2022年12月13日 (火)

第64回JRA競走馬に関する調査研究発表会に参加しました

分子生物研究室の根本です。

第64回JRA競走馬に関する調査研究発表会が、11月28日に東京・両国の国際ファッションセンター(KFC Hall&Rooms)で開催されました。通常ジャパンカップの翌日に毎年開催されています。今年も獣医学から装蹄、馬場に関してまで、幅広い内容の演題がありました。国際ファッションセンターはプロレスの会場にもよく使われる会場であり、プロレスファンの私としては少しテンションが上がる会場です。本発表会はウマ科学会の学術集会と同時開催であったため、コロナ禍以降初めて会う知り合いもいて、有意義な時間を過ごすことができました。


肝心の発表ですが、私は馬インフルエンザのワクチンに関する内容を発表しました。しかし特に質問もなかったことから、時間調整が必要となってしまい、座長のお手を煩わせてしまいました。来年以降発表する機会がある際は、質問していただけるよう、わかりやすい内容で、わかりやすいプレゼンを作成するように心がけます!

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本発表会の様子。左は演者の私、右は座長。

2022年12月12日 (月)

4年後に会いましょう

運動科学研究室の杉山です。


めっきり寒くなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。 
今回はスウェーデンで行われた第11回国際馬運動生理会議(International Conference on Equine Exercise Physiology(以下ICEEP)(外部リンク))についてお話します。

ICEEPは1982年より4年に1回開催されている国際学会で、2022年は4日間に渡り馬の運動能力に影響を及ぼすトレーニング、栄養、薬物、生理機能などについての研究成果が報告されました。日本からも5題のポスター発表を行い、様々な意見やアドバイスをいただくことができました。

Photo(写真1)Swedish University of Agricultural Sciencesの動物病院兼獣医学部

2(写真2)会場はこの大学の講堂でした。ウマの置物が着ているのは北欧柄のかわいいブランケット

ところで、ICEEPでは海外からの参加者をもてなし、その国をよく知ってもらうための企画にも力を入れていて、今回のスウェーデンでは16世紀半ばに建造されたというウプサラ城を貸し切ってのディナーが行われました。
そしてこのウプサラ城で4年後の開催地が「日本」と発表され、会場から歓声が沸き上がりました。

次回の日本開催にむけて、”映え”るおすすめスポットがあればぜひ教えていただきたいです。

3(写真3)ウプサラ城での次回開催地発表の様子

4(写真4)どこを撮っても絵みたいになると思って撮った1枚

2022年12月 1日 (木)

FAVA2022への参加

微生物研究室の木下です。

2022年11月、福岡にてアジア獣医師会連合 (FAVA) 大会(外部リンク)が開催されました。大会の招待講演として馬の細菌性感染症に関するセッションが設けられ、当研究室から内田および木下がそれぞれMRSA感染症およびClostridioides difficile感染症について講演を行い、丹羽が座長を務めました。

本セッションでは、当研究室2名の他に、北里大学名誉教授の髙井先生からRhodococcus equi感染症について、モンゴル国立生命科学大学のバナーバータル・バトバータル先生から鼻疽に関してのご講演をしていただきました。4つの疾病はそれぞれ異なるものの、本大会のテーマであるワンヘルスの視点から、ヒトと動物 (主にウマ) あるいは環境との関連について様々なデータが披露され、ヒトとウマの健康をコントロールするためには多角的なアプローチが必要になることや、疾病ごとに注力するポイントが異なることが理解でき大変有意義な講演となりました。

Photo左から講演者のバナーバータル・バトバータル先生、内田、木下、高井先生そして座長を務めた丹羽。

Photo_2 マスコットキャラクター『ワンヘルスぼうや』と内田の記念写真

2022年11月10日 (木)

馬感染症研究会を開催

分子生物研究室の上林です。
秋も深まり、栃木の木々も紅く色づき始めました。
先週末はGⅠ天皇賞(秋)が開催されました。1998年天皇賞(秋)を彷彿とさせるような大逃げの展開もあり、非常に興奮する面白いレースでした。

