昼夜放牧と昼放牧(ウォーキング・マシン併用)、厳冬期はどちらがBetter?①(生産)

本年の日高地方は非常に寒い日々が続いており、積雪も多く非常に悩ましい時期をお過ごしと思います。そのような環境の中、皆様も例年以上に“厳冬期の当歳馬管理”についても頭を悩ましていることと思います。

さて、前号に記載したとおり、日高育成牧場では昨年11月末より “厳冬期における当歳馬の放牧管理”に関する研究として①昼夜放牧群(放牧時間:2224h)および②昼放牧(67h)+ウォーキング・マシン(以下WM)併用群 (馬服も装着)という2群に当歳(現1歳)を分け、放牧管理を行っています。

そこで、今号では、“昼夜放牧と昼放牧(WM併用)どちらがBetter?①”ということで、結論は出ない内容ですが皆様のヒントになるようなお話を進めていければと思っています。

群分けは昨年の1122日から開始し、1月末で早2ヶ月となりました。2群の比較としては、①被毛を含めた外貌的所見、②GPSを用いた放牧中移動距離、③脂肪の蓄積度合い(臀部の脂肪の厚さを、超音波機器を用いて測定します) ④体重・測尺値の変化、⑤成長に関わるホルモン動態(プロラクチンなど)、⑥ストレス指標(血中コルチゾル値を測定することで推定します)、⑦蹄の成長率など、様々な方向性から検討を行っています。

その中でも、現時点で大きな違いのある項目について紹介します。

まず、①被毛の状態(毛艶)です。すなわち、昼夜放牧群は“クマ”のように長い毛がボサボサの状態になる一方、昼放牧+WM併用群は被毛が薄く、毛の伸びぐあいも非常にゆっくりです。

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写真1:昼夜放牧群(フジティアス10)       

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写真2:昼放牧+WM併用群(ユメノセテアラム10)

      

これは、やはり寒さへの適応度合いの違いもあるのでしょうが、一方で昼放牧群は強制的に連続的な運動をすることによって基礎的な代謝が上昇した結果、被毛が伸びすぎることなく管理できているのではないかと考えています。被毛が伸びるのは、環境への適応のためではありますが、その被毛組織を作るためにはエネルギーがもちろん必要となります。そのような点を考慮すると、エネルギーの節約、また基礎代謝を上昇させるという面では昼放牧+WM併用の方が有利なのかもしれません。

また、次に②GPSを用いた移動距離測定についてですが、前号でも記載したとおり、昼夜放牧群は約710km程度の移動距離が確保できる一方、昼放牧群(67時間の放牧)では約34km程度という結果が出ています。昼夜放牧群の移動距離に関しては、何もしなければ約7km程度ですが、本年はラップ乾草を放牧地の4隅に配置し、またルーサン乾草を適宜同様な場所に撒くことで移動距離を約23km程度伸ばすことが出来ました。ちなみに、昼放牧群も同様な管理をしたところ、昼夜放牧群と比較して変化は少ないですが、ある程度運動距離を延長することが可能でした(0.51km程度)。このように、ただ放牧するだけでなく、作業にひと手間かけて人工的に馬の移動を促すように仕向けるのも放牧管理としては有効なのかもしれません。

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図1:GPSによる放牧地の移動軌跡(1220日)昼夜放牧群:フシティアス10 移動距離:7.1km

本放牧地は4角形ですが、移動が左半分に偏っており、歩行範囲が制限されていることがわかります。これは、図左上のシェルターを中心にして、限られた範囲で運動しているからだと考えられます。

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2GPSによる放牧地の移動軌跡(1月11日)昼夜放牧群:フジティアス10 移動距離:10km

4隅にラップ乾草を配置し、ルーサン乾草を随時撒いたことで移動量が増加し、このような軌跡が認められました。

さて、昼放牧群では、現在(1月末時点)収牧後に6km/hの速度で60分のWM運動を課しています。そのため、歩行距離としては、放牧中の移動距離と併せて昼夜放牧群とほぼ同様になります。しかし、歩く距離が同程度だとはいえ、この強制的な運動が、若馬の下肢部などへ影響を与えないものかどうか?非常に興味深いところです。そのため、我々は触診や歩様検査、またサーモグラフィーなどの機器も用いて比較検討を実施していますが、今のところ跛行などの目立った異常は発生していません。ただ、日によって骨端部や球節周囲に若干帯熱がある場合などもあります。その変化は朝の放牧前に多いため、馬房内で動いていないことによる“立腫れ”などの要因があるのかもしれませんが、WMによる影響ということも考えられます。このような点は皆様も非常に興味のある点だと思いますので、今後も引き続き詳細な検討を行っていきます。

今回はこの二つの項目のみ挙げましたが、いずれの放牧管理にしても長所・短所がありそうです。

今後も、研究結果を検討して、皆様に報告していきたいと思います。読者の皆様におかれましては、このような放牧管理法に関する経験などございましたら是非ご意見頂ければ幸いです!【JRA育成馬メールボックスはこちらです⇒ jra-ikusei@jra.go.jp 

精神面のトレーニング(日高)

