczpnADo

(動画1)速歩でのドライビング

 昨シーズンからは具体的に、「8の字」や「コの字」といった図形をきれいに描いてドライビングおよびその後の各個騎乗をするように指示しました。「8の字」のドライビングでは直線部分で左右のハミをあえてフリーにすることで、ハミが外れている状態ではひたすらまっすぐ前進していれば良いことを教えていきました(図1)。「コの字」のドライビングでは覆い馬場の出入口など馬が気をとられそうなポイントをあえてまっすぐに通過させることで、人の指示があるまではまっすぐ走り続けなくてはならないことを教えこみました。その結果、馬にとって“まっすぐ走り続けることがオフ”の状態を作ることができ、更にまっすぐに走れる馬が増えたと実感しています。

Photo_3(図1)8の字の図形

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(図2)コの字の図形

 さてこの「速歩でのドライビング」ですが、誰でもいきなり出来る訳ではありません。騎乗することとは別のスキルが要求されるため、今年初めて日高育成牧場勤務になった新人たちには育成馬の騎乗馴致開始前に乗馬を用いて速歩ドライビングの練習をしてもらっています。
 ドライビングで馬を曲げるためには、曲がりたい方向(左に曲がりたいなら左)の手綱を短く持つ方法と、曲がりたい方向と逆の方向(左に曲がりたいなら右)の手綱を伸ばす方法の2つのやり方がありますが、今回はどちらかといえば簡単な前者の方法についてご紹介します。まず、左に曲がりたい場合、レーンを2本とも右手に持ちます。次に空いた左手で2本のレーンを束ねている箇所より前方(馬側)で左のレーンを持ちます。そうすると、左のレーンが右のレーンより短くなり、左のレーンが張られるため、馬が内方姿勢となり左に曲がります(図3)。これが基本の動作となり、あとは人の脚力で速歩をする馬についていき、この動作を繰り返せるように練習するのみです(写真2、動画2)!

Photo_5(図3)曲がりたい方向の手綱を短く持つ方法

Photo_6(写真2)速歩ドライビングの練習

https://youtu.be/L7gTmlZib0E

(動画2)速歩ドライビング練習風景

 以上、今回は新人職員の速歩ドライビング練習についてご紹介いたしました。今シーズンも9月4日から育成馬の騎乗馴致を開始いたします。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。

23-24育成馬ブログ(生産④)

各種実習および講習会を実施しました

 6月になり、日高も気温20度を超える日が続き、暑い季節がやってきました。生産牧場では分娩や種付けが一段落したのもつかの間、牧草の収穫作業や掃除刈りが忙しくなってきている頃かと思います。JRA日高育成牧場でも、牧草の成長度合いと天気予報をこまめに確認しながら、収穫のタイミングを慎重に見極めているところです。

Photo 乾草作りは天候に左右される難しい仕事です

 忙しい季節である一方、当歳馬たちを観察するにはよい季節だと思います。今年生まれた当歳馬たちは、すでに集団での親子の昼夜放牧を開始しています。離乳するのはまだ先ですが、だんだんと親子の距離が離れ、子馬同士で行動する時間が増えてきて、放牧地での行動にも個性が感じられるようになってきました。青々とした放牧地で気持ちよさそうに過ごしている子馬を見て、とても癒されています。

Photo_2 放牧地でリラックスする親子馬
 

JBBA子馬実習 

 JRA日高育成牧場におけるこの季節は、例年各種研修や実習が行われる時期でもあります。5月30日および6月6日にはJBBA日本軽種馬協会の生産育成技術者研修生の皆様の子馬実習を実施しました。この研修は、将来生産牧場や育成牧場で働きたいと考えている若い研修生の皆さんが、4月から翌3月までの1年間のカリキュラムで、馬の扱い方や生産などの知識を学ぶ研修です。同研修からは、これまでに多くの若いホースマンが巣立っていき、生産地で活躍しています。
 当牧場では、JRAホームブレッドの親子や育成馬を利用した実習を各季節で実施しており、今回は「親子馬の扱い方」というテーマで8名×2班の計16名が来場しました。実習では、子馬の手入れや保定の仕方、親子馬を同時に引き馬する方法などを、座学と実技実習の両方を通して学んでいただきました。当歳馬に初めて触れるという生徒さんも多い中、一生懸命に取り組まれているのが印象的でした。

