育成馬ブログ 日高⑤

○  育成馬の近況報告(日高)

年末年始には平年の約2倍近い降雪量があった日高育成牧場ですが、1月初旬から気候は一転して暖かく(?)なり、この時期には珍しく「雨」が降る日もみられました。とはいえ立春を迎えた現在は再び寒さがぶり返しており、春の訪れはもう少し先のようです。

    Photo_2写真1.育成牧場を訪れた珍客(?)。

育成馬の調教状況

さて、JRA育成馬の調教状況をお伝えします。日高育成牧場ではこれまで、出生時期や成長度合い、馬格などをもとに3つの群にわけて騎乗馴致を開始し、その群ごとに運動メニューを作成して調教を進めてきました。基礎体力がつき調教内容が本格化してきた1月中旬からは、全群が合流して同内容の調教を実施しています。

現在の基本メニューは、屋内800mトラックにおいて縦列のキャンター(1周:ハロン24秒程度)を行った後、手前を変えて2列縦隊でのキャンター(2周:ハロン21秒程度)を行うというものです。強めの負荷となる坂路調教は毎週火曜日と金曜日に実施しており、屋内800mトラックでキャンター2周のウォーミングアップをしてから坂路を1本(3ハロン57秒程度)駆けあがっています。スピードを求めるのではなく隊列を乱さず前馬との距離を2馬身に維持することに主眼を置き、精神面の鍛錬を目指しています。また、休み明けの月曜日と坂路調教翌日には800m屋内トラックにおいて「リラックス」させることに主眼を置いた調教を行っています。1週間の調教メニューをパターン化することで、育成馬に「オン」と「オフ」を理解させたメリハリのある調教ができるよう、心がけています。

一部の馬の近況動画(坂路調教)をご覧下さい。

 

動画1.先頭からステージワンスモアの13(牡、父:ローレルゲレイロ)、 アーバンライナーの13(牡、父:タニノギムレット)、フローラルホームの13(牡、父:ヨハネスブルグ)、シラタマの13(牡、父:サウスヴィグラス)。この日のタイムは3ハロンが20.3-19.6-19.1(秒/ハロン)でした。

 

動画2.先頭からマルカジュリエットの13(牝、父:スゥエプトオーヴァーボード)、スイートカフェの13(牝、父:パイロ)、シックファイターの13(牝、父:ワークフォース)。この日のタイムは3ハロンが19.3-18.9-18.4(秒/ハロン)でした。

 

動画3.先頭からテイエムサイレンの13(牡、父:シンボリクリスエス)、ナイキクレイバーの13(牡、父:アンライバルド)、ヴァルネリーナの13(牡、父:サムライハート)。この日のタイムは3ハロンが19.3-19.9-19.0(秒/ハロン)でした。

 

育成馬検査を行いました

先日、JRAの本部職員が来場して育成馬検査を行いました。これは、購買以降の馬体の成長具合や調教進度などを確認する定期検査で、騎乗馴致が終わった11月頃と調教が本格化する1月下旬頃の計2回実施しています。

この検査では、全馬の調教状況を確認してから1頭ずつの馬体検査を行います。検査者の前で駐立し、歩様検査を行う育成馬は、疾病の有無だけではなく駐立や引き馬の「しつけ」や見た目の美しさ(タテガミやのトリミング状態など)も評価されます。

 

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写真2.当日の検査風景。人馬の信頼関係やしつけの状態、トリミングが行き届いているかなど、多岐にわたる項目が検査されました。このような機会がある度に、ご来場いただいたお客様に「楽しんで育成馬を見ていただく」ための練習を繰り返し行っています。

 

今回、検査と並行して「ベストターンドアウト賞」を決定しました。ベストターンドアウト賞は日本ダービーやジャパンカップでも馴染みがありますが、「馬がよく躾けられ、美しく手入れされ、かつ人馬の一体感を感じさせる展示・引馬(リード)を行う」人馬に送られます。JRAの育成牧場では「馬を見ていただく」という気持ち・姿勢を再確認する機会として検査とあわせて実施しています。

