« 2018年11月 | メイン | 2019年1月 »

2018年12月

2018年12月27日 (木)

Steward Clogsによる蹄葉炎の装蹄療法

 流産後に蹄葉炎を発症してしまった繁殖牝馬。すでに2か月弱が経過しているが、ローテーションが進行してきたので、深屈腱切断術を実施したとのこと。

 レントゲン検査では、蹄壁と蹄骨の角度の開離(ローテーション)により反回ポイントが後ろに下がっていることが分かる(黄矢印)。蹄骨伸筋突起も沈下しているため(赤矢印)蹄冠部は指が入るほど陥凹していました。

1_3
2

 歩く際には疼痛も認められるため、Clogを使用した装蹄療法を試みるとのことで見学させてもらいました。

4

 Clogとは木靴の意味。これを装蹄することで反回を容易にし、反回ポイントも後ろに下げられます。蹄底の膨隆部が当たらないように窪みもあるが、さらに加工を施しました。


5

 蹄又の部分には軟らかいタイプのACSを施し、ネジで挟み込むように固定しました。


6_2

7

 コブラソックスを細断してエクイロックスに混ぜたもので固着して完成。


9

11

 反回が良くなることで蹄の葉状層への負担も減る。Clog装着後の歩様はとても楽になりました。


12

 今後の経過も追っていきたいと思います。

2018年12月26日 (水)

着地検査

 本日、キーンランド(Keeneland)のノベンバーセール(November breeding stock sale)で購買した繁殖牝馬2頭が輸入検疫を終えて日高育成牧場に到着いたしました。

Img_9656

 着地検査とは、輸入検疫解放後に各都道府県が主導で行う検査のことです。これから3か月間、臨床検査および各種感染症(馬インフルエンザ、馬伝染性貧血、馬パラチフス、馬ウイルス性動脈炎、馬鼻肺炎)検査が家畜防疫員(日高育成牧場の獣医師を登録)により行われます。

 検疫場所は、他の馬と隔離され、作業は専用の長靴とタイベックを着用して行われます。


Img_9653

 着地1ヶ月後の各種検査結果が陰性、併せて伝染性子宮炎検査結果も陰性であれば、着地検査中でも種付けは可能です。馬房にはライトコントロールも設置し、来春の交配に備えています。

2018年12月17日 (月)

第70回 朝日杯フューチュリティステークス

2018年12月16日(日) 5回阪神6日11R 「第70回 朝日杯フューチュリティステークス」に日高育成牧場の生産馬であるイッツクール号が出走するため、我々も競馬場に駆け付けました。

Img_9599 

この日は、6Rの「メイクデビュー阪神」にも生産馬のジュンヴァルボンヌ号が出走するということで、とても楽しみな日になりました。

Img_9596

同世代の生産馬は僅か5頭で、イッツクール号もジュンヴァルボンヌ号も初子でした。特にイッツクール号は生まれた翌日にもまだ哺乳が上手く出来ず、治療を施すなど手のかかる子でしたが、逞しく成長した姿をパドックで見ると、親バカかもしれませんが期待せずにはいられませんでした。

結果は2頭とも9着でしたが、とてもエキサイティングな競馬でした。

競走馬の生産業は、とてもリスクが大きい業種といっても過言ではありません。交配から妊娠・分娩・育成を経てようやく競馬場でデビューするだけでも大変な苦労の賜物です。ともすれば辛いことばかりが慮れる競走馬の生産です。しかし今回、G1競走という晴れの舞台に立ち会うことができ、生産に携わった者として多くの関係者と喜びを共有することも競走馬生産の一部なのだと実感しました。

2018年12月11日 (火)

馬のレスキューシステム(Loops Equine Rescue System)

先日のMadigan先生の講演会では、馬のレスキューについても少し披露していただき、講演会終了後に先生から写真のレスキューキットを1つ託されました。

Img_9578

キットは、輪状のファイバー織物ロープ4本とカラビナ数個からなり、使い方はこちらのPDFの通りです。倒れた馬を反転させたり、引っ張ったり、起こしたりする時に使用します。

loops_equine_rescue_system.pdfをダウンロード (2M)

このロープは中に綿のようなものが入っていて意外と当たりは柔らかくできていますが、1本の耐荷重は5,300LBS(2,400Kg)と強力です。

Img_9581

値段は1セット75ポンドと仰っていたので1万円程度でしょうか。もしもの時に備えて普段から道具もテクニックも準備しておきたいところです。

2018年12月 7日 (金)

初雪

暖かいと思っていましたが、ようやく浦河にも雪が積もりました。

冬至まで昼夜放牧を続ける予定の妊娠馬たちは、まだ積もったばかりの雪をかき分けかき分け牧草を食べています。しかし、急激な食べ物の変化は注意が必要です。少しづつ乾草飼料へと移行する必要がありますが、馬たちは青草の方が好きですよね!

Img_9564_2

一方、牧草は雪に覆われることで霜焼けせずに、雪解けとともに芽を吹き返すことができます。これから雪の下で、じっと春を待つことになるのです。