Photo_3 一人で親子馬を引く方法を練習するJBBA研修生

馬女ネット研修会
 さらに6月5日には、日高女性軽種馬ネットワーク(通称「馬女ネット」)の皆様の研修会も開催されました。「馬女ネット」は日高管内の軽種馬産業にかかわる女性を中心とした団体で、色々な研修会などを企画し馬についての勉強をされている皆様です。今回は、「当歳馬の基本的な扱い方」というテーマでご依頼があり、当牧場の当歳馬を使って、馬房内での手入れ、保定、しつけ、経口投与の仕方や引馬の時に気を付けることなどを実習形式で体験していただきました。各牧場で普段用いているやり方がそれぞれある中で、さらに違う方法を学び取り入れようという前向きな気持ちに刺激をいただける、とても良い時間となりました。

Photo_4研修会には18名の会員の皆様がご来場されました

Photo_5 普段と違う引き馬の方法にも積極的に挑戦してくださいました

 これらの講習会などのイベントで他の団体の皆さまと交流することで、お互いの牧場の情報交換ができたり、自分の牧場でのやり方を改めて見直す良い機会となりました。さらに、馬たちにとっても、普段と異なるシチュエーションを経験することで、精神的な成長にもつながります。人も馬もこれからも様々な経験を積極的にして、成長していきたいものです。


JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-の発行
 JRA日高育成牧場での繁殖牝馬や子馬の管理方法や考え方を記載した「JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-」が発行されました。下記のサイトからPDFファイルをダウンロードできますので、ぜひともご活用ください。

https://jra.jp/facilities/farm/training/research/

23ー24育成馬ブログ(日高④)

馬の重心の上に乗るために(新人やBTC生徒に対する指導)


 日高育成牧場では、毎年5~7名ほどの新人(馬取扱技能職)が春の定期人事異動で転入してきます。また、例年25名ほどのBTC研修生を受け入れ、育成馬に騎乗してもらっています。前者は馬術の腕は確かですが、サラブレッド競走馬には乗った経験がない者がほとんどであり、後者は4月の入講から馬に乗り始め、乗馬経験が半年ほど経った後に初めて競走馬に乗ることになります。今回は、彼らにまずどのような点を意識して育成馬に騎乗してもらっているかについてご紹介いたします。

 まず2枚の写真を見比べてみてください。写真1は過去のBTC生徒(今年の生徒ではありません)がJRA育成馬に乗りに来た初日のものです。フォローしておきますが、当然最初から上手く乗れる人はいません。たいていの場合、騎手を真似してアブミ革を短くして乗ろうとするのですが、乗馬でいう「椅子座り」の姿勢すなわち脚が前にいきお尻は後ろの状態になりがちです。一方、写真2は育成馬に乗り慣れたJRA職員のものです。お尻の位置が前にあり、脚の上にお尻がきていることがわかります。

Photo_9 (写真1)初心者(過去のBTC生徒初日)   

Photo_10 (写真2)上級者(JRA職員)

 図1では、よりわかりやすいように補助線を引いています。左の初心者(過去のBTC生徒初日)はお尻から下に実線を引くと、脚の位置である破線よりかなり後ろにお尻が位置してしまっていることがわかります。一方、右の上級者(JRA職員)は実線と破線が一致し、お尻の位置が前にあり、脚の位置と一致して(脚の上にお尻がきて)います。このことから、新人やBTC生徒が初めて育成馬(競走馬)に騎乗する際には、まずお尻を前へ位置することを意識してもらっています。