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写真3.ベストターンドアウト賞(牝馬)に選ばれたカシノリボンの13(牝、父:タニノギムレット)

 

春の訪れはまだ先のようですが、ブリーズアップセールの上場番号も決まり育成馬も徐々に本格化してきた今日この頃。競走馬デビューの時を待ちわびる育成馬達を是非見に来てください。ご来場、心よりお待ちしております。

育成馬ブログ 生産編⑥

厳冬期の子馬の管理

 

JRA日高育成牧場では、この時期(1月)の子馬は昼夜放牧で管理しています。

 

【放牧時間】 

22時間(朝10:30~翌朝8:30)

※放牧時には馬服を着用

 

【飼料】

(1日2回)

朝(馬房内):スタム(バランサー)0.5kg、エンバク1kg、ルーサン2kg

夕(放牧地):スタム(バランサー)0.5kg、エンバク1kg、ルーサン2kg

この他に自家製牧草の自由採食(馬房内および放牧地)

 

【BCS】

5.0~5.6(全7頭の平均5.2)

※2013年産駒の同時期:5.4~6.0(全7頭の平均5.7)

 

【ADG(1日あたりの体重増加量)】

0.3~0.6(全7頭の平均0.4 12月初旬~1月初旬の1ヶ月間)

 

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午後の放牧地での飼付けの様子

 

BCSに関しては、昨年産駒の同時期と比較すると約0.5ポイント低い値を示しています(折れ線グラフ)。現在の給餌量は昨年同時期と比較してほぼ同量ですが、昨年は冬場に備えて比較的早い時期から、飼料(昨年はオールインワン飼料ワンダーオリジナル)を多めに与えてきたことによるものです(棒グラフ)。

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昨年は「厳冬期の成長停滞」および「春以降の急激な成長」の防止を目的として、秋季からBCSを高めに管理してきました。

馬体の成長に関しては、個体差はあったものの、概ね所期の目的を達成することができたように感じました。

一方、デメリットとして、9~10月にかけて球節の骨端炎(明らかな疼痛、帯熱が認められたもの)を発症する馬がいたこと(7頭中3頭)、1歳夏時期に市場購買馬と比較したところ、やや太めの馬体に映ったことがあげられました。

いずれも大きな問題には至りませんでしたが、草が豊富にある秋時期における濃厚飼料の過給が、骨端炎を始めとする骨軟骨症のリスクに繋がることを実感しました。

本年については、同時期における骨端炎の発症馬は認められませんでしたが、昨年より低めのBCSで冬を迎えたことが、今後の成長や健康状態にどのような影響を及ぼすか気になるところです。

 

今後、気温が更に低下する2月を迎えますが、BCSと増体量を観察していきながら、徐々に濃厚飼料を増やしていく予定です。

 

冬期の昼夜放牧に関する議論は尽きないところですが、日高育成牧場では、引き続き様々なデータを収集しつつ、最適な飼養管理方法を模索していきたいと思います。

 

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育成馬ブログ 日高④

○  本年もよろしくお願いします!(日高)

あけましておめでとうございます。昨年に引き続き、JRA育成馬ブログをよろしくお願いします。12月下旬の日高育成牧場には例年の2倍近い降雪があったため牧場は根雪に覆われており、まさに「厳冬期」です!マイナス10℃を下回る日も少なくなかった今回の年末年始、育成馬の管理は昼放牧のみとしましたが、事故なく無事に年始を迎えることができました。リフレッシュした育成馬達は元気に調教を再開しています。

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写真1.雪化粧した日高山脈と育成馬たち。

 

 

育成馬の調教状況

さて、JRA育成馬の調教状況についてお伝えします。第1群の牡馬は屋内800mトラックにおいて、縦列のキャンター(1周:ハロン24秒程度)を行った後に、手前を変えて2列縦隊でのキャンター(2周:ハロン22秒程度)を行うメニューを継続しています。年末には体力もつき走りたい気持ちを前面に出す馬が多くなってきますが、前馬との距離を2馬身に保ち前後左右の隊列を整えた調教を行っています。屋外1600m馬場が雪でクローズされた11月末以降は、週2回の屋内坂路馬場での調教を上記メニューと併せて行っています。坂路調教日は屋内800mトラックでキャンター2周のウォーミングアップをしてから坂路を1本駆けあがる(3ハロン60秒程度)調教を行っています。