 昨年末の大雪によって銀世界へと様変わりし、新年を迎えてからは朝の最低気温がマイナス10℃を下回る日も多く、本格的な冬を迎えています。新年といえば、1月の恒例行事となっているBTC育成調教技術者養成研修生の騎乗実習が本年も16日から始まりました。研修生17名は、411日に予定されている育成馬展示会までの約3ヶ月間、育成馬の騎乗実習を行います。育成馬の成長と同様に、若い研修生たちの著しい成長も非常に楽しみのひとつになります。

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毎年恒例となっている3ヶ月間のBTC研修生(2番手の騎乗者)の実習が始まりました。先頭からアルカイックレディの09(牝 父:フジキセキ)、フジノバイオレットの09(牝 父:バゴ)、チャペルラバーの09(牝 父:タニノギムレット)、グリーンオリーヴの09(牝 父:アグネスデジタル)

 厳しい寒さの中、育成馬の調教も徐々に本格化してきました。800m屋内トラックでは1列縦隊で2周駆歩(ハロン24秒まで)を行った後に、2頭併走で2周駆歩(ハロン22秒まで)の計3,200mの調教をベースに、週12回は800m屋内トラックでは1列縦隊で2周駆歩(ハロン24秒まで)を行った後に、坂路での調教(ハロン20秒まで)を実施しています。調教後も余裕があるように映っており、今後は馬のコンディションを見ながら、調教強度を上げていきたいと考えています。

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併走での調教も安定してきており、調教後も余裕があるように映っています。先頭左からタイキフローラの09(牝 父:ケイムホーム)、シルクファビュラスの09(牝 父:ケイムホーム)、2番手左からアモリストの09(牝 父:スペシャルウィーク)、アルナーダの09(牝 父:マヤノトップガン

 さて、今回は精神面のトレーニングについて触れてみたいと思います。調教を進めていく上で考えなければならないことは、筋力や心肺機能を上昇させる“トレーニング効果”はもちろんのことですが、これとともに馬の“精神面を鍛えること”も非常に重要になります。

トレーニング効果に影響する要素としては、坂路調教に代表される調教コース、馬場素材や馬場の砂厚などのハード面と、走行タイム、走行距離、インターバルトレーニングの間隔などのソフト面が挙げられます。一般的に、これらのトレーニング効果に影響する要素は、調教を実施する上で最も重要と捉えられ、心拍数や乳酸値による評価方法も確立されています。

一方、精神面を鍛えること、つまり馬の能力を可能な限り発揮させることも競走馬にとって重要です。特に、我々が携わっているブレーキングから2歳を迎えるまでの時期には、基礎的な精神面を鍛えるトレーニングを行う必要があります。しかしながら、その方法についてはあまり触れられていません。“精神面を鍛える”と言葉で表現するのは簡単ですが、具体的にはどのようにすべきであるかというのが最大の課題です。

競馬そのものは馬の本能を利用した競技であるといわれていますが、実際は、本来、牧草を食べ群れで行動する馬を、個々の馬房で濃厚飼料を給餌し、人が騎乗できるように馴致して、さらに日々調教を行うことが広義での競馬であると認識しています。すなわち、競走馬というのは本来の生理状態と異なる飼い方をしなければならないために、非常にストレスが掛かっていることが想像されます。そのために、競走馬に携わる我々は、少しでも“ハッピー”になるような馬の管理を心掛けなければなりません。育成期において行えることは、人が騎乗することを許容させること、つまり、人を乗せた状態での“バランス”を習得させ、アクセル、ブレーキ、ハンドルの各種扶助を理解させること、さらに人をリーダーとして認識させ、人が要求することを少しでも理解させることであり、結果的にこれらのことが、“精神面を鍛える”ことにつながると考えています。

 放牧地において自身のバランスで駆歩ができない馬は皆無ですが、人が騎乗した際に上手くバランスを取れるようになるまでにはある程度の時間が必要です。“頭を下げてカブったり”、“引っ掛かったり”、“左右どちらか一方が緊張したり”という行動は、バランスを取るための行動であるとも考えられます。そのために、騎乗馴致時には、馬に人を乗せてのバランスをどのようにして習得させるかが重要なポイントになります。具体的には、最初にサイドレーンを使用して馬の頭頚を一定の位置に保った状態での速歩で、人を乗せてのバランスを習得させると同時に、人を乗せてバランスを取るために必要な筋力を養成させます。そのバランスで速歩が維持できるようになってから、前進、減速、方向転換(開き手綱、および左右の単独脚)の扶助を理解させる必要があります。

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騎乗馴致時には、馬にとって最もバランスが取りやすい速歩で、人を乗せてのバランスを習得させることに重点を置きます。ステファノシスの09(牡 父:マヤノトップガン)

速歩で人を乗せてのバランスが取れるようになってから、駆歩に移行することによって、騎乗者の扶助を理解しながら“真っ直ぐ走り”そして“折り合う”ことが少し容易になります。欧州では、騎乗馴致を終え、ハッキング程度のキャンターに慣れた後には、一列縦隊(距離12馬身)でのステディキャンター調教に移行する前に、7馬身の距離を取り、馬と折り合い、真っ直ぐ走らせるための調教、つまり騎乗者の指示に従わせる調教を一定期間、実施していたのを記憶しています。