Photo_5 (図1)育成馬(競走馬)に乗る際はお尻を前へ位置すること意識する

 馬の重心は第12肋骨付近にあると言われています(図2)。騎乗者がお尻を前へ位置することを意識して乗ることにより、かかと・鞍壺(鞍のカーブが最も深い部位)・お尻が重心の上に来る(直線上に並ぶ)ことになり、馬の重心の上に乗る(人と馬の重心が一致する)こととなります。このように騎乗することができれば、馬は鞍上で人が暴れない(ぶれない)ため快適となり、騎乗者を受け入れ、リラックスして走行するようになります。

Photo_4 (図2)馬の重心とお尻の位置

 自分に合ったアブミ革の長さですが、これは長い方が合う人と、短い方がしっくりくる人がいるようです。図3の左は長い人、右は短い人です。アブミ革の長さが変わるのでお尻の高さは変わりますが(長い人は下がり、短い人は上がる)、前後の位置は変わりません。やはりかかと・鞍壺・お尻が重心の上に来て(直線上に並んで)います。好みの問題ですので、自分に向いているアブミ革の長さをそれぞれ見つけてもらえればと思います。

Photo_7 (図3)自分に向いているアブミ革の長さはひとそれぞれ

 以上、今回は当場で取り組んでいる新人やBTC生徒に対する指導についてご紹介いたしました。現在、JRA育成馬たちはブリーズアップセールの上場およびその先の2歳戦での早期デビューを目指し、スピード調教を重ねてどんどんたくましく仕上がってきています。展示会およびブリーズアップセールで皆さんとお会いできることを心よりお待ち申し上げております。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。

23-24育成馬ブログ(生産③)

ライトコントロールの効果と影響を与える要因

ライトコントロールによる繁殖期への早期移行

 今シーズンの冬は記録的な暖冬となり、JRA日高育成牧場のある浦河町では、非常に雪が少なくなっています。生産牧場で繋養されている繁殖牝馬たちも、例年に比べると暖かい環境で冬を過ごしているのではないでしょうか。2月になると本格的に繁殖シーズンとなり、種付けに向けて準備を進めている生産牧場の方も多いと思います。ウマは、昼の長い季節のみが繁殖期である長日性季節繁殖動物であり、自然環境下では春から夏(4月~9月)が繁殖期となります。繁殖期の前には繁殖移行期と呼ばれる時期があり、その期間の管理が繁殖期への移行に重要と言われています。サラブレッドの生産においては、効率的な生産や子馬の早い成長を期待して、繁殖期を早めることが行われています。繁殖期への移行には様々な要因が関係していますが(図1)、先ほど述べたように昼の長さ(日長)が大きな要因となっていることから、人工的に昼を長くする処置(長日処置、馬産業ではライトコントロールと呼ばれる)を実施し、繁殖期を早めています。多くの生産牧場では、自動的に電灯のオン・オフを切り替えるタイマーを用いて、ライトコントロールを行っていることと思います。電球の明るさは100W程度(新聞が読める程度の明るさ)で十分です。その一方で、電灯が消えている時間をしっかり設けることも重要であると言われています(図2)。

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図1 馬の繁殖期への移行に関わる要因

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図2 ライトコントロールの実施例

ライトコントロールの効果

 それでは、ライトコントロールにより実際にどの程度繁殖期が早まるのでしょうか。馬産業においては、ライトコントロールは約50年前から実施されており、多くの研究者によりその効果が検証されています。表1はライトコントロール実施の有無および開始時期ごとの初回排卵日数(繁殖期の始まり)を比較したものです。これらは1980年代にアメリカで調査された結果ですが、自然環境下では1月1日から約132日後(5月上旬)に繁殖期へ移行したのに対し、11月1日または12月1日からライトコントロールを実施した群では、それぞれ1月1日から約66日後、約65日後(3月上旬)に繁殖期へ移行したという結果でした。一方、1月1日からライトコントロールを実施した群では1月1日から約98日後(4月上旬)まで繁殖期への移行が遅れており、これらの結果から12月頃にライトコントロールを開始するのが最もコストパフォーマンスが良いと考えられています。