第2群の牝馬もしっかり体力をつけており、1群とほぼ同内容の調教を行っても息の入りが早くなり騎乗者の手応えにも余裕が出てきました。12月から開始した坂路調教にも徐々に慣れ、年末までには週2回の坂路調教(1本、3ハロン66秒程度)が安定して行えるようになりました。

馴致を最後に開始した第3群も概ね順調に調教が進んでおり、12月末には坂路での調教ができるまでになりました。これから体力をつけていき、1月中旬を目途に1・2群と合流する予定です。


動画1.坂路調教を行う2群の牝馬。3~5頭を1ロットとした縦列調教を行っています。日々先頭を入れ替えることで、先頭の馬には自ら前に出る前進気勢を、後続の馬には走りたい気持ちを我慢することを教えています。

 

ゲート馴致と確認試験

JRA育成馬に対するゲート練習は、入厩して騎乗馴致を開始した時点から毎日行っています。ウォーミングアップを行う覆角馬場に練習用ゲートを設置して、このゲートを馴致・調教時に通過することで、ゲート通過を馬にとっての「特別なこと」ではなく「日常、当然のこと」と理解させます。JRAでは、育成段階におけるゲート馴致の目標を“前扉を閉めたゲートに入り後扉を閉めて、リラックスした状態で駐立し、前扉を開けたら常歩で発進すること“としています。昨年末からこの確認試験を開始しており、これまでに順次合格していっています。3月に再び確認試験(最終)を行ってブリーズアップセールに臨みます。

 

 

動画2.ゲートの確認試験を行う育成馬

 

BTC利用者との意見交換会

昨年12月16日、当場では「若馬の鍛錬~心身ともに健康な馬に鍛えあげる~」をテーマに、2歳戦の早期から活躍できる馬に鍛えるための取り組みや工夫についての意見交換会を開催しました。はじめに日高育成牧場から「アイルランドの調教」と「トレーニング効果の判定方法」についての話題提供を行い、パネリスト3名(BTC利用者代表)を中心にフロアーの参加者と意見を出し合いました。今回、特に白熱した意見交換が行われたのは「隊列の考え方」と「奥手な馬の取扱い」、「トレーニング効果の判定方法」の3項目でした。JRA育成馬の調教を進めるうえで悩むことの多いこれらの項目について、BTC利用牧場の皆様と意見交換が行える非常に有意義な時間となりました。早期から勝ちあがる強い馬を作るという共通の目標に向けて、意見交換会は今後も引き続き実施したいと考えています。

 

BTC32期研修生の騎乗研修

1月7日からBTC育成調教技術者養成研修生の騎乗実習が始まりました。今年は18名の研修生が4月の育成馬展示会までの約3ヶ月間、JRA育成馬を用いた騎乗実習を行います。馴致実習を行ったJRA育成馬と久しぶりに再開した研修生は、若馬の成長ぶりに驚いていました。研修生にとってこの研修がはじめての若馬騎乗機会となるため、しばらくは若馬の動きに対応しきれないことも多々あります。しかし、実習が進むにつれて若馬と一緒に大きな成長を遂げ、4月には一人前の騎乗者・ホースマンに成長して卒業していきます。近い将来、彼らが育成牧場の最前線で働く際に、今回の騎乗実習で得た経験を役立てられるようにしっかりとサポートしたいです。

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写真2.BTC研修生の騎乗実習が始まりました(2列目内の騎乗者がBTC研修生)。はじめて行う若馬の調教に緊張しながらもしっかり騎乗できています。

 

厳しい寒さの続く北海道で鍛えられるJRA育成馬たち。競走馬としてデビューする日を夢見て日々成長する彼らを見に、ぜひ日高育成牧場まで足を運んでください。皆様のお越しをお待ちしています!