騎乗者の扶助を理解しながら“真っ直ぐ走り”そして“折り合う”こと、つまり騎乗者の扶助の理解が“精神面を鍛える”ことにつながると考えています。この扶助を理解させるには、“プレッシャーオン・オフの原則”による馬へのアプローチが重要になります。日々の調教を行う上で重要なことは、何のためにこの調教を行っているのかを理解することであり、偶然ではなく、必然的に馬の能力を最大限発揮させられるように調教を行いたいと思っていますが、なかなか上手くいかない現実を実感しています。

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エイダン・オブライエン厩舎では、初期馴致後、一列縦隊(距離12馬身)でのステディキャンター調教に移行する前に、騎乗者の指示に従わせるために7馬身の距離でのキャンター調教が一定期間行われていました。

冬期の当歳馬の管理(生産)

新年あけましておめでとうございます。本年もJRA育成馬日誌をよろしくお願いいたします。日高育成牧場では、浦河町乗馬クラブやポニー少年団の子供たちとともに、恒例の騎馬参拝で新年の幕が上がりました。騎馬参拝を行った西舎神社で、本年の人馬の安全を祈念いたしました。

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本年も西舎神社にて人馬の安全を祈念いたしました

さて、北海道浦河では12月下旬の降雪により、一面銀世界へと変わりました。放牧草を主食とし、昼夜放牧時には1日に1420時間は採食している馬にとって、放牧地が雪で覆われる北海道の冬期は、飼養管理方法の変更を余儀なくされます。また、氷点下を下回る気温の低下やそれに伴う放牧地面の凍結によって、放牧地での自発的な運動量も減少します。特に、成長期の当歳馬にとって、この環境の変化は大きな意味を持ち、冬期には成長が停滞することが知られています。この成長の停滞をハンデと捉え、人的な管理でスムーズな成長を促すべきなのか、それとも厳冬期を乗り越えるための生理的な反応と捉え、それを理解したうえである程度自然に管理するべきなのか意見が分かれるところでもあり、大きな課題となっています。

昨年は“自然な状態での管理”というテーマで、厳冬期も昼夜放牧を実施しました。その結果、やはり厳冬期には成長の停滞を認めるとともに、冬毛も非常に伸びてしまい、夏毛へと完全に換毛したのは1歳の6月ごろであったために、外貌上の面を考えると、特に7月のセリへの上場を目標とする場合には、厳冬期の昼夜放牧の実施を強く推奨できるという結果には至りませんでした。一方、昨年、厳冬期も昼夜放牧を実施した生産馬達は、現在、育成厩舎で調教を行っていますが、セリで購買した他の馬との相違点も特に見当らず、厳冬期の昼夜放牧のマイナス点を指摘できることはほとんどない状況です。そこで、前回のブログでもお伝えしたとおり、本年は、11月末から昼夜放牧群(22時間放牧群)と昼放牧群(7時間放牧+ウォーキングマシンによる運動群)とに分け、臀部脂肪厚、屈腱断面積、成長に関わるホルモンなどの変化について比較検討を行っています。

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昼放牧群は収牧後にウォーキングマシンを実施し、写真のようにハートレイトモニターを装着し、運動中の心拍数を測定しています。

比較試験を開始してから1ヶ月が経過した時点では、GPSで測定した放牧地における運動距離は、昼夜放牧群では約7km、昼放牧群では3.5kmとなっています。また、ウォーキングマシンによる運動は5.5km/hの速度で60分間実施しているために、昼放牧群の総運動距離は9kmということになります。外貌上の変化は、昼放牧群では夜間の馬房収容時に馬服を着用させていることもあって、冬毛は明らかに昼夜放牧群の方が伸びています。また、臀部脂肪厚は昼夜放牧群では厚さが増加する傾向にある一方で、昼放牧群では減少する傾向にあり、すでに変化が出始めています。この臀部脂肪厚の相違は、昼夜放牧群の気温の低下に対する生理的な反応、昼放牧群のウォーキングマシンによる影響、あるいはエネルギー供給量の過不足など様々な要素が関連していると考えられるので、その原因については今後検討する必要があります。

当歳から1歳にかけての臀部脂肪厚は、育成調教を行っている1歳~2歳の冬期の同時期における臀部脂肪厚と比較すると、13程度の厚さであるということ、また、当歳の冬期のこの時期からすでに牝馬の方が明らかに厚いということは、非常に興味深い所見でした。育成調教を行っている1歳~2歳の適切な臀部脂肪厚というのは明らかにされていませんが、当歳の冬期のそれと比較して3倍の厚さであったという結果については、加齢性に脂肪が蓄積されていくためなのか、それともセリに上場するための管理された馬体づくりが、筋肉の発達ではなく、実は脂肪を蓄積させているためなのかは分からず、今後の調査検討課題となります。脂肪蓄積はマイナスに捉えられがちですが、冬期の脂肪蓄積は生理的反応であり、必要不可欠であるような気がしています。例えば、冬期には競走馬の馬体が絞りにくいといわれているのも、寒さに対して脂肪を蓄積するという生理的な反応であるとも考えられています。出走時の競走馬はともかく、それ以外の馬、特に当歳~1歳の冬期には、ある程度の脂肪蓄積が不可欠であるように思われます。この時期の適切なボディコンディションスコア(BCS)が5.05.5といわれているのは、やはり適度な脂肪の蓄積は必要であるということを意味しているのでしょう。