Figure1

表1 ライトコントロール(LC)の条件別の初回排卵日数

続いて、JRA日高育成牧場での結果をまとめたものが表2となります。こちらのデータは2019年~2023年にかけてJRA日高育成牧場で繋養されていた空胎馬を対象に、ライトコントロールの有無による1月1日からの初回排卵日数を比較したものです。ライトコントロール開始時期は、概ね12月20日頃(冬至)となります。自然環境下で飼育した群では、1月1日から約117日後(4月下旬)に繁殖期に移行した一方で、ライトコントロールを実施した群では、1月1日から約59日後(2月下旬)に繁殖期に移行しました。これらの結果から日本の環境下においても、ライトコントロールが繁殖期への移行に大きな影響を与えることがわかります。また、先ほどの1980年代の報告に比べててライトコントロール実施時期が遅いにも関わらず、繁殖期への移行時期が早いという結果になりました。これは1980年代に比べて飼料や飼育環境(厩舎や放牧地)が改善した結果を反映していると考えられます。近年の報告では、ライトコントロールの効果により繁殖期へ移行する日数は、ライトコントロール開始後、約60~70日と言われており(Guillaume,2000)、日高育成牧場の結果もライトコントロールを開始(冬至より開始)してから約70日後に繁殖期へ移行しています。

Figure2

表2 ライトコントロール(LC)の有無による初回排卵日数(JRA)

ライトコントロールに影響を与える要因

 このように繁殖期への移行を早める効果があるライトコントロールですが、その効果は図1で示した繁殖期への移行に関わる要因の影響を受けます。特に適切な日朝時間が維持されているかが重要となります。昼の時間(明期)の途中に暗い時間(暗期)を設けたところ、連続して明期を設けた場合より繁殖期への移行が遅れたという報告があります(Malinowski,1985)。また、24時間電灯を点けっぱなしにしたところ、16時間の明記を設定した場合より効果が低下したことも知られています(Kooistra and Ginther,1975)。これらの事実からも、馬房内のライトコントロールが適切に実施できているか確認することが重要です。

 また、栄養状態もライトコントロールの効果に影響を与えます。先ほどJRA日高育成牧場の結果を示しましたが、この研究で得られた馬ごとのデータを、栄養状態(ボディコンディションスコア:BCS)と初回排卵日数に注目し、散布図にしたものが図3となります。BCSは数値が高いほど栄養状態が良く、低いほど栄養状態が悪いことを示していますが、今回の結果(繁殖期前の2月のBCS)は栄養状態が悪いほど、初回排卵日数(繁殖期への移行)が遅くなるという結果になっています。当然の話ではありますが、繁殖牝馬の栄養状態を適切に管理すべきことがデータでも示されました。

 今回の内容を参考にあらためてライトコントロールの実施方法を確認いただければ幸いです。

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図3 栄養状態(2月時点のBCS)と初回排卵日数(繁殖期の移行)の関係

※栄養状態が悪いほど繁殖期への移行が遅くなる(相関係数=-0.4)

JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-の発刊

 今回ご説明したライトコントロールに関する内容も記載している、JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-が発刊されました。下記サイトからPDFファイルをダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-

23-24育成馬ブログ(生産②)

ローソニア感染症の発生状況とワクチン

 

冬期に気を付けるべきローソニア感染症とは?
 年が明けて昨年生まれた子馬たちは1歳馬となりました。今年は例年に比べると気温が高く積雪も少ない気候ですが、それでも子馬たちには厳しい環境であることは変わらず、適切な管理をすることが求められます。特に、北海道の厳冬期は体重の増加が停滞してしまうことが知られています。
 また、子馬の体重増加が停滞するどころか、減少してしまう状況にも注意が必要です。そのような状況では、ローソニア感染症が疑われます。ローソニア感染症は、ローソニア・イントラセルラリスと呼ばれる細菌が引き起こす病気で、症状は発熱や下痢などを示し、先ほど述べたように体重が減少してしまうことが大きな問題となります。発生時期については、当歳秋の離乳後から寒さが厳しくなってくる冬の間に多く発生することが知られており、子馬の成長が停滞してしまうことから、生産牧場においてはこの病気が発生してしまうと大きな打撃となります。海外の報告に、同じ種牡馬の産駒のうち、この病気を発症した子馬と発症していない子馬における、1歳時のセリでの売却価格を比較したものがありますが、発症した馬の方が低価格であったと報告されています。このように、ローソニア感染症は生産牧場にとって経済的にも大きな影響があることから、生産地全体で対策に取り組むべき病気と言えます。