育成馬ブログ 生産編⑤ 「その2」

離乳後の子馬の取扱い 馬房内での張り馬

 

馬房内での手入れについては、離乳後から張り馬で実施しています。

当場では、馬房の奥の壁に1本のチェーンで張っています。

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このように、出入口に対して後ろ向きに張る理由として、

「出入口に向かって出て行こうとしない」

「出入口が見えないので馬が安心できる」

「後方からの人の接近に慣れさせることができる」

「人を蹴らないことを教えることができる」などの様々な利点があります。

 

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後ろ向きの張り馬により、後方からの人の接近に慣れさせることができる 

 

この他にも、後方から与えるプレッシャーで、馬が左右に動くことを覚えることは、騎乗馴致におけるドライビング、その後の騎乗における「馬の後方からの指示」にも繋がります。

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張り馬での後方からの指示は、その後の騎乗にも繋がる

 

張り馬の馴致では、最初は引き手をリングに通して、2名1組で慣らします。慣れてきたら徐々に「タイチェーン」を使用して張り馬をします。

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最初は引き手を通して張り馬をする

 

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タイチェーン:馬側の段端にはナイロン紐を装着し、外傷・馬具破損を予防

 

馬によっては、立ち上がったり、後退したりすることで、チェーンを破損する癖がつくことがあります。このような場合には、引き手を引っ張って、抑え込むのではなく、後方からプレッシャーをかけて、大人しく駐立したらプレッシャーを「オフ」にして安心感を与えながら時間をかけて慣らしていきます。

 

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立ち上がる場合、引っ張るのではなく、後方からプレッシャーを与える

 

当場のように、子馬をほぼ1年とおして昼夜放牧している場合には、人と馬が接する時間は限られてきます。1日のうち、多くの時間は馬同士で過ごすことにより、馬本来の自然な生活をしてもらう一方で、収放牧や手入れなど、人と向き合ったときには、しっかりと人に対する信頼感や安心感を育んでもらいたいと思います。

 

 

育成馬ブログ 生産編⑤ 「その1」

離乳後の子馬の取扱い 前の馬との間隔を空けた引き馬

 

子馬を生後から適切に取り扱うことで、人がリーダーであるとの認識や、人に対する信頼感を構築することができます。

しかし、離乳すなわち「母馬」という子馬にとっての絶大な安心感を失うことによって、少なからず精神的に不安定な状態に陥ります。

当場では、そのような状態を少しでも抑制する「母馬の間引き」による離乳方法を実施していますが、馬によっては、離乳後に取扱いが困難になる場合もあり、これまで以上に人に対する信頼感や安心感を育む努力が必要になります。

 

このような馬に対して、限られた牧場業務のなかで実施可能なことは、やはり、収牧および放牧時の引き馬、そして馬房内での手入れになります。

 

引き馬では、可能な限り人と馬が向き合う機会を増やす工夫が求められます。

例えば、複数頭の群れのまま、列をなすのではなく、前の馬との間隔を空けた引き馬は有効な方法です。

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群れのまま、前の馬との間隔をつめる引き馬では、馬は落ち着いて歩きますが、場合によっては、引いている人ではなく、前の馬をリーダーとして認識しています。

このため、当場では前の馬と「10馬身以上の間隔」を空けた引き馬をしています。この場合、前に歩かない馬や、逆に前に行きたがる馬がでてくるので、引いている人がリーダーとなって、馬のスピードをコントロールします。これにより、人馬の関係を再構築していくのです。

 

つづく

育成馬ブログ 日高③

○  冬将軍の到来(日高)

 去る11月14日、北海道地方ではこの時期としては記録的ともいえる大雪が降りました。暖冬の噂もあり例年より高めで推移していた気温からは想像もできないような急変ぶりで、一気に季節が進んだ感覚です。この大雪は、ここ浦河町の風景をあっという間に白一色に塗り替えてしまいました。冬将軍の到来です。

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写真1.降りしきる雪の中、屋内800mトラックへと移動する育成馬。過去に雪を経験しているはずの馬たちも、今年初めての積雪に少し興奮気味です。