さて、先月末に総研で「馬感染症研究会」が開催されました。
これは、全国の家畜保健衛生所や動物検疫所の獣医師の方が集まり、馬の伝染病に関する情報交換をしたり、総研の研究者による講義・実習を受けたりして馬の伝染病に関する知見を高める場となります。
家畜保健衛生所は、各都道府県に設置されており、牛・豚・鶏をはじめとした家畜の伝染病の発生予防のための様々な業務を担っています。動物検疫所は、主に動物の輸出入の際の伝染病侵入予防のための責務を果たしています。いずれも、我が国の畜産業を守っていく存在として非常に重要な存在です。そんな機関で働く先生方に、普段は触れる機会の少ない馬についても伝染病の診断にかかわる知識と技術を有していただくために、本研究会は開催されています。

今年は全国から約20名の獣医師が集まりました。
細菌やウイルスが原因となる伝染病に関する講義に加え、馬の触り方や検体の採取方法に関する実習が実施されました。
普段馬に触れる機会が少ないせいか、皆さん熱心に実習に取り組まれている姿が印象的でした。

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僅か3日間の開催ではありますが、この経験を通じて少しでも皆さんの馬に関する知識と技術の向上に貢献できていればと思います。
我々としても各自治体に勤務される獣医師の方とお話をできる貴重な機会なので、今後もこの場を大事にしていこうと思います。

長―く効く薬の話

臨床医学研究室の三田です。

 

寒くなってきて風邪が流行る時期になってきました。

我が家でも子供が咳込んでいたので漢方薬を処方してもらったのですが毎食後に飲ませる必要があり、たまに忘れてしまいます・・・。飲み忘れるのが漢方薬ならまだいいのですが、もしこれがホルモン剤や抗菌薬であれば飲み忘れによって体調を崩したり、病気をぶり返してしまうなど大きな問題になってしまいます。そこで、今回のブログでは現在私の研究で取り組んでいる、少ない服用回数で長く効く薬の話をしたいと思います。

 

上記のような「患者が医師の処方通りに服薬できるか(服薬コンプライアンス)」という問題は数十年前から話題にされており、特にホルモン剤注射を頻回にわたって服用しなければならない患者さんにとっては毎日の負担が非常に大きいそうです。そこで製薬会社では薬剤を人工合成したポリマーを用いて加工することで少数回の服用でとても長く効く薬を開発してきました。つまり、一般的に薬を単独で体に投与すると数時間で代謝されてしまい効果が無くなっていきますが、体の中で徐々に分解されるポリマーを使って薬剤をコーティングすることで薬剤が長期間にわたって徐々に分解されるようにする仕組みです。この技術によって現在商品化されているホルモン剤の中には1回の投与で数か月も体の中で有効濃度を保てる薬もあります。薬の加工技術は年々進化しており、薬を必要な量・必要な部位へ・必要な期間にわたって作用させるための研究が様々な薬で行われています。

馬の診療でも頻回の投与が大変だったり、目的の部位だけに薬を届けたい場面があり、私の研究では馬で使用している抗菌薬でこのようなことができないか検討を重ねています。下の写真は先ほど説明した、①薬剤を加工する前と②ポリマーで加工した後の電子顕微鏡写真です。結晶構造だった薬がポリマーで包まれて丸くなっている様子がわかると思います。

①加工前の結晶状の抗菌薬

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②ポリマーで加工した抗菌薬Photo_2

 

この形を見て先日の皆既月食を思い出してしまいました。

いつしかこの薬剤がウマの体のなかで満月のように輝いた効果を発揮できるよう研究をすすめているところです。

 

2022年10月17日 (月)

乳酸投与と運動

運動科学研究室の向井です。

我々の研究室では、2005年から東京大学の八田秀雄先生のグループと共同研究を行っています。八田先生は運動と乳酸について研究されており、マウスに乳酸を投与させてトレーニングさせると、エネルギー源であるATPを産生するミトコンドリアの酵素活性が高まることを報告しています(Takahashi et al, Physiol Rep, 2019)。