 

ローソニア感染症の発生状況
 ローソニア感染症は生産地全体で問題となる病気ですが、実際にどの程度発生しているのでしょうか。幸いなことに、これまでに一度も発生したことのない生産牧場もあるかもしれませんが、一方で近年もローソニア感染症に悩まされている生産牧場もあるかもしれません。日本におけるローソニア感染症の発生状況を説明するために、北海道の日高地方で2015年4月~2020年3月にローソニア感染症の発生状況を調査した報告がありますので、今回はその内容をご紹介します。
 ローソニア感染症の診断は生産牧場の現場では症状と簡易的な血液検査(血中タンパク質濃度)を用いて行います。今回の調査ではより正確な診断を行うために、PCR検査で陽性となったものを発生例としています。調査期間にローソニア感染症が疑われた252症例の中で、PCR検査の結果192例(76.2%)が陽性という結果でした(図1)。ローソニア感染症は、発生例があった同じ厩舎にも感染していることが知られており、今回の調査では発生例と同じ厩舎にいた症状のない264症例についてもPCR検査を実施したところ、166症例(62.9%)で陽性という結果でした(図1)。このように、症状を示していなくてもローソニア感染症にかかっている可能性があることに注意が必要です。今回の調査では一部の馬のみを検査しているため、国内の生産地全体における発生率は不明ですが、ドイツの生産牧場で1309頭の検査を行った報告では、発生率は3.1%と報告されています。

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図1 症状の有無ごとのPCR陽性率(Niwa, 2022を改変)
症状がない場合でもローソニア感染症の場合がある

 

 各年度の発生頭数と発生牧場数についてまとめた結果が図2となります。毎年約30頭が、10以上の牧場にわたって発生していることが分かります。このように、近年においても、日高管内で広くローソニア感染症が発生している現状があります。さらに、この発生は特定の牧場に偏っているわけではなく、ほとんどの牧場で突然発生しています(図3)。原因菌であるローソニア・イントラセルラリスは、野生動物にも感染することが知られており、長い間発生のない生産牧場であっても油断は禁物であり、日高管内の約20%の生産牧場で発生事例があるという事実があります。

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図2 各年度の発生頭数と発生牧場数(Niwa, 2022を改変)
毎年約30頭、10以上の牧場で発生

 

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図3 発生回数別の発生牧場数(Niwa, 2022を改変)
日高管内の約20%の牧場で発生事例がある

 

 発生時期については、これまでの報告にもあるとおり、9月~12月の秋から冬にかけて最も多い(83.9%)という結果でした(図4)。これまでも言われていたとおり、当歳の離乳後から気温の低下していく冬季にかけては、ローソニア感染症に対して最新の注意を払って管理をしていくことが重要です。また、年齢別の発生状況を調べたところ、これまでの報告どおり当歳がもっとも多く発生している(約89%)一方で、1歳馬や2歳以上の馬であっても発生があるという結果になっています。JRA日高育成牧場においても、1歳の12月に発生した経験があり、当歳以外においても体重減少を示した症例に対してはローソニア感染症を疑う必要があります。

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図4 各月の発生頭数(Niwa, 2022を改変)
当歳の離乳後や気温の低くなる冬季に多く発生

 

 

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図5 年齢別の発生頭数(Niwa, 2022を改変)
当歳での発生が多いが1歳以上の馬でも発生

 