育成馬の近況

 さて、JRA育成馬の近況についてお伝えします。最初に馴致を開始した第1群(牡23頭)は屋内800mトラックにおいて、縦列でのキャンター(1周:ハロン26秒程度)を行ってから手前を変えて2列縦隊でのキャンター(2周:ハロン24秒程度)を行う調教メニューを繰り返し実施しました。10月末頃になると前後左右の馬にも慣れ、走りたい気持ちを我慢して綺麗なフォーメーションを維持した力強い走りがみられるようになってきました。11月以降は体力もついてきたため、屋内800mトラックで2周キャンターを行ってから手前を変えて2周のキャンター(計4周:3,200m)を行う日を週に一度作っています。また、11月からは屋外1600m馬場でのキャンター(1周:ハロン24秒程度)と屋内坂路馬場でのキャンター(1本:1,000m)も開始しました。坂路調教はまだ場所慣らしの段階なので、屋内800mトラックでキャンター2周のウォーミングアップをしてから坂路を1本駆けあがる調教を行い、体力がつくのを待っているところです。

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写真2.誘導馬を先頭に屋外1600m馬場で駆歩調教を行う第1群の牡馬。落ち着いて真直ぐに走行できています。

 また、9月下旬に騎乗馴致を開始した第2群(牝22頭)は、現在屋内800mトラックにて縦列でのキャンター(1周:ハロン28秒程度)を行ってから手前を変えて2列縦隊でのキャンター(2周:ハロン26秒程度)を行う調教メニューを日々繰り返しています。1群ほどの安定感はありませんが、隊列を守り力強い走りをみせてくれる馬が増えてきて、日々成長していく育成馬たちの姿を見て心強く感じる今日この頃です。

https://www.youtube.com/watch?v=Jor9ISiVKLA

動画3.屋内800mトラックにて2列縦隊でのキャンター調教を行う第2群の牝馬。

 最後に騎乗馴致を開始した第3群(牡6頭、牝7頭)は間もなく馴致を完了できるところまで来ています。現在は屋内800mトラックにて縦列でのキャンターを両手前1周ずつ走る調教をしています。この13頭は年内を目途に1・2群と合流する予定です。

 

実践研修プログラム 育成編

 同ブログの前号でご紹介したJBBA高度化研修事業の一環として行っている「実践研修プログラム」。生産や繁殖のプログラムが中心で行われていますが、後期育成に関する研修も実施しています。先日は「馬体検査の方法」や「コンフォメーションについて」、「競走馬の歯の管理」などを題材にした研修も実施しました。数人の仲間同士で参加する形式なので、自由に質疑応答できるアットホームな雰囲気の研修となりました。

Photo_5写真3.降りしきる雪の中、JRA育成馬を用いたコンフォメーションについての実習を行いました。

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写真4.レポジトリーについての座学。普段疑問に思っていることを自由に話し合う場となりました。

 

 北海道はこれから本格的な冬を迎えます。日々成長していく育成馬の姿を見に、ぜひ日高育成牧場まで足を運んでください。皆様のお越しをお待ちしています!

育成馬ブログ 生産編④ 「その3」

実践研修プログラム

 

現在、当場ではJBBA高度化研修事業の一環として、「実践研修プログラム」を実施しています。ご好評をいただいた春期プログラムと同様に、今回も多数の申し込みをいただいており、すでに2グループ11名の方にご参加いただいております。

 

前回と同じく、ご参加者のニーズに合わせたプログラムを提供させていただいており、最初のグループは「1歳馬の取扱い方」、次のグループは「子馬の馬体検査とフットケア」に関する実習をメインに、いくつかの講義を組み合わせて実施しました。

Photo実習「1歳馬の展示」

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実習「歩様検査」

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実習「BCS検査」

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講義風景

 

ご参加者が少人数で気心も知れた間柄ということもあり、実習中のディスカッションはいずれのグループでも大変盛り上がりました。

 

以下に、ご参加者の声を紹介させていただきます。

 

「直接馬を見ながら、BCS、肢勢や蹄の話ができたことがよかった」

「コンフォメーションについてもっと詳しく知りたかったので、また来たい」

「うるさい馬でも、やり方1つでトリミングも簡単にできるということが初めてわかりました」

 