野生のエゾシカは、寒冷に対して皮下脂肪を蓄積して対応するといわれており、冬期に向けて脂肪を蓄積するために、秋期の採食量が1年で最大になっているようです。“天高く馬肥ゆる秋”あるいは“食欲の秋”という言葉は、馬や人のみならず、冬眠する動物を筆頭に全ての動物が冬を乗り切るために脂肪を蓄積するための本能的な行為を意味しているのではないかと感じています。北海道和種や半血種などの馬、気温の低下に対してエゾシカと同様に皮下脂肪を蓄えることによって適応しているのに対して、サラブレッド種は皮下脂肪が少なく、安静時の代謝量を増加させることによって適応することが報告されています。また、馬では気温の低下に伴って、繊維消化率が上昇することも報告されており、気温の低下に適応する能力は有しているようです。しかし、北海道の冬を乗り越えるためには、ある程度の脂肪の蓄積は必要であるのかもしれません。

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昼放牧群は放牧地で寝ることはありませんが(写真上)、昼夜放牧群は天気の良い日には横になって日光浴する姿が目立ちます(写真下)。このように科学的なデータでは表すことのできない馬の行動についても観察していきたいと思います。

○ 「胆振地区生産育成技術講座」と「BTC利用者との意見交換会」(日高)

北海道では12月に入っても最高気温が10℃を上回る日もあり、道内各地で12月の最高気温を更新しています。ここ浦河も例年と比較すると非常に暖かく、12月上旬に馬服を着せてパドックに放牧していると、少し汗ばんでいることもあるほどでした。このような暖冬は、馬を管理する我々にとって事故防止の観点から大歓迎ですが、スキー場のオープンが遅れるなど影響を受けている方々もいるので、北海道らしい冬が早く来ることを願っています

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暖冬のために坂路へ向かう途中に見える山でさえも積雪は僅かのようです。左からチジョウノテンシの09(牡 父:ケイムホーム)とタシロスプリングの09(牡 父:ファンタスティックライト

育成馬の近況について触れさせていただきます。馴致を開始した時期の早い順から第1群、第2群、第3群と3つに分けており、第1群は牡馬、第2群は牝馬、そして第3群は牡牝混合となっています。調教スピードの差こそあるものの、全ての群ともに800m走路において、一列縦隊での1周のキャンター実施後に手前を変え、2列縦隊での2周のキャンターを実施し、総距離2,400mのキャンターを行えるまでになっています。1群および2群については、12月から坂路での調教も開始し、順調に調教をこなしています。年内はスピードにこだわらず、特に牝馬は精神面を重要視し、リラックスした馬なりのキャンターでの調教に主眼を置き、年明けから徐々に運動強度を上げていく予定です。

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1群および2群については12月から坂路調教も開始しています。先頭左はタシロスプリングの09(牡 父:ファンタスティックライト)、右はレディービーナス(牡 父:フジキセキ

さて、ここからは11月下旬に行われました「胆振地区生産育成技術講座」と、12月上旬に行われました「BTC利用者との意見交換会」について触れてみたいと思います。

「胆振地区生産育成技術講座」は、胆振軽種馬農業協同組合および同組合青年部の共催で行われ、日高育成牧場のスタッフが講師として招かれました。当日は胆振地区のみならず日高地区からも多くの生産育成関係者の皆様に足を運んでいただき、会場は200名を超える満員となりました。

参加者の多く方々が講習会のことをインターネットで知ったということを聞くと、改めてインターネットによる広報効果の大きさを実感しました。

講習テーマは「仔馬の飼養管理について」および「競走馬の育成調教について」の2点で、前者では2年前から当場で取り組んでいる「生産からの育成業務」での研究成果から得られた知見である「pH値の測定による客観的な分娩予知方法」および「ホルモン剤投与による空胎馬への泌乳処置」によって乳母として導入に成功した例を紹介し、その他出生から離乳までの初期育成管理について、また後者では「馬自身のバランスでの走行」について講演いたしました。講演後には質問も多数いただき、また、参加者の真剣な眼差しに圧倒された講習会となりました。会場の設営等にご尽力いただきました事務局の皆様方には、この場を借りて御礼申し上げます。

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200名を超える方々に足を運んでいただいた「胆振地区生産育成技術講座」の様子。

BTC利用者との意見交換会」は12月の恒例行事となっており、本年は「若馬の騎乗に対する考え方」というテーマに基づき、強い馬を作るには騎乗者が何を考え、どのような騎乗を心がけるべきかについて、騎乗者の観点から5名のパネリストの方々を中心に活発な意見交換が行われました。5名のパネリストの方々のお話には、非常に説得力がありました。これは馬を取扱い、そして調教するなかで、自身で悩み、最善の策を考え、そして行動し、自身の経験を得てきた自信の表れではないかと感じました。一方、現状にとどまることなく、常に良いものを模索していこうという姿勢も非常に感じられました。何事も馬の調教と同様、私自身、「前進気勢」が最も重要であるということを感じずにはいられませんでした。非常に刺激を受けるとともに、多くのヒントをいただくことができました。

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例年同様に活発な意見交換が行われた「BTC利用者との意見交換会」の様子

09年日高育成牧場生産馬がJRA育成馬厩舎へ(生産)