そこで、八田先生と競走馬総合研究所との共同研究で、サラブレッドに乳酸を投与してから運動させると、マウスと同様に筋肉のミトコンドリアを増やそうとする動きが増強されるかどうか調べてみました。

乳酸を投与した群では、運動後の乳酸濃度が有意に高くなりましたが(図1)、ミトコンドリアの調節因子であるPGC-1α遺伝子の発現量には有意な差が認められませんでした(図2)。しかし、運動後の乳酸濃度とPGC-1α遺伝子の発現量には正の相関が認められたため(図3)、乳酸濃度が高まるとミトコンドリアが増加しやすくなることが示唆されました。

今回の研究では、マウスとは異なり、サラブレッドでは乳酸投与の効果が認められませんでしたが、乳酸濃度がミトコンドリアの増加に関連がある可能性が示されました。トレーニング強度を速度だけでなく、乳酸濃度で評価し、トレーニング効果を乳酸濃度の変化で評価していくという考え方は今後もっと加速していくものと思います。

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図1 運動前後の乳酸投与群(LAC)と生理食塩水を投与した対照群(CON)の血漿乳酸濃度。乳酸投与直後(POST IV)では血漿乳酸濃度に差はなかったが、運動直後(POST EX)から運動5分後(5 min REC)まで乳酸投与群の血漿乳酸濃度が常に高かった(P < 0.01)。

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図2 運動前(PRE)と運動4時間後(4 Hr-REC)のPGC-1α遺伝子の発現量。乳酸投与群(LAC)および対照群(CON)ともに運動4時間後にPGC-1α遺伝子の発現量が増加した(P < 0.01)。

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図3 ピーク乳酸濃度とPGC-1α遺伝子の発現量の相関。実線はすべてのデータに対する相関(r = 0.66, P < 0.05)を示し、点線は乳酸投与群に対する相関(r = 0.91, P < 0.05)を示す。

詳細についてはComparative Exercise Physiologyで公表されたこちらの論文(外部リンク)をご覧ください。

2022年10月14日 (金)

イギリスでのウマ獣医師学会について

こんにちは、イギリスに滞在している臨床医学研究室の田村です。

先日、イギリスのリバプールで開催された学会に参加しました。
この学会はウマの獣医師や動物看護士にむけてプログラムが構成されている学会です。
イギリスでは競走馬の他に多くの乗馬やポニーが身近な動物として飼育されています。
そのため、ウマを専門とする獣医師の数が日本よりも多く、今回のような専門的な学会も多く開催されています。
今回の学会はイギリス国内における最大規模の学会であり、多くの獣医師が参加し、幾つもの講義が開催されたため、大変勉強になりました。

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日本においても、獣医学、畜産学の他に人文科学や芸術分野に至るまで幅広いテーマが対象となっている日本ウマ科学会が存在しており、ウマを基軸にした意見交換および情報発信の場となっています。
今年も東京で学術集会が開催されます。
御興味のある方は日本ウマ科学会のホームページ (外部サイト)を御覧下さい。

日本ウマ科学会のホームページはこちらになります。
 https://jses.jp/(外部サイト)

2022年9月14日 (水)

ローソニア感染症の研修(タイ王国)-観光編-

 微生物研究室の丹羽です。

 本年7月、ローソニア感染症の抗体検査法やその原因菌であるLawsonia intracellularis (LI)の培養法を習得するため、ローソニア感染症研究の第一人者であるタイ国立チュラロンコン大学のWattanaphansak博士の研究室に約3週間の技術研修を受けてまいりました。前回は研修先での暮らしについてお話をしましたが、今回は研修中に訪れることができた観光スポットについてご紹介したいと思います。


1. バンコク

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 タイ人の約90%は仏教徒であり、バンコクには三大寺院と呼ばれるワット(寺院)・プラケオ、ワット・ポー、ワット・アルン、新たに注目されているワット・パクナムなど数多くの寺院が存在しています。それぞれに異なった趣のある寺院でした(写真1)。また、バンコク市内にはチュラロンコン大学のメインキャンパスもあり、獣医学部もその中に位置しています。