ローソニア感染症の発生状況
 これまで述べてきたように、ローソニア感染症は日高管内で広く発生しており、近年においても続発しているため何らかの対策が必要と考えられます。ローソニア感染症の対策としては、ワクチンの投与という方法があります。このワクチンは、人のインフルエンザワクチンのような一般的な注射によるワクチンとは異なり、経直腸(肛門から注入)または経口(口から投与)で投与するという、非常に珍しいタイプのワクチンになります(図6)。投与方法は、1回30mlを1か月間隔で投与を行います。

Photo_7図6 ワクチン投与の様子

 

 その効果については、様々な報告がありますが、先ほどの調査においてはワクチン投与履歴の判明している陽性馬93頭の中で、92頭がワクチン未接種であり、残りの1頭は1回目の投与後でした。この結果から、ワクチンの投与により発生を防ぐことが期待されます。しかしながら、現在流通しているワクチンは豚用のワクチンであり、馬用には承認されていないのが現状です。馬用の承認を得るために、JRAを含めた関係機関が調整を進めており、早ければ2026年には承認が得られる見通しです。承認後は多くの生産牧場の皆様に活用していただければ幸いです。

 

JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-の発行
 今回ご説明したローソニア感染症に関する内容も記載されている、JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-が発行されました。下記のサイトからPDFファイルをダウンロードできますので、ぜひともご活用ください。

https://www.jra.go.jp/facilities/farm/training/research/pdf/research_seisan.pdf

23-24育成馬ブログ(日高③)

集団での隊列調教について

 令和6年能登半島地震で被災された方々にお見舞い申し上げます。大変な年始になりましたが、日高育成牧場では例年通り地元の西舎神社への騎馬参拝で年が明けました(写真1)。調教中の人馬の安全と、ここから巣立っていった育成馬たちの活躍を祈願しました(写真2)。
 さて、60頭の今年の育成馬たちの調教は順調に進み、現在は800m周回馬場での2400mのステディキャンター(22秒/F程度)での調教をベースに、週2回は坂路に行き、1本目として2列縦隊で20秒/F程度で走り、2本目に3列縦隊で18秒/F程度で上がるというメニューを消化しています。当場では以前より集団調教を行っておりましたが、昨シーズンから一歩進んで3列縦隊での調教を取り入れました。今回はその取り組みについてご紹介いたします。

 

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(写真1)騎馬参拝の様子

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(写真2)人馬の安全と育成馬たちの活躍を祈願しました

  

 馬群の中で落ち着いて走れることは競走馬として必要な能力であることは疑いようのないことだと思いますが、新馬戦からフルゲートになる昨今の競馬で勝つために集団調教の重要性はますます上がっていると考えています。我々は昨シーズンから“隊列の質を上げること”を目標に、坂路での集団調教時に3列縦隊での走行を取り入れました。それまでは1列縦隊もしくは2列縦隊で走行していましたが、騎乗スタッフのレベルが上がり馴致が上手くいき馬がおとなしいこと、2列縦隊の調教が楽々こなせるようになってきたことから更なる高みを目指し3列縦隊での走行を取り入れました。

 走行中に横の馬に蹴られる等のリスクを避けるため、具体的には18秒/F程度で馬が集中してまっすぐに走れることを確認してから行っています。このことに実戦により近い状況で調教できるようになり、レースに行って前後左右に馬がいてもひるまないで走る馬を作ることを目指しています。また、この時期の調教のタイム指示についてはステディキャンター(馬が落ち着く速度で安定した駈歩を続ける)となるように設定することで、馬が精神的に常に落ち着いた状態で調教を実施することを心掛けています。

 

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(写真3)坂路での3列縦隊のステディキャンター

https://youtu.be/MwmFfvWJDQ0
(動画1)坂路での3列縦隊のステディキャンター

 