 馬産地日高では、朝夕の冷え込みが一段と増し、日高颪も吹き荒れ、冬の気配が感じられます。そんな中、昨年より本ブログで近況をお伝えしていた2009年の日高育成牧場生産馬である1歳馬7頭は、繁殖厩舎からJRA育成馬厩舎へと巣立っていきました。今後は、1歳市場で購買した他の育成馬と同様に騎乗馴致が行われ、来年のブリーズアップセールに向けて調教が進められます。

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JRA育成馬厩舎へと移動し、ブレーキングが開始された09年日高育成牧場生産馬 写真はハギノゴールドキーの09(牡 父デビッドジュニア

日高育成牧場では、1998年より繁殖に関する研究を行ってきましたが、昨年度から「母馬のお腹の中から競走馬までの一貫した調査研究や技術開発」を目的として、新たな取り組みを行っています。この取り組みのなかで、昨年誕生したのが、前述の7頭であり、“自然な状態での管理”というテーマに基づき、JRA育成馬厩舎へ入厩するまで、厳冬期も昼夜放牧を継続してきました。

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ハギノゴールドキーの09(牡 父デビッドジュニア)の1日齢(左)、5週齢(右)

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同じく4ヶ月齢(左)、10ヶ月齢(右)

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同じく14ヶ月齢(左)、18ヶ月齢(右)

写真で振り返ると順調に育ったように見えますが、生産馬を順調に1歳に育て上げるまで、生産者の方がいかに苦労されているのかをわずかながら、実感することができました。

これら7頭のなかでも、思い入れのある1頭を紹介いたします。その馬はハギノゴールドキーの09(牡、父:デビッドジュニア)です。同馬の母であるハギノゴールドキーは、当場において繁殖研究が開始された1998年より繋養され、受胎率も非常に高く、多くの研究成果に貢献し、さらに、学生のための直腸検査等の実習にも利用され、長きに渡って、繁殖研究を支えてきました。しかし、昨年、19歳で出産した産駒を最後に、高齢のため、繁殖生活にピリオドを打ちました。さらに、繁殖生活引退後の本年度も、4月にお伝えした育児放棄が起きた際に、ホルモン処置によって泌乳を誘発し、乳母として導入した代理母としても活躍し、当場の“カマド馬”的な存在です。前述のハギノゴールドキーの09は、この馬の多くの産駒のなかでも、ターフを駆けるチャンスを持つ最初で最後の唯一の産駒になるため、自然と期待が高まっています。

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多くの研究成果に貢献し、繁殖研究を支えてきたハギノゴールドキー

一方、本年生まれた当歳馬は、9月下旬から開始した分場での24時間放牧管理によって、のびのびと過ごしています。昨年は“自然な状態での管理”というテーマで、厳冬期も昼夜放牧を実施し、給餌についてもエンバクなどの濃厚飼料を最小限に止め、チモシーやルーサンなどの粗飼料を主体にしました。その結果、厳冬期には、成長の停滞を認め、冬毛も非常に伸びました。1歳の夏ごろまでには、馬体も回復したために、厳冬期の昼夜放牧の是非についてまでは言及することはできませんでした。そこで、本年は、厳冬期の昼夜放牧群と昼放牧群に分け、様々な項目について比較検討を行う予定です。興味深い結果が得られた際には、このブログでもお伝えしたいと考えております。

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分場で24時間放牧管理を行っている当歳馬たち

2010年度育成馬の入厩完了(日高)

日高地方では“雪虫”が飛び交い、日々、最低気温が更新され、冬の訪れを感じさせる今日この頃です。そんな中、10月中旬に行われたオータムセールでの購買馬2頭が、1022日に入厩を終え、そして、「生産からの育成業務」というテーマの中、昨年、当場で誕生した7頭のJRA生産馬が、1025日に繁殖厩舎からの移動を終えました。これによって、日高育成牧場所属のJRA育成馬63頭の入厩がすべて完了しました。

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JRAのオータムセールでの最初の購買馬となったマンデームスメの09(牡・父:クロフネ

JRAは例年サマーセールまでで購買を終えており、オータムセールでの1歳馬の購買は、本年が初めての試みとなりました。ここ数年、コンサイナーや各牧場のセリ馴致の技術が著しく向上し、ほとんどの購買馬は、人の指示に対して従順であるために、10月末に入厩したとしても、ブレーキングが遅れることなく、順調に進むものと考えています。また、オータムセールは本年から前半の月・火は主に新規の上場馬部門、後半の水・木はサマーセールからの再上場馬部門という区分がなされました。4日間のロングランで800頭以上が上場されるという大規模なセリですが、購買者が狙いを絞ってセリに参加できるこの区分は、お客様のニーズにマッチした対応であったと思います。

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JRAが生産した育成馬第1号のフジティアスの09(牡・父:デビッドジュニア

オータムセールの購買とともに、本年からの新たな取り組みという点では、JRA生産馬の育成厩舎入厩も同様になります。1歳のJRA生産馬7頭は、「母馬のお腹の中から競走馬までの一貫した調査研究や技術開発」を目的として、1歳セリで購買した馬と同様に育成し、ブリーズアップセールに上場する予定です。昨年誕生した7頭は、“自然な状態での管理”というテーマに基づき、今回の入厩まで、厳冬期も昼夜放牧を継続してきました。セリのための馬体づくりも無関係に、濃厚飼料を最小限に、青草を主食として初期育成、および中期育成を行ってきました。そのためか、少し、お腹周りに余裕がある体型となっています。オータムセール購買馬とともに、最も遅い第3群でのブレーキングが、10月末から開始されています。他の育成馬同様に、ブリーズアップセールを経て、無事、競走馬になってくれることを願っています。