2. アユタヤ

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 アユタヤは、14〜18世紀まで栄えたアユタヤ王朝の中心部であり、アユタヤ王朝時代の遺跡と象乗りが観光の目玉となっています。ビルマ軍との戦争ですべての仏像の頭部から上が切断されたワット・マハタートという遺跡内には菩提樹の根に覆われた仏頭はあり、とても神秘的な光景でした。


3. ナコンパトム

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 研修先となったナコンパトムは今でこそ自然豊かな小都市ですが、タイ国内で最も歴史のある街です。中心部には世界一高い仏塔であるプラ・パトム・チェディがあります。また、衝撃的かつ絶品のエビ(火山エビ)料理を提供する「グンオッププーカオファイ」というレストランが有名です。


4. ホアヒン(番外)

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 国土の全体が熱帯に属するタイにはコブラを始め数多くの毒蛇が生息し、人や家畜に大きな被害をもたらしています。それらの毒蛇の脅威から身を守るためにはヘビ毒に対する抗体が必要となりますが、抗体の作製には馬が用いられることがあります。タイではシリントーン王女が理事長となり、赤十字社が運営しているQueen Saovabha Memorial Instituteが馬を使用して抗体を作製しています。パタヤと並ぶ海辺の観光スポットであるホアヒンの近郊に位置し、ヘビ毒抗体産生用の馬が飼養されている牧場を見学することができました(写真4)。

 いかがだったでしょうか?


 最後に、研修先でのローソニア感染症に関する最新の研究手法や研究室のメンバーの心温かい気遣いに触れ、研修前は国名ぐらいしか知らなかったタイ王国が、もう一度必ず訪れてみたい国になったことをお伝えし、本研修に関するブログを終わりにしたいと思います。

2022年9月 1日 (木)

蚊と日本脳炎

分子生物研究室の辻村です。
皆さま今年の夏はいかがお過ごしでしたか?
キャンプなどアウトドアに出かけられた方も多かったことでしょう。


そんな野外での楽しいひと時を邪魔する厄介ものといえば蚊です。
刺されて痒かったり、腫れたりするのも困りものですが、一番の問題は蚊が吸血で様々な病原体を媒介することです。


日本国内に分布する代表的な蚊媒介性の病原体といえば日本脳炎ウイルス。
多くの生物がこのウイルスに感染しますが、脳炎を起こしやすいのは人と馬です。
かつては、人でも馬でも日本国内で年間に数百から数千件の日本脳炎の発生がありました。
それがワクチンの普及で減少が進み、現在ではヒトで年間10件程度の発生、馬では2003年を最後に発生の報告がありません。
ただし、日本脳炎ウイルスは依然として国内に分布していますので、ワクチンによる予防対策はこれからも重要です。


ところで、本稿を執筆しながら、ふと思いました。
『そういえば、しばらく蚊に刺された記憶がない』
ネットを調べてみますと、個人差があるものの、年齢を重ねるとともに、蚊に刺されてもあまり痒くなったり、腫れたりしなくなる傾向があるとのこと。
私の場合、本当に刺されていないのか、あるいは気がつかなくなったのか?
おそらく、後者の可能性が高そうです。

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写真:日本脳炎(口唇の麻痺)

2022年8月29日 (月)

ポーランドでの学会

こんにちは、イギリスに滞在している臨床医学研究室の田村です。

先日、ポーランドのクラクフで開催された学会に参加しました。
クラクフは歴史がある都市として有名であり、古都と表現される街並みが保存されています。
学会会場となったICE Krakow Congress Centreは、近代的な建物ですが、美しい街と城に調和していました。
この学会では、私が研究テーマとしている再生医療に関係する内容を幅広く取り扱っています。
人間の医療だけではなく、獣医療にも応用できるような報告が数多くありましたので、私も大変勉強になりました。

             

Polandgakkao

この大会場において、多くの有意義な報告がなされました。

競走馬の健康や福祉の向上を検討するにあたって、貴重な機会となりました。