当プログラムにつきましては、現時点でも多数の申し込みをいただいておりますが、ご興味のある方は是非お気軽にご連絡いただければと思います。

 

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

育成馬ブログ 生産編④ 「その2」

BCSと定期的な馬体検査

 

当場では、BCS(Body Condition Score:ボディコンディションスコア)を毎月1回、3名以上の複数のスタッフでつけた平均点を出して、飼養管理の参考にしています。

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BCSは毎月1回、複数のスタッフで採点しています。

 

この毎月の検査では、BCSだけではなく、馬体全体のつくりや、肢勢、蹄形などを観察することで、給餌や削蹄の参考にしています。

この検査の重要なポイントは、子馬に毎日接しているスタッフ以外の「客観的な視点」です。

毎日接しているスタッフも、決して観察を怠っているわけではありませんが、毎日の微妙な変化には気づきにくい傾向にあります。このため、第三者の客観的な視点が極めて重要な「気付き」を与えてくれるのです。

 

なお、当場の当歳馬のBCSは、5.0~6.0を目標に管理しており、前回触れたとおり、4.9~5.3とやや低めではありますが、良好な馬体に保っています。

 

子馬の馬体をつくるうえで、「やや余裕がある馬」を理想にしている牧場がある一方で、「やや細め」で管理したいと考えている牧場もあると思います。

いずれの場合であっても、馬体重やBCSのような客観的な指標を用いることで、そのポリシーを具現化し易くなるのではないでしょうか。

 

なお、当場の当歳馬に対する給餌量は、10月末まではスタム1kgのみでしたが、徐々に朝晩の冷え込みが増してきたため、11月からエンバク1kgを追加して合計2kgに増量しています。

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ホームブレッド フローラルホームの14 牝 父サマーバード

182日齢 馬体重:244kg ADG:0.7kg/日 BCS:4.9(11月5日現在)

 

今年の冬も昨年同様、全頭の昼夜放牧を継続していくなかで、厳冬期におけるウォーキングマシンの効果を確認することを目的として、ウォーキングマシン実施群と未実施群に分ける実験を行います。

 

【ご意見・ご要望をお待ちしております】

JRA育成馬ブログをご愛読いただき誠にありがとうございます。当ブログに対するご意見・ご要望は下記メールあてにお寄せ下さい。皆様からいただきましたご意見は、JRA育成業務の貴重な資料として活用させていただきます。

アドレス jra-ikusei@jra.go.jp

育成馬ブログ 生産編④ 「その1」

ADGAverage Daily Gain1日あたりの平均増加体重)

 

現在、当場の当歳馬7頭は、場内で最も広い8haの放牧地での22時間の昼夜放牧を実施しています。

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1頭あたり1ha以上の放牧面積を有し、放牧草の状態も良好なため、当歳馬たちは順調に発育しており、10月末の時点でのADG(Average Daily Gain:1日あたりの平均増加体重)は0.9kg/日(全頭平均0.69~0.93kg/日)と理想的な発育を示しており、BCSは4.9~5.3とやや低めではありますが、良好な馬体を維持しています。

 

ADGは子馬の成長を観察するうえで、有用な指標の1つです。

生後から4ヶ月齢にかけては、1.3~1.0kg/日、その後12ヶ月齢までに0.5kg/日に徐々に低下していきます。当然のことながら、気温や放牧草の状況など季節に応じての変化が認められます。

 

ADGを算出する際には、計測間隔の設定に注意が必要です。

馬体重は日毎の増減のバラつきが小さくないため、数日もしくは1週間程度の短い

間隔で数値を算出しても、正確な値とは言えません。

このため、1ヶ月程度の間隔の馬体重を用いた方が、より有用な指標になると思います。

 

つづく

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育成馬ブログ 日高②

○  騎乗馴致、はじめました

 オータムセールが終了した北海道では、季節は秋から冬へと移り変わります。紅葉していた木々は葉を落とし、朝夕の気温が10℃を越えることも殆どなくなりました。まもなく訪れる冬に向けてあわただしく準備が進む日高育成牧場から、育成馬の近況を報告します。