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800m屋内トラックでキャンターを行う第1群の牡馬

さて、9月上旬から騎乗馴致を開始している第1群の牡馬は、1列縦隊で800m屋内トラック2周の調教メニューをこなしており、非常に順調です。

一方、10月上旬からブレーキングを開始した第2群の牝馬は、ようやく騎乗ができるようになりました。一般的に、牝馬は、牡馬と比較して、騎乗に至るまでに、順調さを欠くことが少なくなくありません。第2群の牝馬のなかにも、ランジングレーンがお尻に触れることを嫌う馬、腹帯を嫌う馬、さらには騎乗するのを嫌う馬などがいます。

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人と同じで牡よりも牝の方が繊細なようです。腹帯に慣らすための、はじめてのローラー装着では、圧迫を感じてかぶったり、立ち上がろうとすることがあります。人は瞬時に追いムチや声によって、馬を前へと推進します。馬はハッピースキャットの09(牝・父:マンハッタンカフェ

このように、牝馬は非常に繊細であるために、『馬を支配』しようとするのではなく、『馬を導く』ことが、牡馬以上に必要であることを、再認識しています。例えば、馬に対して何らかの要求を行ったときに、すぐに答えを求めるのではなく、馬に考える時間を少し与える余裕を持つことが大切です。考える時間を与えずに、すぐに答えを求め、人が強引に支配する方向に進んでしまうと、特に牝馬はストレスを感じるのではないかと考えています。したがって、従順なように見える牝馬のなかにも、ストレスを内に秘めている馬もいるのではという前提で、日常の小さな変化も見逃さないようにしたいと心がけています。

離乳後の子馬たち(生産)

8月の離乳を終え、ひと段落した当歳馬たちですが、9月の中旬には恒例の血統登録検査が行われました。血統登録検査は、競走馬になるための第一歩でもあり、サラブレッドとして競馬に出走するためには、サラブレッドである旨の証明を受け、そして登録されなければなりません。血統登録のための検査は、最近の10年ほどで大きく変わり、血統、すなわち親子鑑定は、2003年に血液型検査からDNA型検査に変更され、さらに2007年からは、個体識別にマイクロチップ検査が導入されたために、血統登録検査は簡便かつより正確なものに発展しています。

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個体識別のためのマイクロチップ検査

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検査のためにトリミングされた

当歳馬キセキスティール10(牡 父:ケイムホーム

2007年産駒から、血統登録を行った全頭に対してマイクロチップが装着された結果、本年の札幌競馬開催における出走馬のマイクロチップ装着率は、6070%にも達しました。このように、現在は、競馬の公正確保に不可欠な装鞍所での出走馬の個体照合にも、マイクロチップが利用され、非常に有益なものとなっています。

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札幌競馬場の装鞍所でのマイクロチップ検査

出走馬の60~70%はマイクロチップを装着している

また、9月の下旬には分場へと放牧地を移動し、24時間放牧を開始しました。離乳後の不安を乗り切り、8頭の群れで落ち着いていた当歳馬たちでしたが、放牧地の移動という環境の変化に少しストレスを感じているようにも映りました。体重は前日から510kg減少し、放牧地での1日の移動距離は12kmから18kmに増加していました。母馬と離別する離乳時には、ストレスは最小限に止めることを第一に考えていましたが、離乳後は、可能な限り多くの環境の変化を経験させ、「心のブレーキング」を行うことも重要であると考えています。しかしながら、秋から冬にかけては、寒暖の変化も激しいため、感染症の発症には細心の注意を払わなければなりません。

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放牧前には飼付け場所となるシェルターに慣らしておく

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環境の変化を乗り越えリラックスする当歳馬たち

当歳馬たちを分場へと移動した当日の午後に、日高育成牧場内にヒグマが出没しました。分場は、本場よりもさらに山奥になるために、少し心配する一方で、子馬たちにとって適度な刺激となり、「心のブレーキング」になればとも思っています。

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当場の敷地内に出没したヒグマ

第1群のブレーキング開始!(日高)

91日から3日にかけてサマーセールで購買した馬が入厩し、ブレーキング(騎乗馴致)を913日から開始しました。今年の騎乗馴致は例年通り3群に分けて実施します。その群分けは、馬体の発育や入厩日等を参考に実施しています。また、日高育成牧場で生産した馬7頭も来年の競走馬デビューを目指して、馴致を行いますが、生産馬はもう少し成長を待って11月頃から騎乗馴致を開始しようと思っています。

BTCの研修生もJRA育成馬8頭を用いて実際に馴致を行う等の研修を行っています。BTCの研修生はここで一度ブレーキングを体験し、年が明けたら実際にJRA育成馬を活用して騎乗実習を行います。まだ、人の技術が追いついていませんが、実際に競走馬になるJRA育成馬を用いて、その調教過程を自分の肌で体験することは、優秀なホースマンになる上で必ずや彼らの大きな財産になることと思います。