 昨年の桜花賞からG1レースでのジョッキーカメラの映像が公開されました(動画2)。それを見て、私は昨年育成馬たちに課してきた調教が有効であると確信しました。4月に1600m周回馬場で行った3列縦隊での調教が、ジョーキーカメラに映っていたレース実戦での映像と酷似していたためです(写真4、動画3)。前後左右に馬がいる状況、前からキックバック(砂の塊)が飛んでくる状況を調教の段階で積ませることは、その後競走馬としてデビューする上で大きなアドバンテージになると思いました。正確なことは続けてみないと言えませんが、昨年はマリンバンカーカーマンラインの2頭が新馬勝ちしてくれました(2021年および2022年はそれぞれ1勝のみ)。

 

https://youtu.be/V8GuEbz3hAQ?feature=shared
(動画2)ジョッキーカメラ(リバティアイランド・桜花賞)

 

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(写真4)1600m周回馬場での3列縦隊の調教(昨年4月)

 

https://youtu.be/detJO_4al5c
(動画3)1600m周回馬場での3列縦隊の調教(昨年4月)

 

 以上、当場で取り組んでいる集団での隊列調教についてご紹介いたしました。今後は更に乗り込んで基礎体力を養成した後、スピード調教を経てブリーズアップセールの上場およびその先の2歳戦での早期デビューを目指してまいります。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。

23-24育成馬ブログ(日高②)

まっすぐ走れる馬を作る!

 毎日寒くなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。9月に騎乗馴致を開始した60頭の育成馬たちの調教は順調に進み、現在800m馬場を2周した後、坂路を24秒/F程度で1本上がってくるメニューを消化しています。昨シーズン導入した速歩でのドライビングの効果により、初めて坂路入りした際から馬がまっすぐ走れ、きれいな隊列での調教を行うことができています(写真1、動画1)。今回はその取り組みについてご紹介いたします。

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(写真1)今シーズン初めての坂路調教

https://youtu.be/UtbwNyje8bM
(動画1)今シーズン初めての坂路調教


 昨シーズンから我々は騎乗馴致段階で“速歩でのドライビング”を積極的に取り入れました(写真2、動画2)。まず、速歩のドライビングでは「左!」「まっすぐ!」「右!」「まっすぐ!」「左!」「まっすぐ!」「右!」・・・という風に、短時間で多くのコマンドを馬に出し続けることとなるため、馬が人にフォーカスし、人から出される命令にすぐに応えようと従順になる効果があると感じました。その結果、以前より人の言うことをきく馬が増えた気がしています。
 また、常歩よりも速いスピードでドライビングを行うことにより、馬が本当にまっすぐ進んでいるか、開き手綱の扶助を理解しているかが確認でき、結果として騎乗調教開始後にまっすぐ走れる馬が増えました。例えて言えば、自転車を運転する際に、ゆっくり漕ぐとフラフラしてしまいますが、ある程度のスピードを出し続けることでまっすぐな状態を維持できるのと同じ理屈です。スタッフたちには速歩で進む馬と同じ速さで移動しなくてはならないため苦労をかけましたが、そのおかげで走路での騎乗調教開始直後からまっすぐ走れる馬を作ることができました。

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(写真2)速歩でのドライビング

https://youtu.be/EmuFczpnADo
(動画2)速歩でのドライビング

 今シーズンは具体的に、「8の字」や「コの字」といった図形をきれいに描いてドライビングおよびその後の各個騎乗をするように指示しました。「8の字」のドライビングでは直線部分で左右のハミをあえてフリーにすることで、ハミが外れている状態ではひたすらまっすぐ前進していれば良いことを教えていきました(図1)。「コの字」のドライビングでは覆い馬場の出入口など馬が気をとられそうなポイントをあえてまっすぐに通過させることで、人の指示があるまではまっすぐ走り続けなくてはならないことを教えこみました。その結果、馬にとって“まっすぐ走り続けることがオフ”の状態を作ることができ、昨シーズンよりも更にまっすぐに走れる馬が増えたと実感しています。

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(図1)8の字の図形

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(図2)コの字の図形

   

 以上、今回は今シーズンの馴致段階での取り組みをご紹介いたしました。今後は800m馬場での手前変換、坂路での3列縦隊での集団調教などを教えながら、競走馬として必要な基礎体力を身につけさせていきたいと思います。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。