 

オータムセール購買馬の入厩

 HBA北海道市場で開催されたオータムセールにおいて、JRAは2頭の牝馬を購買しました。10月10日にこの2頭が日高育成牧場へ入厩し、当場には今季育成する59頭(市場購買馬52頭、JRAホームブレッド7頭)が揃いました。オータムセールで購買した2頭は、今月20日まで環境に慣らしたのちに騎乗馴致を開始していく予定です。

 

育成馬の近況

 今季の騎乗馴致も、例年通り全59頭を3つの群に分けて実施しています。9月8日から開始した第1群(牡23頭)の騎乗馴致は全馬無事に完了し、現在は800m屋内トラックにおいて速歩1周・駆歩2周程度の調教を行っています。9月29日に開始した第2群(牝22頭)は装鞍してのランジング・ドライビングをじっくり行いつつ、馬房や外での騎乗に徐々に慣らしている段階です。オータムセール購買馬を含む3群は現在、騎乗馴致をスムーズに行えるようにプレ馴致(引き馬や手入れの練習、タオルや「ストラップ」と呼ばれる馴致道具を使って慣れさせる作業など)を行いながら人との信頼関係づくりに励んでいます。

 長いこと馴致を続けていると、扱いやすい馬が年々増えていることに気付きます(10年前には馴致がこれほど順調に進められるようになるとは思いもしませんでした!)。これは、生産牧場で産まれてすぐからしっかり手をかけていることや、育成牧場やコンサイナーにおける馬の取扱い技術が向上したためだと思います。日本の生産育成技術は非常に高く、年々向上していることを肌で感じます。

20141010 JRA日高育成牧場 調教風景(縦列調教)
YouTube: 20141010 JRA日高育成牧場 調教風景(縦列調教)

動画1.誘導馬を先頭に速歩・駆歩調教を行う第1群(牡馬)の調教状況。この日は前を走る馬にぴったりついて行き、後ろでしっかり我慢させる縦列調教を行いました。全馬落ち着いて調教できています。

BTC研修生の馴致実習

 日高育成牧場ではBTC(軽種馬育成調教センター)研修生の馴致実習を受け入れており、現在32期研修生19名が実践研修に励んでいます。彼らは3週間という短期間でランジングの方法やローラーの装着、ドライビング、そして騎乗に至るまで一連の馴致過程を学びます。はじめて扱う育成馬に動揺しながらも日々着実に成長していく今後の競馬界を担う若者たち。競走馬になるJRA育成馬で得た経験は、優秀なホースマンになる上での大きな財産になることと思います。

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写真1.育成馬を用いた騎乗馴致の実践研修。研修生たちは育成馬の取扱いや馴致方法を学びながら日々成長していきます。写真はドライビングを行う研修生とバクシンスクリーン13(牡、父:ヨハネスブルグ、JRAホームブレッド)

「セリと育成馬を知ろう会inひだか」 の開催

 今年もHBA北海道市場が主催するイベント「セリと育成馬を知ろう会inひだか」が開催されました。イベント2日目となる10月9日には5名の馬主関係者の皆様に当場までお越しいただき、調教施設見学やJRA育成馬の馴致見学、育成馬を用いた「馬の見方」解説や注目育成馬紹介などを行いました。お越しいただきました皆様には、好天のもと育成馬の姿や騎乗馴致が行われる様子をご覧いただき、ご満足いただけたのではないかと考えております。遠路はるばるお越しいただきました皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。日高育成牧場では、みなさまのご来場をいつでもお待ちしています。成長したJRA育成馬の姿をご覧いただければ幸いです。

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写真2.イベントの最後にはホームブレッド7頭を含む当場の注目馬12頭を、比較展示の形でご覧いただきました。

 以上が日高育成牧場におけるJRA育成馬の近況です。10月中の毎週水曜日、日高育成牧場バスツアーでは「育成馬の馴致見学」を行っています。一般のお客様も騎乗馴致をご覧いただけますので、馴致も進み活気づいてきた当場にぜひ足をおはこびください!