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BTC教官指導の下、馴致を体験するとともに見学して学びます。ローラー(腹帯)馴致までスムーズに終了し、ラウンドペンの中で教官がドライビングを行っているのを補助しています。馬はザフェイツの09(牡 父スクワートルスクワート)

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外でドライビングを行う前にラウンドペンの中で馬に前進気勢を与え、活発に動かすことは重要です(馬は同じ)。

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実際に育成馬にまたがるところまで研修します。横乗りを行い、騎乗者の体重に慣らしながら馬房内を動かします(馬は同じ)。

 JRA育成馬の馴致は、育成牧場管理指針にも記載しているとおり、まずラウンドペンで調馬索を行うところから開始します。日高育成牧場では、調馬索後、さらに常歩運動を負荷する目的でウォーキングマシンを歩かせ、さらに、放牧を行って馬体のリラックスを図っています。当初、私自身、ウォーキングマシンは機械的な強制運動であることから好きではなく懐疑的であったのですが、馬の運動量を増やすことができることや、意外に馬も退屈そうではないので、積極的に使用しようと考えています。現在は6km/時のスピードで馬が落ち着いて歩くことができるまで、2030分程度行っています。また、まだ青草も多く気候もよいので、調教後には草を食べさせますが、まだ成長過程のこの時期には地面に生えている青草の摂取によってメンタル面でも馬をハッピーにできると考えています。また、集団で放牧する群れを活用することで、集団調教への移行も容易になります。

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馴致後、ウォーキングマシンにいれて歩かせ、放牧地に向かいます。放牧地までの引き馬も騎乗にいたるまでの重要な馴致と考えています。

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馴致が終わった後、昼間放牧をしてリラックスを与えます。

乳母と孤児の離乳(生産)

 1歳馬のセリシーズンは残すところオータムセールのみとなりました。本年JRAが購買した馬たちは日高・宮崎の各育成牧場に入厩しております。

 本年も日高育成牧場・宮崎育成牧場からの育成編、日高育成牧場の生産馬に関する生産編の3本柱で、育成馬や生産馬の近況をお届いたしますのでよろしくお願いいたします。

 初回は日高育成牧場の生産に関するお話です。

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“乳母と孤児の離乳”

全国的に猛暑の話題が尽きない今年の夏ですが、北海道も同様で、例年と比較すると明らかな猛暑に見舞われました。例年、お盆が過ぎれば涼しくなりますが、今年は9月に入っても日中の気温は25℃を越える日も多く、残暑は厳しい日々が続いています。しかし、馬にとって不快な存在であるアブは姿を消したために、放牧地の馬達はそれほど不快ではないように映ります。

例年では、暑さのピークを過ぎ、涼しくなる8月中旬に離乳を実施しているのですが、今年の猛暑では、暑さとアブによる二重のストレスが子馬を襲うことも考えられたので、実施時期を遅らせることも考えました。しかし、幸いにもアブの飛来数は少なくなってきたために、離乳後のストレスも許容範囲であると判断し、予定通り8月中旬と下旬の2回に分けて離乳を実施しました。

今回は、4月にお伝えした育児放棄を受けた子馬と、ホルモン処置によって泌乳を誘発し、乳母として導入した代理母馬との別れを中心に離乳について綴りたいと思います。

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育児放棄の母馬から虐待を受ける子馬(生後2週目)

4月にお伝えしたとおり、当場で育児放棄が起こり、子馬への虐待がエスカレートしたために、空胎馬にホルモン剤を投与して、泌乳を誘発し、乳母として導入する試みを行いました。乳母と子馬の対面から6日目にようやく乳母が子馬を許容し、その後、子馬は乳母によって順調に育てられ、春の陽ざしの中で放牧中の2頭は、ほんとうの親子のように映りました。(育児放棄その1その2

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本当の親子のように見える乳母と子馬(生後3ヶ月目)

離乳は、例年どおり、群れの安定化を目的として、45組の親子の放牧群から同時に全ての母馬を引き離すことはせずに、半数ずつの母馬を前半と後半の2度に分けて引き離す、“間引き方法”によって実施しました。そして、注目の乳母と子馬の離乳は、前半の8月中旬に行われました。この日は、JBBAの研修生および当場で開催している“サマースクール”に参加している大学生の見学が行われていたため、いつもより多くの人が見守る中での離乳となりました。子馬は5.5ヶ月齢に達し、体重は235kgにまで増加し、同時期に生まれた子馬より少し小さくみえるものの、立派な馬体に成長し、離乳を迎えました。

子馬は、乳母が他の母馬とともに、1kmほど離れた放牧地に連れ出された直後こそ、少し落ち着かない様子でしたが、15分後には早くも落ち着き、残っている他の母馬を中心とする群れの中で、草を食べ始めました。一方、乳母は別の放牧地に放された瞬間に、馬場柵沿いを走り回り、子馬を呼び続けていました。1時間後に、ようやく少しは落ち着きはじめたものの、立ち止まっては耳を澄ませ、いななく行動は、夜中まで続きました。

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離乳翌日の手入れ時にも落ち着かない乳母

離乳翌日の子馬は、落ち着いており、体重も離乳した子馬の中では最小の4kgの減少にとどまり、馬房に他の子馬と一緒に収容した後も、仲良く戯れ、ストレスは見受けられませんでした。翌々日には、体重も離乳前に復し、餌も完食するようになりました。一方、乳母は離乳翌日も落ち着かず、体重は40kg減少し、離乳した他の母馬より10kgほど多い減少となりました。翌日の午後になって、ようやく落ち着きを取り戻しました。

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非常にリラックスしている離乳翌日の子馬の様子

このように、離乳に際して、子馬は何もなかったように振る舞う一方で、乳母は他の母馬と比較しても明らかに不安定な状態となりました。これらのことを鑑みると、子馬は成長すると母馬への依存度は小さくなっていく一方で、たとえ乳母であっても、一度備わった母性の強さというのは、子馬の母馬への思いとは、比べられないほど強いものであるように思われました。また、これだけ強い母性を持っていた乳母であったからこそ、孤児を許容することができたのだと感じました。 

6/8「ひだかトレーニングセール」にむけて(上場予定のJRA育成馬紹介)(日高育成牧場)

6/8(火)JRA日高育成牧場で開催される「ひだかトレーニングセール」に上場を予定しているJRA育成馬(5頭)についてご案内いたします。なお状況により、欠場となる馬が出る場合もあります。詳細につきましてはJRA馬事部生産育成対策室(電話03-5785-7540)までお問い合わせ下さい。

2010 JRAブリーズアップセールを欠場した馬は6頭います。そのうち、タイキエンプレスの08(牡:父スウェプトオーヴァーボード)、ハナコスマイルの08(牝:父ネオユニヴァース)、ミズホの08(牝:父ネオユニヴァース)、メモラブルワーズの08(牝:父ストラヴィンスキー)、ニキトートの08(牝:父チーフベアハート)の5頭は、68日(火)に開催される『ひだかトレーニングセール』を目指して調教を進めているところです。※1

 これらの馬たちは、それぞれブリーズアップセール直前に発症した疾病や跛行等のため、順調に調教を進めることができませんでした。セールを見送った後は約24週間、馬体をいったん緩め、常歩運動で管理してきました。彼らに対する調教のポリシーはブリーズアップセールに上場する馬となんら変わりません。つまり、ステッキを入れてラスト1Fを速いスピードで走るためのトレーニングではなく、競走馬として必要な基礎体力をつけたうえで、馬自らが走りたい気持ちとなるような教育を行って上場するということです。しかしながら、当日のセールにおける騎乗供覧では、セリの雰囲気にあったスピードを出して皆様にご評価をいただくつもりです。

ここまでの調教過程を理解していただいた上で、JRAのポリシー、すなわち走行タイムだけではなく、いかにいいフォームで走ることができるかを見ていただければと考えています。なお、当日はセールのレポジトリーとは別に、上場馬の厩舎前に設ける予定のJRAブースにおきまして、上場馬の調教過程、疾病歴および個体ごとのX線・エコー・内視鏡画像をご覧になることができます。どうぞ、ご利用ください。

※1ダンツローレライの08は左肩跛行が良化せず、ひだかトレーニングセールを欠場することとしました。

Photo_6 ひだかトレーニングセール上場番号76番 ニキトートの08

ニキトートの08(牝父チーフベアハート)は、3月に喘鳴症を発症したためBUセールを欠場しました。セール後、日高育成牧場においてトレッドミル検査を行った結果に基づき、516日に声のうおよび声帯摘出手術を実施しました。経過も良好で、術後3日後から普通に調教を実施しています。姉はフィリーズレビュー2着の当場育成馬アマノチェリーランでもあり、血統的にも期待している馬です。

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ニキトートの08の調教(529日)

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縦列での調教で、先頭はひだかトレーニングセール上場番号75番 ハナコスマイルの08(牝 父ネオユニヴァース)です(529日)。

ハナコスマイルの08319日の屋内坂路馬場において3F46秒(16-15-15/F)の調教後に右後肢の跛行を呈し、レントゲン検査の結果、陳旧性の右第3趾節種子骨骨折も確認されたため、413日まで調教を休んでいました。現在では、スピード調教も順調にこなしており、元気よく走ることができるようになってきました。

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ひだかトレーニングセール上場番号74番 メモラブルワーズの08(牝 父ストラヴィンスキー)の調教後の常歩運動です(519日)。

メモラブルワーズの081月に左前内側管骨瘤がでたり、4月に右肩跛行を呈したりするなど、順調ではありませんでした。本馬は気性の勝った馬で、走りたい気持ちに身体がついていけなかったのですが、現在では心身ともに充実し馬体に身が入りつつあります。

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気候がよくなったので、天気のいい日はグラスピッキングを実施しています。

精神面のリラックスを図るとともに、馬に草食動物としての本能を刺激し、肉体的・精神的に健康に保つものと考えています。向かって左の芦毛馬は、ひだかトレーニングセール上場番号15番 タイキエンプレスの08(牝 父スウェプトオーヴァーボード)、向かって右が上場番号16番 ミズホの08(牝 父ネオユニヴァース)です(519日)。タイキエンプレスの08はブリーズアップセール前日まで順調に調教を行っていましたが、右前屈腱部の腫脹が見られたため欠場したものです。エコー検査を定期的に実施しながら、調教を進めています。また、ミズホの08は、312日に小腸捻転を発症し開腹手術を実施しました。腸管のダメージは少なく、切除はせず整復のみ実施したものです。術後の経過は良好で、術後18日から騎乗運動を開始し、順調に調教をこなしています。